艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第七章
第34話


 現在の世界の情勢は中々複雑である。第二次大戦、冷戦を経てからも、世界中で小規模な戦争は起きていたし、ロシア、中国、アメリカといった国々が代理戦争として内戦を煽った例もいくつもある。

 

 今も、深海棲艦の登場によって一応は人類対深海棲艦の構図はしているが、人類側は一枚岩とは言えない。深海棲艦に対抗できる艦娘の数はあまりに少なく、更に所属している国には相当な偏りがある。今現在深海棲艦に対して攻撃を仕掛ける事ができる国は日本を除けばアメリカに、イギリスやドイツといったヨーロッパ諸国の一部にロシアぐらいで、アフリカはもちろん中東や日本を除くアジア諸国の大半。そして南米は攻撃どころか防御すらままならないのが現状である。

 

 もちろん、比較的艦娘の多い日本はある程度他の国の防衛も手伝っているため、その発言力は増していき、逆に深海棲艦に対して有効な対処ができていない国は発言力が低下しており、それらの国が発言力のある国に対して嫌がらせをする事もしばしば起こるようになってきた。

 

 まったく馬鹿馬鹿しい話ではあるが、人間という種族はそう言うものなんだろう。それはさておき、それに対して発言力のある国は国で、交流を深めつつ、相手の国の内情を調べようと色々と画策しているようだ。今回、ドイツの艦娘が日本へ二名送られてくる事になったのも、それが要因なんだろう……。

 

 

 

 その日、鎮守府の中は騒がしかった。と言うのも、10日ほど前に、提督よりドイツの艦娘が二名、日本に援軍として送られ、一時この鎮守府の扱いになる。という事を話したがためである、当時、ドイツは日本と同盟国であったため、抵抗を感じる物は居なかったようだが、初めての外国の艦娘との交流に気が落ち着かない者も多かったのだろう。

 

 そして今日、鎮守府の全艦娘は広間に集められた。壇上には提督と、二人の艦娘がいる。一人は金髪の凛とした雰囲気を漂わせる女性で、もう一人は長い銀髪の小柄な少女だ。緊張しているのか、恥ずかしそうに顔を俯かせている。

 

「皆、彼女達がドイツから我が国に来てくれた艦娘、戦艦ビスマルクと潜水艦U-511だ。宜しく頼むぞ」

 

 提督がそう言うと、艦娘達が敬礼を行い、俺もそれに合わせて敬礼する。そしてそれを確認した後、提督が金髪の女性にマイクを手渡した。

 

「私が先ほど紹介に預かった戦艦ヴィスマルクよ。かつての同盟国として、共に戦えることを誇りに思うわ」

 

「U-511です。み、皆さん……宜しくお願いします……ユーとお呼び下さい……」

 

 ヴィスマルクのほうはまさに軍人の鏡というべき挨拶をする一方、ユーのほうはどうにも小心者としか見えない。まぁ、潜水艦だから人目に出るのに慣れてるわけじゃないんだろうが。

 

 そう思っていると、ふいにビスマルクが俺に対して怪訝な表情を浮かべ、提督に話しかける。すると、提督が俺に向かって手招きしてきた。それに答えて俺が提督の元に向かうと、提督が俺の紹介を始めた。

 

「ビスマルク、ユー。彼は三式中戦車のチヌだ。艦娘を除いて唯一深海棲艦を撃破できる者だ。艦娘共々よろしく頼むよ」

 

「三式中戦車チヌです。誉れ高き戦艦ビスマルク殿、潜水艦U-511殿と共に戦える事を光栄に思います。どうぞ宜しくお願い致します」

 

 そう言って、俺は右手を差し出す。だが、ビスマルクはそれを見て、そして冷笑を浮かべた。

 

「戦車? ふん、そんなやつに差し出す手はないわ」

 

 そう言うと、ビスマルクは俺の手を払った。それを見て艦娘たちから驚きと、そして一部から嫌悪の視線が向けられる。これはまずいな。

 

「なるほど、確かに戦艦であるビスマルク殿に軽々しく握手を求める等、分不相応でした。どうかお許しください」

 

 そう言って俺は頭を下げつつ、隣に立つ提督に視線を向ける。それを見た提督が話し出した。

 

「さて、皆への挨拶は終わったし、長旅で疲れているだろう。今日はこの辺で休んで、明日また個別に挨拶していくのが良かろう。榛名、彼女達を案内してくれ」

 

「は、はい。こちらになります」

 

 提督の言葉に榛名が二人を案内する。ビスマルクは悠然と、ユーは申し訳なさそうに俺に軽く頭を下げてから出ていった。

 

 三人が出ていったのを確認すると、艦娘達の中から黒潮が出てきて提督の前に立った。

 

「提督はん! なんやねんあのビスマルクとかいうやつの態度。チヌはんがいったい何をしたっていうんや!」

 

 その言葉に不知火やまるゆといった比較的交流のある艦娘達からも同意の声が上がる。声を上げない艦娘からも不信の視線が向けられてる。うーん、俺が原因でビスマルク殿達と軋轢ができるのは避けたいんだが……。

 

「その理由についてはわからないが、少なくとも彼女のあの態度は俺だけに向けられた者だ。皆はどうか普通に接してほしい」

 

「そうは言うてもなぁチヌはん。チヌはんはうちらの仲間やで。それを貶されて黙ってみてろいうんか?」

 

 黒潮の言う事ももっともだが、俺としては俺なんかが原因でドイツの艦娘と鎮守府の艦娘の間でいざこざが起きるほうが困るんだよな。

 

「黒潮、君の言う事も最もだが、彼女にも何か理由があるのかもしれない。私からも言っておくから、今日のところはおとなしくしてもらえるか」

 

 横から提督がそう言うと、黒潮は渋々と言った表情で後ろに下がった。それを見て他の艦娘達も不満げな表情をしつつもこの場はおとなしくするつもりのようだ。しかし、これは面倒なことになりそうだな……。

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