翌日、今日の予定は俺の海戦での訓練だ。まぁほとんどは自主訓練なのではあるが、俺が自主訓練をしているのを見かけると不知火やまるゆらへんがよく手伝ってくれる。だが、今日は少し事情が違った、
「それじゃぁ準備はいいかい?」
「ああ、始めよう」
俺の目の前に立っているのはヴェールヌイ。どうも昨日の戦闘での調子の悪さが気になるらしく、訓練で調子を取り戻したいのだという。その準備運動替わりに俺の相手を務めてくれるとの事だ。
「響、早く調子を取り戻すのよ」
「頑張ってくださいね、チヌさん」
陸上から暁と不知火が声をかけてくる。だが、暁の声が届いたとたん、不意にまたヴェールヌイから響の姿が一瞬だけブレて見えた。
(やっぱりブレて見える……なんなんだ?)
気にはなったが、すぐにその事を忘れ、俺は水上バイクを走らせる。棒立ちなんてしてたら一瞬で終わらされる。
「行くよ!」
動き出した俺にヴェールヌイの魚雷が発射される。くっ、牽制なんだろうが避けるのが精いっぱいだ。
「チッ!」
なんとか魚雷を避けると、俺は機銃でヴェールヌイに攻撃する。勿論ダメージを与えられるなんて思ってはいない。単なる目くらましだ。
「クッ」
機銃の弾をうっとおしいと思ったのか、ヴェールヌイは最小限の回避行動で弾を避けながら俺に主砲を向けてくる。俺は咄嗟に大きく回避行動をとる。
「無駄だよ」
ヴェールヌイから発射された弾が俺の目の前に着弾する。咄嗟にハンドルを切り大きく不規則に動いて続けての攻撃を避け続けるが、俺は既に違和感を覚えていた。
(一発も当たらない? どういう事だ?)
響の時の彼女なら既に俺はバイクから落とされてるはずだ、なのに未だにヴェールヌイの攻撃が俺に当たっていない。
「ハッ!」
攻撃の合間を縫って俺も主砲を撃つ。もっとも当たるとは思っていない。本命はこの後、回避行動でできるであろう隙をついて少しでも近づいて……。
「うわあ!」
「!?」
俺の攻撃がヴェールに直撃し、彼女が海上に膝をついた。馬鹿な、当たって上にまともなダメージを受けただと!?
「ヴェールヌイ!」
急ぎ俺は彼女のもとへ向かう。演習で使う模擬弾だから実際の負傷はないはずだが、衝撃はそのままだ。何もなければいいが……。
「ゲホッ……チヌ……」
「大丈夫かヴェールヌイ? いったいどうしたんだ、あんな弾に当たるなんて」
「うん……どうやら調子はまだ回復してないみたいだ……ごめん」
受け答えの様子から見るに特に何もなさそうだが……調子が悪いにしても限度があるだろう。
「訓練はここまでにしておこう。俺の主砲で直撃を……ましてやダメージを受けるなんて本当に調子が悪いぞ。明石に見てもらって、それからしばらくは様子を見たほうがいい」
「そう……だね、そうしておこう」
ヴェールヌイも自分の調子の悪さを自覚しているのか素直に頷く。それを確認すると俺は彼女を抱え上げ、バイクの前に座らせる。
「チヌ、手間をかけさせてごめんね」
「気にするな」
ヴェールヌイの言葉に短く答えると俺はすぐに陸に戻る。そこでは既に心配そうにしている暁と不知火の姿があった。
「響! 大丈夫なの!?」
「響、怪我はありませんか?」
「うん、大丈夫だよ。ただ、思っていた以上に調子が悪いかもしれない。明石の所に行こうと思う」
「二人とも、付き添いをしてくれないか? 俺はここの片づけをしておく」
「そうですね、ではお願いします。行きましょう響」
「うん、ありがとう不知火」
「響、大丈夫よね?」
「心配しすぎだよ暁、大丈夫だから」
足取りを確かに歩くヴェールヌイに不知火と暁が付き添う。しかし、本当に調子が悪そうだな。今回は訓練だったから良かったものを、実戦は大丈夫なのか?