第10話
鎮守府に配属になってから2週間が経過した。取りあえず警備の順路も頭に叩き込めたし、ここに所属する艦娘達の名前と顔も一致するようになったし、今のところ俺の仕事は問題だろう。
艦娘達や他の軍人達とも取りあえず良好ないし無難な関係を築けている。取りあえずしばらくの間はこんな状態が続くだろう。
そう思っていた時期が、俺にもあった。
今日、俺はそれまでと特に違いのない一日を過ごしていた。朝に起きて身なりを整えた後は基地内の巡回。その途中で港湾によって出撃する艦娘達を見送る。それから警備の任務を数少ない女性軍人に引き継いでから間宮食堂で食事をとる。
朝食を食べ終えてからは訓練と勉強の時間となる。ともかく効く効かないは置いとくとしても深海棲艦に砲撃を当てられなきゃどうしようもない。そして、艦娘達による海戦についても勉強しなければ沿岸防衛時に艦娘達の足を引っ張りかねない。
そういうわけで俺は特訓を一通りこなした後に図書館の中にある自習室で勉強をしていると、不意に肩を叩かれた。
「チヌさんお勉強ですか?」
そう言ってきたのは香取であった。
「ああ。俺はド素人だからな。香取は遠征から帰ってきたところか?」
「はい。皆がきちんとしてくれたおかげで、今日も無事に遠征を終えられました」
そう言って笑顔を浮かべる香取。なんでも香取は練習巡洋艦という艦であり、駆逐艦や軽巡達への指導役という立場らしい。まぁ、見た目からして教師みたいな感じはしてたが、確かに駆逐艦を率いて遠征に行く姿は教師として生徒を引率してるような感じがしてる。
「もしよろしければ、私もお手伝いしましょうか?」
「それは助かる、ちょうどわからないところが……」
俺がそう言おうとした時、不意に大音量の警報が鳴り響いた。
「この警報は?」
「敵襲です、急いで司令室に向かいましょう」
そう言うと、香取は先ほどの優しい態度から一転して厳しい表情を作り、図書室から出ていく。俺も急いでその後を追った。
司令室に到着した俺の目の前には難しい顔をした提督。そして、香取と、香取と一緒に帰ってきた艦娘、暁、響、川内に、普段工房に籠っている明石、そして今日の待機組であった羽黒、青葉の姿があった。
「先ほど、近海を巡回していた第三艦隊から通信が入った。空母を含む一艦隊がこの鎮守府に向かって来ているとのことだ。後1時間もしないうちにこの鎮守府に到着するだろう」
第三艦隊の今日の編成は……確か黒潮、大井、北上だったか。よくまぁ向こうからの攻撃を受けずに済んだもんだ。
「羽黒を旗艦として編成を組み、至急防衛の為に出撃してくれ。明石、チヌの二人には対空装備の上で鎮守府で待機だ」
「了解しました」
提督の指示に全員が敬礼で答えると、すぐに司令室を後にして出撃準備を整える。そんな中、俺と明石は武器庫に向かう。
「いやぁ、私工作艦だから敵と戦っても役に立ちそうにないんですけどねぇ」
「そんなの言ったら俺はどうなるんだよ。そもそも俺が装備できる対空装備あるのか?」
武器庫に到着した俺達は装備を整える。と言っても用意するのは明石で、俺は明石が装備を出してくるのを待つしかないのだが。
「えーと。取りあえず7.7mm機銃ですね。後は単装砲で対処してもらうしかないです。すみません、まだチヌさん用の装備が作れてなくて……」
そう言って明石が渡してきた機銃を取りあえず装備する。元々7,7mm機銃は俺にも装備されてた装備だったおかげか、使う分に不自由はなさそうだ。
「私のほうは……こんなもんでしょうか」
そう言っている明石のほうを見てみると、なんかやけにごつい高角砲やら連装砲を装備していた。やっぱり工作艦って言っても艦娘は艦娘か。ちなみに、彼女は今、普段着ているツナギじゃなくてセーラー服を着てる。
「じゃ、行きますよ」
「ああ」
こうして俺は、この鎮守府に来てから初めての実戦に赴く事になった。