「うう……もう絶対に見ないから!」
「そんなに怒らないでよ暁」
映画が終わり、休憩スペースで暁はふくれっ面をし、響がそれを宥めている。どうも相当怖かったようだな……まったく、何が大人のレディだか。
「暁、次はお昼を食べて、それからお買い物だよ。色々買いたいものがあるって言ってたじゃない」
「うう……そうね。買い物しましょう。映画なんてなかったのよ」
どうやら気持ちの切り替えをしたようだ。まぁ、落ち込まれたままってのも困るから助かるが。
「で、どこで飯にするんだ?」
俺が聞くと、響が少し考えて上を指さす。
「えーと……うん、ここの最上階がレストラン街だからさ。そこで先に食べようか」
「ああ、わかったよ。暁もそれでいいか?」
「うん」
こうして俺たちは近くのエレベーターを使い、最上階に上がる。エレベーターを降りると、確かにそこには和洋中様々な飲食店が軒を連ねていた。
「で、どこで食うんだ? 何か行きたい処はあるのか?」
「私、あそこがいいな」
そう言って暁が指さしたのは、かなり有名なファミレスで今もそこそこの人数が並んでいる。
「いいのか? 時間待ちになってるぞ」
「私は別に構わないわよ。響も、別にいいわよね」
「問題ないよ。たまに街に出てるんだから、美味しいものを食べたいからね」
というわけで、俺たちはここで食事をすることになった。列に並ぶこと大体40分程で俺達の番が来て、俺たちは窓際の席に通された。
「うわぁ、いい景色ね。ほら響、人があんなに小さいよ」
「ハラショー。これは普段は見れない光景だね」
そう言って窓からの風景を眺める二人。まぁ、あの鎮守府の建物の高さじゃ、こんな光景なんて見れないからなぁ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
二人がそうやって眺めていると、ウェイトレスがテーブルに来て注文を聞いてきた。
「えーと、俺はステーキセットでいいか……。おい、二人はどうするんだ?」
「え? わ、私はこれにするわ」
そう言って暁が頼んだのは辛口のカレーであった。……大丈夫か? こいつって確か甘口ばっかり食ってた気がするんだが……。
「じゃぁ、私はこれにするよ」
そう言って響が注文したのは……お子様ランチだった。
「ふ、やっぱり響はお子ちゃまよね」
「本当に良いのか?」
「問題ないよ。今日はランチを頼んだら追加でプリンが貰えるからね。それに、普通のメニューのなら間宮さんのほうが美味しいし」
「プ、プリン!?」
あ。暁がプリン、という単語に反応した。
「暁、どうしたんだい?」
「え、えーと……そのー……」
モジモジと顔を赤くして何か言おうとする暁。さっさと何か言わないとウェイトレスも困ってるぞ。
「暁、注文変えるなら早くしろ」
「……だ、大丈夫よ! 注文はそのまま!」
そう言ってそっぽを向く暁。結局注文はそのままで通したが、本当に大丈夫か?
しばらくして、俺の不安は的中した。
「うう……うぐぅ……」
カレーを一口するたびに、暁の口からは苦しみの声が漏れ出てる。
「暁、大丈夫かい? 少し私も食べようか?」
「だ、大丈夫! だいじょ……」
どう見ても大丈夫じゃないんだが……仕方なく、俺はウェイトレスを呼ぶと、牛乳を注文した。で、しばらくして来た牛乳を暁の前に置く。
「な、なによ。私が牛乳が必要な体つきだって言いたいの?」
「誰が言った。誰が。辛い物を食べたら水よりも牛乳とかのほうがいいんだよ。常識だぞ?」
そう言うと、暁は驚いた顔で牛乳とカレーに交互に視線を送る。そして、顔を引き締めると、牛乳を口に含んだ。
「あ……本当だ」
暁はそう呟くと、再びカレーを食べ始める。そして辛さが辛くなったところで牛乳を口にし、また食べ始め、なんとかカレーを完食した。
「あー、辛かったぁ……鎮守府のカレーのほうが美味しかったよぉ」
「海軍のカレーは美味しいからね。でも、よく完食できたね」
カレーを食べ終え、机に突っ伏す暁に響が驚きの表情で見つめている。
「ふん、大人のレディなら当然よ。尊敬しなさいよ?」
「うん、チヌの頭に尊敬するよ」
「なんでよー!?」
騒ぐ二人をしり目に、俺は飯を完食する事に専念していた。いつまでも相手してたら飯が冷める。