今回は原作ヒロイン登場。
ではどうぞ!
あれからしばらくして、戦いはようやく終わった。
三人はそれぞれベルトからガジェットを外し、変身を解除する。不死鳥の戦士は糸目の黒い短髪の青年に、龍の戦士はボサついた長髪を後ろで束ねた吊り目の青年に、オロチはハジメへと姿を変えた。そんな中、白虎の戦士だけ変身を解除していない。
「赤坂さん?」
不思議に思ったハジメが戦士の名前を呼び、肩を叩いた。
その時、
白虎の戦士の体はぐらりと揺れたあとに力なく仰向けに倒れた。ハジメは宙に放り出された少女をなんとかキャッチすると、戦士の名前を呼びながら、倒れたその体を揺する。
「赤坂さん?赤坂さん!」
すると、戦士のベルトから白虎を型どったガジェットが自動で外れ、その身を包んでいたスーツが消えていく。
中からは茶髪の無精髭をはやした中年の男性が血まみれの状態で現れた。
「っ?!これ…は。」
その男性の腹はには、地面が見えるほどの大きな穴が空いており、今も血が大量に流れ出ていた。
「し、止血しないと!」
ハジメは慌てて止血をするために腹の穴に布を当てがおうとする。しかし、それを長髪の青年が止めた。ハジメは何故、という顔で青年を見上げるが、
「赤坂、お前何ですぐに逃げなかった!」
青年はひどく焦った声色で男性に問いただす。
「血に混じって毒の匂いがするぞ!全身に回っちまってるじゃねぇか!」
ハジメと細目の青年はその言葉に一瞬動きが止まる。青年がハジメを止めたのは、止血をすればより全身に毒が回ると考えたからだったのだ。
ハジメは直ぐに携帯で救急車を呼ぶ。するとその時、不意に倒れている男の意識が戻り、虚ろではあるが目を開けた。しかし彼は、ハジメ達のことに気が付いていないか、掠れた声で、話し始める。
「こん…どは、守れ…たよ。……い、ちか。……おに…いちゃん、も、…すぐ、そっ…ち……に………。」
それだけ言うと、再び瞼は閉じられ、その体からは力が抜ける。
「おい、赤坂?赤坂?!」
「赤坂さんっ!!」
「赤坂!」
彼のポケットから、一冊の手帳が溢れ落た。それは地面にぶつかるとパラパラとページがめくれ、あるページが開かれる。
そこには、中学生くらいの少年と、3歳くらいの女の子の兄妹が写った写真が挟まっていた。
そこに写っている少女は、ハジメがいま抱いている少女によく似ていた。
――――――――――――――――
「これ、食べられるのかな?」
「さあ…?」
ハジメと莢の目の前には、さっきまでサイクロプスのような魔物だったものが2体転がっていた。
いま二人がいる空間は、今までの野性味あふれる洞窟ではなく、明らかに人の手が入ったきれいなドーム上の部屋だ。
魔物を食っては倒し食っては倒しを続けること数十回。漸くたどり着いたこの部屋だったが、出口らしき扉があったので調べてみようと触れた瞬間、たった今解体されているサイクロプスたちが壁からかっこよく登場。
……までは良かったのだが、サイクロプスたちは登場シーン中に、ハジメが迷宮の各階層にあった素材で作った銃であっさりやられてしまい、今やちょうどいい大きさに切り分けられたお肉へと変貌してしまった。
二人はその肉をいつも通り下ごしらえをして火で炙り、食べてみる。
「うーん。あんまり美味しくない。」
「まあ巨人だしね。」
なんとも雑な扱い。サイクロプスたちが泣いている。
まあ、それはともかくとして、無事にボスを倒した二人はこちらもハジメが作った懐中電灯やルーペを使い、扉を調べ始めた。
しかし、扉に刻まれている魔法陣は、文献にもない程の古いもので解析することはできず、十分程調べたものの進展はほぼなかった。
「開かない…。」
「このくぼみになにかはめるのか?」
無理やりこじ開けようかとも思ったハジメだったが、ふと扉中央にある取っ手だと思っていたくぼみに注目した。よく見るときれいな半球状になっているそれは、手を引っ掛けるためのくぼみというよりかは、何かをはめるための台座と考えたほうが自然な形をしている。とりあえずさっき仕留めたサイクロプスの魔石を取り出して嵌めてみると、
「ビンゴ。これだったか。」
見事すっぽりとハマり、それと同時に重厚な音を立てながら扉が左右にゆっくりと開いていく。
「さーて何が出るかな?」
「お宝とかだと助かるんだけど。」
二人は顔を見合わせて力強く頷くと、扉の向こう側に一本、足を踏み入れた。
「ここは…」
「祭壇か?」
真っ暗だったその部屋を、懐中電灯で照らしながら構造を確かめていく。それはまるでかつて自分達が訪れた聖教教会の神殿にも似た造りであり、何本もの太い柱が規則的に並んでいる。
そして部屋の中央には巨大な立方体の、石のような何が浮いている。
「……ん?」
ハジメはその立方体の物体に違和感を感じ、懐中電灯に付いているダイヤルを回して、焦点距離をそこに合わせる。その時、
「…誰?」
声が聞こえた。それはその声はひどくかすれている。
懐中電灯の光に照らされたその立方体の中には、腕と下半身が埋まっている、少女の姿があった。
「誰か………そこにいるの?」
二人は素早くもう一度辺りを照らし、特にトラップなどの類がないことを確認すると、小声で話し合いを始める。
「罠だと思う?」
「さあ…。ただ、何が起きても不思議じゃない環境ではあるし、一概にこうだとは言えないかな。」
「だね…。で、どうする?」
「とりあえず進むしかなさそうだし、行こうか。」
「やあ。はじめまして。俺は南雲ハジメ。」
「私は神凪莢。」
近づいてみてわかったが、年齢は見た限り12、3歳程で、長い金髪にその隙間から見える紅い瞳。かなりやつれて見えるものの、十分に美しいと呼べる人物だ。
その少女は頭を巡らして二人を見ると、掠れた声で必死に助けを乞う。
「おね…がい。…助け…て…」
二人とも、こんな少女をいつまでもこの状態にしておいて、心が傷まないような非情な人間ではない。ハジメは改めて少女の状態を見て苦い顔をしているし、莢に至っては泣きそうだ。ただ、ここはトラップや罠があふれかえる大迷宮。それも前人未到の階層であるがゆえに全く情報がない。だからこそ、少女一人助けるにしても万全を期す必要があった。
ハジメが少女に向けて問いかける。
「君は何者なんだい?何故ここに封印されている?」
少女は、話す、ということ自体が久しぶりなのだろう。たどたどしく、咳混じりにはじめの問に答えていく。
「私は、先祖返りの吸血鬼…。凄い力、持ってた。ゴホッ。…だから、国の皆のために頑張った。…でも、ある日、叔父様や家臣が、私は要らないって…。ケホッ。…叔父様が、王だって…。それでも、良かった…。でも、私の力、危険だ、殺せないから、そう言って、封印、された…。」
「吸血鬼だって?300年前に滅びたはずだけど…。おっと、結論を出すのは後だ。もう一つ質問するけど、いい?」
「…ん」
「その叔父さんたちが恐れた力ってのは何だい?」
「怪我しても、すぐ治る。首、落とされてもその内治る…。ゲホゲホッ。もう、一つ、私、魔力、直接操れる…。陣も要らない」
これに二人は驚いた。これが事実ならば、彼女は実質的に不死身な上に詠唱や陣を描くなど、通常人が魔法を行使する準備段階が一切必要無く、魔法を行使するスピードにおいては右に出る物が居ないと言うことになる。
更に、
(再生能力のみで言えばネオを軽く上回るな…。魔力が必要とはいえ恐ろしいくらいに強力だぞ。)
ここまで聞き、ハジメは一応彼女がトラップや罠の類ではないことを確認した。しかし、まだ完全に信用し切ることはできないため、一応警戒は解かずにいた。
「莢さん。どうだい?」
「うん。大丈夫。この子は生きてるし、さっきの話に嘘はないよ。」
莢は技能、「映像解析」で彼女は生物であることを確認しており、更に動向の開き具合や表情から嘘を言っていないことも確認していた。彼女はハジメの問いかけに答えると、少女に歩み寄り、そっと、しかし力強く抱きしめる。
「怖かったね…。よく一人で頑張ったね…。でももう大丈夫。私達が助けてあげるから、だから、もう少しだけ待っててくれる?」
少女は始め、驚いた表情をしていたが、安心感からか、はたまた喜びからか、すぐに顔をくしゃくしゃにして泣き始めた。
それは、彼女が流した数百年ぶりの涙だった。
しばらくして。
「…見苦しいところを見せた。」
「まあしょうがないさ。」
すっか目を赤く腫らした少女が恥ずかしそうにそっぽを向く。
あれからしばらく経ち、あとは少女を石の中から助け出すだけ、という状態になってから、三人はとある問題に直面していた。と、言うのもこの立方体、魔法を使うとその魔力を霧散させてしまうというなんとも面倒な性質を持っていたのである。もっと魔力を注げばなんとかなるかもしれないが、あいにくとハジメの魔力は決して多くはない。
「しっかし…、助けるにせよどうしようか。」
「う〜ん。私は完全に専門外だし…。」
二人があーでもないこーでもないと話し合っていると、不意に少女がとんでもないことを口にした。
「…私の体、斬ればいい。」
「「……はい?!」」
二人は目が飛び出そうなほどに驚いた。それはもうとにかく。まあ助けようとしている相手に体をちょん切れと言われて、驚かない人間などまずいないだろう。
少女の話では、魔力さえあればすぐに体は再生するため、死ぬ心配は無いらしい。が、やはり人道的に考えると躊躇してしまう二人。しかし今のところそれしか方法がない。二人はさんざん悩んだあと、少女の体を切り落とすことにした。
一応言っておくが、これしか方法がないからいやいやこの方法を選んだだけで、本当は二人はこんなことはしたくない。
「ほんとにいいんだね?死んだりしない?」
「…大丈夫。そのままザクっと。」
「……超不安なんだけど…。」
戸惑いつつも、ハジメは「男は度胸!」と、剣を立方体スレスレのところで振り下ろした。
肉を切断する生々しい音とともに、立方体に埋まっていた方の少女の体からは大量の血が流れ出し、凄まじい鉄の匂いがあたりを包み込む。そして、切り落とした上半身は素早く莢がキャッチし、血まみれになることを防ぐ。
「大丈夫?!死んでない?!」
莢がそう呼びかけたその時、少女の下半身と腕の先が、あっという間に生えてきた。ハジメはおおぅ、と驚き、なるほど。確かにこれは恐ろしい力だと納得した。そして、
「…ちょっと痛かったけど…。大丈夫。…ありがとう。」
少女が二人に礼を言いながら起き上がる。一糸纏わぬその裸体はやせ衰えていたが、それを感じさせないほど神秘的な輝きに満ちていた。
「さて。」
「?」
しかし感情に浸ってはいられない。なぜなら、
「服、着ようか。」
彼女が裸だからである。ハジメは体が生えてきた時点で回れ右をしていたため何も見ずに住んだが、あと数瞬遅れていたら危なかった。
「………」
「…そうだね。とりあえずそこからだね。」
「……ん。賛成。」
なんとも言えない空気が漂うが、一人の少女を助けられたことで二人の心はなんとなく軽くなっていた。
「あ、そうだ。」
「…?」
「名前、何?」
出会ってから、自分たちの自己紹介はしたが、少女の名前を聞いていない事に気がついた莢が、鞄の中から服を見繕いながら少女にたずねる。すると、少女は少し考えてから言う。
「…名前、つけて。」
「え?もしかして、忘れた、とか?」
数百年誰からも自分の名前を呼ばれることもせず、自分を呼ぶことも無く、名前を忘れてしまったのか。しかし莢の問いかけに、少女はふるふると首を横に振る。
「…もう、前の名前はいらない。……莢たちの付けた名前がいい」
少女は期待の眼差しで莢の顔を見つめる。しかし、莢はそれを承諾しようとはしない。彼女はしばらく間をおいてから話し始める。
「……あなたが数百年間何を考えて、何を思ってここで過ごしてきたのかはわからない。
けどね。名前を捨てるってことは、これまでの自分を全部捨てるってことだと私は思ってる。名前を変えて心機一転、新しい生活を送ろうとする気持ちもわからなくはない。
だけど、あなたは本当にそれでいの?あなたは本当に過去になんの思い出もないの?」
それを聞き、少女の目が揺れる。気が付いていないかもしれないが、先程から彼女は、叔父や過去の話をするとき、に決まって少し悲しそうに顔が歪んでいた。きっと過去のことを振り切れてはいないのだろう。
しばらくして、彼女はポツリと言った。
「…アレーティア。」
「アレーティア、か。んー。それじゃあ、ティアって呼ぼうかな。」
「?」
「アレーティアだから、ティア。そのままだけど結構可愛いと思うなー。どう?」
少女は突然の提案にしばしポカンとしていたが、すぐに「ティア、ティア」と、刻み込むように呟き、最後に大きく頷く。
「気に入った。そうやって呼んで。」
「じゃあ、よろしくね。ティア。」
「…ん。」
アレーティアの笑顔はとても晴れやかで、美しいものだった。
「あのー。早く服を着ていただけませんかー。」
「「あ。」」
はーい。今回はここまでです。
ちょっとアレーティアさんの助け方がR18指定されそうなことに。いや、多分大丈夫だと思う。きっと。メイビー。
とにかく、今回でユエ改めてティアさんが仲間に加わりました。ちなみに、立方体を破壊してないのであの蠍っぽい魔物の出番はないです。
それでは今回はここらへんで。感想ご意見お待ちしております!
「いやー。流石にビビったよ。まさか体を真っ二つにしろなんて言われるとは…。」
「ねー。」
「…でもあれしか方法はなかった。」
「ティアさんがそう言うならまあいいんだけど。」
そーそー。気にしない気にしない。
「いや、他の助け方思い浮かばなかったお前は反省しろ。」
え?あの、皆さん?剣とか魔力とかそんなにこっちに向けないでー!