艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第57話

 離島に到着した俺達はまず離島内を調査。人型の深海棲艦の存在や痕跡がない事を確認すると、急ぎ応急のキャンプを島の中に設置し、そこに手持ちの備蓄を保管する。

 

 そして翌日になり、後続の物資運搬のメンバーや主力部隊が到着すると、キャンプに物資を保管。金剛殿率いる主力メンバーは敵への攻撃の為出撃し、物資補給メンバーは鎮守府へと戻り、残りのメンバーで離島の防衛を行う。

 

 防衛の任務には主に俺、あきつ丸殿と飛鷹の三人が基本メンバーとして残り、後は主力や補給のメンバーの中から随時選ぶ形となった。

 

 最初のころこそ慣れないキャンプ防衛や初対面の艦娘との連携ミスによって苦戦を強いられる事もあったが、日が経つにつれて徐々に連携も形になってきたおかげで敵の奇襲にも十分に対応ができるようになっていった。

 

 と言ってもそれはあくまで艦娘達の間だけで、俺に関してはさして変化はない。まぁ、海に出ずに離島の中からの対空射撃で敵艦載機を近づけさせない事しかしてないのだから当然ではあるが。

 

「ふぅ、今日の敵襲は大した事はなかったわね」

 

「ああ、敵もこっちに回す戦力が惜しくなってきているのかもしれないな」

 

 敵襲を退け、休憩と艤装の点検を兼ねてキャンプに向かう飛鷹の後ろを俺がついて歩く。彼女のおかげで敵の艦載機は容易にこの島に近づけないので俺の仕事は専らキャンプの整備等に回されているのがありがたい。朝野提督側の艦娘はあんまり俺の存在を快く思っていないのもいるからな。

 

「それにしてもチヌも随分対空射撃が上手になったわね。最初の頃は私に何回も吹き飛ばされていたのに」

 

「その訓練のおかげだよ。飛鷹には本当に感謝している。戦車の俺に特訓をしてくれたんだ。手間がかかって仕方なかっただろう」

 

「ふふ、確かに手間はかかったわ。でも、貴方が一所懸命にやっているのはわかったし、少しずつでも上達しているのはわかったから教え甲斐はあるのよ」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいがな。俺に時間を費やすより、他のやつに教えるほうが戦力の向上に繋がるわけだから申し訳なくてな……」

 

 俺の言葉に飛鷹は半目で俺を睨み付けてきた。

 

「ちょっと、それこそ私の教えてきた時間を無駄にするような言い方じゃない。そんな事言うならもう特訓してあげないわよ」

 

「……ああ、そうだな。すまない、嫌な言い方をしてしまった」

 

「まったく、今度の外出の時に付き合いなさい。それでさっきの発言は聞かなかった事にしてあげるわ」

 

「ああ、わかったよ」

 

 そんなことを話しながら歩いていると、前方から金剛殿と、朝野提督の元にいる艦娘である重巡の那智殿がこちらに歩いてくるのが見えた。

 

「ヘーイ、飛鷹、チヌ、お疲れさまデース」

 

「……フン」

 

 金剛殿が気さくに挨拶してくるが、那智殿は俺を睨むと視線をそらした。原因はまぁ、わかるが……。

 

「お疲れさま金剛、那智、敵は追い払ったし、次の出撃は問題ないと思うわ」

 

「オー。それは良いこと聞きましター。那智、次こそ敵の主力を倒しましょうネー」

 

「ふん、本当に問題ないのだろうな飛鷹、そんな戦車の対空射撃で敵を追い払えたとは思えないのだが」

 

 そういって那智殿は俺を睨む。最初に会った時からこの調子であり、以前うちの鎮守府に来ていたビスマルク殿を連想させるが、彼女と違って那智殿は戦車に対する八つ当たりではなく、明確に俺に敵意を持っているように感じる。まぁ、海の戦いに陸の兵器を持ち込んだら普通は気に入らないだろう。自分達が役に立っていないと言われているような部分もあるのだから。

 

「ちょっと那智。私の実力を信用してないの? それに、チヌも私がちゃんと対空射撃の特訓をしてあげたんだから、役立たずじゃないのよ」

 

「飛鷹の事は信用してるさ。だがな、戦車如きが私達の戦いに付いてこれるわけがないだろ」

 

 まったくもっての正論である。……そんなのは、俺が一番よく分かっている。

 

「那智、その辺にしておくネー。少なくともチヌは役立たずじゃないのは私も保証シマース」

 

「フン」

 

 金剛殿が諫めるも、那智は俺に鋭い視線を向けるだけでそのまま歩き去っていった。

 

「二人ともごめんなさいネー。後で那智にはきつく言っておきマース」

 

「飛鷹、チヌ、後でまたお話ししましょうネー」

 

 そう言うと、金剛は那智の後を追っていった。

 

「まったく、那智にも困ったものね」

 

「いや、当然の態度だとは思うんだが……そもそも、この島に敵がいなかった時点で俺はもうお役目ごめんなもんだろ」

 

「あのねぇ……さっきも言ったけど、あんたを馬鹿にされるって事は、あんたの特訓に付き合ってた私たちも馬鹿にされてるって事なの。いちいち自分を卑下してないで、もう少し胸を張りなさい」

 

「……善処する」

 

 俺の言葉に飛鷹は軽くため息をつくと前に歩き出し、俺も続く。正直、飛鷹には悪いが、俺には胸を張れるようなものはない。当然だ、船と戦車が互角になれるわけがないんだ。まして俺は先の大戦で何もできなかったんだから……。

 

 そして10日ほどして、主力艦隊が敵主力の壊滅に成功。作戦は成功した。それに伴ってこの補給基地も破棄。数日をかけて順繰りに資材を鎮守府に運び、後は明日運ぶ分で最後となった。

 

「チヌ殿、少しよろしいでありますか?」

 

 明日の撤収に向けて準備をしている俺の元にあきつ丸殿が声をかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「先ほど金剛殿より、今日の夜に少しばかり凱旋の前祝として祝宴を開こうと提案されてきたので、チヌ殿にも参加してほしい次第であります」

 

「祝宴ですか……。ここでするのもあれな気はしますが……わかりました」

 

 あきつ丸殿の言葉に了解の返事をして俺は作業に戻る。そしてその夜、ささやかながら残っているメンバーによって祝宴が開かれた。

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