艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第59話

 俺たちがキャンプ場に戻ると、既に祝宴の片付けも終わっているようで、空の酒瓶などは片づけられている。

 

「チヌ」

 

 声をかけられた俺が視線を向けると、そこには那智殿、金剛殿、飛鷹が立っていた。

 

「那智殿、先ほどは不快な思いをさせてしまい真に申し訳ありませんでした。金剛殿、飛鷹にもお詫び申し上げます」

 

「いや待ってくれ。謝罪しなければならないのは私のほうだ」

 

 頭を下げる俺に那智殿が声をかけてきた。顔を上げると、那智殿が申し訳なさそうな顔をしている。

 

「酔いが回っていたとはいえ、私もあまりに言葉が過ぎた。それに、陸と海の違いがあれど、仲間であるにも関わらず無礼な態度を取ってしまってもいた。本当に申し訳ない」

 

 逆に那智殿に謝罪され、俺が反射的に謝罪の言葉を口にしようとしたとき、制止の言葉が飛鷹から出てきた。

 

「はい、謝罪はそこまでね。どうせ放ってたら二人とも謝罪し合って終わらないでしょ。これで今回の件は終わり。後は蒸し返さないこと、良いわね」

 

「あ、ああ。わかった」

 

 飛鷹の言葉に那智殿が頷き、俺も同じように頷くしかなかった。

 

「チヌ、那智にはよく言っといたから、これで許して欲しいネー」

 

「ええ、もちろんです。元は私が悪いのですからどうかお気になさらず」

 

 俺がそう言うと、那智殿はもう一度頭を下げ、そして金剛殿と共にこの場を後にした。

 

「さ、私たちも明日に備えてもう寝ましょう。不知火は見張りをお願いね、時間が来たらに起こしてちょうだい」

 

「了解しました」

 

 こうして俺は不知火と別れ、飛鷹と共に寝袋に入る。ともかく今日は寝てしまおうと、目を瞑ろうとしたときに飛鷹が声をかけてきた。

 

「……チヌ、確かに貴方には先の大戦に関しては何もないかもしれないわ。でも、今は私たちが居るんだから、それは忘れないでちょうだい。私は……貴方が配属されて良かったと思っているもの」

 

「ああ、そう言ってくれるだけでありがたいよ」

 

 俺の返答に飛鷹は返答せずに俺に背を向ける。俺もそれ以上何も言わずに目を閉じる。目を閉じた俺の脳裏に過るのは先ほどの飛鷹の言葉と不知火とのやり取り。俺は……少なくとも不知火や飛鷹に認められるぐらいには必要とされているのだろうか……? それとも、ただ同情されているのだろうか……? その答えは出てこなかった。

 

 

 

 離島から戻った俺たちは鎮守府で提督への報告を終え、それから事後処理を済ませていく。そして数日後、朝野提督達は元の鎮守府に戻ることとなった。

 

「朝野。今回は作戦に協力してくれて感謝する」

 

「堅苦しい事を言うな。私とお前の仲なんだからな」

 

 埠頭で提督と朝野提督が挨拶を交わす。

 

「チヌ殿、今回は良い経験となりました。次もよろしくお願いするのであります」

 

「こちらこそ、今後もよろしくお願いします」

 

 そう言って俺はあきつ丸殿と敬礼を交わす。正直なところこれであきつ丸殿と当分は会えなくなるだろうというのは寂しいのだが……。

 

「……」

 

 横目で不知火が俺を睨んでいるのがなんとなくわかる。どうやら今でも俺があきつ丸殿と一緒に行くことを警戒しているようだ。

 

「不知火殿、心配しなくても今回はチヌ殿の勧誘は諦めているのであります」

 

「……それは関係ありません」

 

 あきつ丸殿の言葉に視線を背ける不知火。そんな二人をよそに両提督の挨拶は終わり、朝野提督達はここを離れる用意に入る。

 

「では、チヌ殿、次に会える時を楽しみにしているのであります」

 

 埠頭を後にする朝野提督率いる艦隊。そして最後にあきつ丸殿の言葉を残して彼女たちは去っていった。

 

「さて、今日からは通常通りだ。皆、頑張っていくぞー」

 

 朝野提督を見送ると、提督がみんなに声をかける。俺も、自分の本来の任務に就くために埠頭を後にした。

 

(……これで良かったんだよな……?)

 

 あきつ丸殿と共に行かなかった事に後ろ髪を引かれる思いを感じる。あれから冷静に考えれば、戦力の乏しいこの鎮守府だからこそ受け入れられている俺が他所の鎮守府に行ってうまくいくはずなんかないと言う事に気づいた。だが、それを差し引いてもあきつ丸殿、そしてまるゆの三人で同じ鎮守府に居られるのなら、それはとても魅力的だ。

 

……そう言えば勝手にまるゆも連れていく前提で考えてたな。まったく、まるでまるゆを物みたいに考えていたなんて、あの時の俺は本当に冷静じゃなかったんだと実感する……本当に、酒には注意しよう。酔いとは恐ろしいものだということを今回の件で十分に骨身に染みた……少なくとも酔いがなければ最初の失言がなかったはずだからな。

 

「チヌさん」

 

 不意に声をかけられ視線を向けると、不知火が俺のことを見上げながら睨んできていた。

 

「私は貴方を必要としています。ですから、行かせませんからね」

 

「あ、ああ、わかったよ……」

 

 その視線の圧力に思わず腰が引ける。そんな俺を置いて不知火は先に戻っていく。……不知火がなんで俺にそこまで拘るのか、俺には皆目見当がつかなかった。

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