艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

15 / 111
第15話

 結局、朝食を終えた俺たちは電車やバスを使って、大体1時間程で街に着いた。

 

「あー、街も久しぶりねぇ。さぁ、今日はどう遊ぼうかしら」

 

「予定はちゃんと立ててるよ、暁」

 

 街に来た途端、二人のテンションが上がる。まぁ、年頃の娘のメンタルなんだったらそうなんだろうなぁ。私服も色々気合が入っているのはわかるんだが……俺には暁がデニムジャケットにワンピース、響がフルソンとワンピースだって事ぐらいしかわからない。正直ファッションなんかそんな興味ないしなぁ。

 

(しかし……街か……最初の頃を思い出すな)

 

 一方、俺の脳裏に浮かんだのは、生まれてからあの港町に来るまでの間に行ったいくつかの大きな街だった。まぁ、あの頃の俺は碌な常識もなかったから、苦労した記憶しかないんだが。

 

「で、最初に行くのは確か映画館だったか? 早く行った方が良くないか?」

 

「そうだね。早めに行こうか」

 

「わかったわ。でも響、一体どんな映画見るの?」

 

「それは行ってのお楽しみだよ」

 

 そう暁に返した響。その表情、声音に、普段見ない何かを感じたのは……きっと、俺の気のせいじゃないだろう。

 

 そして、その予想は映画館に着いた時の暁の反応で気のせいじゃない事はわかった。

 

「え、ひ、響……これ……見るの?」

 

「? そうだよ暁。けっこう面白いらしいよ」

 

 二人がそう話している前にある広告の映画……それは所謂ゾンビ物だった。

 

「で、でも、本当に見るの? ほほ、他の映画でもいいんじゃ……」

 

「でも、他の映画ってよくわからない人間ドラマとかだよ? こっちのほうがわかりやすくていいと思うけど……もしかして暁、怖いの?」

 

「な、なによ! 一人前のレディがこんなの怖がるわけないじゃない! さっさと行くわよ二人とも」

 

 そう言って一人で映画館の中に入っていく暁。取りあえず俺と響も後に続き、料金を支払ってポップコーンとコーラを購入すると、そのまま上映室に入った。

 

「えーと席は……あそこか」

 

 俺達の席はちょうど前後左右から見て真ん中らへんだった。そこに左から俺、響、暁の順番で座る。

 

「もうちょっと時間があるね。チヌ、先にトイレ行きたいから荷物見ててくれるかい?」

 

「ああ。暁も行っとけよ」

 

「わ、わかってるわよ」

 

 二人を見送ると、俺はパンフレットに目を通す。うーん、港町のレンタルビデオ屋でこういうのを借りた事はあったが、見てもどうもよくわからないんだよなぁ。

 

 しばらく適当にパンフレットを眺めていたら二人が戻ってきた。交代で俺もトイレに行って戻ってきたら、ちょうど映画が始まる頃だったが。

 

(あれ、響の前のやつでかいな)

 

 席は微妙に空いてはいたが、よりにもよって響の前に座っていたのはそこそこ身長のある男だった。

 

「響、俺と席交換するか?」

 

「良いのかい? 助かるよ」

 

 こうして俺と響が席を交換してると部屋が暗くなって映画が始まった。そして最初の大量の他の映画の予告を適当に見てから本編が始まった。

 

(……うーん)

 

 見始めてから30分程で俺は飽きてきていた。そもそも、俺にはこのゾンビによる恐怖ってのがよくわからん。筋肉の制御がきかなくて常にフルパワーで恐怖心もないってのは、まぁ突撃兵としては優秀だけど、そんなの長続きするはずがない。数日もしないうちに自分の筋肉の力に耐えきれず体が崩壊するのが目に見えてるし、そもそも突撃するしか脳のない輩なんか砲撃で吹き飛ばすなりひき殺せばいいし。

 

 にしてもこのゾンビってのが良くわからん。なんでこんな動きが遅い癖に力だけあるんだ? こんな動きが遅いって事は体の筋肉組織だって相当やられてるはずだ。しかも血液が通ってないって事は体に栄養補給もできてないはずなのに、どうして延々動いているんだ? どう考えても数日もすれば腐ってまともに動けないだろ。一か月もする頃には全滅してると思うんだが……。

 

 そんなことを思っていると、不意に俺の右腕が掴まれた、視線を横に移すと、暁が俺の腕を掴んでた。あ、怖いんだな、やっぱり。

 

「怖いなら先出てるか?」

 

「こここ、怖くないわよ! い、一人前のレディは……ひい!?」

 

 暁がそこまで言ってた時、ちょうど主人公グループの一人がゾンビに襲われて食い殺された。それを見た暁がもはや取り繕うこともできないのか、俺の腕にしがみついて必死に目を閉じている。

 

(ん?)

 

 ふと俺が反対側に目を向けると、響も俺の腕を掴んでいた。

 

「……怖いなら外出るか?」

 

「いや、大丈夫だよ。でも、このまま掴ませておいてくれないかい?」

 

 そう言って、響は更に力を込めて俺の腕を掴んでくる。結局俺は、映画が終わるまでこの二人に腕を掴まれたまま過ごす事になったのだった。怖いなら見なけりゃいいのに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。