今回は晩餐会をすっ飛ばしてその次の日の訓練ですね。
それではどうぞ!
「何ぃ?俺の弟子になりたい?」
青年が困惑したように言う。
「はいっ!」
青年の目の前では、ハジメが土下座をしながら「弟子にしてくれ」と頼み込んでいた。
「お前、俺が誰かわかって言ってんのか?」
青年がドスを効かせた声でそう尋ねると、肩がピクリと跳ねたものの、ハジメは一歩も引くことなくそのままの姿勢で答える。
「喧嘩をすれば負け知らず。どんな相手であろうと全力でねじ伏せる。人呼んで…」
「あー、その先は言わなくていい。」
自分で聞くのも恥ずかしい二つ名を大声で言おうとしたところをなんとか諌める青年。
ハジメはこの間も常に土下座をしている。
「ハァ…。」
その姿にとうとう折れた青年は顔を上げるように言うと、ハジメの目の前に立ち、重々しく口を開いた。
「…お前が俺の弟子になりたい気持ちはよくわかった。だから、お前には弟子になるための試験をしてもらう。」
「試験…ですか?」
青年はうむ。と頷く。
「試験内容は、格好よく『俺』って言うことだ。」
「ただ言うだけじゃない。格好よく言うんだ。」
「それが出来たなら、お前を俺の弟子にしてやる。」
はじめはしばらくぽかんとしていたが、勢いよく立ち上がると、バッと頭を下げた。
「ありがとうございます!僕、頑張ります!」
「おー、まぁ頑張れよ。」
―男の約束だ―
その約束が果たされることは、永遠に無かった。
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次の日、ハジメ達は訓練場へと案内されていた。
「俺はメルド・ロギンス。お前らの教官となった。今日からよろしく頼む。」
彼は王国に使える「王国騎士団」の団長を務める男だ。
彼はとても豪快な性格をしており、「これから戦友になるのに他人行儀にしてられるか!」と神の使徒として召喚されたハジメたちにとてもフレンドリーに接してくれている。
余談だが、メルドがこちらに来たことで団長としての仕事は副団長が代わりにやることになり、あまりの仕事の多さに目を回している副団長が度々見つかるとか。
それはともかく、今ハジメたちの手には銀色の長方形のプレートが一枚ずつ握られたいた。
不思議そうにそれを眺める彼らに、メルドからの説明がなされる。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
やたらと高性能な代物だ。メルド曰く、これはアーティファクトというゲームで言うところのレアアイテムなのだが、複製するためのこれまたアーティファクトとセットになっているらしく、一般人にも広く普及しているらしい。
各自、配布された針で自身の指に傷をつけて魔法陣に血を垂らし、所有者登録をしていく中、ハジメは指に刺そうとした針が折れてしまい、しばらく考えたあと仕方なく自身の歯で指先を噛み切って血をなすりつけた。
(頑丈すぎるのも考えものだな…。)
すると表面に文字が浮かび上がってくる。どういう仕組みなのかはメルドも知らないようなので聞かなかったが、これを見るととても気になってくるのは仕方のないことだろう。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:20
体力:30
耐性:30
敏捷:10
魔力:30
魔耐:30
技能:錬成・言語理解
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(これは…高いのか?比べる相手がいないからわからないな…)
ハジメが唸っていると、すぐそばで作業していた莢がこちらに話しかけてきた。
「ねえ、ハジメはどうだった?私のはこんな感じなんだけど。」
「ん?どれどれ…」
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神凪莢 17歳 女 レベル:1
天職:医術師
筋力:70
体力:50
耐性:60
敏捷:90
魔力:120
魔耐:90
技能:回復魔法適正・調合・医学の心得・病状解析・適正判断・精神汚染体制・各種武術・回復量上昇・気功・言語理解
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これを見てまずハジメが思ったのは、
「俺のステータス低すぎない?」
「確かに…。でも私より確実に運動神経いいはずだよね。」
莢が試しに直立するハジメを押し退けようとしてみるが、ステータス上の筋力で勝っているはずの莢が、ハジメのことを一歩も動かすことができなかったことからやはりハジメのほうが身体能力が高いことがわかった。
「うーん。もしかするとだけど…これ、俺の人間としての部分しか表示できないんじゃない?」
「あ〜。なるほどね。」
ハジメがそう推測し、自身の右の二の腕を擦る。
そこにある自分が人間ではない証拠を。
莢もそれに気が付きハジメの手を握る。一人じゃないよと言うように、その顔は優しく微笑んでいた。
そんな中、自分でステータスを確認した光輝が、率先してメルドにプレートを見せに行っていた。
「ほ~…さすがは勇者様だな!レベル1で既にステータスが三桁に到達しているとは…この技能の数も規格外にも程がある!」
「…そうですか。」
普通であれば喜んだり意気込んだりしそうなものだが、光輝はまるで自嘲でもするように笑うとそのまま下がっていった。まるで自分ではその役割に不相応だといわんばかりに。
メルドはステータスの高さに夢中で光輝の様子に気がつくことなく次々とプレートを確認していく。
「メルドさん!」
「どうだい!」
「俺らのステータスは!」
礼一達番長ズもいつものノリでステータスを見せに行く。
「どれ……。天職……番長?このチンピラ戦法と釘バット術とかいう技能も聞いたことがないな…。まぁステータスも全て高水準、技能も素晴らしいものばかりだ。これから頼りにしてるぞ。」
「「「任しときな!」」」
「なんか礼一君達らしいね。」
「アッハハハ!!ち、チンピラ戦法って……!釘バット術ぅ?ブフッ!」
「笑いすぎじゃない?」
少し離れたところで聞いていた二人だったが、3人のステータスの内容がツボに入ったのか身をよじって大笑いする莢。
なんとかそれを収める頃には全員がプレートを見せ終わっており、残すは自分たちのみとなっていた。
「あとはお前たちだけだが…大丈夫か?」
「あー笑った笑った。大丈夫ですよ。あ、これ私のステータスです。」
「ならいいんだが…。」
メルドは笑いすぎて息が切れている莢を心配しつつもステータスを確認する。
「…ほう、医術師か。」
物珍しげにそういうメルドに莢が質問する。
「医術師って珍しいんですか?」
「そうだな。さっきも見かけたが治癒師などの回復魔法に適正のある天職はそれなりにあるんだが、医療に関してここまで精通する天職はそうそうないんだ。それに戦闘用の技能もある。ステータスも高い!これは期待の新星だな!」
ほへーと気の抜ける声を出す莢。彼女は将来医者になり、自分の病院をもつことをを目指して前々から勉強しているので、彼女にとって嬉しい天職だと言えるだろう。
さて、残すところ後はハジメだけになった。
規格外のステータスばかり確認してきたメルドの表情はホクホクしていたのだが、案の定、その表情がハジメのプレートを見た瞬間「うん?」と笑顔のまま固まった
まあそうなるわな。とハジメは思う。
暫く調べていたが、やがてもの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。
「あぁその、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか…。」
歯切れ悪く説明をするメルド。
と、そこに待ってましたとばかり声を張り上げる男子生徒がいた。
「おいおい南雲ぉ。もしかしてお前、非戦闘職かぁ? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っているな。国お抱えの職人は全員持っている。」
「おいおい、南雲ぉ。お前、そんなんで戦えるわけぇ?」
彼の名前は檜山大輔。一言で言えば小者だ。
香織に惚れているため、彼女が気に掛けているハジメを目の敵にしているが、ハジメとしてはさっさと彼女を自分から引き離してほしいと思っているので彼には少しばかり期待を寄せている。
まあ、ハジメも言われっぱなしというのは癪なので、少しばかり言い返してやることにした。
ハジメは呆れたように言う。
「なんのための生産部門さ。俺にとっては天職じゃないか。」
それを聞き、メルドも「そういえばそんな話あったな…」とぼやく。今まで忘れてたんかい。
檜山はそれを聞き、逃げる気かだの卑怯ものだの罵倒してきたが、生産部門を作ったのは光輝なので文句はそちらに言って欲しいものである。
こうしてハジメは、生産部門の第一人者としての地位を確立し、他のクラスメイトたちが訓練している間、この世界のことを調べる時間を手に入れた。
ちなみに香織はと言うと、生産部門に入ろうとしたところをなんとか雫が押し止めることに成功し、他のクラスメイト達とともに訓練を受けている。
…時折背後から視線を感じるが。
はい。今回はここまでです。
礼一達が改心しているせいで檜山の小物感が増している気がする。
光輝君の変化はいかがでしょうか。この世界の光輝君は一度折れていますので、自分の救える範囲の狭さを理解しています。ついでかつての自分の浅はかさや考えのなさに今の自分を重ねて自嘲していたりします。
彼らの変化が物語にどのような変化をもたらすのか。
それは誰にも(作者にも)分からない…!
感想ご意見お待ちしております。
「ダメじゃん」
「ダメダメね。」
うるせー!わかってんだよ!んじゃもっとこっちの言うこと聞けよ!
「「え?なんで?」」
ムキー!