なんだかんだで食事を終えた俺たちは服屋に来ていた。暁と響の私服を買いに来たんだが……。うーん。
「響、これどうかしら?」
「似合うと思うよ。じゃぁ、私のこれはどうかな?」
「あー、凄い似合うわよ響」
なんか、色々と話してるけど、正直服の良し悪しなんて俺にはわからないんだよなぁ……。あの港町じゃ着飾ったやつなんてほとんど居なかったし、俺の私服だって基本は丈夫さ優先だしなぁ。
「……ん?」
ふと気づくと、周りの女性客の何人かが俺のほうに視線を向けてる。あー、女性フロアに長時間いるとやっぱダメか。
「おい、暁、響。俺はちょっと外に移動してるからな」
「ん、わかったよ」
「はいはい」
こうして、俺は女性用服のエリアを抜けて休憩スペースに移動すると、自販機でお茶を買って、それを飲みながら椅子に座る。
「ファッションなぁ……。俺も勉強しなきゃだめなのか?」
だが、兵器である俺がファッションなんか勉強しても意味があるのだろうか? 迷彩とかなら意味はあるだろうが……。
そんなことを考えていると、不意に、俺の周りを4人の男が取り囲んだ。
「……なんだ?」
俺が聞くと、一人が俺の前に出てきた。体格もけっこうでかいし、こいつがリーダー格か?
「お前、何者だよ? 暁ちゃんと響ちゃんとイチャイチャしやがってよう」
「……はぁ?」
言っている意味がわからず、俺は首を傾げる。
「とぼけんじゃねえ! 暁ちゃんと響ちゃんは俺等のアイドル! 最高の艦娘! そんな彼女達に引っ付きやがって!」
「そうだそうだ!」
リーダー格の男の言葉に周りの連中も奇声を上げる。……ヤバイな、わけがわからなすぎる。
「俺は彼女達の同僚で付き添いだ。それ以上でもそれ以下でもない」
俺が勤めて冷静にそう返すが、男たちの勢いが削がれる様子もなく、リーダー格の男が俺の襟を掴んで、俺を無理に立たせた。
「おい、ふざけんなよ? 艦娘の同僚? お前どうみても男じゃねえか。何嘘ついてやがんだこら」
そう言って、リーダー格の男は俺を威嚇してくる。まぁ、深海棲艦や飛鷹の艦載機に比べれば迫力も何もないんだが、どうするかなぁ。民間人とイザコザ起こすのも問題だし。
「ちょっと! あんた達、チヌに何やってるのよ!」
俺が対応に困っていると、片手に袋を持っている暁と響が向こうから走ってきていた。
「やべ、暁ちゃんと響ちゃんだ」
「撤収だ!」
二人の姿を確認した途端男たちは蜘蛛の子を散らすように四散していった。
「やれやれ……なんだったんだあれ?」
掴まれていた襟をただし、溜息をついていると二人が俺の元に駆け寄ってくる。
「チヌ、大丈夫かい? いったい何があったんだい?」
「そうよ。まさか、喧嘩売ってたんじゃないわよね?」
「んなわけあるか。なんかお前らのファンだとか、俺が付きまとってるとか言ってたけど、なんなんだ?」
俺の言葉に、暁は少し考えるそぶりを見せたが、響はすぐに何か思い立ったようだ。
「言葉で説明するより、本屋に行った方が早いかな。ちょっと来て」
そう言って響が俺達を連れてきたのは近くの書店だった。そして、そこの雑誌コーナーに到着すると、その一角を指さした。
「ほら、これだよこれ」
そう言って響が指さした先にあるのは、艦娘達に関する雑誌の山であった。そして、その中に暁達第六駆逐隊の特集もある。
「那珂以外の艦娘もこうやって特集されたりするからさ。そう言った手合いが増えてるって司令官が話してたんだ」
「何よこれ。いったいどこで撮影してるのよ?」
暁の視線の先には明らかに鎮守府内での光景と思しき写真がいくつかある。しかも、割とプライベートと思しきシーンも見受けられる。
「私達の許可の元撮影しているのが大半だけど……一部は私達じゃなくて提督に話を通してるだけのもあるみたい。それに、軍の中にも盗撮して小遣い稼ぎしてる人もいるって噂もあるよ」
「……やれやれ。提督は何を考えているんだ?」
手に持っていた雑誌を置き、俺は大きくため息をつく。そして、周りの人間の視線がこっちに向いている事に気づいた。
「……おい、行くぞ。バレてる」
流石に二人の顔の載っている雑誌を手に取ってたらバレるか。ともかく、俺は二人を促してこの場を離れた。