工廠を後にした俺達は、取りあえず間宮食堂に足を向けた。寮の休憩室では入渠から出た艦娘達が集まっているだろうし、俺の家にはヲ級が居るからあきつ丸殿のほうが気にするだろうからな。
間宮食堂に到着した俺達は取りあえず団子と緑茶を注文した。どちらもすぐに出てきたので、取りあえず茶を一口すする。
「チヌ殿とは一度、こうしてお話したいと思っておりました。数少ない陸軍の仲間でありますし、武勲についてもお話を伺っております」
「武勲などと……、私がやった事等大した事はありません。深海棲艦を轟沈させた事も、艦娘の攻撃によって傷ついた相手に止めがさせただけなのですから」
俺がそう言うと、あきつ丸殿は勢いよく首を横に振ってきた。
「何を言われるのでありますか。戦車でありながら艦娘に負けぬ活躍。陸軍としてとても誇らしいのであります」
うーん、どうも過大評価されてるな。
「そう言っていただけるのは嬉しいのですが深海棲艦の撃退に関してはあきつ丸殿のほうが戦績を上げられているのでは?」
「……残念ながら、自分は揚陸艦ですので、敵との戦闘能力はあまりないのであります」
確かに揚陸艦はあくまで陸に攻撃を仕掛けるために必要な船だから、海上戦は得意じゃないだろう。というかまぁ……。
「もし、チヌ殿が艦載機のような状態になれるのなら、自分に乗船してもらって、砲撃の援護をしてもらいたいところであります」
まぁ、それもかなり邪道な使い方なんだが。
「あいにく、それはできそうにもないですが。ここにおられる間はできうる限りの協力はさせて頂きます」
「はい、宜しくお願いするのであります」
その後は同じ陸軍同士の話である程度盛り上がっていたが、ふとあきつ丸殿が首を傾げて訪ねてきた。
「そう言えば、チヌ殿はどちらの戦場におられたのですか? 自分は輸送任務を行っておりましたが、チヌ殿達を運んだ記憶はないのであります」
その質問に、俺は少し言葉に詰まった。
「私……というより、チハ以降の戦車のほとんどは本土防衛用として本土に残されていました。その為、実際に連合軍と戦った事はありません」
俺の言葉にあきつ丸殿のほうが少し声に詰まったようだ。
「そうなのでありますか……。それは、申し訳ないのであります」
「いえ、どうかお気になさらないでください」
そう言ったのだが、あきつ丸殿は少し気にしているようで、不意に大きく話題を変えてきた。
「そ、そう言えば、ここにドイツ艦が来たとき、チヌ殿は酷く中傷を受けた上に傷まで負ったと聞いております。かつての同盟国とはいえ、度が過ぎているのであります」
……また無理やりな話の転換だが……まぁいいか。
「あきつ丸殿、確かにビスマルク殿からは色々言われてしまいましたが……私も、気持ちはわかるんですよ」
「気持ちがわかる……でありますか?」
あきつ丸殿が怪訝な表情を浮かべる。まぁ当然だろう。
「ええ……彼女の生まれたドイツは陸軍国家。それゆえ海軍への予算の割り振りが少なかった。だからこそ彼女は戦車に対して良い感情を持てなかったんでしょうし、私が……戦車が海に出ることに不快感を持ったんでしょう。彼女自身海戦で轟沈している分、尚更そう感じていていてもおかしくはない」
「だからこそ、私は特に彼女の言った事を気にするつもりはなかったんです。私と彼女はある意味では似たような立場だったんですから」
確かにあの国が海軍へ多くの予算を割り振ることはないだろう。だが……海軍へ予算を振り分けていたなら、彼女はその仲間は轟沈せずに済んだかもしれない。その気持ちは俺にもわかる。もし……それこそ大和殿が言ったように、大和型を作る予算を戦車に割り振っていれば、兄達ももっと戦えただろうし、もしかしたら俺自身も戦地へ赴けたのかもしれない……。だが、口には出せないな。特に今の世の中を考えれば尚更、言うべきことじゃない。
「なるほど……確かに、そういう意味ではビスマルク殿と我らの考えは似ているところがあるのであります。チヌ殿を貶したと言うことで少し嫌厭はしていましたが、自分もドイツ艦とは交流しようと思ったのであります」
「ええ、そうしてください」
ビスマルク殿達の話題で調子が回復したのか、それから後は特に何かを気にすることもなく、俺たちは陸軍の話題で盛り上がって話を終えることができた。まるゆとは違う陸軍の話題を話せるのは……気持ちがいいものだった。