艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第102話

 出撃した俺達はそのまま敵の部隊に向かって進軍する。今回、第一艦隊には榛名、ビスマルク、飛鷹、足柄、ヴェールヌイと言った、俺を除く鎮守府の最高のメンバーが揃えられている。第二艦隊もガングート、不知火、黒潮、川内、羽黒と言ったレギュラーメンバーで占められている。……これで作戦が失敗するようなら、俺の不手際以外にありえないだろう。

 

「……チヌ、絶対にヲ級を連れて帰るわよ」

 

 物思いにふける俺の後ろから飛鷹が声をかけてきた。

 

「わかってる。だが……飛鷹、大丈夫なのか? ヲ級の実力は……」

 

「わかってるわよ。だから今回は爆撃機は一機もなし。すべてが制空権を確保するための機体だけ。私は制空権を取られないようにだけ尽力する……それでもいけるかわからないけど……例え書類上だけでもあの子は私の妹よ。負けるわけにはいかないわ」

 

「……そうだな」

 

 飛鷹の決意に満ちた表情を見て、俺も改めて気を入れなおす。

 

「あら、二人だけで決意表明? 私も混ぜなさいよ」

 

「私も混ざろうかしら。ねぇ響」

 

「そうだね、二人だけでなんてズルイよ。榛名もそう思うだろ?」

 

「勿論です。皆で作戦を成功させましょう」

 

先を行く四人からも声をかけられる。全員がこの作戦の成功を信じているような自信に満ちている。

 

「勿論よ。チヌも、絶対に成功させるわよ」

 

「ああ、勿論だ」

 

 全員の言葉に俺は自分が勇気づけられるのを感じる。……そうだ、弱気になっている場合じゃない。俺が弱気になっていてどうする。

 

「! 電探に反応があります!」

 

 不意に聞こえた榛名の言葉に全員が進軍を止め、飛鷹が偵察機を飛ばす。程なくして戻ってきた偵察機の報告を元に進路を進むと……居た。敵の艦隊だ。数はそんなに多くはない。だが、遠目からでもわかる。レ級と……ヲ級が居る。おまけに、数が少ないとはいえ、他も戦艦、重巡が二隻ずつだ。

 

「数は多くないね。こちらも第二艦隊と共に攻撃すればなんとかいけそうだ」

 

「そうね。これならある程度余裕をもって……」

 

 ヴェールヌイとビスマルクが少し安堵の様子を見せていたが、そこに榛名が驚きの声を上げた。

 

「第二艦隊より入電! 敵艦隊の奇襲を受けてそちらに対応中との事です!」

 

「……やるじゃないの。仕方がないわ榛名。私達だけで行きましょう」

 

「そうですね。全艦、攻撃開始!」

 

 榛名の声を合図にこちらから攻撃が開始され、向こうからも即座に反撃が飛んでくる。俺は前回と同じく回避と牽制に専念する。

 

「クッ……敵の艦載機が多い……! 皆、注意して!」

 

 後ろから聞こえた飛鷹の悲痛な声に視線を上に向けると、そこには双方の艦載機が入り乱れている様子が映った。だが、こちらが押されていると言うのは俺の目から見ても明らかだ。まずいな、このままじゃ制空権を取られる。

 

「! クソッ!」

 

 不意に敵艦載機の一機がこちらに降下してくる。反射的に機銃を撃つが回避され、敵の爆撃が落とされる。それを間一髪で回避し、今度は主砲を撃ちこみ、なんとか撃墜する。だが、その間にも新しい艦載機の爆撃が空から降ってくる。これじゃぁヲ級の所に行くどころじゃないぞ!

 

「どうする……!」

 

 ともかく回避に専念しつつ戦況を見るが、やはりこちらが劣勢だ。榛名とビスマルクが主軸となってなんとか敵を押し止めているが、やはり敵の戦力が高い。それにレ級が厄介すぎ……ん!?

 

(レ級の姿がない!?)

 

 榛名達が戦っている相手は他の戦艦だ。それならレ級は一体どこに……!

 

「! チヌ! 前見て!」

 

 飛鷹の声に咄嗟に前を向くと……レ級が突っ込んできてる!?

 

「……アッハハハッ!」

 

 放たれた砲撃を慌てて避けるが大勢が大きく崩れる。その隙に接近してきたレ級が俺の両手首を掴んできた。

 

「……シネ!」

 

俺が反応するよりも早く、レ級の尻尾の頭部が俺の左肩に噛み付いた。そのまま食いちぎらんばかりに力が籠められるが、俺の装甲を破るほどの力はなさそうだな。

 

「こ……のお!」

 

 俺は掴まれたまま、ハンドルから手を放すとレ級の腹にパンチを叩き込んだ。

 

「……ガ……!」

 

 レ級が怯んだ隙に、今度は尻尾の顎を掴むと強引に開かせる。そしてその大口の中に砲撃を叩き込んだ。

 

「……! オ……マエ……!」

 

「はあああ!」

 

 更に右の拳レ級の顔面に叩き込み、体勢を崩した隙に主砲を叩き込む。その衝撃に離れそうになるレ級を左手でしっかりと掴んで離れるを阻止する。大きなダメージはないが相手のバランスは崩れた。このまま畳みかけ……!

 

「ガッ、アアアア!」

 

 背中を、腕を熱と痛みが貫く。思わず後ろを振り向くと、そこには敵の艦載機。そして、その隙に俺の手からレ級の手が離れて……。

 

「……オマエ……!」

 

 声とともに放たれた砲撃が俺に直撃する。その痛みと衝撃に俺の意識は吹き飛びかけるのが逆に引っ張り戻される。だが……ダメか……体が動かない。装備も……ダメ……か。

 

「……ヨクヤッタネヲ級」

 

 バイクの上に倒れ伏す俺の頭を掴み上げ、レ級が笑う。そしてその後ろには……いつの間にかヲ級の姿があった。

 

「ヲ……級……」

 

 俺を見つめるヲ級の目には最初のころに見た時のような冷たい印象しかなく、その右目には……青白い炎が燃え上がっている。

 

「……ヲ級、ドウ? お前を鹵獲したやつだよ。実力ハ大シタ事ハナカッタナ」

 

「……」

 

 レ球の嘲笑に反応することなく、ヲ級は俺を見てくる。く……手を伸ばせば届くのに……! だが、もう……体は……。

 

(……?)

 

 そんな中、俺の体の中に違和感を感じた。僅かながら痛みが引き、体が、主砲が動く。……そうか、これが応急修理要員の力か。

 

(……だが、どうする? この状況で俺ができること……)

 

 相手は油断しているとはいえ、背中の刀を抜いて切り付けるのは隙が大きい。主砲で砲撃しても大したダメージを負わせられるとは考えにくいが……。だが……ヲ級の頭の帽子。あれなら……。

 

「……さぁ、コイツヲ殺して、他ノヤツラモ轟沈させにいく?」

 

「……!?」

 

 レ級がよそを向いた瞬間、俺は残っている全ての力を主砲に込めてヲ級の帽子に砲撃した。

 

「! ……オマエ!」

 

 レ級が反射的に俺の顔面を殴るが、逆に痛がっている。だが……もう俺に反撃の力は残っていない。主砲もさっきの砲撃の衝撃に耐えきれずに煙を上げているし……なにより体がもう動かない。目が霞んで、ヲ……級……は?

 

「……」

 

(ダメ……か)

 

 ヲ級の様子は何も変わらない。帽子から煙を吐いているが……それだけだ。それ以上の変化は……見えない。作戦は……失敗……か。

 

「……フン、悪足掻きしちゃって。サァ、ヲ級。殺し……いや、やっぱり殺すのはやめる? なんか惜しくなってきたなぁ。どうしよう?」

 

 レ級が何か悩んでいる間にヲ級が俺の正面に来る。そして……彼女の右手が俺の肩を掴み……。

 

「……! な!?」

 

 レ級が驚きの声を上げると共に、艦載機の爆撃が彼女を襲う。そして、ヲ級はバイクのハンドルを掴んでエンジンを動かすと、俺ごとバイクを牽引し始めた。

 

「……チヌ、チヌ! 生きてる? 大丈夫?」

 

「ヲ……級……?」

 

 聞こえてくるヲ級の声は、暖かさに満ちた……俺が知っている彼女の声だった。これは……まさか……。

 

「……ゴメンね……ありがとう」

 

 ヲ級のその声が聞こえたが……それに反応することはできなかった。目が霞み、何も聞こえなくなっていき……俺の意識は遠くなっていった。

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