大和を迎えてから一か月が過ぎた。その間、敵からの大規模な襲撃があるというわけでもなく、比較的平和な日々が続いた。だが、大和を迎えることによる弊害は確実に鎮守府を蝕んでいた。
その日も俺は基礎訓練を終え、家で本を読んでいたのだが……。
「あー、暇やー。暇すぎるわー」
卓袱台の上に頭を置いた黒潮が退屈そうな表情でそんなことを言っている。
「確かに暇ですねー。訓練もあんまりできませんし、頻繁に外出もできませんしねー」
そんな黒潮に答えたのは青葉だ。前々から取材と称してここに来ることはけっこうあったが、最近はその頻度が上がっている。おかげで最近は取材のネタもなくなったようだが。
「……最近何カアッタ……?」
ヲ級がそんな二人を見て声をかけると、二人とも声を揃えて答えた。
「訓練の時間が大幅に減っているんです「や」」
そう、大和が来てから、彼女の訓練に使用される資材によって鎮守府の備蓄が一気に圧迫されているのだ。遠征の頻度を増やしたりして対策はしているようだがそれでも追いつかない。その為他の艦娘の訓練に使用する資材が減らされているのだ。その為榛名を初めとした主戦力を除くメンバーは暇を持て余している。勿論俺も大和が来て以来同じ状態である。
「あー、ヲ級さん。もっとこう何かインパクトのあるネタってないですか? 深海棲艦への取材なんてこの鎮守府の特権みたいなものなのに、ネタがもう尽きるなんてもったいないです。なんでもいいから、教えてもらえませんか?」
「……ソウ言ワレテモ困ル……」
青葉が声をかけるがヲ級も困った顔をする。彼女から得られた情報の大半は軍事機密として処理されているため青葉が取材した大半のネタは公表できないらしい。まぁ、それもそうだろうが。
「失礼します……黒潮、またここでだらけていたのですか」
そうやってとりとめもなく過ごしていると、扉がノックされて不知火が入ってきた。そしてだらけている黒潮を見て溜息をつく。
「仕方ないやん、やることないんやもん。不知火かて本持ってるって事はここで読もうとしてたんやろ? 自分の部屋で読めばええのに」
確かに不知火の手には数冊の本がある。ここに居るよりは自室のほうが集中はできそうなもんだが……。
「それもありますが……チヌさん、提督がお呼びです。司令室まで来てほしいとの事です」
「そうか。伝えてもらってすまないな」
不知火に礼を言って俺は家を出る。しかし、この状況で俺に一体何の用事があるというのだろうか?