結局、あれから榛名と黒潮に色々と説明することにはなったが、妙な誤解を抱かれることもなく無事に説明することができた。そして、それから数日、大和殿の錬度も順調に上がっていき、訓練が再開された他の艦娘達の士気も再び上を向いてきた。
その間、俺は訓練と勉強、そして提督から言い渡される任務を黙々とこなしていた。今日も家で勉強をしつつヲ級の監視をしている。まぁ、正直半分形骸化してる気はするのだがな。今日の手伝いは不知火と黒潮、まるゆだが、この三人も、最初の頃は警戒心を隠さなかったが、今ではすっかりヲ級への警戒心が消えていた。まぁ、ヲ級が何一つ問題を起こさないのだから仕方ないことだが。
「チヌさん、失礼します」
不意に家の扉が開かれ、大和殿が中に入ってくる。それを見て不知火、黒潮が若干眉間に皺を寄せたのが見える。
「大和さん、何の御用でしょうか?」
「はい。間宮さんから羊羹を戴きまして。それで、チヌさんへお裾分けがてら、任務のお手伝いをさせて頂こうかと」
そう言う大和殿の手には確かに羊羹が入っていると思しき箱が持たれている。任務と言うのはまぁ、ヲ級の監視の事なんだろう、それ以外思いつかないし。
「大和さん、貴女はこの任務の担当ではなかったと思いますが」
不知火が大和殿に尋ねる。なんか声色が普段より固いのは気のせいだろうか?
「ええ、確かにそうなんですが、チヌさんには資材の件でお世話になりましたし、この鎮守府に居る間だけでもお手伝いさせて頂ければと思いまして」
そう言うと、大和殿は台所に入り、手際よくお茶の用意を整えていく。そして五分ぐらいで羊羹と日本茶を人数分用意すると卓袱台に置いて行く。
「うわぁ、大和さん手際が良いんですね」
その手際の良さにまるゆが感嘆の声を上げて大和殿を見た。
「はい。こう見えても陸軍の方からホテルのようだ。と表された事もあるんですよ。当時は皮肉で言われていましたので悲しかったですが、こうして皆さんのお世話ができるのですから、呼ばれてよかったのかもしれません」
いや、戦艦としてはそれはどうなのかと思うのだが……まるゆが目を輝かせて大和殿を見てるから言い出せない。
「……チヌハ子供二好カレテルト思ッテイタケド、大人ニモ好カレテル」
「ヲ級、誤解を招く言い方はやめろ」
突然のヲ級の言葉に俺はツッコミを入れる。
「そうやヲ級、誰が子供やねん」
「ヲ級、その言い方は心外です」
不知火。黒潮、怒る部分はそこじゃないと思うんだが……。まるゆと大和はそんなやり取りを笑顔で見ているし……。
(……どうやったらこんな状況になるんだ?)
目の前で広げられる彼女達のやり取りを見つつ、俺は内心深いため息をつくのだった。