提督室に到着し、中に入ると提督と榛名の姿があった。
「三式中戦車チヌ、治療完了しました」
「ああ、お帰りチヌ。今回も無事に帰ってきてくれて良かった……そして、ありがとう。君のおかげで作戦は成功した」
「チヌさん、本当にお疲れさまです」
そう言って二人は頭を下げる。その行動に俺は慌てて顔を上げるようにお願いする。
「提督、榛名。どうか顔を上げてください。私は提督の命令を遂行しただけです。頭を下げていただくような事は何もしておりません」
「確かに、チヌにとっては命令を遂行しただけかもしれない。だが、今回君の行動はそれ以上の成果を上げたんだ」
提督の言葉に俺が聞き返そうとしたとき、廊下から何かが走るような音が聞こえてきた……と思ったら、ドアが勢いよく開かれ、その音に振り向いた俺の視界に映ったのは……。
「レ級!?」
今回の戦いにおける敵の旗艦であるレ級の姿に俺と不知火は反射的に構えようとする。だが、俺達が行動を起こすより早く、レ級は俺に向かって飛びついてきて……。
「やっと起きたんだね。遅いよ」
「な、なにを……!」
突然のフレンドリーな言葉に戸惑っていると、ヲ級がレ級の肩を掴んで引っ張り始める。
「……離れてレ級」
「いいじゃんヲ級、僕は彼に鹵獲されたんだよ。鹵獲したんだからちゃんと世話してもらわないと」
「……いいから離れて!」
そう言ってヲ級は力一杯レ級を引っ張る。それに渋々と言った感じでレ級が離れたが……まさか……。
「はぁ……はぁ……なんて速さ……」
「ちょっと……陸でもこれなの……!?」
「冗談……じゃないわよホント……!」
そうこうしていると足柄、川内、ビスマルクが息を切らせながら提督室の中に入ってきた。
「……提督。まさか……」
「そうだ。あの戦いでレ級は降伏し、鹵獲された。……反省房に入れて、三人に見張りを頼んでいたはずなんだが……」
「ふふん、あんなの艤装がなくても壊すぐらいわけないよ。さぁチヌ、これからよろしく頼むよ。何せ君は僕を鹵獲したんだ。鹵獲した以上、最後まで面倒は見てもらうからね」
そう言ってレ級は笑みを浮かべる。それは海上で見た笑みとは違う、人懐っこい笑みだった。
「……あー……と。提督、上層部はなんと?」
「……レ級を正式に鎮守府に所属させよとの命令だ。世話はチヌに任せる」
そう告げる提督の顔からは多少の疲労感が見えた。……まぁ、仕方がないだろう。相手はレ級だ。もしも暴れることになったら……。
「なんだ、僕が暴れるか心配してるの? 大丈夫だよチヌ。僕は僕とヲ級とチヌに危害が加わらない限りは暴れたりしないから」
「……本当だろうな」
俺が懐疑の視線を向けると、レ級が答えるより先にヲ級が答えた。
「……それは大丈夫だと思う……レ級が鹵獲されてるのは確かだし……」
「そう言うことだよ。チヌ、宜しく頼むね」
そう言って笑みを浮かべるレ級に、俺は今後のことを考えてため息をつくしかできなかった。