あきつ丸殿とそんな会話をしてから数日。俺は作戦室で現在の作戦の経過具合を見ていた。
「順調といえば順調だけど……という感じか」
報告書を見ながら俺は眉間に皺を寄せる。
「そうなのよ。敵は倒していってるんだけど……敵が多すぎるのよ」
そういうのは俺の向かい側に座っている暁だ。さっき入渠を終えて、次の出撃に備えて鎮守府内で休んでいる。
「そうね。このままじゃ資材の確保が厳しいかしら」
暁の隣では香取が別の報告書を読みながら溜息をついていた。さて、提督たちはどうするつもりなのか。
「あら、あんた達こんなところで何してるの?」
不意に作戦室の扉が開き、朝野提督が中に入ってきた。
「これは朝野提督。お疲れ様です」
取りあえず即座に立ち上がって敬礼する。
「ああ、いいわよ堅苦しいのは。まったく、あきつ丸と言いあんたやまるゆと言い、陸軍は堅苦しいわね」
俺の挨拶に朝野提督は面倒そうに返答すると、俺の読んでいた報告書を手に取った。
「昨日の作戦の報告書じゃない。香取と暁が読むのは良いとして、あんたが読んでどうするのよ」
「海上の戦いに出れない以上、自分が役に立てる事は限られています。その為、自分なりに勉強し、作戦上において何か気づくことができればと考えた次第です」
俺の言葉に朝野提督はどうでもよさそうな視線を向ける。
「ふーん、陸軍の戦車のあんたが海上戦に役立つアイデアが浮かぶとは思えないけど」
まぁ、その意見は至極最もだと思う。
「そんな事ありませんよ朝野提督。チヌさんは勉強熱心ですから」
香取がフォローを入れてきたが、朝野提督は特に興味を示す様子はない。
「ふーん。ま、どうでもいいわ。それよりチヌ。明日の作戦にはあんたも参加してもらうわ」
「え、チヌが参加するの?」
朝野提督の言葉に暁が首を傾げる。それに頷きつつ、朝野提督は壁にかかってる海域の地図の一点、離島の一つを指さした。
「あそこの離島に補給拠点を作りたいんだけど、人型の敵がいるかもしれないから、あんたにはあきつ丸を含めた艦隊と一緒に出撃して、島の中を確認してもらうわ」
「ハッ、了解しました」
島の中での行動となればまぁ、戦車の出番だろう。
「そう。それじゃ、詳しくは明日の朝に説明するから、明日は作戦室に来なさい」
そう言うと、朝野提督は、資料と思われるファイルを棚からとり、作戦室を出ていった。
「チヌさんも出撃ですか。頑張ってください」
「ああ、今回は島に出撃なわけだから俺も活動しやすいからな。とはいえ、深海棲艦が陸上でどれだけの戦闘力を持つか分からないから、何とも言えないが」
海に居るときと同じ戦闘力だとしたら、結局戦車の俺ではまず勝ち目はないだろう。
「流石にチヌだけで行かせるわけないんじゃないかしら。そのあきつ丸って人も居るんじゃないの?」
「どうだろうな。ま、なんにしろ、明日だ」
思っても居なかった俺の作戦への参加か。さて、足を引っ張る事にならないといいんだが……。