召喚の手違いは世界最強   作:ぬくぬく布団

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今話もざまぁはまだありません
遂にハジメくんが覚悟を決める回となります







異常の王国へ行こう。ロマン武器ってカッコイイよね

~ハジメside~

 

異形の化け物が王国の市民を襲っているとの報告を受けた美羅達は、どうしようかと考えていた。王国にはいい感情を抱いていないが、何も全てではない。貴族の殆どは、召喚された者達に戦いを任せて後ろでどっしりと座って見物するという形だったので悪い印象ばかりだ。だが、市民は別だ。今を生きるのに一杯一杯かつ、時には搾取されたりと餓死者が出る事もある

ガリガリで戦えないと思われている者でも徴収されて兵士として前線に送られ、先に死んでいくのは悪い気持ちになる。だが、この世界ではそれが当然となっている。弱肉強食の世界とは言うものの、強者が贅沢をし過ぎているというのが一番の問題だ。これが戦場に行って現場で指揮をしているならまだしもなのだ

 

「王国は腐ってるわね~。でも、市民はかわいそ」

 

「貴族はしょうがねえが、市民は別だからなぁ~。戦場で被害に遭うならまだしも、異形の化け物が襲っているってのは悪い話だ」

 

美羅と雌煌は、王国で市民を襲っている異形が勇者(笑)達であると推測というより、十中八九間違いないと確信を持っている。恐らく、手足が触手になっていたりするのだろう

 

「・・・どうしようか。ふんぞり返っている貴族や狂信者達ならともかく、一般市民にまで被害が出てるのはなぁ」

 

「それがハジメの同郷の者達が引き起こしたとなれば・・・」

 

「止める義務は無いけど、こればかりは見過ごせない」

 

ハジメは、ボウガンとドンナー・シュラークを持ち立ち上がった。アイテムポーチに弾丸のストックを確認し、新たに作ったアーティファクトも入れる。例え美羅が行かないと言ったとしても行くつもりだろう

 

「行くの?」

 

「・・・うん」

 

「助ける義務なんてないわよ。それこそ、これは人族の傲慢故の結果よ」

 

「そうだとしても、僕は元クラスメイト達によって日々の生活すら厳しくなって犠牲になるのは見過ごせなくなったんだ。元クラスメイト達は、戦争に参加すると宣言したからこうなる可能性もあったからこの結果は仕方がない」

 

それでは帝国市民はどうなんだ?とつっこみたいが、美羅が直接手を下すレベルなので王国市民よりも印象が悪い。帝国市民の中にもまともな者も居るのだろうが、運が悪かったとだけしか言えない

 

「覚悟を決めているのなら何も言わないわ。一応私達も王国には行くから、その他がどうするかによって変わってくるわね」

 

「その他?」

 

いったい誰が居る?とハジメが疑問に思っていると上空から竜が降り立ち、その背からアルヴが降りて美羅達にこれからの事を報告する

 

「我々は王国が混乱しているこの状況を好機として突撃します。白野美羅様達は如何されますか?」

 

「タイミングがいいわね。ハジメが王国市民は助けると言ったわ」

 

「なるほど、こちらの兵達にも同様の事を周知させておきます」

 

ハジメは、「伝えても積年の恨みがあるから無理じゃない?」と思っているが、意外な事に魔人族の兵達はその案をすんなりと受け入れたとの事だ。何がどうしてこうなった?とさらにツッコミを入れたい気分だったが、アルヴが言うにはハジメの人間性にもう一度賭けてみたくなったとの事だ。しかし、王族や貴族に関しては無理らしいが、それだけでも十分だ。下手に王族や貴族が居たら反乱、搾取が容易に想像できる。それでは何も変わらず、今が歴史の分岐点だ

 

「ノイント、美羅姉さん、雌煌姉、悪いんだけど・・・救出に付き合って下さい」

 

「オッケー」

 

「処分したけりゃ俺に言いな。細胞一つ残さず消してやるからな」

 

「ハジメの成したい事を応援し支えるのは当たり前です」

 

「皆、ありがとう!」

 

ハジメは、宝物庫から巨大飛空艇を取り出した。毎晩コツコツと作った最高傑作の飛空艇の性能は高く、数百人程搭乗出来る広さと出力を持っている。しかも、ハジメのロマンによって変形機構が取り付けられており、航行速度が極端に変化+環境の適応等々超万能乗り物と化しているのだ

 

「ありゃ~、夜な夜な何かを造っているかと思ったら・・・」

 

「変形機構も備わってんのか!合体は出来るのか?」

 

「合体は無理だったよ。資材が足りなかったんだ」

 

「ですが、環境の適応の変化と航行速度それぞれを両立した変形は素晴らしいの一言ですよ?これ程のアーティファクトは見た事がありません。さすが私のハジメです」

 

「ありがとう。それよりも皆乗って!超特急で王国に行って事を対処しよう!」

 

美羅達三人はハジメに促されて飛空艇に乗り込み、王国へと出発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛空艇は高機動型に変形して王国へと向かう。音速とまではいかないが、あっという間に樹海が小さくなる程の速さで飛翔している。おおよそ一時間飛行して王国が見える所まで移動が終わり、高度を下げて地上の様子を覗いた。そして、あまりにも酷く惨い悲惨な光景が広がっていた

 

「これは・・・ちょっとどころの騒ぎじゃないよ」

 

「これが王国?」

 

建物は所々崩れ落ち、男性達の死体が至る所にある。しかし、女性の死体だけが何処にもない状況を見るに、何処かしらに連れていかれた可能性もある。しかし、如何せん上空から見る光景なので建物の死角や内部が見る事が出来ない

美羅達は、高度を下げた飛空艇から城門上に降り立った。そして、飛空艇から出た事で周囲の状況を更に理解する。生臭い匂いと建物の陰から現れた異形―――。頭から下は人間そのものだが、頭部がタコの様な形をしており、背中や股間に触手が蠢いている。捕まればあれ等が襲ってくると嫌でも分ったハジメは、ノイントの傍を離れず行動する事にした

 

「いやぁ~、さすがクトゥルフと言ったところかな?」

 

「何回見ても気持ち悪ぃな。俺達の場合はもっと酷い奴等ばっかりだったからこれはまだマシだな」

 

「クトゥルフか~ら~の、変なお代わりもあったわね。まぁ、そいつ等はあっちの世界では完全に消えたから手を出すとすれば異世界ぐらいね。・・・それだとトータスも含まれる?」

 

美羅と雌煌は懐かしそうにしているが、目は冷めたものだ。ハジメとノイントは、今のこれよりももっと酷いのを見た事があるのだろうと予測して何も聞かない。それよりも、目先の問題はどうするかだ

 

「ハジメ、無計画で救出なんて考えていないわよね?」

 

「・・・正直ぶっちゃけると、新たに創った概念魔法―――ホワイトクリアが機能するかどうかが怪しい」

 

「なんだそりゃ?」

 

ハジメがノイントと一緒に考えて創った概念魔法の名前はホワイトクリア。何の捻りもなく、安直な名前なのだ

 

「効果は、負のエネルギーを浄化してもとある正しい姿を~ってね?」

 

「しかし、それがあの異形に効果があるのかが不明です。産まれたのか、変貌したのかも分からないので実証のしようがありませんでした」

 

「ほうほう、ゲームで言う所の聖水みたいな物か」

 

「浄化魔法かもしれないわね」

 

ハジメは、宝物庫からバズーカを取り出した。射出口には透明なレンズが被せられ、その奥に見える小さな突起物―――SF風なバズーカである。そして、これは非殺傷兵器となっており、光に照らされたらめっちゃ眩しい程度で済む武器だ。だが、このバズーカは対悪属性特攻浄化兵器となっているので一応武器の分類にしている

 

「さてと、このケーブルを魔石バッテリーに接続して準備完了っと!」

 

バズーカから伸びているケーブルを、魔石を粉末状にして加工した巨大バッテリーに接続。自身の魔力を消費する事なく撃つ事が出来る様になり、ハジメはノイントに渡して次の準備に移る。取り敢えず、ホワイトクリアが付与されたこのバズーカがしっかりと機能するかどうかを確かめなければいけないので、近場に居た異形に照準を合わせて―――発射

 

カッ!

 

『〈§±Ζ¶°〇÷ーーーーー!?』

 

何を叫んでいるか分からないが、効果抜群である事が目に見て分かった。異形は、まるで水分が失ったかの様に干からびて地面に倒れてグズグズに崩れてに塵となった

 

「・・・・・これ本当に生身で浴びても大丈夫なのか?」

 

「悪特攻の浄化兵器だからじゃない?」

 

「あの時ハジメの作ったこの浄化兵器があったら楽だっただろうなぁ~」

 

「それは言わないお約束よ」

 

雌煌は、ホワイトクリアが付与された光が人体に有害ではないかと疑い深く観察するが、そこは美羅のお墨付きの問題なしという事で安全性が確実となった。そして、もしも戦った時にこの武器があったらと思うと喉から手が出るほど欲しいと思ったのは言うまでもない。直接焼き殺すより、遠くから照射で塵となるならそちらの方が楽だ

 

「姉さん達も撃ってみる?」

 

「おっ、いいのか?狙撃するぞ?」

 

「この混沌具合を一気に解決したいからね。本当はレンズで照射範囲を広げたかったけど、効果が不明だから諦めたんだ」

 

ハジメは、飛空艇から直接光を照射する事が出来る様にと広角レンズを作ったのは良いのだが、その分光が分散して効力が薄まる可能性を考えてお倉行きとなった。バズーカタイプの口径を一定にした代物なら分散もないので安心だ

 

「私は空から照射します」

 

「なら、俺は二丁担いで遊撃だな!」

 

「個人で動くのは雌煌だけでハジメとノイントちゃんはペアで互いを補う様に動きなさい。私は念の為に二人の御守りをするわ」

 

ハジメは雌煌にケーブルが付いていない大型バズーカを二丁渡し、自分の分の一丁は大型バッテリーを背負って準備完了。雌煌は、新しい玩具を手に入れた子供の様に嬉々として両肩に担いでこの場から離れ、遠くから沢山の断末魔が聞こえる事からメルジーネの時と同じ様にガンシューティングを楽しんでいるのだと理解した

 

「テステス、マイクのテスト中~マイクのテスト中~。映ってるかな?出来てる?ならヨシ!」

 

ハジメとノイントが美羅の方に振り返ると、スマホを持って周囲を撮っている。ハジメは、この光景を録画でもしているのだろうなと思ってスルーした事で、ノイントもハジメと同じ様に気にしない事にした

 

「ノイントは空からホワイトクリアの照射と上空から見える索敵を中心にお願い!僕はソナーで建物の影や中に居る異形に注意するよ!」

 

「それでは行きます。ハジメも注意して下さい」

 

ノイントは翼を広げて上空へと飛び立ち、通信アーティファクトから状況を報告しつつ屋根上に居る異形を中心に処理していく。ハジメも、自身へと走り来る異形を攻撃して近づけさせない

 

「さぁさぁ始まりました。私達を拉致した王国に蔓延る異形を浄化系武器を使って塵にしていきます!なお、あの武器は浄化能力だけなので人体に無害で環境にも優しい!未だこの世界でしか効果が見られていないけど、地球でも悪霊退散とか出来たら嬉しいな~♪」

 

「通信販売みたいな商品紹介しないで!?これは売り物じゃないよ!?」

 

「え~、形はバズーカなライトだから良いじゃない。それが作れたらコスプレイヤー達に売れるんじゃない?」

 

「・・・確かに、ロボコス専門の人達には売れそうだね」

 

襲い来る異形達はあっという間に駆逐され、商店が並ぶ一区が綺麗になった。ハジメは次へ移動しようとノイントに王国の状況と異形が多く居る一区へと案内を任せる。走りたい気持ちはあるが、ソナーや索敵が完璧と言えど慢心せず慎重に行動していると、いきなり建物を破壊して今までのよりも大きい異形が現れた

 

「えいっ!」

 

「隙だらけです」

 

カッ!

 

ハジメとノイントの光が重なる様にその異形に直撃すると、表面がグズグズに溶けながら小さくなり成人男性が出て来て地面に倒れた。これにはびっくりしたハジメは、ゆっくり近づきもう一度光を照射。変化はなく、ハジメは成人男性の脈を確認すると、まだ生きていた

だが、油断は出来ない。ハジメは、そこら辺に落ちていた木材を持って離れて男性の身体を突く。もし襲われても大丈夫なぐらいは距離を空けているので気にする必要もない。数分すると、男性は突かれている事に気付いたのか目を開けた

 

「えっと・・・大丈夫ですか?」

 

「お、俺は一体何を・・・?そ、そうだ!あの化け物は!?」

 

「化け物と言うとあの異形の事ですか?」

 

「ヒィッ!?に、逃げるんだぁ!」

 

「ちょい待て」

 

「ヒデブッ!?」

 

ハジメが指差す先を見た成人男性は、顔を真っ青にして急いで逃げようとした。しかし、美羅が男性の足を引っ掛けて逃亡を阻止させる

 

「は、早く逃げないと捕まるんだぞ!アァアアアアアアア!?」

 

「取り敢えず安心させないと話も出来ないね」

 

カッ!

 

『〈§±Ζ¶°〇÷ーーーーー!?』

 

「なっ!?き、効いている!?」

 

異形が塵となった光景を見て愕然とした成人男性は口を開けて呆然としている

 

「あの、情報交換しませんか?僕達はこの王国で何が起きているのかある程度しか理解してなくて・・・」

 

「あ、あぁ。そう・・・だな。何から話したらいいのか分からない程情報があるんだが」

 

「元凶は何なのか分かりませんか?」

 

「・・・勇者だ。いや、元勇者だ!」

 

ハジメは、やっぱりかと色々と諦めた表情をして碌な事してないと思った

 

「あいつ等は悪魔に魂を売ったんだ!最初は普通だった。だが、あいつが国王を化け物にしたんだ!それだけじゃない!王妃や王女を皆の前で凌辱しとち狂った妄言ばかり吐きやがったんだ!」

 

「妄言って・・・」

 

色んな事が頭の隅に過る。恐らく、自身の事を色々と言われるのだろうなと思っていると案の定だった

 

「南雲ハジメって言う元仲間が魔人族と繋がって王国を陥れようとしているってな。最初はそうかと思った。・・・だが、その為に皆が協力して倒す必要があると言いながら女性中心に襲って来たんだ!」

 

「・・・うげぇ。もしかしなくても仲間に女性っていました?」

 

「あぁ、恋人が居る。だけど・・・目の前で犯されたんだ!あいつ等は南雲ハジメっていう人間が悪だって言ってるがあいつらの方が悪だ!そのせいで王国は滅茶苦茶だよ。冒険者達があいつ等を倒そうとしたけど殺されたり捕まったりと色々だ。そして、俺は捕まって・・・」

 

「それ以上は言わないで下さい。それに、ごめんなさい」

 

「命の恩人のあんたが謝る必要なんて」

 

「あの・・・僕が南雲ハジメなんです。他人とはいえ同郷の人達がこんな事をしてごめんなさい」

 

「・・・だが、あんたは違う。あんたの目は正直者の人と同じ真っ直ぐな目だ。元勇者は魔人族と繋がっていたって言ってたが、何か理由があったんだろ?」

 

ハジメは、取り敢えず今までの経緯をざっくりと説明する。ステータスが一般人並みで馬鹿にされたり貶されしたが、上で索敵しているノイントに救われ、姉達と元の世界に帰る為にヒントとなるであろう大迷宮を攻略し、その迷宮の一つが魔人領にあるので入る許可を得る為に魔人族の長に面会した時に勇者達と鉢合わせたと。ちゃんと説明したがこちらの言い分を何一つ聞かずに攻撃されたものの、魔人族の長によって鎮圧されて牢屋に入れられた事もしっかりと伝えた。そして今に至る

 

「・・・なんだよそれ。俺達が聞いていた魔人族は残虐だって言っていたぞ」

 

「それについては否定はしない方がいいわよ。あくまでハジメが例外だっただけで、全員が全員同じとは限らない。向こうも情報でハジメが戦争に反対して離反、魔人族と出会わなかったと言えど出会い頭で攻撃はせずに話し合いを持ち込んだからというだけよ」

 

「そもそも、この戦争が続いているのは人族が悪いんです。大迷宮を攻略した際、反逆者と呼ばれた一人が残した過去の記録に講和したところを人族が真っ先に破ったってあったぐらいです」

 

「・・・なんだよそれ。教会が言っていた事が全部信用出来なくなったぞ」

 

「僕が離反した最もな理由は、教会が魔人族は悪だとしか伝えなかったからです。だから、僕は魔人族を直に見て、その生活を見なければ何も分からないと思ったんです」

 

「この世界の人族は信用していないわ。まだ話して理解しようとする魔人族の方が信用出来ているだけなの」

 

成人男性はハジメと美羅の話を聞いて全部を信じる事が出来ないものの、嘘を言っていない事が分かった。少しだけ人族がろくでなしばかりだと思いつつ、頭を振って余計な情報を取り除く。今は何をしないといけないのかをしっかりと理解しなければならないと言ったところだ

 

「・・・今までの話全てを今すぐ信用する事は出来ないが、今はそんな事を言っている場合ではないな。俺にも何か手伝える事はないか?」

 

「あ、それなら美羅姉さんが使っていないこの浄化武器で攻撃をお願いします」

 

バッテリーに繋いだバズーカを渡し、どうやって攻撃するのかを簡単に説明。後は、実戦として向かってきた一体に光を照射して倒した。ただの光で異形が死んだ事に物凄く驚いているのか、バズーカをいろんな角度で見たりしている

 

「これは魔物にも有効なのか?」

 

「あの異形にだけ効く武器なので無理です」

 

「そうか。しかし、物理も魔法も効かなかったあの異形が光で倒せるとはな・・・。神代のアーティファクトはとても素晴らしいな!」

 

「・・・格好と武器がミスマッチであんまりね」

 

中世の格好にSFなバズーカのセットとなれば誰だって美羅と同じ様に突っ込むだろう。そんな事はさておき、異形を倒している内に色々と分かった事がある。異形は、大きさによって人の有無がある

人間と変わらない大きさの異形は誰も入っていないが、二メートルを超えてから子供、三メートルが老人、五メートルが成人男性だ。しかし、現状は成人男性サイズの異形は殆ど居ない。子供や老人ばかりで、中々進軍する事が出来ず困り果てている

 

「お~いハジメぇ~。異形を浄化してたら人間が生まれたぞぉ~」

 

「言い方ァ!」

 

ハジメが雌煌の方を見ると、成人男性が多かった。何が違うのかと思ったのだが、雌煌が向かった先は異形が沢山蔓延る大通りだったので、巨体も隠れる場所や徘徊する事が出来る事が分かった

 

「それで?大通りはあらかた殲滅したという事で良いの?」

 

「勿論さぁ~。後は建物の中に居る奴等を一掃する程度だ。そして、最後のメインディッシュはあの王宮だな!」

 

「いやいやいや!?危険な場所に突っ込むとか嫌だよ!」

 

「大迷宮なんて危険な場所に潜った根性を見せろ!!」

 

「理不尽だっ!!」

 

雌煌の無茶振りにつき合いたくないハジメはあの手この手で否定するが、そのどれも却下されていく。そこで上空から偵察を終えたノイントが合流してこの現状をどうするかを話し合う事にした。ノイントがハジメ寄りとはいえ、全体をしっかりと見据える事が出来るのでこれが最善だろう

 

「私達が王宮に突入する事に反対はありませんが、住民というより足手纏いを連れて行くのはありえません。上空から偵察していると魔人族達の軍が王都周辺まで近づいていたので、彼等に保護を求めたらいいのではないでしょうか?」

 

「ほう、あいつ等も来たのか。そんじゃあ連れて行くか!」

 

「それなら飛空艇で連れて行くよ。後付けで籠を付けたら全員乗れるよ」

 

「なら、さっさと行動開始よ」

 

ハジメ達は市民を護る様に城壁上へと続く階段を登る。そして、城壁外に飛空艇を接舷させて後付けの籠を連結させ、皆が乗り込み避難の準備が完了。一度王国を離れたハジメ達は、魔人族達の最前線手前で着陸して住民達を降ろして軍の人達に王国への侵攻の一時停止と保護をお願いした

最初は下っ端の兵士と思われる魔人族がハジメに食って掛かるが、その者を含める隊を纏めると思われる魔人族に拳骨を落とされて大人しくなったりとした。まぁ、ハジメの事を説明されるとちゃんと自分が悪かったと謝罪したので、アルヴの教育だけでなくハジメ自身が好印象となっている

 

「ここまで送ってくれてありがとう。俺達は大人しく魔人族達の言う事を聞いて住民達のケアをする。全員が魔人族の印象が違って戸惑っているが、戦場に出ていた人達は嫌悪感丸出しだからどうにかするさ。それでだが・・・あんた達は王国に戻るのか?」

 

「戻るよ。僕達が助けたのは男性だけだ。住民の中には女性が居るのに、誰一人居ないから出来るだけ助けるつもりだよ」

 

「そうか・・・。捕らわれた彼女達を頼む」

 

ハジメ達は飛空艇に戻り、住民や冒険者達に見送られながら王国へと戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~美羅side~

 

再び王都へ侵入した美羅達は、大通りを歩いて王宮を目指している。ハジメとノイントと雌煌は、バズーカを担いで何時でも迎撃出来る様にしているが、美羅は来た時と同じ様にスマホで撮影をしている

 

「美羅姉さん・・・、撮影は全部が終わってからでもよくない?」

 

「視聴者は、リアルタイムな映像を求めているから却下!」

 

「・・・あぁ、うん。もう諦めるよ」

 

時々解説者の様に説明している事を除けば何も言う事はなかったが、ハジメは美羅のやる事を全部スルーする事にした。話は戻り、雌煌が大通りを粗方殲滅したお陰なのか異形の姿が見えない。もしかしたら潜んでいるのかもしれないが、ソナーに反応がない+雌煌が殆ど警戒していないという事なので本当に居ないのだろう

 

「ちぇ~、建物の中に居たら蹴破ってやったのによ~」

 

「また変なMAD動画の影響受けてるの?勘弁してよ・・・」

 

「一度はやってみたいだろ? 開けろ、デト〇イト警察だ!ってな!!」

 

雌煌はオタクに染まってしまった。もう綺麗?破壊神?みたいな感じにはならないだろう。ある意味安心ではあるが、威厳が全く無いのは少々不味い。とはいえ、有言実行タイプのオタクなので体を動かしたりする行動力溢れているので酷い意味でのカリスマはあるだろう。もし、秋葉原でオタク仲間を引き連れたなら、姉御タイプだろう

 

「王宮を爆☆破☆も面白そうだぜ」

 

「絶対やめてよ。多分王宮の中に被害に遭ってる女性達が居る筈だから、破壊力のある攻撃は駄目だからね!」

 

「と言う事は、王宮の中に居る異形は破壊し尽くしても良いという事だな?」

 

「浄化兵器があるでしょ!?なんで物理で殴ろうとするの!?もし人が入ってたら死んじゃうよ!?」

 

「オラオラ駄目?」

 

「アウト!」

 

「無駄無駄は?」

 

「アウト!」

 

「両方は?」

 

「いや、どうやって言うの!?」

 

「オラ無駄ァオラ無駄ァ!・・・的な?」

 

「もうツッコミを入れるのもしんどいよ」

 

結果―――異形に物理は禁止となった。安全性に欠ける為仕方がないのである

王宮の門を潜ると床は濡れており、まるで水生生物が闊歩したかの様な独特なぬめりがある。これでは何時滑ってもおかしくなく、隙が大きくなるし、女性の濡れ場は厳禁だ

 

「靴底をスパイク状にするからちょっと待ってて」

 

ハジメは、錬成で皆の靴底にトゲを作ってある程度動ける様にして再び探索する

異形はこれまで通り、ホワイトクリアで倒す事が成功。目に入る部屋を確認すると、触手が蠢き女性を吊るし上げて犯していた

 

「さっさと触手を倒さ―――」

 

「はいストップ。まだ我慢しなさい」

 

咄嗟に触手を倒そうかと思ったが、美羅に止められてしまった。ハジメは、どうして?と制止された事に疑問に思った

 

「私達は少数精鋭、捕らわれている人はここに居るのが全員じゃないの。元凶を倒して解決してから救出する方が最適解よ」

 

「・・・分かった」

 

ハジメは、救出を諦めて元凶である勇者(笑)を探す。王宮の中心部に行くにつれて触手が多く蠢き、まるで酷いアートの様に女性達が吊るされているのを嫌悪感マシマシの表情になるが、とにかく元凶を断つべきだと割り切って行動している

しばらく進み、召喚された日に案内された玉座の間の前に到着する。生臭い匂いが扉越しからでも伝わり、嫌な予感マシマシだ

 

「はい、ここからが本当のR-18だから、お子様は見ないでね♪それでは、御開帳~」

 

「手を上げろ!デト〇イト警察だ!」

 

雌煌が扉を蹴り飛ばして全員突入する。煌びやかだった玉座は変わり果て、触手が沢山生えた気持ち悪い物となっていた。そして、その椅子の隣には金髪の女性―――王妃と王女が吊るされ、周囲にはメイドやシスター達が捕らわれて犯されている真っ最中だ。元クラスメイトの女子達もそこそこ捕まっているのは予想通りとも言える

 

「来たか南雲!魔人族と協力して人族を倒そうとするお前は、俺達の力で倒してみせる!」

 

「ハジメくんが来た!やっぱり私が心配で来てくれたんだね!」

 

顔は人間のままだが、体には触手が沢山出ている―――元クラスメイト達の男子達全てだ。そして、女子では一人―――白崎が全てを混ぜ合わせたハイブリッドな究極完全体みたいな姿となっており、顔以外人間の要素何一つない。いや、時々ハジメを見て舌なめずりをする時に見える舌がトカゲの様な二又の舌+イボイボがあったのを見たハジメは、自分の身体がロックオンされている事に鳥肌が立ち視線を逸らす

ノイントはハジメが白崎にロックオンされている事に気付き、背に隠す様にして武器を構えて睨む。これは女の戦いと言ったらいいのだろうか?・・・いや、化け物から大切な人を護る戦いが一番合っている

 

「ハジメを狙うなら、私が貴女を倒します。その様なおぞましい姿で抱かれたいと思う者は誰一人居ません」

 

「ハジメくんを奪った泥棒猫は排除しなきゃいけないよね。待っててねハジメくん、そこの泥棒猫を倒したら私がずっとずぅぅっと傍にいてあげるから!」

 

「南雲!香織をどこまでも洗脳しているお前は俺が倒す!」

 

「洗脳出来たとしても受け取り拒否だよ!?」

 

「やっぱり洗脳しているんだな!そうか、俺達が帰って来てから王国の皆がおかしくなっていたのはお前の洗脳のせいか!だが、俺がお前を倒せば全て解決する!魔人族も俺が倒して皆を地球に帰してみせる!!」

 

一体どの様な解釈をすればそうなるのかツッコミを入れたいが、今はそれどころではない。ハジメは白崎に狙われており、ノイントと敵対してもお持ち帰りで連れ去られる可能性もあるのでそちらにも注意を割かなければいけない。そして、周囲には天之河に同調する様に異形となった生徒達がハジメ達を取り囲んでいる

 

「ダブル浄化光線を喰らえやぁぁぁぁ!!」

 

雌煌の開戦の合図を待たずの先制浄化攻撃が異形の男子生徒を直撃するが、何一つ変化なかった。それどころか、自身の身に何も起こっていない事に不思議そうにしていた

 

「にゃにぃ!?」

 

「浄化攻撃が効かない!?」

 

ハジメは、今までの異形には効いていたのに対し何故か効かない事に驚く。原因は不明―――、唯一残された手立ては敵本体を無力化する事だ。ハジメは、ボウガンに装填していた麻痺弾を異形の元クラスメイトに撃った。躊躇いは死を直結する現状なら仕方がないし、非殺傷のこれならば大丈夫だと理解しての行動だった。だが、麻痺弾を直撃した元クラスメイトはぴんぴんしており、むしろ体の筋肉がバンプアップしたかの様に膨張している

 

「げぇっ、さっきのは麻痺弾だよ!?何でマッチョになるのさ!?」

 

相手に状態異常系が効かないのであれば拘束を試みたハジメは、アザンチウム鉱石製の拘束ロープを射出。単発でしか撃てないが取り回しやすさは一番いいのだが、この拘束ロープは最初の数秒だけは拘束出来た。しかし、十秒もしないうちにロープその物が錆だらけになってあっという間に砕け散った

 

「最高硬度のアザンチウム鉱石製のロープで駄目とかどんな無理ゲーだよ!?」

 

「おいハジメ、これは物理でやるしかねえぞ!」

 

「お願い雌煌姉!取り敢えず死なない程度で頭をぶん殴って気絶させて!」

 

「その位なら任せな!こんな屑共には拳が一番だぜ!ドラァッ!!」

 

先程麻痺弾を撃たれた異形のクラスメイトの顔に雌煌の手加減した拳が直撃、頭蓋は歪むがそんな事は些細な事なので何も問題はない。殴られて数十メートル吹き飛び壁に激突したが、まるで何事もなかったかの様に立ち上がる

 

「おいハジメぇ!こいつ等はある意味死なねえぞ!」

 

「嘘でしょ!?」

 

「顎を粉砕した感触があったんだがあれを見てどう思うよ?」

 

ハジメとノイントとスマホを持った美羅が雌煌が指差す方を見ると、顎がぐっちゃぐちゃになっていた傷が触手が生えて元の状態へと戻った

 

「即時再生とかどんなチートだよ!?」

 

「俺達は神に選ばれた勇者だ。選ばれなかった南雲には同情するが、洗脳を使って王国の住民を陥れたお前に容赦なんてしない!」

 

本当に殺す以外の方法で異形の元クラスメイト達を止める方法が無くなった事に舌打ちをしつつ、覚悟を決めた表情で皆に告げた

 

「もう、君達は元に戻れない。そして、僕も戻れない。地球に居た時は人殺しなんて出来ないと思っていたけど、もう駄目だ。君達は絶対に此処で殺す!」

 

「正義である俺達を倒すだって?倒されるのは南雲、お前だけだ!!」

 

ボウガンに特殊弾を装填してこの時の為に作った概念魔法薬を呑み込むハジメと、どす黒く瘴気を零す元聖剣を持つ天之河と異形の男子生徒達

 

「私のハジメくんを奪ったお前は絶対に赦さない!」

 

「狂気に囚われ堕ちた貴女は危険です。このトータスでも、ハジメの故郷でも生きていてはいけません。ハジメは優しいので女性である貴女は殺せないと躊躇するかもしれませんが、私は一切の容赦なく屠ります」

 

ガンブレードと大剣を構えるノイントと、身体中の触手を刃に変えて獣の様に前傾姿勢を取る白崎

 

「さてさて、私は中継で忙しいから任せるわよ」

 

「お?いいんか?ぶっちKILLぜ?」

 

美羅は相変わらずスマホを構えており、雌煌は拳を鳴らしながら残りの異形の元クラスメイト達を標的にする

ハジメ達と元クラスメイト達の生死を掛けた戦いがついに始まった

 

下地も叩いて固めた・・・後はハジメの頑張り次第よ。覚悟も決めているみたいだし、これが何とかなれば後はどうとでもなるわね

 

美羅だけは、この後の事を考えていた。味方を沢山作らなければならない現状、今している事こそが鍵となるのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次話は久しぶりのバトル回!
超強化された元クラスメイト達相手に戦うハジメくん達の雄姿にご期待下さい
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