ビスマルク殿の謝罪から数十日が経過した。あれ以来ビスマルク殿の態度が変わったことと、黒潮たちが謝罪の事を話した事で、鎮守府の空気が少し和らいだ。そのおかげもあってビスマルク殿と艦娘達との交流も深まっていっているようだ。
俺自身も、それ以降ビスマルク殿と共に出撃したり、雑談をしたりと共に過ごす時間が増えた。おかげで互いの事を知る機会が増えたのは非常に有意義であった。どうも彼女は戦艦としての誇りが先行しすぎていただけで特に悪い人格というわけでもなく、日本の文化にも興味を持ち、食堂でユー殿と共に日本食に驚いていたりしていた。それを見て他の艦娘達が色々と面白がったりと、そういう場面を見る機会が増えた。
そうして日にちが過ぎていくうちに、二人は他の鎮守府へ異動となった。送別の日になり提督と全艦娘、そして俺が港で見送る事となった。
「提督、皆、今までお世話になったわね。本当にありがとう」
「……お世話になりました」
見送りに来た俺達に二人が挨拶していく。どの艦娘達も笑顔や残念そうな顔で見送っている。あのままビスマルク殿に嫌な感情を抱いたままで終わらなかったのは良かったな。そういう意味ではあの地震に助けられたか。
「それと……チヌ、貴方には色々悪い事してしまったわね、ごめんなさい」
最後に俺に挨拶の番が来た。
「どうか気になさらないでください。私は何も気にしておりません」
改めて俺がそう言うと、ビスマルクは少し笑みを浮かべた。
「そう言ってもらえると嬉しいけど、やっぱりそれだけじゃ私の誇りが許さないわ」
そう言うと、ビスマルクはいきなり俺を抱きしめてきた。……ああ、確か向こうの挨拶はこういうのだったか。
「これはドイツ人の親しい人同士での挨拶よ。日本の人では貴方しかいないわ。貴方への敬意を示して……ね」
そう言うと、ビスマルクは俺を抱きしめたまま左右の頬にキスをして来た。
「私はこういう習慣がないのでわかりませんが、返礼すべきなのでしょうか?」
「そうね、してもらえるかしら」
そう言われたので返礼としてビスマルクを抱きしめ、左右の頬にキスをする。
「ありがとう、チヌ。それと、今後はここの艦娘達みたいにタメ口で構わないわ。ユーもね」
「は……はい、お願いします」
「そうか。それじゃぁ、音言葉に甘えさせてもらう。次の鎮守府でも頑張ってくれ」
「ええ、任せてちょうだい」
「が、頑張ります……」
二人はそう言うと、港から出発していった。やれやれ、色々と大変だったがなんとかなったな。そう思いつつ後ろを向くと。
「……」
不知火が俺をジト目で睨んでいた。
「なんやねんあいつ。最後の最後にチヌハンに粉かけおって、腹立つわ―」
黒潮がよくわからないが憤慨していた。そして。
「あ、あれが大人のレディってやつね……うん、私も見習わないと」
「相変わらず欧米は進んでるね。私も参考にしよう」
暁と響が何か考え込んでいた。ついでに言うと、他の艦娘達も色々な反応をしていた。榛名は少し顔を赤くして提督を見ているし、足柄は何か頷いているし、提督も何か含みのある笑みを浮かべてるし。
そんな色んな反応に、俺は困惑するしかなかった。