艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第105話

あの戦いから3日が経過した。今、俺は家でレ級からの調書で得られた情報を纏めていた。

 

(……こうして書き出すと、凄い事が書かれているな)

 

 ①レ級がヲ級を鹵獲したのに使用したのは、近くに居たヌ級を殺して奪った頭部の艦載機収納スペースであり、それを被せたのだという。

 

 ②レ級は戦いの最中、俺からの攻撃を受けるたびに俺を殺す気持ちよりも俺を生かそうとする気持ちが沸いていたらしい。そして、徐々に大きくなるその気持ちに従い、降伏したという。特にそれが顕著に表れたのは、尻尾の口に主砲を受けたときとの事。

 

 ③レ級は海を気ままに彷徨っている間に鹵獲されたヲ級の話を聞いて面白半分で今回の行動を起こしたと言っており、深海棲艦による組織的な攻撃ではないとのこと。

 

 ④上位の深海棲艦は下位の深海棲艦を従えることができると言う。レ級は元々一人で行動していたが、今回の行動のために近海に発生していた深海棲艦の中から使えるやつを選んで従えていたらしい。再鹵獲されたヲ級もその力によって従えられていたが、現在は従えることはできないという。これは他の深海棲艦に対しても同じである。

 

 ⑤深海棲艦が陸を攻撃するのは本能的なものであり、全ての深海棲艦は行動の根幹にそれがあるという。

 

 ⑥ヌ級の帽子を被った時、ヲ級は自分の心が俺に鹵獲される前に戻っていったと自供。それでもある程度の自我はあったらしいが、それ以上に深海棲艦として行動する殊に疑問を抱いていなかったらしい。俺の主砲を帽子に受けた途端にその心は消えたらしい。

 

⑦レ級の戦闘力を検証したところ、この鎮守府の最高メンバーによる第一艦隊とほぼ互角にやりあえる程の戦闘力が確認された。これは他の鎮守府にあるレ級との戦闘記録と比べると、それよりも戦闘力が高いとされている。また、ヲ級の戦闘力も計測したところ、こちらはフラグシップ級以上と計測されており、敵に鹵獲された時の危険性が増したと言えるだろう。

 

 ⑧これまでの経緯から推測するに、深海棲艦の象徴とも言える、あの巨大な口の部分に攻撃を行うことが鹵獲の必要条件と思われる。ただし、これまでの戦闘の中でも同様の部位への攻撃を行っても鹵獲を行えなかった例のほうが多数であるため、要検証と言えるだろう。

 

 ⑨フラグシップの目からでる青い炎は触れても熱を感じず、何かを燃やすこともない。今現在はヲ級の感情の高ぶりによって現れたりしている。

 

 

 

 

「……前にヲ級から聞いた内容と被る部分もあるが……改めてみるととんでもない内容だよなぁ……」

 

 書類に書き出した内容を見て俺はため息をつく。そうしていると、不意に後ろの扉が開く音がして誰かが入ってきた。

 

「ねぇチヌ。一緒に遊ぼうよ」

 

 そう言って俺の背中に引っ付いてきたのはレ級だった。犬みたいに尻尾を振ってるが、大きさが大きさなので床に当たるたびに大きな音を立ててる。

 

「仕事の最中だ。後にしてくれ」

 

「仕事を後にしても良いじゃないか。相手してよ」

 

 しつこく俺の背中に引っ付いてくるレ級をどう対処するか考えていると、別の気配が部屋の中に入ってきた。

 

「……レ級、チヌの邪魔……離れて」

 

「こらぁ、レ級! こっちきなさい!」

 

 ヲ級と酒匂がそう言ってレ級を引っ張るが……レ級はしっかりと俺の背中にしがみついて離れようとしない。

 

「なに? 別に急ぎの仕事でもないんでしょ? 僕の証言を纏めてるだけなんだから」

 

「……はなれ……て……!」

 

「はなれな……さ……い」

 

 後ろを向くと、ヲ級と酒匂がレ級の尻尾をつかんで引っ張っているが、レ級は抵抗を続け……やがて、コルク栓が抜けるような音と共にレ級の尻尾が抜けて、ヲ級と酒匂が後ろの壁まで転がっていった。

 

「あ~あ、僕の尻尾が抜けるようになったのは知ってるでしょヲ級。何やってるの」

 

 そう言ってレ級は俺の背中から離れて、ヲ級と酒匂から尻尾を回収すると、そのまま元の場所に当てる。すると音もなく尻尾はレ級の胴体と一体化した。

 

「……改めてみるとスゴイ光景だな、それは」

 

「僕も驚いてるよ。まさかチヌに鹵獲されてからこんな事ができるようになるなんてね」

 

 レ級曰く、俺が鹵獲する前はこんな抜けるようにはなってなかったらしい。これも、あの口の部分が無くなった影響なのだろうか?

 

「……取りあえず、俺はもう少し仕事があるから、構うのは後にしてくれ。ヲ級、酒匂、悪いが少しレ級の相手をしててくれ」

 

「……ほら、チヌもこう言ってるから」

 

「行くわよ、レ級」

 

「チェッ、わかったよ」

 

 二人に手を引かれてレ級が部屋から出ていく。やれやれ、やっと仕事に専念できるか。

 

(しかし……今の状況を考えると家の改築が施されて本当によかったな)

 

 今現在、家は前の6畳一部屋に台所とトイレ、風呂がついている形のものから4畳の俺の部屋。10畳の居間、それに台所、トイレ、風呂がつく形になった。以前から艦娘の私物やらなんやらが多くなって困ってきていたので増築をできないか明石に聞いてはいたが……まさか一日で増築が終わるとはな。妖精さんの力を改めて目の当たりにすることになった。

 

(……とはいえ、レ級は反省房を艤装なしで破壊して脱走する力の持ち主……何やってくるかわからないし、やっぱり相手してやるか)

 

 纏めている途中であったが、俺は書類を片付けると居間へ移動してレ級達の相手をしてやる。しかし……レ級か……。改めてとんでもないやつを鹵獲したものだ。こいつの存在が何か波乱を起こさないといいんだが……。

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