艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第100話

 鎮守府に戻った俺たちは急ぎ提督へレ級遭遇の報告を行い、対応に追われることになった。ビスマルクを初めとした負傷した艦娘に入渠させ、俺と川内が提督へ直接報告を行う。本来なら川内も入渠させるべきなんだが、負傷が比較的軽い事から、俺と共に報告する事になった。

 

「……」

 

 提督への報告を終えた後、俺達は入渠の待機部屋で順番を待っているが……川内がチラチラとこっちを見てきてる。理由は……まぁ、わかる。

 

「……ねぇ、チヌ。怒ってる?」

 

「……川内に怒ってはいない。あの状況だと……確かに撤退するのが正解だ……怒っているのは……!」

 

 俺はちゃぶ台に拳を叩き付けていた。叩き付けた部分が砕けて大きな音を立てるが、知ったことじゃない!

 

「怒っているのは俺自身の弱さだ! 俺が……俺がもっと戦えていたら、俺が殿になれていた! ヲ級を置いていく事なんて……そんな事……」

 

 今回ばかりは本当に自分の弱さに反吐が出そうだ。あの状況では早めに俺を捨て石にして逃げるべきだった。だが、勝てるかもしれないという甘い考えがその進言を、行動を遅らせた。その結果ヲ級が犠牲になんて……。なんて愚かなんだ俺は!

 

「……チヌ、それは言っちゃダメだよ。チヌがそんな考えをしたら、ヲ級が悲しむ……私も悲しいよ」

 

 叩き付けた拳を川内が握るが……俺の心が晴れる要因にはならない。

 

「チヌ、そのちゃぶ台の代金は君の給料から引いておくぞ」

 

 不意に聞こえた声の方向を向くと、そこには提督の姿があった。

 

「提督? 何の御用でしょうか?」

 

「様子を見に来た。チヌが荒れているんじゃないかと思ってな。それと命令だ。入渠が終わり次第提督室に来るように。それまで荒れたりなんてするなよ」

 

「……了解しました」

 

 提督の言葉に頷くと、提督は部屋を出ていく。……一体何の用事なのだろうか?

 

「……川内、もう大丈夫だ。だから手を離してくれ」

 

「ダメ。大丈夫だと思えるまで離さない」

 

 川内にそう伝えるが、結局入渠するまで川内に手を握られ続ける事になった。まぁ、また何かに八つ当たりされたら川内もたまったものじゃないだろうし、俺が悪いんだから文句は言えないんだが……。

 

 

 

 入渠を終えた俺が提督室に赴くと、提督が難しい顔で俺を迎えた。

 

「来てくれたなチヌ。……さて、呼んだ理由はわかるな? 次の作戦についてだ」

 

「……はい」

 

 戦力的に考えれば俺は出撃できないはずだ……。ならばなぜ俺を呼んだんだろうか?

 

「……件のレ級だが、先ほどこの鎮守府への進撃が確認された。そしてその中には……ヲ級もいる」

 

「……では、ヲ級は……」

 

「君が彼女を鹵獲したのと同様に鹵獲された。とみていいだろう。そして、上層部に報告したところすぐに返事が来た。内容は……ヲ級を再鹵獲せよとのことだ」

 

 その言葉に俺は体に力が入る。再鹵獲。つまり……俺が、ヲ級をもう一度鹵獲するということ。今回の作戦の要になると言うこと。

 

「……チヌ、これは君にしかできないことだ。ヲ級を連れ戻して来い」

 

「了解しました!」

 

 俺は敬礼をしつつ返事する。これは汚名を挽回するチャンス……いや、違う。俺の汚名なんてどうでもいい。今俺がやることはヲ級を取り戻すこと。それだけだ。

 

 

 

 提督から命令を伝えられた俺は急ぎ明石の元へ向かう。先の出撃で水上バイクはかなりの損傷を受けたはずだが、その修理等はどうなっているのかを確認しなければならい。水上バイクが使えなければ話にもならない。

 

 工廠に着いた俺が明石を探して奥に入ると、そこには水上バイクをチューニングしている明石の姿があった。

 

「明石、水上バイクはもう直ったのか?」

 

「チヌさん! もう動いて大丈夫なんですか!?」

 

 声をかけると明石が驚いた顔で俺のほうを見てくる。

 

「入渠はもう終わった。それより提督からヲ級再鹵獲の作戦が通達されてると思うが、水上バイクは動かせるか?」

 

 俺が聞くと、明石が申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「すみません、チヌさんが使っていた物は損傷が酷くて作戦予定時刻までに修理するのは無理です。ひとまず予備で作ってた物を至急動かせるように調整しているところです」

 

「こっちは作戦予定時刻に間に合うのか?」

 

「はい。こちらならなんとか……」

 

「それなら問題ない。邪魔をして悪かったな」

 

「ま、待ってください」

 

 工廠を後にしようとした俺に明石が声をかけたと思うと、彼女は部屋の奥に行き、少しして見慣れない妖精を連れてきた。

 

「この子たちを連れて行ってください」

 

 そう言って明石が差し出したのは、安全ヘルメットを被っている三人の妖精だった。

 

「明石、この妖精達は?」

 

「この子たちは応急修理要員。戦場で致命的な損傷を負ったときに一度だけ艤装を修理する力を持っています」

 

「……それは重要な妖精じゃないのか? 俺より他の艦娘に……」

 

「……相手はレ級で、チヌさんは作戦の要です。貴方がやられたらそれでお終い、例え敵を全滅させても私達の負けなんです。今回は四の五の言わずにつれて行ってください!」

 

 その剣幕に思わず俺は妖精を受け取る。三人とも俺の手の上で任せろと言わんばかりに張り切っている。

 

「いいですかチヌさん! 私は時間までに全力で水上バイクを万全の状態にしますから、チヌさんは絶対にヲ級を連れて、生きて帰ってきてください! 例えヲ級を連れて帰ってきても、貴方が死んだら意味がないんですからね!」

 

「あ、ああ。わかっ……た」

 

 剣幕に押されながら返事すると、明石は話は終わりと言わんばかりの勢いで水上バイクに向き直り、調整を再開する。俺はもう声をかけることもできず、妖精さんを肩に乗せて工廠を後にした。

 

 

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