第27話
ある日、俺は提督に工房に呼び出された。なんでも、俺用の武装を作ったらしいんだが、なんでわざわざ提督が呼び出すのか?
そう思いつつ、俺が工房に来ると、そこには提督と明石。それに、シートが被せられている、なんか妙にでかい物が置かれていた。
「お、来たなチヌ」
俺の姿を見た提督が俺に声をかけてきた。なんかにやけてるような……。
「私用の武装が作られたと聞いたのですが、一体どのようなものなのでしょうか?」
俺の言葉に提督と明石は互いに顔を見合わせ、そしていやに良い笑顔を浮かべる。
「それはな……これだ!」
提督の言葉に合わせ、その辺に居た妖精達がシートを取り除く。そしてそこにあったのは……。
「水上……バイク……?」
そう、シーツを取り除かれた先にあったのは、一人乗りの水上バイク……だと思うんだが。
「そう。これは私が妖精さんに手伝ってもらって開発した戦闘用水上バイクです。いやー、手間がかかりましたよぉ」
そう言って、明石は良い笑顔を浮かべながら説明し、提督もそれを補足する形で説明する。まぁ要約すると、深海棲艦に対抗するため、装甲も艦娘達が使用している物を利用したとの事。しかも、日本驚異の科学力でエンジンは小型で高性能なものを開発したらしい。将来的には武装も装着したいとか。しかし……。
「なぜこのようなものを開発したんですか? 私は鎮守府防衛が任務ですから、こんな海上に出て戦うための武装を用意したところで……」
そう。地上でしか動かない俺にこんなものは無用の長物。こんなものを作るぐらいなら、他の艦娘の為に装備を用意でもするほうが余程いいはずだ。
「チヌ、君の言いたいことはわかっている。こんな武装を作るよりも、もっと有効利用する方法があるはずだと言いたいのだろう?」
「……ええ、まぁ」
俺が頷くと、提督はやけに芝居がかった動作で理由を説明し始めた。
「知ってのとおり、この鎮守府に居るの艦娘の多くは未熟な艦娘だ。言い換えると、訓練を積んだしっかりした艦娘はすぐに他の鎮守府に配属される。おかげでここは常に戦力不足だ。榛名だって他の鎮守府に配属されそうになったのを、私のもてる全てを使って阻止したからに過ぎない」
まぁ、実際ここはそう言う鎮守府だからなぁ。北上や大井も重雷装巡洋艦になった途端他の鎮守府に転属になったし。
「だから、だ。純粋にこの鎮守府の戦力を上げるには榛名を除くと……明石とまるゆしかいないし、まるゆだってヘタすれば他の鎮守府に回される可能性がある。その点、チヌなら他の提督や上層部は甘く見てるから、異動になる事はないんだ」
「……言いたいことはわかりましたが、現実問題として、私が海に出て役に立つとお思いですか? 艦娘と違って、私は船がなければ溺れるしかないんですよ」
「あれ、チヌさん泳げないんですか?」
明石の問いに俺は首を横に振った。
「泳げるのは泳げるが……並みといったところだぞ。海原で浮くものもなしで放り出されたら、自力でどうにかするなんて無理だ」
「もちろん、厳しい任務に就かせるつもりはないさ。当面は第一艦隊と共にこの付近の海域を巡回してもらう事になる」
「榛名さん達と一緒ですし、やられる心配はないですよ。それに実戦を繰り返していく中で改良していけば、もっと強くなりますから」
「……俺が心配なのは、艦娘達に負担をかけることなんですが……。これは命令、なんですね?」
「ああ、既に物も作ってるからな。悪いが、頑張ってもらうぞ」
提督の言葉に、俺は溜息をつきつつも、敬礼し、「了解しました」と返した。