第98話
「……鎮守府単独の大規模作戦ですか?」
いつものように提督に呼び出された俺に提督から告げられたのは次の作戦の内容だった。
「ああ。この鎮守府も最近は戦力が整ってきた。特にヲ級とガングート、ビスマルクによってこれまで不足していた航空戦力、火力が増加したのが大きい」
確かにその通りだろう。三人が加わるまでは戦艦は榛名、空母は飛鷹しか居なかったのだから。だから大規模な攻略作戦には常に朝野提督や革元提督と合同で行ってきたのだが……。
「それで、いったい何処を攻略されるのですか?」
「現在の目標はここだ」
そう言って提督が机の上の海図で指差したのは……以前朝野提督の艦隊と共に攻略した地点に比較的近いポイントで、いくつかの小島が点在している。
「ここですか……。しかし、ここは戦略上重要なポイントだったでしょうか? 確か、以前朝野提督との合同作戦で攻略したポイントを経由すれば特に問題なく艦隊や輸送船の移動は行えたと思いますが」
「……戦略上は確かに重要なポイントではない。だが、気になる情報がある」
気になる情報? それはいったい……?
「この海域では最近レ級の目撃が報告されている。放置しておくとマズイことになりかねない」
「レ級……ですか」
……提督の言葉に俺は背筋に冷たいものが流れるのを感じた。レ級。戦艦という区別こそ付けられているが、空母のように艦載機を運用する上に、魚雷まで使うという他の艦種の攻撃方法まで行ってくる、マルチタイプの敵。しかも単純な戦闘能力だけで言えば姫や鬼と呼ばれる敵の最上位クラスにも匹敵するという……。確かに放置しておいていい敵ではない。
「それで、今回の作戦において私はどのような役割になるのでしょうか? 鎮守府の防衛に回すなら明石にも連絡はしておきますが」
「実際の海域攻略になればそうならざるをえないな。ただ、それとは別に……聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「……今回の作戦、ヲ級を参加させるべきだと思うか?」
……どうなのだろうか。これまでの戦闘におけるヲ級の様子を見るに、敵に寝返るとは思えない。だが、ヲ級は鹵獲された身だ。もしも……敵に俺のように鹵獲する能力を持つ敵が居たらどうなる? 酒匂の件もある。……通常の作戦ならともかく、レ級討伐にぶつけるには不確定要素は否めない。
「……私個人としてはヲ級が自らの意志で裏切るとは思っていません。ですが、敵に鹵獲される可能性を考えれば参加させないほうが不確定要素は少なくできると思います」
「……そうだな。普段の出撃や合同作戦ならともかく、レ級がヲ級を見逃すような真似をするとも考えにくいか。わかった、ヲ級は今回の作戦から外して……仕方ないな、単独で行うつもりだったが、他の鎮守府から空母を派遣してもらうか。チヌ、もう下がってもいいぞ」
「ハッ。失礼します」
一礼し、俺は提督室を後にする。しかし、レ級か……危険な敵だな、今回の作戦で無事に倒せればいいんだが……。