「……気持悪い……」
あれからパーティーは色々と盛り上がり、俺は足柄から色んな酒を飲まされてしまった。なんとかパーティーのお開きまでは耐えたが、早く家に戻って休まないとヤバイ。
「あ、チヌさん……大丈夫ですか?」
後ろから声をかけられ振り返ると、そこには香取が立っていた。
「香取か……正直キツイ……」
素直に答えると、彼女は俺の肩に手を回し、肩を貸す形で俺を支えてくれる。
「このまま支えていきますので、早く帰りましょう」
「ああ……」
香取に支えられ、俺は覚束ないながらもなんとか歩く……しかしなんだろうこの状態……何か覚えがあるような……。
「こうしていると、チヌさんが着任された初日を思いだいますね。あの時もチヌさんは足柄さんにお酒を飲まされてふらついていらっしゃいましたっけ」
「……そう言えばそうだな。あの時は確か……香取の肩に手を置いてたんだっけ……」
「はい。それで、家に帰ったチヌさんを介抱したんでしたね、懐かしいですね」
「……あんまり今の状態に懐かしさとかを感じたくはないんだがな……」
そんな事を話しつつ、俺たちはなんとか家に辿り着く。そして扉を開けると、そこには不知火とヲ級の姿があった。
「お帰りなさいチヌさん。酔い覚まし用の水とお布団ご用意してますよ」
「……万が一の時の洗面器もある」
言われれば確かに布団が既に敷かれていて、枕元には水の入ったペットボトルと洗面器が用意されてる。
「あらあら、二人とも準備がいいですね」
「先生から去年の事は聞いていましたので、事前の対策はできていました。チヌさん、横になってください」
「あ、ああ……」
何とか香取から体を離して俺は布団の上に寝転がる。ダメだ、今日はもうこれ以上動けそうにない。
「それでは、後はお二人にお任せしますね」
そう言うと、香取は家から出て行った。後に残った不知火とヲ級は俺を見下ろしてくる。
「……チヌ、大丈夫? お水飲む?」
「いや……大丈夫だ。二人も、もう戻っていいぞ」
そう言いはしたが、二人とも帰る様子も見せず、俺を見下ろしたままだ。おまけに不知火に至っては大きなため息をつかれる。
「……チヌさん、この状態を放っておけるわけないでしょう。今日はこのままお世話しますからね」
そう言うと彼女はタオルを濡らしてきて俺の額の上に置く。冷たく濡れたタオルが熱の籠った頭を冷やしてくれる。
「まったく……こんな状態で遠慮なんかしないでください。本当にチヌさんは他人の好意を受け取らないですね」
「……私達が好きでやってる事だから。たまには遠慮なく甘えてほしい」
二人からそう言われ、口を開こうとしたが、二人はジト目で俺を見下ろしてくる。今の俺にそれに対抗する気力もでてこず、結局口をつぐんでしまった。
「さて……と。チヌさん、これで皆の好意については納得できたと思います。ですから……今後も改めてよろしくお願いしますね」
「……宜しく、チヌ」
寝ている俺に向かって深々と頭を下げる不知火と、それに合わせて頭を下げるヲ級。この体勢の時に言われても困るが……。
「ああ……、取りあえず好意を持ってくれてるって事は十分わかったよ……今後とも……宜しく頼む」
俺の言葉に二人は頭を上げる。よく見ると二人とも少し笑顔になってた。だが、その辺りで微妙に視界がボヤけてきた。ダメだ、横になったせいで眠気が来てる。
「……二人とも……もう眠気がきた……。かえっ……ていい……か……ら」
そこまで言ったところで、俺は眠りに身を任せていった。