水上バイクに魚雷がつけられてからまず数日をかけて俺は魚雷の使い方を学び、そしてそこから数日かけて海上の的を目標とした実訓練を受ける。そして改めて黒潮を相手とした訓練を行って……。
俺はこれ以上ない程にボコボコにされた。
「ゲホッ……ゴホッ……」
なんとか這い上がった水上バイクの上で俺は盛大に咽る。さっきから何回落とされたか、数えるのも嫌になってくる。最初のころの水上バイクの特訓よりも落ちたぞ……。当然だが黒潮には一発とて当たっていない。
「チ、チヌはん。大丈夫かいな? 今日はもうやめよう? これ以上続けても明日が大変になるだけやで」
俺の背中をさすりつつ黒潮が声をかけてくる。確かに……これ以上はダメだな……。
「そう……だな……。悪かったな……ここまで付き合ってもらって……」
「なに言うとるんやチヌはん、これぐらい当然やで。さ、今日はもう帰ってゆっくり休もうや」
「ああ……」
残った力を振り絞り、俺はなんとか出撃ドックまで移動する。そして水上バイクをしっかりと固定すると、よろめく足で何とか家まで戻り、そのまま床に倒れこんだ。
「もう、チヌはん初日から飛ばしすぎやで。明日からはもうちょっと加減せな」
「ああ……しかし……魚雷の扱いがこうまで難しいとはな……主砲や機銃とは勝手が違いすぎる……」
「そらそうやで。簡単に扱えるなら苦労せえへんって。それよりチヌはん、風呂ぐらい入りいや。そんな海水塗れのまんま寝たらアカンで」
「ああ……ちょっと待ってくれ……」
俺はなんとか気力を振り絞って立ち上がり、タンスから着替えを取り出して風呂場へ向かう。……さっと済ませないと途中で寝そうだ。
「……チヌはん大丈夫なんか? 風呂場で寝たりせえへんか?」
「……遅いと感じたら様子を見に来てくれ。正直……寝そうだ」
そうなんとか絞り出すと、俺は覚束ない足取りのまま風呂場に入る。そして適当に服を脱ぐと湯船に湯を張る。その間も眠気が押し寄せてくるが、なんとかそれに対抗しつつ、なんとか湯が溜まっていくと、手早く体を洗ってから湯船に浸かる。
「ふ……う……」
湯に使った途端に一気に気が抜ける。風呂は良いものだと言うことを実感するが……だめだ、このままじゃ本当に寝てしまう。俺はなんとか体を起こすと浴室から出る。温まった体が外の空気で冷える中、少しだけ眠気の覚めるなかで手早く服を着て脱衣所を出た。
「あ、チヌはん。布団敷いておいたけど……早ない? 体洗ろたんか? それにちゃんと温まれてないやろ」
「……一応は洗ったが、湯船に浸かっているだけで寝そうになった……。起きてから改めて入る」
そこまで言うと、俺は布団の上に倒れこむ。流石に限界が来ていた。
「あ~、やっぱそうなったかぁ……しゃあないなぁ、今日はうちが添い寝したるからゆっくり寝えや」
黒潮がそんな事を言っているが、もう反論する気力もない俺はそのまま眠りに落ちていった。