レーザー銃の傭兵とダボールスナイパーな人形 作:ジャック・アヴェンダドール
今まで何してたって?うまぴょいしてましたハイ。
新チーム結成
ジョセフ達が作戦の報告をしてから数日たったある日。彼らは新しい部屋を用意していた。ピリア用の部屋を買おうと模索していたが、その前にグリフィンが引き取ったようで、既にジョセフ達が住む階とその上下階がグリフィンによって抑えられていた。
その内、ここの地区の指揮官は刺されそうだと思いながらも、簡単な清掃を済ませていた。無論自分で使うのでは無く、グリフィンから来る人形のためだった。
家具は簡素なベッドと収納棚だけに留めている。これは本人が後から家具の追加をしやすい様にしている。決して面倒だからとかでは無い。
ついでにピリアの部屋も割り当てた。早速彼女は色々置こうと考えているようだ。
「そろそろ来る筈だな」
ジョセフが時計を見ると、新しい人形が来る時間に差し掛かろうとしていた。作業を切り上げて、彼の作業室へと向かう。すると既に先客が2人居た。
1人はピリアだ。ジョセフの直属の配下であり、この建物の住人。2人目は89式、以前の作戦で共に行動した人形だ。
2人が新しくジョセフの所に配属になった。
「改めまして、私は89式です!これからよろしくお願いしますね!」
「あぁ、よろしく。……64式自はどうした?」
「それが……修理自体は終わったんですが、彼女、PTSDになってしまったようで……」
「PTSD⁉︎」
彼女の口から告げられたのは衝撃の事実だった。人形のメンタルはバックアップの存在も有り、人間よりも精神疾患に陥り辛い構造だとジョセフは思っていた。
《それについては私から説明させて》
「どう言う事だ、アーキテクト」
唐突にアーキテクトが通信機越しから会話に割り込んで来た。
《グリフィンの人形はメンタルのバックアップがあるんだけど、メンタル毎に識別番号が異なってるみたいなんだよね。通常なら基地にあるサーバーに保存されたバックアップを用いて、過去の記憶を持ったまま次の素体に移せるんだけど。彼女達の基地が稼働を停止しているのか、情報が無いんだよね》
「どう言う事なんだ?」
「それが……私達の居た基地が鉄血に襲撃されて、逃げてきたんです。そこの指揮官さんの指示で。それで、暫く身を潜めようとして居た時に、あの街も鉄血に抑えられてしまって……」
《その関係で彼女達の基地にバックアップが無かったのよ、彼女達。それで、この前修理する時に64式自の中に残っているバックアップデータのアップロードとロールバック処理をしようとしたんだけど、1番古いのでも、この前の作戦で撤退した後のデータしか無くて……》
アーキテクトの言葉を最後に全員無言になる。つまり、あの現場を見た記憶を残したまま次の素体に移されたのだ。機械的な部分はあれど、人間を模して作られた存在。メンタルも人間に寄せた弊害がここで現れてしまった。
「そういう事か……前線は無理だな」
《その事に関して相談があるんだけど》
「言ってみろ」
ジョセフは頭を抱えたまま、アーキテクトの提案を聞く。
《彼女をメインオペレーターにするってのはどう?立場上の問題もクリア出来るし、予知レベルの危機感知能力もあるみたいだから、そっちでもイケそうって思うけど、どう?》
彼女の提案は、前線に出ないなら補助に回ってもらおうという物だった。ただ一つ、問題があった。IOPのシステム上の課題が。
「64式自に指揮モジュールって付いてるのか?」
「いえ、分隊長でも無かったので搭載はされてません。キャパシティがあるかも分からないんです」
「そこなんだよなぁ。IOP製の戦術人形の場合、上位下位の権限の差が機体毎という訳じゃ無いからなぁ」
89式の予想通りの回答に溜息を吐くジョセフ。鉄血とIOPの大きな違いの一つに、人形毎の絶対的な格差の有無が有る。上位機体が下位の人形をコントロールする鉄血のオーガスと、同格の人形から隊長格を指定する、グリフィンのツェナー・プロトコル。この二つが違いが、64式自のオペレーター転向を困難な物にしている。
《いやいや、この部隊の指揮権限自体はジョセフにあるんでしょ?なら簡単な話だよ。隊長として“オペレーター”へ指示を出す。そして、64式自はオペレーター室で周辺状況を“隊長”に報告する。それを部隊全員に共有する。コレならバッチしよ!》
ジョセフ達はアーキテクトの提案に驚愕する。まさかそんな抜け穴があるとは気付かなかった。
彼は人形のシステムに馴染みが無い為、ピリアと89式はシステムの抜け穴がある事自体、考えられなかった。
「その手があったかぁ……それなら行けるな。まぁ慣れは必要だろうがな。丁度、巡回任務がある。そこで色々、試してみるか」
ジョセフはパソコンを操作して、一通のメールを2人に見せる。内容はSB07地区市街地部の定期巡回任務の依頼書がグリフィンから出ていた。
「街中でオペレートの練習と洒落込むか。64式自がやれそうになったら引き受ける。それまで各自待機だ」
「了解」「りょーかい!」
一方その頃、アーキテクトは……
「ここよりもスプリングフィールドさんの喫茶店の方が落ち着くと、アーキテクトさんは思うだけどなー?」
お惚けた口調で訪問者に話し掛けるアーキテクト。彼女が居る捕虜用宿舎の一角、アーキテクト用の個室に訪れた1人の人形が居た。
「戦えない人形が居ていい場所に思えないから……どうして解体されなかったのか不思議でならないわ」
その人形は64式自だった。アーキテクトがジョセフとの通信を終えた後、64式自はここに訪れたのだ。その表情はとても大丈夫とは10人がみても誰も思わないものであった。
「あの面々なら気にしないっしょ。それに、何も前線だけが戦いじゃないサ☆」
「私達は前線で戦うために造られたのよ。それが出来なくなったら、存在意義がないの。分かる⁉︎生まれた意義を全う出来ないこの苦しさが!」
笑顔でウィンクしたアーキテクトの事が気に触れた64式自は、感情的になってアーキテクトの服の襟を掴みあげる。
「それで言ってしまったら私の方こそ存在意義が無いことになるよ」
「?」
先程までのおちゃらけた雰囲気から一変して、真面目なトーンで話し始める。
「鉄血工廠の兵器開発用に造られたっていうのに、今やグリフィンに捕われて、しかも情報を流している。コレで鉄血の人形としての存在意義ってあると思う?」
「⁉︎」
襟元から力が抜けていくのをアーキテクトは感じた。64式自は手を離して、目を伏せる。
「……ごめんなさい」
「いいのよいいのよ!それにさっきも言ったけど戦いって前線だけじゃないから!」
いつもの雰囲気に戻ったアーキテクトに今度は困惑する64式自。確かに前線以外にも戦闘に関連する物はあるが、一介の人形に出来る事はあるのだろうかと首を傾げる。
「さっきジョセフと話してたんだけど、君にオペレーターをやって貰おうかなって思ってね。この宿舎の使われてない部屋を改造して、オペレータールームにする。そこで実働部隊では分からない情報を伝える。これも十分、戦闘に貢献出来るよ!」
「でも私、指揮権限が……」
「大丈夫、64式自は隊長であるジョセフや他のメンバーにオペレータールームで判明できる情報を伝える。そこに指揮権限は不要だよ!」
「そんな事出来るの?」
「物は試しだよ!準備が出来たら、市内の巡回任務で試験運用だって」
「えぇ……」
急に決まったオペレーター業に混乱と困惑しか出来ない64式自だった。
64式自、オペレーター就任の巻
彼女の能力ってオペレーター向きだと思うんですよね。
オペレーター時にゲーム的なフレーバー入れるとしたら
スキル:未来予知
発動から一定時間、敵の移動先、攻撃タイミングが分かる
といった感じがします。
次回は試験運用編です