とはいえ、この一話だけで試練をクリアします。ハジ×ノイいちゃいちゃを増やす為に頑張るぞい
~ハジメside~
一泊の宿泊後、美羅達はアルヴから聞いた情報を元に氷雪洞窟の入り口まで四輪で突き進んだ。ハジメは暖房のアーティファクトを作って皆に渡しているが、美羅から保険としてホットドリンクを十個渡された。洞窟の中は氷張りの壁で、透明度が高く水晶と見間違えそうだ
「ふ~ん、まぁまぁな景色ね」
美羅からすればこの程度の景色は普通よりちょっといいかも程度らしくあまり驚いていないが、ハジメは初めて見る氷の景色に思わず感嘆する。ゆっくり歩きながら周囲を観察していると、遠くから振動を感じる。生物・・・いや、魔物が生息していると判断してライトボウガンの弾を装填する。本当はドンナーでも良いのだろうが、この氷雪洞窟が崩壊したら危ない為に却下である
「魔物の数・・・およそ三十です」
「ノイントはカウントがゼロと同時に突撃、僕が最初に左側を狙撃して突撃と同時に右に出て援護するよ!」
「接敵までおよそ十秒」
「カウント五秒からスタート」
ハジメのカウントが進み、敵の足音がどんどん大きくなる。ノイントは大剣を両手で持って待機、敵が見えたのはカウントが五になってからだ。敵が見えた瞬間、ハジメが先制狙撃で最奥の一体を倒す。魔物の姿は地球で言う所のイエティで、仲間がやられた事に激怒したのか迫るスピードが速くなる。だが、ハジメは慌てる事なく一体一体を確実に狙撃して倒し、カウントがゼロになった瞬間ノイントがイエティ達の懐に飛び込む
ハジメは横っ飛びで流れる景色に点在するイエティの頭部を狙撃し、ノイントの背後から襲おうとしたイエティの足を狙撃して行動を阻害させる。そうする事でノイントの攻撃時間を稼ぐ事が出来る。二人は危なげなくイエティ達を殲滅して増援がない事を確認し終えて合流する
「ハジメの援護のおかげで安心して倒す事が出来ました」
「僕もノイントが前面に出てヘイトを稼いでくれたから安全に狙撃が出来たよ」
美羅から見てもハジメの援護は最適解だったので指摘せず、この迷宮の情報を全て網羅する。魔力に干渉し、性質、現象等の全てを見抜く事で試練の内容をある程度把握する事が出来るのだ。だが、知る事が出来てもそれを教える事はしない
「おい美羅ぁ、俺も戦いたいんだが?」
「今までの迷宮で暴れていたから我慢しなさい。雌煌が無双ばかりしたら試練にもならないし、成長に繋がらないでしょ。今でもそこそこは出来るけど、まだ全部を見て判断出来ていないのよ」
ハジメとノイントは強く、このトータスで五強に入る位だが美羅が懸念しているのはそこではない。武力よりも情報処理能力の部分を観察しているのだ。ハジメに関してはこの迷宮で見極める事が出来るものの、ノイントはまだまだ幼い。感情が芽生えてからおよそ二ヵ月・・・これを思うと不安材料が沢山あり、この迷宮ではそれが顕著に表れる
「まぁ、この迷宮を進めば判断出来るわ」
「ほーん、って事はそういう試練なのか」
美羅程詳しく理解していなくとも、雌煌もこの迷宮の試練の内容をざっくりとした感覚で理解した。美羅達はそのまま苦戦する事なく魔物を蹴散らす
「雌煌姉の技を真似たビームサーベルの出番だ!」
「ハジメが作ったガンブレードの威力を味わいなさい」
ハジメはボウガンの先端にビームサーベルを差し込んで遠近両用で戦い、ノイントは魔力を流す事で魔力の玉を生成して敵を爆殺したり切ったりと中近両用で戦う。ハジメの撃ち漏らしはノイントがカバーし、ノイントを抜けてハジメを狙おうとする魔物はビームサーベルの餌食―――とてもバランスの良い戦い方を身に着けた
そしてお気づきだろう、ハジメの作るアーティファクトの性能が飛躍的に上昇しているのだ。ノイントとの知識共有の甲斐あってか、神代に生きる様々な職人達の知識を見る事が出来たのが一番大きかった。ただでさえオスカーとのオタク談義で構想が広くなった所にこれは・・・必然だったのだろう
「いいなぁ~、俺も武器が欲しいぜ」
「まぁ・・・仕方ないわね。私達が武器を扱うなんて事は殆どないし、使ったとしてもそれは厄災に対応する時のみ―――一振りで環境を変える危険なあれ等は使えないわ」
一応補足しておくが、美羅と雌煌は自分専用の武器を持っている。だが、それを使うのはほんの一握りの敵、もしくはハンターだけだ。厄災をもたらす者にだけしか振るわないそれを顕現させたのは極僅かだ
最初は魔物の襲撃が多く歩みが遅くなっていたが、途中から魔物との出会い方が変わった。道すがら襲ってくるのではなく、氷壁に擬態して襲ってきたり、氷壁からいきなり出現したりと様々だ。警戒レベルを引き上げて探索を続ける事で対処は難しくなくなった。そこからは順調と言いたかったが、少し進むと吹雪が襲いかかった。それは並みの雪ではなく、小さなドライアイス並みの冷たさだ。ハジメに少しだけ直撃したが、ノイントが障壁を張る事で吹雪は全部遮断した
「・・・こんな吹雪もう二度と当たりたくないよ」
「この雪を沢山被ると凍死する事は確実ですね。」
「極寒地域程じゃねえが、雪山ならこの程度普通だな。まぁ、ハジメ達はホットドリンク飲んでないから仕方がねえな」
猛吹雪の中進み下へと続く階段を降りると、上から見えた広大な迷路に意気消沈する。ノイントの魔力は尽きる事はないが、この代り映えのしない風景は嫌になってくる。だが、これも試練なのだろう。注意力散漫な所を突く為の迷宮かもしれないし、弱る気持ちを判断しているのかも分からない
「広い迷路だな~。めんどいからぶっ壊さね?」
「壊しても即時再生の効果がある壁、乗り越えようとしたら転移の罠。正規で攻略しないといけないわ」
「先行してビットを飛ばしたけど、魔物の反応が無いね。いや、あるにはあるんだけど・・・其処から動かない感じだ。何かを護っているのは確実、恐らく鍵か何かがあるって事だね。まぁ、クロスビットで回収するから後でまとめて戦うって方向で行こう」
「この通路は広いとは言え大型の魔物が列を作る事は難しく、真正面からだけの襲撃ならば迎撃も容易ですね」
ハジメはビットで周囲を索敵し、魔物が護っているであろう鍵を空から分捕って回収する。回収するまでの間、クロスビットを移動させている間にソナーでこの迷路のほぼ全体をマッピングした事で、何処が入り口で何処が出口も把握した
「その魔物は巨大な奴か?」
「まぁまぁ大きいかな?」
「雌煌、ステイ。今まで沢山ぶっ潰してるんだから我慢しなさい。二人でも余裕で倒せるけど、一応ね」
「・・・しゃ~ね~な~。ハジメ、魔物をミンチにしろ!」
「無茶を仰る―――と言いたいけど、やってみるよ」
ハジメは、アイテムポーチから弾丸を取り出して装填。いつでも迎え撃てる様にして道を進むと、大きな扉と思わしき広場に出た。そして、ビットを回収して鍵を入手。それと同時に、氷壁を破壊しながら巨大な魔物が五体姿を現す
「先ずは一体!」
ズドンッ!
弾丸が巨大な魔物の一体の胸部に吸い込まれたが、効果はいまひとつ。しかし、これはあくまでもトドメを刺す布石である。残りの四体にも同様に胸部に弾丸を撃ち込み、ハジメはボウガンに外付けされたスイッチを押す
「これで終わりだよ」
その言葉と同時に弾丸を撃ち込まれた胸部が膨らみ、上半身が弾け雷柱が全てを呑み込んで魔物を炭化させた
「ほ~ん、美羅の権能の雷を使ってんのか」
「重力魔法による指向制御、空間魔法の範囲決め、再生魔法と生成魔法の雷の連鎖爆発という感じね」
「・・・たったあれだけで見抜く美羅姉さんは凄いよ」
ハジメの渾身の弾丸は、今までの中で最高の出来で相手に考える隙を与えるという効果があるのだが・・・雌煌はごり押しなので言うまでもないものの、美羅には一発で見抜かれた事に少しだけショックを受ける。せめて二発目でと思ったが、権能を使っている関係で情報が頭の中に入っているのかな?程度にして深く考える事を止めた
鍵をはめ込み、重厚な扉が開く。その道は今まで通ってきた氷壁よりも透明度があり、反射している。より一層迷いそうになるミラーハウスと例えればいいだろう。だが、これまでとは違って魔物の反応が全く無い
「ソナーもそうだけど、感知にも魔物が引っ掛からない・・・。ノイント、罠の可能性が大きいと思うから気を付けて」
「分かりました。いざという時は障壁を重ねて張ります」
ノイントは念の為に障壁を増やし、危険と判断したら更に重ね張りする予定で動く。ハジメ達は不気味なまでに何も起きない道を進んでいると、ノイントが足を止めて周囲を見回す。どうやら本当の意味の試練が始まった事に気付いたハジメは、足を止めてノイントの手を繋いで何が起きたのかを尋ねる
「ノイント、大丈夫?何か違和感があったらすぐに言って」
「・・・声が聞こえました。何処かで聞いた事のある声なのに分からないのです」
「なるほど、試練が始まっているという事だね。声という事は精神を揺さぶって判断能力を奪うと思う。・・・気にしたら駄目なんて言えないけど、目の前の事だけに集中しよう?」
「・・・はい」
ノイントの調子が明らかに低下している・・・。これを進めば恐らく僕等にも声が聞こえる筈だけど、そうなると聞こえる声はもっと酷くなる可能性がある。クソッ、僕に出来る事は手を握って不安を和らげる事しか出来ない
ハジメはノイントの手を握って少しでも不安を和らげようとする。だが、それでもノイントの表情が少しずつ悪くなっている。道中で氷の霧のビームが襲い掛かるが、ノイントが張る障壁の性能は変わりなく機能している為破られる事もない
「ノイントのお陰で怪我無く進めるよ。ありがとう!」
「・・・いえ、大丈夫です」
どうしよう・・・気まずいよ
ハジメは、未だに声が聞こえない状況に少しずつ焦り始める。だが、そんなハジメにも擦れる様な声が徐々に聞こえ始め、しっかりと聞こえる様になった。その声は、「助けなくていいのか?」「自分だけ逃げている」等の否定的な言葉ばかりだ。感情を得て一年も経っていないノイントからすれば、物凄く気分が悪くなる事は確実。徐々に大きくなり、酷くなる言葉を耐えている事は苦痛にも等しいだろう
ハジメ達がトラップを抜けると、虹色に輝く壁があった。罠の類ではなさそうだが、次の試練に繋がる何かである事だと確信する
「美羅姉さん、この虹色の壁ってどういう類の罠か分かる?」
「分かるけど、今回は教えないわ。但し、この先は個別の試練となるわ」
「・・・転移による分断か。僕は声に関してはあまり気にしない様にしているけど・・・ノイントは大丈夫じゃないなぁ」
「いえ、大丈夫です。これが試練ならば突破しましょう」
ノイントは力強く返事をするが、ハジメは違いを見抜いていた。空元気で自分に投げられる負の声を跳ね除けようと必死な姿に見えていた
美羅姉さん達は何も言っていないけど、ノイントが一番大変だと分かってる筈だ。でも、それは乗り越えなきゃいけないから教えないだけなんだ
ハジメとノイントは、武器の点検を終え一呼吸入れた後虹色の壁へと進んだ。そして、浮遊感が襲いハジメは一人だけとなった。周囲は今までと同じ氷壁だが、通路は一本道で迷う事はない。ハジメは警戒しながら奥へ進むと、真ん中に氷柱が天井まで伸びている部屋だった。美羅の言っていた様に、この部屋が挑戦者達に与えられた試練だろう
「何もない・・・何てことはないか。全く、この迷宮は趣味が悪いね」
ハジメがボウガンを氷柱に向けると、黒いモヤが溢れて人型を模す。一対一のタイマン勝負―――シンプルな構図だが、何かしらのギミックがあるだろうとハジメは予測して作戦を練り始める
『作戦を練っているところ悪いけど、試練はもう始まっているよ』
「そんな事分かってるよ。声から自分の影が相手になると想定していたからね」
黒い人型のモヤの正体はハジメだった。いや、どことなく違っている。声色や呼吸等は全く同じだが雰囲気が大分違っており、闇落ちしたハジメみたいな感じだ。どこぞの黒歴史が、「呼んだ?」と言いながら現れたかの様だ
『少しは冷静か。でも、本心はどうかな?』
「本心も何も、確かにかわいそうだな~って思ったりはしているけど、それは彼等が選択した結末なんだ。良い感情を抱いていたならともかく、僕はあの時から一線を引いたんだ。人の事を考えずに突撃、事実を捻じ曲げた悪評、自分の視点でしか見ていない―――最低な人達ばっかりだったよ」
『だが、そんな無慈悲な僕が地球に帰った事で起こりうる事件は予想している筈だよ。僕自身はまだいいけど、父さんは?母さんは?関係者にも被害が及ぶ。良識が欠けた家族達と蔑まれるよ』
確かに影の言う事も一理ある。だけど―――
「僕は聖人君主じゃない。もし、僕達をどうこうする者が現れたらそれ相応の対処をする。それこそ地球とトータスに行き来出来る様になったら、神隠しみたいに着の身着のまま転移させるよ」
『・・・予想以上に塩対応だ。でも、そんな事をすればより一層狙われる』
「この話し合いは平行線だ。たらればの話なんて後で考えるさ!」
ハジメは貫通力に優れた弾丸を影に撃ち込むが、影も同様に弾丸を撃って弾丸を撃ち落とす。互いに考えている事が同じ―――いや、相手は現身だ。己の思考を読む事が出来る事が強みだと思い、ハジメは舌打ちをするがここで変化が訪れる。影の動きがほんの少しだけ速くなっていたのだ
反応速度が上がっている。何かしらの干渉もしくは時間経過による加速?分からないけど、長引かせるのはいけないな
ハジメは、ボウガンの先端に付け足していたビームサーベルを取り外してガンカタで攻撃する。影も同様にガンカタで鍔迫り合いに持ち込む。徐々に影が有利になっている最中、ハジメはこの試練のギミックを理解した
「そうか、負の感情を抱けば抱く程強くなるという事か」
例えば、自分が不利な状況に立たされている事に苛立ちを募らせると相手が強くなるという最悪の仕掛けだ。冷静に、何事にも動じない者であれば何も問題はないという事だ。ハジメは、影の相手を止めてソナーでノイントの居場所を探す事を第一に考える
この試練だとノイントが一番大変な事になる。自分の試練を乗り越える事は出来るけど優先順位は下だ
ハジメがビットを一基取り出してソナーでノイントの位置を探ると、予想とは違って数十メートル隣に居る事を確認。先程魔物を倒した際に使った雷柱弾とは別の弾を装填―――これはドンナーと似た性能の弾丸だが、威力は格段にこちらが上だ。それは、極太レーザーと例えるのが一番分かり易いだろう
ノイントに直撃しない様に発射、氷壁に風穴を開けて急ぎ向かう。氷壁が修復されていくが、その都度レーザーを放ってノイントが居る部屋へと到着した
「ノイント!」
ハジメが部屋に入ると、影がノイントに大剣を振り下ろそうとしていた
~ノイントside~
声が聞こえる・・・聞き覚えのある声なのに分からない声色。誰?何処から?
『私は欲しい。ハジメが欲しい―――』
ハジメは私の夫です
『確かにそうかもしれません。ですが、本当に一緒になれるとでも思っているのですか?長年主に仕え、人を騙し、洗脳し、何度も破滅へと導いた貴女に振り向くとでも?』
それ・・・は・・・
『主の命令とはいえ、拒否する事も出来たのにも拘らず淡々と疑いもせずに実行する意思。自己主張もなく、人は主の駒としか思っていない貴女に振り向くとでも?』
・・・ハジメは私の全てを知ってくれています
『だから?表では取り繕っているだけで、内心では快く思っていない可能性もあります』
・・・黙りなさい
『人を人として見ていない貴女がハジメの傍に立つ事は酷く滑稽です。ハジメが特別だとしても、ハジメの両親の事について貴女から何も話題に上げていない。分かりましたか?所詮ハジメ以外の人はただの駒としか思っていない証拠です』
黙りなさいっ!!
ノイントの心は荒れ、声の正体が自分である事が分かった。だが、「そんな事は思っていない」と頭の隅に追いやる事で気にしない様にするも、隣で歩くハジメを見る事で声の言葉が心に突き刺さってどんどんと精神を黒く染め上げる。そして、表面を取り繕いながら一人の試練へと踏み込み、声の正体である影と対面した
『ようやく向き合う覚悟を決めましたか?』
「・・・貴女は私ではありません」
『必死に否定していますが、内心では揺らいでいますね』
「この試練の内容は分かりました。もう一人の私―――貴女を倒せばいいだけです」
ノイントは大剣とガンブレードの二刀流で構え、影もまた同じく構える。先手はノイントからで、地面が陥没する脚力+ガンブレードの爆発の推進力を利用して一瞬で懐に飛び込んで一閃する。しかし、影はその攻撃を受け止めるのではなく受け流した
ノイントはこの攻撃を対処される事は織り込み済みで、ガンブレードを地面に突き刺して急制動をかけて体術に持ち込んだ。頭上に叩き込む踵落としが影の張る多重障壁を砕き、残り一枚という所で止まり後退する
『終わりですか?なら、こちらからも行きます』
影は、先程のお返しなのかノイントの寸分違わない角度で攻撃をしてきた。ノイントなら十分対応可能だ。しかし、それは全てが同じ状況下での話だ
「っ!?―――カハッ!」
ノイントは障壁を張るが、影の攻撃はそれを易々と破壊。影の攻撃を大剣とガンブレードで一閃を防ぐ事が出来たが、一撃の重さが凄まじくノイントを地面から軽々と引っこ抜いて氷壁へ叩き付ける。肺の中の酸素が強制的に吐き出され一瞬視界が霞みふらつきつつも分解魔法の銀翼を散らばせる。影からの追撃は来ないかと思ったが、礫の様な魔力の弾丸が銀翼の隙間を縫う様に走りノイントを攻撃する
「くっ!」
ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!
魔力の弾丸は攻撃力が低かったのだが、マシンガンの様に襲い来る攻撃は確実にダメージを蓄積すると判断したノイントは、咄嗟にドンナーを抜いて影に向けて発砲。三つの弾丸が影に直撃する瞬間、先程のガンブレードの爆発による変則軌道を真似されて弾丸をすれすれで回避されてしまった
『どうしました?私を否定する強さも持つどころか圧倒されているこの現状。それではハジメを護る事は不可能です。オルクス大迷宮の最深部のボス、メルジーネ海底遺跡での幽霊―――どれも不注意と反応の遅さは足手纏いそのものです。貴女はハジメや御姉様達の傍に立つ資格はありません』
「黙れっ!!」
影の言葉に激昂したノイントが大剣を振り抜くが、影の持つ大剣とぶつかり粉々になってしまった。ノイントの得物が一つ失った事で防御面が薄くなる。ただでさえ影の方が強く、攻撃を大剣とガンブレードの両方で受け止めていたのにたった一つとなると吸収しきれるものではない
「あぐぅっ!?」
影の大振りの攻撃を受け流そうとすると、攻撃の衝撃が凄まじく自身の得物の刃が肌を切り傷が増えていくのだ。まともに受け止める事が出来たとしても、体が痺れて硬直しているタイムラグで攻撃される。八方塞となったノイントの脳に過った姿
「このままでは―――」
『ハジメが助けに来るのを待とうと考えていますね』
「ッ!」
ノイントは、一瞬だけ・・・ほんの一瞬だけ思い浮かべた事を言い当てられ体を強張らせた
『何にしてもハジメを頼り、己の力で切り開こうともしない貴女は只の人形。存在意義も無価値なものです』
「違うっ!」
『ハジメは優しいから手を差し伸べているだけです。もし、ハジメが貴女に興味を失くせば―――捨てられる。いつ訪れても不思議ではないそれをただ黙って待つよりもハジメの為になるでしょう』
「違う・・・ち・・・がう・・・」
『いえ、捨てられなくとも友としてなら傍にいる事が出来ます。しかし、何時かはハジメの隣に違う女性が寄り添います。恐らくその女性は、貴女より活発でありながら互いを尊重し合うでしょう。容易に想像できるでしょう?貴女よりも笑顔が多く引き出されるハジメの姿を』
「あ・・・あぁ・・・・・」
ノイントは膝を付いて武器を落とした。今までは気付かない様にしていたが、影の言葉が重く圧し掛かる。ノイントはハジメが幸せになる事を望んでいるが、「本当にハジメは幸せに感じているのだろうか?」「何処かで気遣っているのではないだろうか?」と不安が押し寄せ、頭を手で抑えながら必死に否定の言葉を呟いているが力がこもっていない
『役目を終えよ人形―――』
影の大剣がノイントの首へ振り下ろされる瞬間、赤黒いレーザーが壁を貫きハジメが現れた
「僕のノイントを殺らせるかあああああああああーーーーーーーーー!」
ハジメは突入の勢いを殺さず、ドロップキックを影にお見舞いした
~ハジメside~
ノイントに大剣を振り下ろそうとした影にドロップキックをお見舞いしたハジメは、影との距離を取る為に攻撃する。だが、ボウガンの散弾以外は全て剣で叩き落とされ、肝心の散弾はダメージがなさげだ
あの影はノイントのステータスと同じと言いたかったけど、散弾を直撃しても傷一つ負った様子もない。負の感情によるステータス上昇だとしても明らかに違い過ぎている。ノイントの様子がおかしいのも原因の一つなのか
ハジメがノイントの傍で警戒していると、部屋の氷柱からハジメの影が現れる。氷柱から現れるという事は、氷壁からも現れる可能性もあるという事なので絶対に逃げる事が出来ない試練なのだ
「・・・ハジメ・・・私は・・・」
「ノイント、影の言葉を真に受けちゃいけない!」
「で、でも・・・私は・・・」
『流されるばかりの人形の貴女は相応しくない。ハジメの幸せの障害です』
ノイントの影の言葉を聞いたハジメは、ノイントの心が折れかけている理由を理解した。美羅から感情を与えられてから数ヵ月と、ハジメと意識共有して半月―――感情をへし折るには充分な言葉ばかりだ。意識共有でノイントが過去にした事は理解していたが、その重みが今のノイントを苦しめている事に気が付かなかった。一緒に居ても気付かなかった事、そもそもノイントがそれを理解したのはこの迷宮の囁きを聞いてから自覚したのだ。時間が短過ぎる為にフォローも十分に出来なかった事が悔しく思った
だが、それでもハジメは影の言葉を聞いて納得いかない部分があった
「ノイントの影だから内心で思っている事や自覚症状が生まれた事を踏まえて言うけど―――――僕の幸せを他人が語るな!僕は美羅姉さん達と旅が出来る事だけが幸せじゃないんだ!僕の隣にノイントが寄り添ってくれているから幸せなんだ!」
ハジメはノイントの肩に手を回して抱き寄せる。女性を護るかっこいい男性の構図・・・映画のワンシーンみたいな告白に、ノイントの表情は嬉しさのあまりか赤面してハジメを抱きしめる
「ノイント、最初は誰しも挫折がある。でも、それを如何にして乗り越えるかが大切なんだ。僕は、この世界に来た直後に同郷の人達の負の視線で心が折れかけたよ。でも、何処かで我慢すれば何とかなると思って耐えていたけど、父さんや母さんや姉さん達以外で初めて庇い支えてくれたノイントが居たお陰でここまで成長して幸せなんだ」
「ハジメ」
「だから、ノイントも一人で乗り越えようとしないで。ノイントが僕を支えてくれたなら、僕がノイントを引っ張ったり支えるだけさ!だから、一緒に乗り越えよう」
「・・・はい!」
ノイントはハジメが差し出した手を握り、軽いキスをして余計な負の気持を一掃して二人で影と再び相対する
『そちらが二人一緒なら、こっちもそうするだけさ』
『過去の行いは消えません。所詮は一時的なものです』
二対二の戦いが始まり、ノイントが近接、ハジメが遠距離の攻撃をする。影も同じ様に攻撃する事で戦況は拮抗しているが、それも早々に崩れ始めた
『何故、何故拮抗が崩れるのですか』
『同じなのに何処に違いがあるんだ!?』
ハジメとノイントが優勢となっているこの状況に影は困惑する。負の感情が消えようと、全く同じ存在が敗れる事はありえないと考えているのだろう。ハジメは影に向かって笑みを浮かべながら答えを教える
「影は僕達と同性能という事は分かっていた。だけど、それは声が聞こえ始めた辺りのコピーだ。今の僕達は成長しているんだ!成長しない影に敗れるなんてありえないさ!」
「私はハジメと一緒に乗り越えます!今の私達より強いのならば、二人一緒にそれよりも強くなります!」
ハジメはボウガンの攻撃から短剣に切り替え影のノイントの攻撃を受け流す。ステータスが圧倒的に上であろうと、美羅達の攻撃に比べれば屁でもないので覚悟は出来ているのだ
「スイッチ!」
影のハジメも短剣でハジメに攻撃するが、そちらはボウガンに備え付けられた小さな盾で受け止める。二人の攻撃を一瞬止めたハジメが頭を少し下げると、ハジメの背に隠れたノイントが飛び出して影の武器を持つ腕を切断。本来ならそこで切り返しで首を断つが、それはせずに通り抜けてドンナー・シュラークで頭部に照準を合わせる
ドパンッ!ドパンッ!
影は頭を少しだけずらす事で弾を回避するが、視線を後ろにずらした事でハジメの攻撃が無条件で当たる事が確定。ハジメはボウガンに付けていたビームサーベルを取り外して、横薙ぎに振るう。ハジメの影は反応する事が出来ずに切り裂かれノイントの影はギリギリ回避して再びノイントに視線を向けると、二本の紫色の直剣を持って真正面から突撃している姿だった
『その程度っ!』
影は分解魔法を付与させた大剣で迎撃したが、二本の直剣に受け止められ弾かれた。がら空きとなった影にノイントの直剣の連撃が繰り出され、四肢を細切れにされた後に影の首を断った。終わりはかなり呆気ない物だが、この直剣はハジメの宝物庫に収納されていた物だ。手を握った時に宝物庫を受け渡され、影に気付かれない様に身に着けていたという事だ
「ふぅ~、ノイントお疲れ様」
「またハジメに助けられました。―――ありがとう」
「こっちもありがとうだよ。それよりも、その直剣の使い勝手はどう?」
「とても軽く扱い易いです。流石と言うべきなのでしょうか」
「あ~、美羅姉さんから渡されたカブレライト鉱石が無かったら実現しない武器だからね。その直剣は誰も作れないよ」
さて、この直剣について説明すると、カブレライト鉱石を中心に形作られているがこれだけではない。カブレライト鉱石と神結晶を混合させた魔剣の一種なのだ。魔力を流せば担い手の魔力に応じた属性を付与出来るのだ。勇者(笑)の持つ聖剣なんて玩具になる性能だ。そして、モンハン世界の鉱石という事から分解魔法が通用しない硬度を持っている+神結晶の魔力付与で分解魔法を分解魔法で中和する二段構えである
「さて、美羅姉さん達が待っていそうだから行こうか」
「ええ、一緒に行きましょう」
ハジメとノイントは、奥へと続く道を進み扉を潜る。視界が白く染まり、晴れた先には神殿があった
「ゴールだね」
「御姉様方は中に居るのでしょうか?」
二人が神殿の中に入ると、ベッドの上に寝っ転がっている美羅と焼いただけのマンガ肉を食べている雌煌が居た
「あ、試練終わったのね。どう?かなり心に来たでしょ?」
「美羅姉さん知ってたの?」
「迷宮に入る直前にこの迷宮の情報を覗いたのよ。そして、今のハジメとノイントちゃんに必要な壁だったから何も言わなかったの」
「そう・・・ですね。確かにこの試練は私が一番受けなければいけなかったものです」
「ハジメと二人でクリアしたのか。リア充、リア充!僕はリア充!ってな感じで叫べるな。良かったなハジメ!」
「新世界の神にはならないよ」
おふざけをした後、ハジメとノイントは神代魔法を手に入れた。これですぐに出ると思っていたのだが、思いの他神殿の中が住み心地が良くしばらく留まる方向で予定を変更した。その間、ハジメはノイントと一緒に色々と致したりしたのはお約束だ
次回は魔人領に再びお邪魔して、行動計画予定を練るつもりです。勿論、イチャイチャを増やせるだけ増やします。最近シリアスな場面が続いているので仕方がないよね(´-ω-`)