まるゆを釣り上げてから数日後、俺は特に変わり映えのない一日を送りつつ鎮守府で過ごしていた。まるゆに関してはイムヤが特訓しているためか、どうも会う機会がないのが困ったものだが。取りあえず今日の警備を終えて間宮で食事をとっている。
「あ、チヌはん。お疲れさんや」
食事をとっている俺に向かって、新しく間宮に入ってきた黒潮が声をかけてきた。
「黒潮か。そっちもお疲れ様。今日は出撃だと聞いたが」
「ホンマ疲れたわ―。あ、間宮はん、うちにもソバ定食お願いな」
黒潮がそう言ってしばらくして、ソバと小さいお椀で御飯と漬物、そして味噌汁を間宮が運んできた。
「ほな、頂きまーす」
そう言うと食事を始める黒潮。俺も適当に食事を続け、ふとまるゆの事を思い出した。
「なぁ、黒潮。まるゆは最近どうしてる?」
俺が聞くと、黒潮が微妙な顔になった。
「あー……そうやねぇ……。うん、頑張ってるのはわかるんよ、頑張ってるのは……」
少しの間歯切れの悪く言葉を出していたが、やがて黒潮は大きくため息をついた。
「いやぁ、うちかてそんな強くもないし、ここの鎮守府にはそもそも榛名はんを除けば前線で戦えるほど強い艦娘がおらんのも事実や。でもな、いくらなんでも戦闘能力のない艦娘は初めてやで」
ああ、やっぱりそこだよな。
「俺みたいな前例が居るだろ。皆ある程度耐性はついてると思ってたが……」
「いやいや、チヌはんは男で戦闘以外に色々やってくれてるやん。でも、まるゆは正直なんもないからなぁ……そもそも潜水艦なんて早々こおへんから、皆余計期待してもうとったんや」
この辺は提督が危惧してた通りだな。まったく、どうするべきか……。俺はこういうの苦手なんだがなぁ……。
「それになぁ、やっぱり元陸軍やろ? チヌはんはその辺なんか達観しとるゆうか、そんな気にしてへんけど、まるゆはその辺引き摺ってるようやからなぁ、話があんま弾まへんのや。うちもどないしたらいいんかわからへんねん」
そう言うと、黒潮はお手上げとばかりに両手を上げる。
「確かにそれはな……わかった。まぁ、釣り上げた仲だし、何かと気にかけてくれないか? 頼む」
「わかっとるよ。仲間やもんね。でもチヌはん、頼む言うなら、なんか見返りがあってもええんとちゃう?」
そう言うと、黒潮は意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「どうしろと? 飯でも奢れって言うのか?」
そう言うと、黒潮はチッチッチッ、と指を振った。
「いやいや、仲間に関する事や。別にお金がかかるような事なんて頼まへんて。そうやなぁ……頭撫でてもらおうか?」
……なんでそうなるんだ?
「……まぁいいが……」
そう言いつつ、俺は黒潮の頭を軽く撫でる。
「はわ~、やっぱりチヌはんの手は大きいなぁ。気持ちええなぁ~」
そう言って黒潮は気持ちよさそうに目を閉じる。本当にいいのかこれ? どうも駆逐艦勢は見た目もそうだが、子供っぽいんだが、こいつら元を辿れば俺よりも遥かにでかいんだよな。
「よっしゃ、うち、ちゃんとまるゆの世話するで」
「あ、ああ。頼む」
こうしてなんとか黒潮に話は通したが、俺自身もある程度機会があれば接するほうが良いかもしれない。そう思いつつ、俺達は食事を続けるのだった。