その前に少しホルアドでの事を書いて行こうかな。
白崎さんのヒロイン力はいかに。
「グウっ!」
身軽な鎧に見を包んだ、龍を模した仮面の戦士がハジメと礼一達を背に守りながら戦う。
しかし、その戦況は一刻一刻と悪くなっていく一方だ。それもそのはず。今、目の前の戦士は、一人で2体の異形を相手にしているのだ。
ハジメ達も自分たちが邪魔になっていることを理解し、スキを見ては逃げ出そうとしている。しかしその度に2体のうち1体が妨害をしてくるため、身動きが取れずにいた。
「おい南雲ハジメ!それを使え!お前なら使えるはずなんだよ!」
戦士がそう叫ぶ。先程からハジメの腰には戦士が装着しているベルトと同じものが巻き付いており、さらに…
『キシャアアアァァア!』
四人の足元には小さな機械じかけの蛇らしきモノが這い回っていた。
「でもこいつ言う事聞かないんです!」
ハジメが言い返すと、戦士は、2体の同時攻撃をなんとか防御しながら叫ぶ。
「そいつは前に剛が使ってたものだ!なら、あいつの弟子が使えなくてどうするんだよ!」
「そんな事…言われたって…!」
先程からハジメもなんとかその蛇を捕まえようと奮闘していたが、それはまるで自分に使われるのを嫌がるようにハジメから逃げ回っていた。
「ベルトを僕に渡したのは君じゃないか!なんで逃げるんだよ!」
わけのわからない行為にハジメが叫んだその時、
「ガハッ!」
とうとう戦士が攻撃を受け、膝をついた。
好機と見てそこに一斉に飛びかかる2体の異形。
「くっそ…!」
今の状況を一言で表すならば、まさに絶体絶命だった。
――――――――――――――――
「はー。落ち着く〜。」
「だらけ過ぎじゃない?」
現在ハジメ達は王城を離れ、ホルアドという宿場街、その中にある宿の一室にいた。何でも明日から「オルクス大迷宮」という場所で実践訓練を行うらしい。
オルクス大迷宮とは。
全百階層からなると言われている大迷宮で、七大迷宮の一つ。階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現するという。
この迷宮は、冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。
理由としては階層により魔物の強さが変化し、力量を確かめやすいからということ。出現する魔物が地上の魔物に比べ、遥かに良質の魔石を体内に抱えているから、というところなどが挙げられるだろう。
魔石というのは魔物の力の核だ。強い魔物ほど良質で、大きな物を備えており、そんな魔石は魔法陣作成の原料にもなる。
また、戦闘だけではなく、日常生活に使われる魔道具等にも多く使われているため、かなりの需要がある品だったりする。
さて、この説明からもわかるように、迷宮で行われるのは戦闘訓練だ。ではなぜ生産部門であるハジメがここにいるのか。一応メルドに確認をとってみたのだが、彼もいまいち納得していないが、詳しい説明もなかったらしく、首を傾げていた。
結局大迷宮に行くことになったハジメとクラスメイト達は、メルド団長率いる騎士団員と共に、新兵訓練によく利用する王国直営の宿屋に泊まっているのである。
ベットに寝転がりぐでーっとしている莢に、ハジメが注意すると、そこに第三者の声がかかる。
「まぁ神凪の言うことも分からなくはないけどな。」
そういう彼は清水幸利。ハジメ、莢に続く3人目の生産部門に所属している生徒だ。
なぜ生産部門に入ったのか訳を聞くと、
「いや…。異世界に来て俺tueeeeeeってのをやりたいのは本心なんだが…、あれだ。死にたくない。命は惜しい。」
とのこと。貴重な感覚が麻痺していない一人としてハジメは重宝していた。
「王城のベッドはなんか落ち着かないんだよな。」
「でしょー。」
ほら見ろ。そう言わんばかりのドヤ顔でハジメを見る莢。
まあ気持ちはわからなくもない。あそこはありとあらゆる物が豪華で、普通に生活するには少々目が痛いのである。ハジメは小さく肩をすくめると、机の上で弄っていたものを幸利へと差し出した。
「はい。お願いされてたクロスボウとショートソード、あとスコープの調整終わったよ。」
ハジメが持っているそれらの装備は、生産部門としての活動の中で、幸利とともに作り出した物だ。
どれにもオタク魂全開の面白いギミックが隠されているのだが、ここではあえて割愛する。
「お、サンキュー。」
幸利はそれを受け取ると礼をいい、自分でも引き金を引いたり、軽く振ったりして調子を確かめる。暫くすると満足したように頷き、ホルスターに仕舞うと座っていた椅子から立ち上がる。
そのまま立ち去ろうとした幸利だったが、そこにハジメのまったがかかった。彼が振り向くと、ハジメが拳を突き出して立っていた。
「生産部門同士、頑張ろう。」
ハジメのその言葉に幸利は不敵に笑う。
「ああ。あいつらを見返してやるさ。」
二人は拳を軽くぶつけ合い、互いに検討を祈ると、彼は今度こそ部屋を後にした。
それを見送ったハジメは鞄やポーチにせっせと物を詰め込み、莢もぐでぐでしながらではあるが、武器の調子を確かめたり忘れ物がないかなどを一通り確かめていた。
と、その時
ピクッ
ハジメと莢の表情が一気に固くなった。二人は顔を見合わせてアイコンタクトを送る。
(部屋の前に誰かいる。)
(解ってる。)
時間を確認すればもう深夜に差し掛かっているというのに一体誰が訪ねてくるというのか。しかも先程からあたりを伺うようにその場から動いていない。
怪しい。
ハジメはベッドに立て掛けておいた大剣とショーテルという曲刀を手に取り、ショーテルを莢に投げ渡す。
過剰な対応かもしれないが、ここは自分たちの常識が通じない異世界。この程度はしておいて損はないだろう。
二人はそれぞれ扉の前に立ち獲物を構えた。
何が出るのか。二人の間に緊張が走る。
次の瞬間、
コンコン
「南雲君?白崎です。起きてる?少し話したいことがあるんだけど。」
白崎香織?一体なぜこんな時間に。まさかストーカーが悪化して既成事実でも作りに来たか?
不安要素は多いが、とりあえず敵ではなかったので武器を下げ、それでも緊張した面持ちで扉越しに尋ねる。
「白崎香織さん?こんな時間になんのよう?」
「あ、南雲君!良かった。話したいことがあって。」
「ちょっと待ってね。」
二人は小声で相談する。
「どうする?断る?」
「いや、更に悪化するのも困るし…」
一分ほど頭を悩ませた二人だったが、結局「強行突破されても困る」という理由で彼女を部屋に招き入れることにした。
そろーっと扉を開けるハジメ。その目な飛び込んできたのは、ネグリジェにカーディガンを羽織っただけというなんとも扇情的な格好をした香織の姿だった。
バンッ!
「ふえ?」
「き・み・は・馬鹿なのかい!?年頃の女がそんな格好で外をうろつくもんじゃありませんっ!!」
「ひぅっ!?」
「だいたい君は…!」
彼女を部屋に慌て引き入れるのと同時にガミガミと説教をし始めるハジメ。それはは30分ほど続き、莢が諌めるまで止まることはなかった。
ふう、と今までの鬱憤のおよそ3割ほどを吐き出したハジメは実にスッキリとした顔をしいる。
対して香織は、自分のことを心配してくれた!と、なんとも的はずれな感動をしている。
「南雲君、ごめんね。心配してくれてありがとう。」
「君の心配なんてしてない。君がそういう格好でここに来たっていう噂が流れると俺が困るんだよ。」
「え?」
だめだこいつ。という顔でため息をつくハジメ。それを慰めるようにポンポンと背中を撫でる莢。
ハジメは気を取り直し、続ける。
「つまり、僕が君の弱みでも握ってここに連れ込んだと思われてもしょうがないことを君はしてるんだよ。」
「そ、そんなことされてないよ!?」
どんな想像をしたのか顔を真っ赤にする香織に極めて淡々と事実を述べていく。
「それを決めるのは君じゃない。周りの人間だ。第一俺は周りから嫌われてるからね。そう取られても仕方ないのさ。」
「そんな…」
いや気がつけよ、と心の中で毒づくハジメ。しかしずっとこの状態では居心地が悪いため、半ば無理矢理であるが話題を変えることにした。
「で?何か用?こんな深夜に訪ねてくるなんて相当な理由なんだろうね。」
正直なところどうでもいい用な気がしているハジメと莢だったが、ここで変に追い返すとそれはそれで妙な噂が立ちそうだった。そのためさっさと話を済ませてお帰りいただこうと話を促す。
「あ……、うん、あのね、……明日の迷宮だけど……南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官やクラスの皆は私が必ず説得する! だからお願い!」
「やっぱりね。そんなに俺は足手まとい? ……まぁ確かに生産部門に入った卑怯者だけど。」
ハジメの「ああやっぱり下らない用事だった」という気持ちをにじませた言葉に、首を横に振りながら「違うの!」と言うと、一呼吸いれてから話し始める。
「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど、夢をみて……。南雲くんが居たんだけど……、声を掛けても全然気がついてくれなくて。走っても全然追いつけなくて……、それで、最後は消えちゃうの……。」
「やっぱり足手纏いだから来ないでって言いたいんだろ。それ。」
「ち、違う!私、南雲くんのことを思って……」
「思って、何?別に君に心配される筋合いないけど。用事がそれだけなら帰ってもらえる?俺たちも暇じゃないからさ。」
「な、なら!」
「?」
「私に南雲君を守らせて!」
”守る”
その言葉にハジメは強く反応を示した。
香織はそれを見て、分かってくれたか、と安堵した表情になる。
しかし、
「それは、」
次に彼女が見たハジメの顔は、
「君が言っていい言葉じゃないっ!!」
怒りに染まっていた。
ハジメの心は荒れていた。
守るだと?その言葉を、お前が言うなっ!覚悟一つ決まっていない目をしたお前がそんなことを言う資格は万に一つもない!
守るという言葉には、たくさんの意味がある。例えば書類や宿題の提出期限を「守る」、サッカーなどのスポーツでゴールを「守る」などだ。
その中で、香織の言う「守る」は「命を守る」という意味合いのものだろう。だが、それは言葉でいうほど簡単なことではない。それこそ自分の命をかけるくらいはしないとなし得ないことだろう。
たった一つの命で届く範囲はあまりにも小さく、広げれば広げただけ薄くなっていく。だからこそハジメはたった一人、莢のことだけは守り抜くと決めたのだ。
今の香織の発言は、それを侮辱する行為に等しかった。
「自分の命をかける覚悟もないくせに!ふざけるな!守るだと?守るだと!?お前が俺をか?なめるなっ!そんな必要はない!」
立ち上がったハジメは香織を反論するのを許すことなく怒鳴り続ける。口調まで乱れるほどに激高し、それは自分自身ですら止めることができない。
「もし次そんなことを言ってみやがれ!俺はお前を「やめなさい。」ッ…。」
後ろから聞こえてきたその声にハジメははっと我に返った。下を見れば香織は恐怖からか涙を流して姿勢を崩していた。
ハジメは頭を軽く振って気持ちを切り替えると、香織の方に向き直り、今度はなるべく感情を表に出さないように言う。
「ごめん。熱くなりすぎたらしい…。でももう帰ってくれないか。」
「え…、て、でも「帰ってくれ。」」
「これ以上君の顔を見てると、…手が出ちゃいそうなんだよ…!」
見ればハジメの拳からは、は握る力が強すぎるせいで血が出ていた。
「白崎さん。ハジメも冷静じゃないの。今は一旦距離を撮ったほうがいい。」
放心状態だった香織、は莢の言葉に促されるように、部屋から出ていった。
「ごめん莢さん。」
「いいよ別に。」
しばらくして、二人は同じベットに座っていた。自分自身を制御できなかったことに情けなさを感じていたハジメに寄り添うように莢がもたれかかる。
「ねえハジメ。」
「…何?」
「私も正直、命を賭けられるかって言われたら躊躇しちゃうから、守るなんて言えない。けど、あなたと共に人生を歩む決意はある。」
それを聞いてハジメはおもう。彼女は強い人だと。彼女であれば、自分の命を預けてもいいと。
ハジメは莢の肩を抱く。彼女の顔が紅くなるが、そのままの姿勢で問う。
「…また僕が自分を見失ったら、連れ戻してくれるかい?」
「ええ。ひっぱたいてでも、ね。」
「ははっ。そりゃ心強いや。」
二人の影はしばらくの。重なり続けていた。
はーい。今回はここまでです。迷宮もぐれんかった…。
ハジメのにとって「守る」という言葉は、ある一種のトリガーとなっています。その言葉で立ち上がることもあれば今回のようにブチ切れることも。
次回は迷宮に潜りますのでお楽しみに。
感想ご意見お待ちしております!
「おい作者。文字数が少ないんじゃ無いか?他の小説だと7千文字とかもザラだぞ。」
あー。それだとちょっとモチべーションが上がらなくなるので…。
「俺の後輩の活躍をもっと解説しろよ。モチベなんぞほら、あれだ。ノリで乗り切れ。」
えぇ…そんなアバウトな。
「いいからやれ!」
無理ですってー!