艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第35話

 そんなことがあってから数日。ビスマルク殿の態度は特に変化はなかった。強いて顔を合わせるような関係ではないとはいえ、彼女はあからさまに俺を無視するか、または冷やかで厳しい言葉や態度を示す。俺自身としては特に問題はないのだが……。

 

「なんやねんあいつは! 毎度毎度チヌはんの事を敵視しおってからに!」

 

「わ、私も同じ意見です! それに、ユーさんも怖いです」

 

「……ユーさんの事は何とも言えませんが、ビスマルクさんの態度が看過できないのは同意見です」

 

「私もちょっと物は言いたいわね。なんなのかしらあの態度は」

 

 俺の家で黒潮、まるゆ、不知火がビスマルク殿に対しての不満を漏らす。今日のヲ級の監視を手伝ってくれてる足柄も、三人を宥めつつも割と同じ意見らしい。

 

「……チヌハソンナニ嫌ワレテイルノ……?」

 

 そんな四人を見ながらヲ級が首を傾げる。

 

「俺には嫌われる理由は思い浮かばないんだがな。初対面だし、第二次大戦中にも戦艦ビスマルクと俺達……というより日本の戦車と何かあったわけではないし」

 

 強いて言えば艦娘以外の存在として男性が居るのが気に食わない……。まぁ、男性嫌悪等があるのかもしれないが、それなら提督に対しても似たような態度になるだろうし。

 

「……っと、そろそろ出撃の時間だな。今日は足柄と不知火にユーで出撃か」

 

「そうね。それじゃぁ、さっさと片付けに行きましょうか」

 

「了解です。では、行きましょう」

 

 俺の言葉に不知火と足柄が立ち上がる。そして、まるゆと黒潮にヲ級の監視を頼み、俺達は出撃室に向かった。俺達が到着すると、既にそこにはユーが待機しており、その隣ではビスマルク殿が立っている。

 

「ふん、戦車風情が良く来たわね。あんたなんて鉄屑が海上に出ても役に立つわけないってのに」

 

 開口一番にビスマルク殿が俺に厳しい言葉を投げかけてくる。それに対して不知火と足柄が口を開こうとするが、それより先に口を開く。

 

「ビスマルク殿のご心配はごもっともかと。ですが、私がこれから出撃する海域は既に幾度も出撃し、強力な深海棲艦の出現は確認されておりません。私がやられるような事があっても、足柄や不知火が居ればユー殿への心配も減るかと」

 

 俺の言葉にビスマルク殿は苦々しげに表情を歪めると、「ユー。気をつけなさいよ」とだけ言うと、出撃室を後にした。後に残ったのは申し訳なさそうにしているユーと、苦々しげにしている不知火と足柄であった。

 

「時間だ、出撃しよう」

 

 そのままでいるわけにもいかないので、ともかく俺は出撃準備に入り、三人も用意に入る。そしてしばらくして俺達は無事に出撃したが、海域を進む中で不知火が俺に話しかけてきた。

 

「チヌさん。私はもう我慢の限界です。いくらチヌさんが許しているとはいえ……」

 

「不知火、言いたい事はわかるが、俺が原因でお前たちとビスマルク殿を不仲にさせるわけにはいかないんだが……」

 

「何言ってるのよ。他の艦娘達もほとんどがビスマルクに嫌な感情を抱いてるわよ。私もだし」

 

 隣を走っている足柄からも言われ、俺は溜息をつく。どうやら、俺が思っていた以上にビスマルク殿の態度は艦娘達に嫌われる要因になっていたらしい。彼女の言う事は間違ってないんだから、怒るような事はないんだが。

 

「あ、あの……あんまりビスマルク姉さんを悪く言わないであげてください……」

 

 ふと後ろから声をかけられ、振り向くとユー殿が浮上していた。

 

「……ユーさん。私も悪く言いたいわけではありませんが、彼女の態度は目に余るものがあります」

 

「そうよ。仲間を悪く言われて、平気でいられるわけないじゃない」

 

「……ユー殿。どうしてビスマルク殿は私……というよりは戦車に対してに思えますが、戦車に対して何か嫌な事があるのでしょうか?」

 

 俺の言葉にユー殿は少し視線を逸らしたが、少しして口を開いた。

 

「……あの頃、ドイツは戦車とかばっかり作って……私達海軍にはあまり予算が回されなかったから……。ビスマルク姉さんも、イギリス海軍に沈められて……」

 

 ああ、なるほど。確かに、ドイツじゃ海軍よりも陸軍に予算回すよなぁ。西にフランスが隣接し、東にはポーランドを挟んでロシアもとい、当時はソ連か。まぁ、海軍に予算は回さないよな。ソ連相手に海軍なんて役に立たないし。

 

「……つまり、八つ当たりって事じゃないですか」

 

 ユーの言葉を聞いた不知火がジト目でユーを睨む。待て、ユーは関係ないぞ。

 

「不知火、口を慎め。俺としてもビスマルク殿の気持ちはわからないでもない」

 

 不知火の言葉を俺が注意する。

 

「でもこのままじゃまずいわよ。駆逐艦の子達には貴方に懐いてるのもけっこう居るし、私だって仲間を悪く言われるのは嫌だわ」

 

 足柄の言葉に俺は頭を抱えそうになる。俺への敵意に関しては正直気にしてないってのに……。提督に相談しておくか。

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