あれから数日、イムヤの特訓もあってまるゆは他の鎮守府との演習で見事に魚雷を命中させたそうだ。この分なら練習を積んでいけば実戦でも戦えるようになるだろう。
一方、イムヤは他の鎮守府へ異動となった。まるゆを性急に教育していたのもこれが原因らしい。
あれからまるゆの事を他の艦娘達も徐々に認めるようになったのか、まるゆも少しオドオドしている様子がなくなったと黒潮から聞いている。どうやら提督の心配も解消されたようだし、良かった事だと思う。ただまぁ……。
「チヌはーん、遊びに来たでー」
「お、お邪魔します」
あれから黒潮とまるゆがよく俺の家に遊びに来るようになった。来られた所で茶と茶菓子を出すぐらいしかできないんだが。俺にこいつらが喜ぶような話題なんて出しようがない。
「いやー、チヌはんの家って広くてええやんかー。寮だとどーしても一部屋を数人で使ってるから。狭くなってまうんやー」
俺の目の前で頬杖を突きながらせんべいを齧っている黒潮がそう答える。行儀悪いぞ。
「あ、チヌさん。チヌさんが居た茨城県の陸上自衛隊の学校について聞きたいんですけど」
一方まるゆは、なんやかんやで陸軍関係の事を話題に振ってくる。まぁ、他に陸軍の事を話し合う相手がいないんだろうなぁ。ここに居るの一部を除けば全員海軍出身だし。
「なんやー。また陸軍の話かいなー。もっと色気のある話でもしよーや、まるゆ」
別にまるゆはお前に話してるわけじゃないぞ。
そうやってなんかグダグダと過ごしていると、家の戸が開かれ、不知火が入ってきた。
「黒潮、やはりここに居ましたか。香取先生からの課題は終わったんですか?」
「げ、不知火!? え、えーと……まだ……かなー、アハハー……」
不知火の視線を受けた黒潮がちょっと視線を漁っての方向に向けながら答える。
「……今から課題をこなしますよ。それと、まるゆさんも、明石さんが改良した魚雷を用意できたから受け取りに来てほしいとの事です」
「うあー、しゃあないなー……ほなチヌはん、また後でなー」
不知火の言葉に黒潮は渋々立ち上がる。それに続いてまるゆも立ち上がった。
「あ、わかりました。急いで受け取りに行きます。それではチヌさん、失礼します」
こうして黒潮とまるゆが家から出ていき、最後に不知火が軽く頭を下げて出ていった。
「やれやれ……捨てるわけにもいかないし、俺が処理するしかないか」
二人の為に出したせんべいの残ってるのを齧り、茶を飲みつつ、俺は溜息をつくしかなかった。