艦これの世界で三式中戦車が人となったら   作:雨宮季弥99

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第99話

作戦の事が伝えられ、各々が作戦予定日までに準備を整えていく。そんな中、俺はヲ級、ビスマルク、川内、秋雲、まるゆと共に近海の哨戒を行っていた。

 

「もうすぐ大規模作戦だねー。ビスマルクさん、期待してるからね」

 

「フッ。このビスマルクに任せなさい。レ級なら相手にとって不足なし。私の力を見せてあげるわ」

 

 先を進む二人はそうやって気合を入れているが、俺としては不安な気持ちになる。無事に終わればいいんだが。

 

「おーい、チヌさん。なーに暗い顔してるのさ。なに? まだ始まってもない作戦の事考えてるの?」

 

「だ、大丈夫ですよ。きっと大丈夫です」

 

 隣を走る秋雲と浮上してきたまるゆもそう言っているが……。

 

「……俺としては不安だ。レ級の強さは危険だ。何もなければいいんだが……」

 

「……大丈夫。今回はこちらが攻める作戦だし……。もし鎮守府に攻撃して来たら、私が沈める」

 

 そう言ってヲ級は俺を見てくる。その様子を見てると、やはりヲ級が自分の意思で裏切ることはないだろうと思えるが……。

 

「そういう事態にならないのが一番だよ。……それより、そろそろ偵察機を出す頃合いじゃなかったか?」

 

「……うん。それじゃぁ行く」

 

 ヲ級の甲板から偵察機が飛び立ち周辺の偵察のために飛んでいく。普段ならこの周辺で小規模の敵艦隊が発見されるはずだが……。

 

 偵察機が戻ってくるまでの間、全員が警戒態勢を維持しながらもどこか気が抜けている空気を感じる。まぁ、この戦力なら近海で発見される敵ぐらいなら問題はないからだろう。……と言っても、かつてそう思っていた出撃でヲ級に殺されかけた俺としては警戒を解く気にはなれないが。

 

「……あ……!」

 

 そんな中、不意にヲ級が声を上げた。その目は見開かれ、驚愕の表情を浮かべている。

 

「ヲ級、どうかしたの?」

 

「……偵察機が迎撃された。敵は近い」

 

 その言葉に瞬時に全員が警戒態勢に入る。

 

「偵察機が迎撃された位置は?」

 

「……8時の方向……。敵、艦載機捕捉」

 

 そう言ってヲ級が指さした方向。その空を飛ぶのは深海棲艦の艦載機。……これは、かなり数が多い。相手は軽空母じゃないぞ。

 

「中々の数ね。相手は空母かしら……ヲ級、敵を轟沈させてもいいわよね?」

 

「……構わない。それより、油断しないで……!」

 

 軽口を叩くビスマルクにヲ級が真剣に警告する。

 

「……そうね、そうするわ。全艦、対空攻撃! ヲ級の艦載機を援護して!」

 

 ビスマルクの言葉を合図に俺達は一斉に敵艦載機を攻撃。その間にヲ級の艦載機が飛び立ち敵艦載機とが空中戦を繰り広げる。その間に俺達はこちらに接近する敵影を補足した。

 

「……なんでここにいるのさ! ここはあいつの目撃例のない海域でしょ!?」

 

 秋雲の叫びに俺は敵の編成を確認する。軽巡、重巡、軽空母……その中に混じっているのはレ級……!? なんでここに居る!

 

「逃げる暇はないわ。全艦攻撃! 勝って活路を開くのよ!」

 

「そうだね……よし行くよ!」

 

 ビスマルクの声を合図に互いが魚雷を、砲撃を打ち合う。俺はともかく回避と牽制に専念だ。この状況でヘタな行動は味方の足を引っ張る。

 

「クッ! なんて手数……! こんなの反則だよ!」

 

 秋雲の口から弱音が叫ばれる。俺も同じ気持ちだ。艦載機を飛ばしながら砲撃も魚雷も打ち込んできて、挙句の果てに艦載機の爆撃はまるゆにまで及んでいる。文字通り化け物だ。

 

 戦況は完全にこちらが押されている。ヲ級の艦載機がなんとか制空権こそ抑えているものの、こちらは俺も秋雲も足を引っ張っているし、まるゆも思うように戦えていない。ビスマルクと川内が持ちこたえてくれているが、いつまで持ち堪えられるか……。

 

「……これで!」

 

 そんな中、ヲ級の爆撃が重巡に命中。そのまま轟沈させた。よし、これでバランスはこちらに傾いたはず。このままいけば……!

 

「ちょ! レ級が突っ込んでくるよ!」

 

 川内の叫んだ通り、レ級が砲撃をしながらこちらに走ってくる。クソッ、どういうつもりだ!?

 

「きゃあ! クッ……この秋雲さんが」

 

「あきぐ……グア!」

 

 その砲撃に巻き込まれて秋雲が中破に追い込まれ、俺も水上バイクが大きく損傷する。……ここまで……か!

 

「チヌ! 秋雲! ……くっそー!」

 

 川内がレ級の前に立ちふさがろうとして……だめだ。川内じゃ抑えきれずに突破され、こっちに突っ込んでくる!

 

「く……秋雲、離れていろ!」

 

 咄嗟に秋雲から離れた俺に向かって砲弾が次々に飛んでくる。なんとか避けるが、これは……誘導されて……!?

 

「ぐあああ!」

 

 水面下で魚雷が爆発し、俺は水上バイク諸共空を舞い、水面に叩き付けられる。辛うじて水上バイクから落ちていないが……グッ……。

 

(バイクは……だめだ、かなりダメージがでかい。俺自身もこれは……)

 

 爆発の衝撃で体が完全にやられている。動くことこそできるが……回避行動なんてできるはずもない。

 

(ここまで……か!)

 

 再びこちらに突っ込んでくるレ級に俺は主砲を放つ。だが、それはあっさりと避けられ、そしてレ級の主砲がこちらに……。

 

「……チヌ!」

 

 突然レ級が背後から羽交い絞めにされる。それをしたのは……ヲ級!? 何をやってる! 空母がそんな事を!

 

「チヌ、逃げて! ここは抑えるから、早く!」

 

「! 馬鹿な事を言うな!」

 

 なんとか水上バイクを動かそうとして……だが、ハンドルが誰かの手に捕まれる。相手は……川内!?

 

「チヌ、撤退だよ! 敵の増援が来てる!」

 

 そう言って川内が指さした方向。そちらから確かに新手が来ている。だが、このまま逃げたら……!

 

「だが、ヲ級が! 俺が少しでも足止めをしてヲ級を!」

 

「チヌじゃ抑えきれない! それに、ヲ級の意思を無駄にしないで!」

 

 有無を言わさず川内は水上バイクをコントロールして俺ごと戦場を離脱する。それに続いてビスマルク、秋雲、まるゆも撤退する。唯一ヲ級だけが、レ級を羽交い絞めにしながら艦載機で他の敵を抑えている。

 

「く……ヲ級!」

 

 遠ざかるヲ級を、俺は見続けることしかできなかった。

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