今回は魔法を受け継ぎまーす。
それでは、どうぞ。
あれから三人は、本格的にこの住居の散策を開始した。
まず一階から見て回り、暖炉や毛の絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、昨日見つけておいたキッチンとベッドのある部屋、そしてトイレを発見した。
人の気配は感じないが、室内の管理維持はなされているのか埃が積もった形跡はまったくなく、どの家具も、長年放置されていたような気配はない。
さらに奥へ進むとそこには大きな円状の穴があり、その淵には獅子に似た動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座していた。彫刻の隣には魔法陣が刻まれており、莢が試しに魔力を注いでみると、獅子の口から勢いよく温水が飛び出した。
「おぉ…。」
「お風呂だー!!」
墜落してから数ヶ月ぶりに入浴できそうな事に、3人、特に莢がはしゃぐ。やはり彼女も乙女。体臭やら何やらが気になっていたようだ。
二階には、書斎や工房、貯蔵庫らしき部屋を発見したが、どちらも封印がされているらしく、開けることはできなかった。
そして三階に上がると、そこには部屋が一つあるだけだった。扉を開けると、部屋の中央の床には直径7,8m程の精緻で繊細な魔法陣が刻まれていた。その魔法陣の向こう側には、豪奢な椅子に一人の遺体が座っているのが見えた。
遺体は既に白骨化しており、黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っているのが分かった。更にその手には、青白く輝く結晶体の入った黄金色の容器が握られていた。
苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、ハジメにはまるで誰かを待っていたかのようにも見えた。
「この人が反逆者オスカー・オルクスか…。でもなんでこんな所で死んでるんだろう?普通…というべきかわからないけど、こういうことをするのは寝室とかじゃない?」
「確かに怪しい…。どうする?」
「…近づいて調べるしかなさそうだね。だけど何があるか分からない。俺が行くから二人は一応逃げる準備をしといて。」
「OK、気をつけてね」
そう言うとハジメは魔法陣へ向けて踏み出し、その中央に足を踏み込んだ。その時、突如足元の魔法陣から、カッと純白の光が爆ぜ、部屋を真っ白に染め上げる。あまりの眩しさに三人とも目を細めた。
「ッ…?」
その直後、体現し難い不快感と共に、何かが頭の中に侵入。まるで走馬灯のように、今まで体験してきたことが頭の中を駆け巡る。
やがて光が収まり、ハジメ達が目を開けると、目の前に骸と同じローブを羽織った黒衣の青年が立っていた。
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」
その青年の正体は三人が推測した通り、反逆者オスカー・オルクスであった。
「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君達の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか、メッセージを残したくてね…。このような形を取らせてもらった。そしてこのメッセージが流れると言うのなら、君達は私が作った番人、ヒュドラネオを撃破したと言う事。それは即ち、いるんだろう…。ネオ、神の因子を持つ者が。」
「…!」
その言葉に三人は目を見開いた。やはり、オスカー・オルクスは、ネオを作り出す技術、知識を持っていたのだ。
「疑問に思うだろう。なぜそんな事をしたのか。なぜ君の事を知っているのか、教えよう…。我々に何があったのか、この世界に何が起きているのかを…」
そしてオスカーは語った。自分達の真実、狂った神とその子孫達の戦いの物語を。
神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。理由は様々だったが、一番の理由としてあげられるのは「神敵」だから、というものだ。遥か昔、今よりずっと種族も国も細かく分かれていた。そしてそれぞれの種族・国がそれぞれに神を祀っており、その神からの神託で争い続けていたのだ。
そんな状況が何百年と続き、ついに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、オスカー・オルクスをはじめとする「解放者」と呼ばれた集団である。
彼らは、全員が神代から続く神々の直系の子孫であるという共通の繋がりがあった。そのためか、解放者のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまう。人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促しているという事実を。
解放者のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えかね、同志達を集めはじめた。
それと時を同じくしてトータスに、並みの魔物よりも強大な力を持つ、人型の異形がしばしば現れるようになった。
それは、神々の直系の子孫である、開放者ですら十人がかりでようやく相手になる程の強さだった。
しかし、いざ倒すと黒く溶けてしまい、ろくに調べることもできないその異形。なんとか長い時間をかけて調べ尽くし、それの正体にたどり着いた。ハジメが話したあの内容だ。
「上になり得る可能性を秘めた人間、すなわち自分の立場を危ぶませる存在を消すとともに手駒にする。ヤツらしいなんとも嫌らしく、狡猾な手段だ。」
彼は、ただの記録映像であるにも関わらず、その胸の奥底にあったで在ろう怒りをひしひしとハジメ達に感じさせる。
「それから、誤解をしていると思うから行っておくが、あのヒュドラネオは、私の細胞から作り出したパーツを取り付け、ネオとも同等に戦えるように作ったゴーレムだ。安心してほしい。誰も犠牲にしたりしたことはない。」
なるほど合点がいったとハジメは納得する。あのヒュドラネオからは、生気というものを一切感じなかった。ネオというのは生物だ。故に、「生きたい」という原紙的な欲望を持っている。しかし、あれがゴーレムだと言うのなら、確かにそんな欲望、というより感情など持ち合わせてはいないだろう。
オスカーは、「話を戻そう」と言い、また語り始めた。
神の遊戯である戦争を止める。その目的はなんと、戦う前に頓挫してしまう。
解放者の目的を察知した神エヒトは教会を通じて情報操作を行い、解放者こそが神敵だ、そう認識させることで人々と解放者を争わせたのだ。
結果、彼らはその力を人間達相手に振るうことができずに敗北した。最後まで生き残ったのはオスカー達中心の7人だけであり、彼らは後世に希望を託すべくそれぞれが大陸の果てに迷宮を創り、そこに潜伏したのである。
いつの日か迷宮の試練を乗り越え、自らの力をその強者に与え、神の遊戯を終わらせることのできる人間が現れることを願いながら。
『僕達の力をどう使うかは君の自由だ。そして神の因子を持つ君も、どうかそのことを悲観せずにその力を開花させていってほしい。だが、願わくば悪しき心を満たすためには使わないでくれ。話は以上だ。聞いてくれて…ありがとう』
その言葉をきっかけに、オスカーの映像はゆっくりと消えていく。
『君のこれからの人生が…自由な意思の下にあらんことを…』
締めくくりにそう言うと、その姿は完全に消えていった。
「…なるほど。」
ハジメは遺体の前に歩いていくと、それに向けて深くお辞儀をする。
「疑ってすみませんでした。」
ヒュドラネオを始めてみたときの感情の高ぶり具合を、今考えると少しばかり恥ずかしく思うハジメ。あのときは本当にこの人物のことを敵だと思っていたが、今なら解る。彼が、自分たち「仮面ライダー」と同じように、大切なものを守るためにひたすらに戦い続けた戦士だということが。
ハジメは遺体を崩さないように最大限注意しながら指から指輪を取り外した。
「貴方の思い、この指輪とともに確かに受け取りました。」
ハジメの予想だが、この「神」というのは少なくとも時空に鑑賞することができる存在。つまり、自分たちが地球に帰還したところで、そのうち地球を支配しようとしてくるはずだ。
であれば、
「オスカー・オルクス。貴方の悲願は俺が必ず叶えてみせましょう。」
同じ戦士として、その意思を受け継ごう。
ハジメの瞳に炎が宿った。
あれからあと二人も魔法を受け継いだ。もう一度あの長ったらしい話を聞きながら。二人はうんざりした顔でそれを聞き流し流していた。
「生成魔法、ねぇ。」
「私は専門外。」
「この中で扱えるのはハジメくらいだね。」
受け継いだ魔法、その名は「生成魔法」。頭に刷り込まれた情報から照らし合わせると、錬成士のためにあるような魔法のようで、ハジメ以外には使いどころな困るような代物だった。
「俺の技能とこの魔法を掛け合わせれば、現代の地球にも負けない日用品が作れるのでは?!」
そうと決まれば。ハジメは、オスカーの指輪で封印の解けた工房に駆け込み作業を始めてしまっていた。
残された二人は顔を見合わせると、残りの部屋の探索を始めることにした。
まず、書斎では3人の一番の目的である地上への脱出の方法が書かれた資料が見つかった。
先程の魔法陣が、指輪をキーにしてそのまま地上への転送陣となるらしい。
更に他の迷宮を攻略すれば、創設者の神代魔法が手に入る事を記した資料も置かれていた。
その中に、地球に帰る事が出来る魔法があるかもしれないという事で、3人の次の目的は他の七大迷宮の攻略となった。
この部屋の他にも、工房や倉庫などがあり、それらは錬成師にとってはまさに宝の山と言えるものだった。
数時間後、ようやく工房から出てきたハジメに、二人が弱冠呆れながらこのことを説明すると、
「ごめんごめん。俺の悪いクセでね。じゃあ今後の方針について話し合おうか…」
そう言われ、莢とアレーティアも顔を引き締めた。昨日は怒涛の展開で心身共に疲れて話せなかったが、いつまでも休んでるわけにもいかない。
「俺自身は外に出て、他の迷宮に向かうつもりだ。二人は?」
「もちろん、あんたについていく。」
「ん。私の居場所はここだから。」
三人は、改めて決意表明をし、拳を打ち付ける。そして互いの顔を見渡し、ニヤッと笑った。
「さあ、このクソッタレな世界をぶち壊すぞ。」
「「おう!」」
その夜。ハジメは人工太陽の明かりが消え、二人が寝静まった頃を見計らい、一人で書斎に篭もっていた。ハジメは一冊の本をスタンドの明かりで照らしながら読んでいる。
「…もしもこの本にあることが事実だとすれば、俺たちの肉体の変質を止められる。」
そこに記されているのは、各新代魔法の簡単な説明だ。
「だが、侵食を元に戻すことは不可能か。」
零れ落ちる砂のように、時をもとに戻すことが出来ないように、変質しかけている己の肉体を元に戻すことはできない。
少し残念そうな顔をするハジメだったが、直に気を取り直し、別の本を取り出し、また読み始める。
「自分で犯した罪だ。自分で背負うさ…。」
時を同じくして、莢とアレーティアの寝室。
「あのー、ティア?もう一回言ってもらえる?」
「何度でもいう。
私を莢の妹にしてほしい。」
「あれぇ?」
何がどうしてそうなった。
はい。今回はここまでです。
ハーレムはしない予定なのでこんな展開になってしまいましたが…。これのせいで評価下がるかも、とビクビクしております。
次回はそろそろクラスメイト達の話を指定効果と思ってます。次回もお楽しみに。
感想ご意見お待ちしております!
「えーっと、ティアはだいたい300歳で、私は17歳だから…。あれぇ?」
「莢さん落ち着いて。」
「ん。深呼吸して。落ち着いて。」
「君のせいだからね!?」