こうして俺は四人とともに提督の元へ訪れた。幸い今回の襲撃では提督への被害はなかったらしく、提督は普段通り提督室で俺たちを迎えてくれた。
「チヌ、無事で本当によかったよ。今までも心配する怪我を負うことはあったが、今回は本当にダメかもしれないと聞いていた」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。幸い明石のおかげでこうして無事でいられています」
提督の言葉に俺は頭を下げる。
「ああ、明石には報奨を出さないとな……。さて、既に不知火達から聞いていると思うが、今この鎮守府は各施設に大きな損傷を受けている。その為当分は他の鎮守府からの増援によって防衛を行いつつ、施設の修繕を急ぐという状況だ。幸い増援の夕張によって入渠施設の一部は修繕が終わっているから、そこに順次負傷した艦娘を入れているが……時間はかなりかかるだろ」
「君にも当分は防衛と施設修繕に着手してもらいたい。病み上がりなところ申し訳ないとは思うが、事態が事態だ」
「了解しました」
それはまぁ当然だろう。施設が破壊されたままでは艦隊運用への悪影響は計り知れない。ほかの鎮守府の艦娘だっていつまでもここに張り付かせるわけにはいかないし。
「提督、せめて一日ぐらいチヌさんを休ませられないでしょうか? チヌさんは文字通り死ぬ寸前だったのですから」
「私もそう思うわ。ここで無理をさせてチヌがまた倒れたら元もこうもないし、改修を施せたって明石は言ってたけど、艦娘じゃないんだからちゃんと経過を見たほうがいいんじゃないかしら」
「そうですよ、どうにかならないですか?」
俺がそう思っていると、不知火、飛鷹、まるゆが反対意見を出してきた。言いたいことはわかるが、それを了承するつもりはない。
「三人とも、気持ちはありがたいが今は状況が状況だ。俺一人休んでなんていられないし、そんなに余裕もないだろう」
「ああ。正直今は一人でも人手がほしい。申し訳ないが、チヌにはすぐに復帰してもらう」
提督の力を入れた言葉に三人は渋々ながらも頷いた。
「さて次に……ヲ級についてだが」
その言葉に俺は無意識のうちに体に力を入れてしまう。ヲ級……提督はどう判断するんだ?
「彼女を正式に我が鎮守府専属の艦娘として登録する。これは上層部からの指示だ」
「なん……ですって!?」
その言葉に俺だけじゃない。提督を除く全員が驚き目を見開く。
「驚くのも無理はない。俺もそうだ。だが、事の次第を上に報告した時、上は確かにこの指示を出した。ただまぁ……国民感情とかもあるからこの事は海軍の中だけ……特にこの鎮守府と上層部を除けば各鎮守府の提督と艦娘だけにしか知らされない。他のところにはあくまでも「飛鷹の三番艦が着任した」という形でしか報告はしないそうだ」
「もっとも、飛鷹の三番艦は存在しないから、そういう計画があった。というのをでっちあげるらしいがな……」
「そう……ですか。しかし何というか……」
続く提督の言葉を聞いても俺たちは碌に口を開けなかった。当然だ、深海棲艦を艦娘として登録するなど、本当に上層部は何を考えているんだ? 最初の時といい、やけにヲ級に対して優遇しているような……もしも今回のことが知られればどれだけ非難が出るかわかっているだろうに。
「まぁ……そう言うわけだ。飛鷹、ヲ級の世話を頼めるか? 彼女に艦娘としてのイロハを教えてやってくれ」
「了解したわ。でも三番艦ね……急に妹ができたって事なのよねぇ……実感がないわ」
「妹……それじゃぁお姉ちゃん、宜しくお願いします……」
飛鷹の言葉を聞いたヲ級が頭を下げる。突然のお姉ちゃん発言に飛鷹は少し戸惑ったようだが気を取り直して「宜しくね」と返した。
「提督、それでは彼女の名前はどうなるんですか? ヲ級のままでは流石に……」
「ああ、それは追って決めることにする。今は取りあえず鎮守府の復旧が最優先だからな。ヲ級は取りあえず飛鷹と行動をしてくれ。不知火とチヌはともかく鎮守府の防衛と復旧に尽力してくれ」
「了解しました」
提督の言葉に俺たちは敬礼をし、それから提督室を後にする。それから飛鷹とヲ級は明石の元へ事情の説明へ。俺と不知火とまるゆは爆撃された施設の復旧のために現場へ向かう。ヲ級の事の衝撃は今も抜けていないが、今は最優先にしなければならない事があるのだと、自分に言い聞かせながら。