結局、不知火の言葉の真意もわからないまま食事を終えた俺は、家に戻って命令書に目を通す。命令書の内容は提督が直接行った事と大差はなく、他には警備の道順やチェックを入れる紙がどこにあるか等を書き込んでいる地図があった。それに目を通し、とりあえず暗記しようと努力する。
「……あ、もうこんな時間か」
ふと窓の外に目をやると、既に日も落ちて辺りはすっかり暗くなっていた。どうも暗記に集中しすぎて時間の経過に全く気付かなかったようだな。一応、地図や命令書を箪笥にしまうと、俺は軽く体操で関節を解していく。そうしていると、不意に、扉がノックされた。
「はい?」
体操をやめ、俺は扉を開ける。すると、そこには不知火の姿があった。
「チヌさん。貴方の歓迎会を行いますので、ついてきてもらえますか?」
「……歓迎会?」
兵器の……しかも、ここでは碌に役に立たない俺が歓迎会なんて開かれるとは思っていなかったが……。
「はい。艦娘達との顔合わせもしますので」
「なるほど、わかりました」
その理由に一応納得した俺は、服を軽く整え、不知火の後に続く。少しして、食堂に到着した俺たちが中に入ると、そこには提督と間宮。それに、十五、六名程の艦娘達が居た。
「おお、主役の登場だ」
そう言うと、提督は出入り口までわざわざ来て、俺の腕を掴んで全員に見やすいように真ん中の壁際に連れてくる。
「皆、彼が本日付でこの鎮守府に配属された三式中戦車のチヌだ。宜しく頼むぞ」
「チヌです。宜しくお願いします」
そう言って俺が頭を下げると、艦娘達が一気に俺に詰め寄ってきた。
「本当に戦車さんなんですか? どうやって私達みたいになったんですか」
「兵装だしてみてよ、ほらほら」
主に詰め寄っているのは、明らかに子供の外見をしている艦娘だが、その後ろから成人女性らしい艦娘も詰め寄ってくる。
「はいはい。皆さん、チヌさんが困ってますから少し離れてください」
後ろから手を叩き、不知火が注意を促したおかげで艦娘達が俺から離れてくれた。
「チヌさん、こういうわけですので、できれば素の口調でいられるほうが楽だと思いますよ」
確かに、幼女相手に敬語を使い続けるのは辛い。それに他の艦娘達もどうもそう言うのを気にしている雰囲気はないし。
「ゴホン……えーと、こうでいいか?」
そう言って兵装を出すと、艦娘達から感嘆の声が上がる。
「おおー、ホンマに出しとるわ。うちらだって装備は普段外してるのに、なんでできるんや?」
「これは凄いですね。まさか戦車でも私達と同じ方が居るなんて」
そう言って俺の兵装に遠慮なく触ってくる艦娘達を不知火と提督と、後は数名の大人らしい艦娘がなんとか落ち着かせる。
「さて、そういうわけだ。彼にはこの鎮守府の防衛や警備の任務に就いてもらう。皆も仲良くしてやってくれ」
提督のその言葉に艦娘達が返事すると、俺は席に着く様に促される。促されるまま席に着いた俺は結局、艦娘達の好奇心を満足させるために色々と答えたりやらなんやらしないといけない羽目になった。