「三式潜航輸送艇まるゆ。着任いたしました」
そう言って俺と黒潮が釣り上げた少女……まるゆが提督に敬礼している。あの後、なんとかまるゆを回収した俺と黒潮は、まるゆから話を聞いて、とりあえず俺が提督室へ連れて行くことになったのだ。
「んー……新しい艦娘が着任するとは……聞いていないぞ?」
だが、まるゆの言葉に提督は思い切り首を傾げる。
「えー、そんなぁ。そんなことないですよ。ちゃんと連絡が来てるはずですよ」
まるゆの言葉に提督が視線を榛名に向けると、榛名が記録を遡っていく。
「えーと……あ、ありました。……かなり小さい連絡でしたから、気づきませんでした」
そう言って榛名は記録を提督に渡す。そして提督は記録に目を通してって……あ、なんか溜息ついてないか?
「うん、こちらの不手際だったようだな。三式潜航輸送艇まるゆ。着任を確認」
そう言うと、提督は内線を手に取り誰かを呼び出す。そしてしばらくしてこの鎮守府唯一の潜水艦である伊168、通称イムヤが提督室に入ってきた。
「提督、何の御用でしょうか?」
「ああ。彼女は今日からこの鎮守府に配属となった潜水艦まるゆだ。潜水艦としてのいろはを一から教えてやってくれ」
「了解しました。それじゃぁ、早速行きましょうか」
「は、はい」
提督の言葉に頷いたイムヤはまるゆと一緒に提督室を出ていく。それを見送ると、提督はまた溜息をついた。
「……提督、何か心配事でも?」
俺が聞くと、提督は微妙に苦い表情を浮かべる。
「まぁ、これを見てくれ」
そう言って提督は指さしたのは先ほど榛名から渡されていた記録である。取りあえず手に取って内容に目を通すが……。
「……なるほど」
資料に目を通し、俺は軽くため息をついた。内容はまるゆの前歴……まぁ、大戦時にどう運用されていたかについてなんだが、これはキツイ。要するに彼女は当時の陸軍が作った潜水のできる輸送艦だということだ。だが、戦闘能力はほぼ皆無。潜水に関しても沈めなかったり浮かべなかったりと散々だったらしい。
「潜水艦である以上、彼女には一定の期待を皆するだろうし、実際に戦闘域に行ってもらうしかないが、どれだけ時間がかかるか……」
だろうな。俺みたいに最初から戦闘域に行けないとわかっている戦力外ならともかく曲がりなりにも出陣できるんだ。その期待は大きいだろう。
「チヌ、君とまるゆは同じ陸軍出身だし、今回の経緯もあるから、なるべく彼女の事を気にかけてやってくれ」
「はっ。了解しました」
まぁ、戦力になってもらわないと困るし、俺も注意しておかないとな。