今回は奈落編です。冒頭の回想シーンも復活。
それではどうぞ。
「クソッ!数が多い!」
今ハジメ達は、コンクリートで覆われた交差点の中心辺りで戦っていた。
相手はキツイ黄色と黒の縞模様、人型であるにも関わらず腕は四本生え、腰からは尾のように特徴的な巨大な毒針が生えている、『スズメバチネオ』だ。その数は優に60体を超え、四方八方からライダー達に襲いかかってきていた。
「チッ。女王蜂を倒せ!やつを倒せば統率はなくなる!」
真紅の鎧に見を包んだ、不死鳥を模した戦士が命令を出す。交差点の中心には、蜂の巣のような玉座に腰をかける一回り大きな個体がいる。時折腕を振ったりするたびに攻撃方法が変わっているので、おそらくはヤツが指揮官だと目星をつけ、そこに向かおうとする。しかし、
「蹴散らすだけのパワーが足りねえ!必殺技をポンポン出すわけにも行かねえし…な!」
「僕はそもそもスピード特化だし…っ!切り抜けるだけのパワーが足りな……い!」
ハジメと、龍の戦士、白を基調とした軽装に見を包んだ白虎をモデルとした戦士が、それぞれ少し離れた場所で自身に群がる異形をなぎ払っている。しかしそれらの勢いは衰えを見せず、ライダーといえども、4人は徐々に疲弊し始めていた。
その時である。
「うあぁぁあああん!!」
「「「「?!」」」」
突然幼い子供の鳴き声が聞こえた。4人はその声の持ち主を探す。
「子供?!」
「どっからだ!」
「赤阪《あかさか》さんの近くからです!!!」
ハジメが白虎の戦士の近くにあった横転している車の中に小さな熱源を感知し、大声で伝達する。しかし、そもそも余裕のないこの状況ではどうすることも出来ない。
あれだけの大声を出してしまえば、ネオ達に見つかるのも時間の問題。現にその車の近くには辺りを伺うようにして歩き回るネオ達の姿も見える。
「助けてぇエエ!お兄ちゃぁあん!!」
「…!」
助けを求めるその声に、白虎の戦士が動いた。
「邪魔だあぁぁああ!!」
『charge up』
「っ?!赤坂さんっ!」
雷光を周囲に放ち、一気にスズメバチネオの群れを蹴散らすと、声の聞こえた車に飛びつき、爪で壁を切り裂く。
中からは、4、5歳程度の女の子が救助された。戦士は片手で女の子を胸に抱えると、もう片方の手に鉤爪を呼び出し群れの中を突っ切ろうと掛け出すが、片手しか使えない彼を先に倒そうとしているのか、スズメバチネオ達の攻撃が苛烈なものに変化していく。
そしてとうとう限界が訪れ、
ドチュリ
「〜〜〜ッッァガッ?!」
その背中を、太い毒針が貫いた。
―――――――――――――――――
「莢さん起きて。」
「ん…ふにゅう」
ハジメと莢、そしてくっついてきたオロチは、岩に囲まれた通路のような場所にいる。
ハジメは橋から落ちたあと、瓦礫を足場にパルクールの容量で姿勢を整えながら落下し続けていた。砕けたり壁にぶつかったりして、そろそろ足場となる瓦礫がなくなってきた、というところで壁のあちらこちらから鉄砲水が吹き出しているのを見つけ、そこに飛び込む事に成功。流され続けること数分。流れが弱くなったところで岸に上がり、今に至る。
地面を錬成し、魔法陣を作ったハジメはそこに火を灯し、暖を取ることにした。ここでは魔物に襲われる危険もあるが、動き回り見つかってしまっては本末転倒だ。ならばここで静かにしていた方が安全である、そう考えての行動だ。それに、ここが何階層かはわからないが、間違いなくベヒモス、いや、それ以上の敵がわんさかいるような場所で、一応オロチにも周囲の警戒をしてもらっているので大丈夫だとは思うのだが、動けない莢を連れて歩き回る危険は犯したくはなかった
魔法の直撃に加えて落下時の風圧などで気を失っていた莢。ダメージ自体は彼女が自分で調合していた薬を、説明されていた通りに使っていたので殆ど回復していたのだが、暫くの間目を覚まさずに寝息を立てていた。
一時間ほどして、漸く目を冷ました莢は、暫く寝ぼけた様子だった。相変わらず寝起きはめっぽう弱いらしい。
しばらくして漸く目が冴えてきたらしい彼女は、ふるふると頭を振り、意識をはっきりさせると、ふとハジメの腕に視線がいった。
「あ…。」
右腕の袖は、流されているときに引っ掛けたのか、肩の先からなくなっており、ハジメの腕がよくみえていた。そこにある爬虫類の鱗のようなものも。
「面積が広がってる…。」
「本当かい?自分だとよく見えなくて。」
莢がその鱗の範囲をここだ、と指でなぞる。
なるほど、言われてみれば、前に確かめたときよりも確かに数センチほど広がっている。ここまで広がると、もうそろそろで肘あたりまで到達してしまう。
(侵食が進んでるな。力をなじませて慣れようとしたのが裏目に出たか…。)
それはハジメが人間ならざるものであることの証。力を使い続けた代償。そして、罪の体現。
戦えば戦うほどにそれは濃く、広くなっていく。それでも止まるわけには行かない。例え、人としての全てが消えさろうとも、
「ハジメ。」
唐突に莢がハジメの名前を呼んだ。そちらを向くと、莢の心配そうな顔が間に入る。そこでハジメはハッと我に返った。そうだ。まだ飲まれるわけには行かない。彼女と最後まで生きるまでは、絶対に。
ハジメは大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
「ふぅ。ごめん莢さん。ちょっと考え事をね。」
「……。」
「えっと、莢さん?」
じーっとはじめの顔を訝しげに見つめる莢。しばらくすると全く、と言わんばかりに首を振り、大きくため息をついた。
「今ここで問い詰めるのはやめとく。」
「はははっ。」
ハジメは思う。
やっぱり彼女には勝てない。と。
二人は一旦、ハジメが錬成で作り上げた小部屋に入り、この状況をどう突破するか相談を始めた。
「ここは、あそこから体感だったけど1000m位は落ちてるんじゃないかな。」
「上に戻るのは建設的じゃないね。」
「ま、そもそも調査はする予定だったし、それが早まった、てことで。」
「そうだね。まあそれはいいや。とりあえずこの先のもんだいとしては、」
「やっぱりあれだよね。」
「「食料。」」
ここにやってきて早々に、二人は食糧問題に悩まされていた。離脱するにせよもう少し準備をしてからのつもりだったため、長期間洞窟の中で過ごすためのような物はない。一応一週間分の水と食料は各自持っているが、一週間で調査が終わるとも思えない。もういっその事魔物でも食べようか、という考えに行き着いたハジメは一応提案してみることにした。
すると、莢は思いの外乗り気だった。なんでも、魔物の肉はそのまま食えば体内で魔力が暴走して死ぬが、肉の中に含まれる魔力をなんとかできれば食べられない事もないらしい。
そうと決まれば早速、ということで近くにいる魔物を一匹2匹捕まえて試してみようと立ち上がる。小部屋は本当に臨時として作ったので、天井は低く、凸凹だ。あるき回るのには注意がいる。莢の様子を確認すると、ハジメは彼女が天井を気にしていることに気がついた。
「どうかした?」
「いやなんか、さっきから水滴が体に落ちててさ。」
「水滴?」
ハジメが彼女の上を見てみると、確かに炎の光を反射して天井の一部分だけが光っている。試しに、「鉱物鑑定」からの派生技能、「無機物鑑定」でそれを鑑定してみる。すると、ハジメは鑑定結果を目の色を変えて食い入るように見始めた。
「ふーむ。莢さん、計画変更だ。これの出どころを探すよ。」
「なぜに?」
「見てからのお楽しみ。」
いうが早いか、ハジメは染み出ているその水を頼りに、錬成で穴を掘り進んでいく。莢もとりあえず着いていく。しばらくすると、いきなり岩が途切れ、広い場所に出た。
「これは…」
そこには川のようなものが流れており、その中央にはバスケットボールくらいの大きさの美しい光を放つ宝石のようなものが、川の水を生み出し続けていた。美しい光景に、思わず見惚れていると、ハジメからの補足説明が入る。
「神結晶。歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物さ。数百、数千年かけて蓄積、圧縮された魔力が結晶化し、液体となって流れでている。
それから流れてる液体は〝神水〟って言ってね。、欠損部位を再生するような力はさすがにないけど、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという効果があって、飲み続ける限り寿命が尽きない、らしいよ。」
埋まっていた神結晶を錬成で取り出し、莢に投げ渡す。莢は「舐めてみろ」というハジメからのジェスチャーにしたがい、表面に染み出ているそれを、指につけて舐めてみる。すると、疲労感や怠惰感が消え、力が張るような感覚を覚えた。
「おぉ…。」
「これがあればちょっとしたトラブル程度ならなんとかなりそうだね。」
二人は流れでている神水を、持ってきていた水筒に詰め、今度こそ魔物狩りへと出発した。
「しっかし…、」
歩き始めてから10分ほど経った頃、莢が不意に口を開いた。
「見つけようって思うとなかなか見つからないもんだね。」
「あー。わかるわかる。ゲームとかやってても、確率低くないはずなのに欲しいアイテムが全く出なかったりするよね。」
それを人は物欲センサーと呼ぶ。
そんな他愛もない会話をしているときだった。
唐突に二人の耳に破裂音のようなものや、魔物らしき鳴き声が聞こえてきた。二人が音の発生源に駆つけると、そこでは、ウサギのような魔物が一匹、オオカミのような魔物の群れ相手に無双していた。ウサギがオオカミをけっちょんけちょんにするという現実離れした光景に驚きを通り越してなんだか呆れてくる。
「わーお。ウサギ強い。」
「私より普通に強いんじゃ…。」
確かに莢の言うとおり、両者とも神の使徒として召喚されたクラスメイトの誰よりも強いだろう。まあ、
「はーいストップ。」
仮面ライダーとして、戦い続けたハジメには遠く及ばないが。ハジメはオロチから剣だけを召喚してもらい、オオカミとウサギに向けてフルスイングする。
ダダダンッ!
壁に打ち付けられ、めり込む魔物たち。ハジメと莢は、それにロープをくくりつけて神結晶を見つけた場所に戻ることにした。
二人は今、はじめが錬成で作った即席のキッチンに隣合って立ったていた。
「で、どうする?調理器具はなんとかなったけど…。」
キッチンの上には、ハジメが作った調理道具がズラッと並べられている。莢はその中から、一般的な包丁の形をしたものを手に取る。
「ま、とりあえずやってみましょ。」
莢は血抜きと解体の済んでいるウサギの魔物肉の塊から、後ろ足辺りの肉を軽く削ぎおとし、それに向けてとある魔法発動させる。
「光の恩寵を以って宣言する。ここは聖域にして我が領域。全ての魔は我が意に降れ 廻聖」
莢の発動したこの魔法は本来、対象に魔力を譲渡するための魔法だ。しかし、莢はこの魔法を逆流させるように発動させることで、対象から余分な魔力を発散させたのである。
「よし。完全には行かなかったけど、これなら大丈夫でしょ。」
「お見事。でも思ったより硬いね。この肉。」
「焼く前に叩きますか。」
二人は、魔法で着火した火を使い、串に刺した魔物の肉を焼いていく。だんだん焦げ色がついていき、さっきまで岩と苔の匂いくらいしかしなかった空間に、肉の焦げる香ばしい匂いが広がっていく。
「そろそろかな。」
莢は自分の分の肉を火から上げると、ハジメが止める間もなく口の中に放り込んだ。
「ちょっと!?」
「うーん…。まあまあかな?ろくな調味料もないことを考えるといける方ね。」
「いやいやいや!何事もなかったかのように食レポしないでよ!何かあったらどうするのさ!」
ハジメがまくしたてるが、莢はドウドウ、とハジメを諌める。
「俺は馬が何かかい!?」
「まあまあ、特に何もないし…っ!?」
突然、それまで何事もなかった莢の顔が強張る。言わんこっちゃない、とハジメが神水入りの水筒を渡すと、それを一口飲み、ハジメに返す。それを受け取ったハジメは呆れた顔でいう。
「全く…、もういいの?」
「うん。そこまで大した事はなかったし。…ん?」
莢は何か気になるのか、腕を上げたり、体や顔をペタペタ触る。
「どうかした?」
「なんか服がきついような気がするんだけど。」
言われてみると、彼女の身長は確かに7、8cmほど伸びている。さっきまでぴったりだった服からはへそが露出してしまっているし、少し筋肉質になっている気がする。太腿に巻いていたベルトやハーネスが体に食い込んでいて痛そうだ。それに、頭髪の白味と、毛量自体が増している。
「あ、そうだ。ステータスは、と」
莢が自分のステータスプレートを取り出しす。
「えーっと、なになに?」
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神凪莢 17歳 女 レベル:10
天職:医術師
筋力:560
体力:670
耐性:340
敏捷:830
魔力:520
魔耐:320
技能:回復魔法適正・調合[+薬物解析][+毒物解析][+分離]・医学の心得[+滅菌][+手術室]・病状解析[+映像解析][+精密検査]・適正判断[+明鏡止水][+思考速度上昇]・精神汚染耐性[+洗脳耐性]・各種武術[+適切化]・回復量上昇大・気功[+身体能力強化][+新陳代謝上昇]・胃酸強化・空歩・魔力操作・言語理解
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「な ん か ふ え た 。」
ステータスの異常な数値はもちろんのこと、技能に突然表示された[胃酸強化]と[空歩]、それから[魔力操作]。胃酸強化はさておき、空歩というのはあのウサギの固有魔法で間違いないだろう。更に魔力操作というのは魔物固有のものだ。詠唱せずとも魔法を使うことができる便利なものなのだが、王国では差別対象にでもなりそうだ。
どうやら先程の痛みは、体が再構築されるときの筋肉痛みたいなものだったようだ。きちんと処理をしてあったので命に別状もない。
ハジメも試しに食べてみるが、ハジメには何も効果はなく、ただの肉だった。どうにも自分より強くないと、食べても意味がないようだ。
強いことによる弊害は数あれど、まさかこんな形で牙を向くとは。ハジメは、後ろで莢が空歩を使って楽しそうにぴょんぴょん空中を跳んでいるのを見て肩を落とした。
そしてオロチは、その頭を尻尾で器用に撫でていた。
今回はここまでです。
ちょっとだけ魔物肉の味がグレードアップしました。というか設定これで合ってるんだろうか。一応調べては見たものの心配しかない。
うーーん。ま、わかんないものは仕方ない。というわけで今回はこの辺で。感想ご意見お待ちしております!
「なんで俺は空飛べないんだよ作者!」
いや、十分強いでしょうが。
「オロチにも機動力がほしいんだよ!なんだよ100m7秒って!」
いやほら、フォームチェンジある予定だから。
「更にタンクみたいになるんじゃあるまいな!」
ここから先言うとネタバレになるから…。
「ええーい、教えろ!」
あ、待って。アマノムラクモを担いで何を…ギャーー!?