召喚の手違いは世界最強   作:ぬくぬく布団

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天気が崩れたので全力で執筆したら出来ました
疲れた(´-ω-`)ヤルキデネー








勇者は要らず、英雄が現れる

~ノイントside~

 

異形となった白崎を警戒するノイントは、初手の牽制攻撃として分解魔法が付与された魔力弾を五つ発射。それぞれに自動ホーミング機能があるので敵を追尾する事は勿論、ノイントの意思によって軌道を変更等が出来る

 

「分解魔法、自動追尾―――ニードルシュート!」

 

魔力弾は白崎に放たれ、形が杭に変化して貫通力に優れた形状となって強襲する。しかし、白崎は避けるのではなく体から生やした触手で迎撃した。本来であれば分解魔法の効果によって触手は削り取られるが、触手にどす黒いオーラが纏って魔力杭が包み込まれ消失

 

「分解なんて危ないなぁ~?でも、私には効かないよっ!」

 

「魔力を溶かした?なら、これで!」

 

放出ではなく放射―――単発ではなく永続的な攻撃であれば動く事も出来ないと予測したノイントは、ガンブレードに魔力を注ぎエネルギーの爆発方向を白崎に向けて放った

 

「ブラストシュート!!」

 

今回は分解魔法を付与された収束ビームだ。例え溶かそうとしてもそのスピードを上回る攻撃を行えば直撃は間違いない。しかし、ノイントの予測は外れた

 

「効かないって言ってるでしょ?」

 

「なっ!?」

 

ノイントの放った収束ビームは白崎の腹から飛び出した嘴に吸い込まれ、その中から大きな吸盤のある触手が襲い掛かった。ギリギリのところでバク転をして触手を蹴り飛ばした事で捕まる事はなかった。だが、これだけで白崎が異形の中でも特異な存在だと理解した

 

魔力は全て吸収される可能性が高い・・・。こうなると物理で切り殺すだけしかありません

 

ノイントは天井近くまで飛び、急降下攻撃で刹那の一瞬を狙う。一方白崎はその場から動かずに不気味なまでに静かに見上げているだけだ。大剣とガンブレードを構え仕掛けようとした瞬間、背後から悪寒を感じ体勢を崩す様に振り返りながら下がった。その悪寒の正体は壁の中を這い伝って強襲を仕掛けて来た触手だった。それと同時に手首に感じる異物と冷たさ―――

 

「ぶんぶん飛び回る虫は叩き潰さないとね?」

 

「くぅっ!」

 

咄嗟に大剣とガンブレードを盾にして白崎の触手パンチを防ぐ。白崎は、触手パンチが防がれる事を知っていたのか驚きもせず、ノイントの手首を掴んでいる触手を伸ばして大きくぶん回し始める。遠心力を利用した力とはいえ、ノイントは手首に張り付く触手を取ろうにもどうする事も出来ずにいる

 

「潰れちゃえ♪」

 

白崎は、遠心力を活かして大きな柱を破壊しながらノイントを壁にぶつける。常人ならばここで間違いなくトマトの様に潰れ死ぬが、ノイントは並外れた強さなので死にはしない。だが、へばり付いた状態では体勢を整える事も出来ないのでダメージが蓄積されていく

白崎は壁にぶつけたノイントを解放せず、そのまま壁面を抉る様に押し付けて破壊して先程よりも速くぶん回して宙に放り上げ、触手の形状をハンマーに変えて地面に振り下ろした

 

「ダイダルハンマー!」

 

地面に振り下ろした触手ハンマーは、地面を陥没させる。おおよそ十メートル程の深さまで叩き潰し、白崎はノイントの腕を捕らえていた触手を剥がしてクレーターの中に降り立った

 

「さ~て、あの泥棒猫がぐっちゃぐちゃになったか確認しよっと♪私のハジメくんを奪って行った奴の肉なんて何にも残さないんだから♪」

 

地面から突き出ているノイントの腕は力が入っていないのか、垂れている。白崎は、まるでゴミを持つかの様に汚らしい目をしながらその腕を持ち上げた

 

「え?」

 

腕は片腕―――その先にある筈の身体が無く、意識が逸れた瞬間に感じる浮遊感

白崎の両足は切断され、ノイントの腕を持っていない方の腕も切り飛ばされていた

 

「痛かったですが、貴女を油断させるならこれが一番の方法です」

 

「っ!泥棒猫がぁーーーーー!!」

 

白崎は、落下しながら片方の腕を触手が覆い肥大化させてノイントに殴り掛かる。だが、ノイントの大剣の切り返しの方が早く、肥大化した腕の付け根から切断。大剣を腰溜めに構えて白崎の胸部に突き刺し、クレーターの壁面に突撃して磔にした

 

「これで終わりです」

 

再生魔法で元通りに治った手でガンブレードを振るい白崎の首を断ち切り全部をやり遂げたノイントは、一息入れる

 

「これで終わりかな?かな?」

 

「なっ!?」

 

首を断ち絶命した筈の白崎だが手足が再生しており落下していた筈の首は、切断面から触手が生えて繋がった事で元通りの姿となった。胸部に突き刺した大剣は腹部の嘴で粉々に砕かれ、開いた嘴から触手がノイントの身体を巻きつける。粘着性はないが、締め付ける力が強く骨が軋む音が聞こえる

幸いな事は腕は拘束に巻き込まれなかった事なのだが、ノイントの力をもってしても体に巻きついている触手を引き剥がす事が出来なかった

 

「ハジメくんの味を知った舌はこれかなぁ~?それとも下の口も知っているのかなぁ~?」

 

「ン"ン"ッ!?」

 

白崎はノイントの口に二又の舌の触手を入れ、下の方も触手を入れて舐め回して確認し始めた。上の口には何も感じなかったのかすぐに解放されたが、下の方は数日前にハジメとやっていたので少しだけ残っていた。それに気付いた白崎は、濁った憤怒を孕んだ眼でノイントを睨みながら腹パンをする

 

「ゴフッ!」

 

「泥棒猫が!泥棒猫が!泥棒猫がぁああああーーーーーーー!!私のハジメくんの初めてを奪ってどんな気持ちかな!?優越感に浸かりながら自慢のつもりか!!こんな袋なんて潰れてしまえ!!」

 

ノイントは膨張した白崎のパンチを止めようと手を使おうとしたが、触手が腕を引き千切る程の力で引っ張って無防備な状態で直撃を受ける。少しでも護ろうと障壁を数十枚重ねで展開するが、紙を破るかの様にあっけなく破壊されてしまった

何度も何度も殴られ、激痛で失神しそうになるが耐えて反撃の隙が出来ないか探ろうとするも全くその時が来ない。それどころか息一つ入れずに殴ってくる白崎に、己の体の限界が先に来る可能性が高いと判断したノイントは魔法を行使する

 

「アブソリュートブレード!」

 

魔力刃の吹雪が全方位から白崎を襲う。迎撃の触手は切れたが、自身に巻きつく大きな触手は切れない事に舌打ちをしつつ、博打の魔法を展開。それは、攻撃の衝撃を放出するという魔法だ。しかし、この魔法は自分が打たれる事を前提とした魔法で、完全に制御出来るのはパンチ数発分の威力が限界だ。今まで受けた打撃ダメージは計り知れず、暴発前提での発動となる。だが、絞殺される一歩手前の状況を一撃で打破するにはこの手しか残されていなかったと言った方が正しい

 

「―――ショックアブソーブアウト」

 

自身と白崎の間に魔法陣を展開し、体内に残ったダメージの衝撃を全て爆発させた。その威力は凄まじく、巻きついていた触手を粉砕してノイントは解放される。だが、その反動として爆発のダメージがもろに直撃して反対側の壁まで吹き飛んだ。身体中傷付き、表では見えない内臓関係はぐちゃぐちゃになっている為、神水と再生魔法で即時回復する

 

本当に冗談じゃない・・・あんな生き物が存在する事自体が間違いです。首を切り落としたにもかかわらず再生するとは悪夢に近い

 

そう、ノイントの言う通り大抵の生物は首を落とせば即死するが、それが全く通用しないのだ。それどころか再生してぴんぴんしている事から悪夢以外何物でもない。そして、唯一残された倒す手段は体全てを粉砕する事だ。だが、これは不可能だ

ノイントの攻撃は物理と魔力二つあるが、物理は切る事だけで大剣は破壊されている為ガンブレード一本では無理がある。魔力についてだが、これは最初の攻撃でも分かる通り白崎には効かない。本来は極太のビームを圧縮した収束ビームですら吸収されてしまったのだから貫通力云々は前提から外れ、確実に巨大なビームも食われる事間違いなしと言う事だ

 

「いたたた~、自爆なんてびっくりしちゃったよ~。でも効かないよ?」

 

「ええ、そうでしょうね。貴女は化け物、生き物ではない」

 

「私は人間だよ?何を言ってるのかな?かな?」

 

白崎は、ゆらゆらと近付いてくる。ノイントは白崎に対して高速のヒットアンドアウェイ戦法で現状を切り抜ける為の作戦を立てようと思っていたが、その時間すら削られてしまった事に気付いた。それは、白崎を中心に地面の所々に触手の吸盤が浮き出ているのだ。もし、その場に足を置いたら先程と同じ様に捕まってしまうだろう

 

これは・・・不味い。次は甚振る事はしない可能性が大きい。捕まれば本当に最後―――あの嘴で体を抉られてしまいます。飛ぶ事は出来るだけ控えたかったのですが、死地に自ら飛び込まなければいけませんか

 

ノイントが空の利を捨てている理由は、全方位からの触手攻撃を避ける為だ。地上も危ないとはいえ、下からの攻撃は地面の振動で機微に感じ取る事が出来る為避ける事も容易かった。だが、今は吸盤の地雷が至る所に出来ている点から、地面で動く場合はその吸盤がない所を足場にしないといけない=避ける方向と場所を相手に知らせるという事だ。ならば、少しでもリスクの少ない場所は空しか残されていない

 

下手な攻撃に直撃すればあの金槌状の叩き落とし+吸盤による拘束の二重構え・・・。本当に戦いのない平和な国から転移して来たのですか?多少の戦闘でここまでの駆け引きは不可能となれば、天性ですか

 

白崎のこの計画は何も考えていない。それどころか、こうした方がいいかな?的な感じで思い付きで罠を張った事で二手三手先の罠を完成させているのだ。天然故の災害と言った方が良いだろう

 

「泥棒猫はとっとと消えないとハジメくんの邪魔になるんだよ?どうして分からないのかな?かな?」

 

「私からすれば、貴女の存在が邪魔だと思いますよ」

 

「死んじゃえ♪」

 

ノイントのありのままのツッコミに苛立った白崎は、大量の触手をノイントにぶつけようとした。だが、ノイントは銀翼を広げて空に飛んで回避。触手はそれを追う様に群がるが、それ等をギリギリの所で躱しながら白崎へと接近して踵落としを繰り出す。勿論、白崎はそれを防いで捕まえようとするが、ノイントは急制動を掛けて脇腹へ攻撃ヶ所を変えて叩き込みその場から離れる。本来はこれで喜ぶが、ノイントは舌打ちをする

 

触手は軟体的だと思いましたが違いましたか・・・まるで繊維が複雑に絡み合って打撃耐性のある筋肉です。分厚い金属板を蹴ったかの様な感触、瞬時に硬化している?本能か自動でそうなっているのは分かりませんが、生半可な攻撃は無意味ですね

 

鳥が飛ぶ様な軌道ではなく、稲妻の様にカクカクとした軌道で不規則に動いて止まったりと繰り返しながら攻撃をするが、白崎には全く効いていない様子だ。無駄な動きを割き、最短距離で攻撃を与えたりと集中力をどんどんと増していく

 

「ちょこまかとうるさいよっ!!」

 

ノイントに苛立った白崎は、クレーターに蓋をするように触手で覆ってそのまま落とし、異変に気付いたノイントが一瞬振り返った時を狙って触手を全方位一斉に放った。確実に捕らえたと確信した白崎は笑みが零れた。だが、甲高い雷の音が聞こえたと同時にノイントに殺到した触手はボロボロと崩れ落ちた

 

「え?」

 

白崎は、何が起きたのか分からないのか目を見開いて驚愕していた。一方、ノイントも何が起きたのかよく理解していない様子だ。ならば原因は何か?第三者の介入と言いたいが今回は違い、ノイントに変化があったのだ

銀翼は白く輝き、頭の上には光の輪が浮かんでいる。まんま天使の姿をしており、時々体から雷が迸っている

 

「こ、これは・・・?」

 

ノイントは自分の変化にようやく気付いたのか、手をグッパグッパと握り開いているこの変化は触手が一斉に攻撃した事が原因だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し遡り――――

ノイントに切り札と言う引き出しがない状態での覚醒は普通ならばありえない。だが、緊張と集中と体に残るダメージの三つが混ざり合った状態で、いきなりの強襲に集中力が極まったのだ。それと同時にノイントは不思議な感覚を覚えた

 

何故何も聞こえない?体の疲労が感じられない。動きが止まっている?

 

ノイントの世界は止まっていた。いや、ほんの少しだけ・・・ほんの少しずつ触手が自身へと近付いているのが見えた事から超スローな世界に紛れ込んだと感じた。だが、体は重く思う様には動かない

 

これが死ぬ直前の光景?

 

死を受け入れる光景なのかと不思議に思っていると、視線を感じて視線を少しだけずらすと、触手の隙間から見えた美羅の姿。普通は助けようと動くだろうが、その様子は一欠けらもなかった。いや、スローな世界の中こちらを見て一言呟いた。それは何を言っているのか聞こえなかったが、何を言っているのか分かった

 

いや、違う。私は終わっていない。未だ終わっていないっ!!美羅御姉様が大丈夫と言うのなら、私があれを倒せると確信している。なら、私はここで全てを絞り出す!

 

その瞬間、体の奥から力が溢れて爆発する。超スローの世界も終わり、襲って来た触手はその波動だけで砕け散った。そして、感覚で今の自分が先程までと全く違う事に戸惑いを覚えたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイントの変化を見た美羅は笑みを零してハジメの方へと視線を移した

 

(もう、あれは終わったわ。残りはハジメだけよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は戻り、仮名:天使モードとなったノイントは、自身の変化に戸惑いつつ油断なく白崎を見下ろしている

 

「なんなのかな?見下ろして優越感に浸かってるの?私じゃハジメくんを幸せに出来ないって言いたそうな顔して何様のつもりかな?かな?」

 

「貴女の言う幸せとは、押し付けの幸せです。ハジメの意思を尊重せず、ただただ己が欲の為にしか動かない貴女は今度こそ倒します」

 

ノイントは体の横を翼で覆い突撃、白崎は触手で迎撃をするが先程のヒットアンドアウェイ戦法と同じ様に急制動を掛けて動き回る事で捕らえる事が出来ないでいた。いや、それどころかノイントの動きの方が速くなっており、触手が向かった先には姿が見えず何て事が多く見られる様になった。そこに気付いたノイントは、回避から一転して攻撃に移る

 

「泥棒猫の攻撃なんかっ!」

 

「せやぁああああーーーーーー!」

 

ドリルの様に体を回転させて遠心力を得た回し蹴りを放ち、白崎がそれを受け止めようと腕を構える。結果は、ノイントの回し蹴りが白崎の腕を吹き飛ばして打ち勝った。この時、ノイントが蹴った足の感触はまるで柔らかい粘土を蹴り壊した感じだった。この一手で、今の状態は異形となった白崎達に有効な攻撃手段であると理解した

 

今しかない!何時途切れるかもしれないこの状況では速攻が最善手です!

 

白崎はノイントに吹き飛ばされた腕の再生が遅い事に戸惑っており、ノイントの事を何一つ見ていなかった。そこが勝敗の分かれ目だった。ノイントは掌底を背に叩き込み膝を付かせ、本能と直感に任せて湧き上がる力を込めた手刀で足を切断。地中に続く触手を切り離した事で障害物は無くなったので、白崎を持って力を放出して上空へと吹き飛ばす。空中では逃げる手段は限られており、触手で翼を作る程度だと予測していた通りだ

そして、ノイントも空を飛び上昇しながら触手の翼を出そうとしている白崎の行動を打撃を撃ち込む事で止めて、そこから連撃で空へ空へと打ち上げて腹部に生えた嘴を掴んで一気に地上へ降下する。その速度は凄まじく、あっという間に地表に到着して白崎を叩き付けた。腹部に生えた嘴以外の触手は吹き飛び、人間の身体だが肌が暗い青色に染まっている事から普通ではない事が見て取れる

 

「げほっ、お前ぇ、オマェエエエエエエッ!泥ボウ猫ノブンザイデワタシのハジメくんをォオオオオオーーー!」

 

「貴女のその異常の正体はこれですね」

 

ノイントは白崎の肩を踏んで、手に掴んでいる嘴を力を込めて引っ張る

 

「ヤ、ヤメロ!ヤメロォオオオオオーーー!引ッパルナァア!!それガナイとハジメくンガ―――」

 

ブチブチと言う音が聞こえるが、躊躇せず引き千切った。その嘴は、白崎のヘソから内部に触手が繋がっていた様で多少ばかり出血していた。そんな事は置いておき、ノイントは手に持っている嘴を力を込めて握り砕いた。触手は落ちてビチビチと暴れていたが、それも拾って湧き上がる力を放出して塵へと変えた

 

「ふぅ・・・これで私の方は一安心ですね」

 

「ヨクモ、ヨクモヨクモヨクモォオオオオオオーーーーー!!」

 

取り敢えず白崎はやかましかったので、ノイントは顎に一発打ち込んで気絶させた。これで残りの大物は一人だけとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ハジメside~

 

ハジメは天之河を見て感じた事はただ一つ、こいつの正義はただの子供特有の正義であり、正義の為ならどの様な非人道的な事をしても許されるという最悪の悪の正義に変貌している事が分かった。地球に居た頃から知っていたが、自分が気に入らない者や自分の思い通りにならない者を悪者に仕立て上げて排除しようとする事を自覚せず、ただただそれが悪いからと結論付けるご都合解釈には呆れてものも言えない

 

「南雲、皆の洗脳を解くつもりはないのか?」

 

「そもそも洗脳してないって。錬成師の生産職で、それだけしか魔法が使えない僕がどうやってそんな高度な魔法を使うんだよ」

 

「言い訳はいい。おとなしく降伏するなら痛み無く倒してやるぞ?」

 

「ほんっとうに君の脳味噌は大丈夫なの?君を育てた大人は碌な奴じゃないな」

 

「お前っ!俺の家族を馬鹿にしたな!」

 

天之河が手に持つ暗黒面に堕ちた聖剣・・・魔剣がおどろおどろしい色を漏らす。すると、魔剣から水分が出たのか一滴が地面に垂れると、濃硫酸が垂れたかの様に地面を溶かした。いや、濃硫酸が溶かすよりも早く溶けたので、溶解液と言った方が正しいだろう

 

「お前を倒し、皆の洗脳を解いてみせる!行くぞ悪党!聖剣の錆になれぇええええええ!」

 

「ほいっと」

 

天之河の真っ直ぐすぎる攻撃を悠々と躱してボウガンの散弾を放つ。しかし、散弾では力不足なのか触手を傷付ける事すら出来ずに弾が弾かれ地面に落ちる。それを知るや否や、ハジメは散弾から貫通弾に変えて撃つ。だが、それも触手を傷付けるには至らず

 

「無駄な足掻きを・・・俺は神に力を託されたんだ!皆を護る為の力を思い知れ!!」

 

魔剣の刀身が伸びてハジメを攻撃するが、ハジメもまた現場を冷静に見て回避する。しかし、剣を振るった時に零れた溶解液は予想とは違っており、意思を持っているのか刀身の腹からハジメに向けて放たれた。咄嗟にボウガンの盾で防ぎ、すぐにパージした事で侵食する事はなかったがとてもヒヤッとした瞬間だった

 

「どんなグロテスクな武器だよ。あんなの剣じゃなくて生き物じゃないか。刀身の腹から溶解液を吐き出すとか近付けもしないよ」

 

ハジメは離れて属性弾を装填して撃ち込むが、どの属性も思った程の効果はない為切り札の一つを切る。それは、炸裂タイプの属性混合弾だ。一つの属性が効かないのであれば、複数の属性を同時に直撃させれば効果は表れる筈だからだ

 

「そこっ!」

 

氷と雷の混合弾は、天之河に着弾したと同時に身体中を包むかの様に爆発する。雷でほんの少し硬直した触手に霜が降り掛かり凍る。ハジメは、間髪入れずに炎と氷の混合弾を撃ち込む。炎と氷と聞けば相性最悪だと思うだろう。だが、この属性弾にはハジメの細工が加えられている。それは、弾丸の中身にタウル鉱石を粉末状にした物を詰め込んでいるのだ。結果―――

 

ドガァァァァンッ!

 

着弾と同時に粉末状のタウル鉱石が燃えて氷を蒸気に変えて水蒸気爆発を引き起こしたのだ

少量でも水蒸気爆発まで持っていく事が出来る火力があるタウル鉱石ならではの特殊弾だ。これなら傷を負って動けないと思うだろうが、ハジメは二発、三発と続けざまに撃って殺意マシマシで追撃する。別に今までの事を怒っているからこの様に攻撃しているのではない。雌煌が殴った元クラスメイトの再生力を鑑みて執拗に撃っているだけで、オーバーキルにはならない

 

「南雲ぉオオオオオオオオオ!!」

 

触手は黒焦げになっているが、表面が剥がれ落ちて真っ新な触手が姿を現した。これでも駄目と分かったハジメは、宝物庫からビームソードを取り出しドンナーを持つ。遠近両立した装備だが、一つの難点・・・ハジメが近接戦闘に慣れていないという事だ。雌煌との格闘訓練はしているものの、一方的なものが殆どなので過小評価している。とはいえ、手加減しているとはいえ雌煌相手に一分程粘る事が出来るだけでも凄いのだが・・・

ハジメのビームソードと天之河の魔剣が鍔迫り合う。ビームソードでも溶けない魔剣とは凄いと思いつつ、ハジメはドンナーで天之河の魔剣を撃って弾き飛ばす

 

「ナっ!?」

 

「遅いっ!」

 

ハジメは、ビームソードを振るい天之河の腕を切り飛ばす。通常の物理攻撃ではすぐに再生するが、熱し切る攻撃なので再生は数秒程遅れる。だが、その僅かな時間があれば取れる行動が数多くある。ハジメは、回し蹴りで天之河を蹴り飛ばしドンナーで追撃をする。体に穴を開け、腕や足がちぎれ飛ぶ

 

「ひキョウだゾ!男ナラ正セイ堂々ケンでタタカエ!」

 

「よく言うよ。そっちはその魔剣から出る溶解液でこっちを溶かそうとしているのに同じ土俵に上がれ?戦いに正々堂々もクソもないよ」

 

「だったら、これもありだよね?」

 

その声が聞こえた瞬間、ドンナーを持っていた腕に触手が絡みついた。その触手は天之河のではなく、ハジメの死角から―――――中村の触手だった

 

「良いゾ恵理!ソノまま掴んデイてくれ!!」

 

「アハハハハハハ!光輝君に殺されちゃえ!!」

 

さすがにこれは不味いと感じたハジメが足を動かそうとしたが、足も触手に捕らわれてしまった。足を掴んだ触手の正体は檜山だ

 

「ヒャハハハハハ!ヨクモコンナ体にシヤガッタァ、ナグモォオオオオ!」

 

「ちぃっ!」

 

「ヨクやった檜山!俺タチの絆ノ力をナメルナァアアアアーーーー!」

 

天之河が魔剣を拾ってハジメに切り掛かる。だが、それに待ったを掛けるのがバトルジャンキーである

 

「ピッチャー投げました!そしてスッとライクゥッ!!」

 

「グアッ!?」

 

雌煌が戦っていた異形の元クラスメイトを投げ飛ばして天之河にぶち当てたのだ。中村と檜山がそちらを見ると、自分達以外は全て倒されていた。四肢を吹き飛ばされて異形となった元凶の種を引き千切られて人の姿となって無力されていた

 

「残りはテメェ等だ。個人的に気に入らねぇから後回しにしていたら一対一の戦いに茶々入れてんじゃねぇよ。というわけで、お前達は俺とバトルな!ぶっ飛ばしてやんよ!!」

 

雌煌はハジメを掴んでいた触手を引き千切りまとめてぶん回して地面に叩き付ける。これでまとめて叩ける状態となった

 

「そんじゃあ頑張れよ。無駄な介入はさせねぇからあの屑をぶっ飛ばせ」

 

「雌煌姉ありがと。勿論ぶっ飛ばすさ」

 

「先ずはお前を血祭りにあげてやる」

 

雌煌が指差す先は檜山で、一気に接近してラリアットで壁面へ埋め込んだ。檜山もロックオンされた事で逃げようとしていたのか、壁に埋まった時の形が非常口案内の人の様になっていた。中村は雌煌の動きが全く見えなかったのか、ブリキ人形の様に首を動かして檜山の姿を見た

 

「イエイッ!」

 

中村は、声を発する間もなく雌煌に顔面を掴まれて壁面にぶつけられた。しかも一番分厚い所だったせいでクレーターを作った。その後も雌煌が頭蓋が砕けると錯覚する力で何度も押し付けた事で気絶し、異形となった元凶も引き千切られて元の人の姿になった

 

「所詮屑は屑なのだ」

 

中村を処理し終えた雌煌は、うっきうきな表情で檜山に近付いて色々しているのは言うまでもないだろう

そのあっという間の出来事を見終えたハジメは、天之河が吹っ飛ばされた方向を見る。すると、土煙が晴れた先には誰も居らず、投げられた元クラスメイトだけだった

ハジメは急いでソナーを起動して天之河の動向を確認すると、少しずつ遠ざかる反応があった。これは間違いなく逃げていると判断したハジメは、急いで後を追う事にした

 

くそっ!あれの事だから逃げる事はないと思っていた僕が甘かった!行先は・・・まっず、捕らわれた人達がいる場所に向かってる!通路を通っていたら間に合わない

 

そこでハジメは近場にあった窓を開き、下を確認する。おおよそ四階建ての高さを飛び降りる勇気はないが、以前遊びで作ったアーティファクトを思い出す。それは、絶対に転覆しないサーフボード、重力魔法も付与しているので危険なジャンプをミスしても安全の逸品だ

ハジメはすぐにそれを取り出して窓から飛び降りてサーフボードに乗ってその場所まで一気にショートカットする。窓を突き破り、入った時に丁度天之河も来たのかほとんど同時だった

 

「クソっ!南雲、オ前はドコマで俺の邪魔ヲスレバ気が済ムんだ!」

 

「一つ聞くけど、この人達をどうしようとしたのか聞いてもいい?」

 

「決まッテいル!オ前を倒す為ニ力ヲ借リルだけダ」

 

この言葉を聞いたハジメは、遂に我慢していた堪忍袋の緒がブチ切れた。ボウガンやドンナー、ましてやビームソードすら使わない。ただただ感情に任せて天之河に殴り掛かった

 

「ド屑野郎ッ!」

 

天之河が魔剣を振る姿が見えたが、本能のままに拳をぶつける。ハジメなら普通はそんな無謀な事はしないが、この時だけは本能がそうしろと、怒りに任せて拳を繰り出した。この時、ハジメの身に少しずつ変化が訪れており、この瞬間が切っ掛けとなり覚醒した

魔剣に拳が直撃したと同時に、雷が迸り轟音が鳴り響き魔剣を砕いたのだ。天之河は魔剣が拳に砕かれた事に驚愕して体が硬直しており、そのがら空きの顔を真正面から殴った。天之河の鼻は潰れ、鼻血を流しながら通路まで吹き飛んだ

 

「何が正義だ、お前の言う正義は悪そのものだ!自分の力が駄目なら他人に救援を求めるならまだ分かるさ!だけど、他人を傷つけてまでその力を・・・エネルギーを奪おうとするなんて外道のする事だ!!」

 

「グっ、ガハッ!?ど、ドコにそんな力がァァァアアアーーーー!?」

 

ハジメは天之河を滅多打ちにする。今まで喧嘩した事がないハジメを知っている人がこの光景を見れば呆然とするだろう

 

「これは捕まった子供の分!」

 

「ゲボォッ!?」

 

「これは捕まった女性の分!」

 

「ゴホッ!?」

 

「これは犯された女性達の分!あれもこれも、全部お前に傷付けられた人達の分だぁあああああーーーーー!」

 

時々ハジメの拳が光って天之河にダメージを確実に与え触手を破壊していく

 

「成敗!」

 

最後の腹パンで天之河は来た道を引き返す様に壁をぶち壊しながらぶっ飛び玉座の間で墜落した

 

「ゴ、ゴんナハズジャない!オレハ、オレハ勇者ナンダ!」

 

這いずって逃げようとする天之河の背を美羅が踏んづけて阻止して、雌煌が異形の元凶を引き千切って全てが解決した。ハジメもノイントも戻って来たので元凶の本丸は全て片が付いたという事だろう

 

「ノイントは大丈夫だった?」

 

「大丈夫と言っていいのか分かりませんが、前半はかなり苦戦を強いられました」

 

「よし、すぐに治療しよう。後遺症とか心配だからね」

 

「神水を飲んで再生魔法を使ったので大丈夫だと」

 

「それでも心配だから」

 

「・・・はい」

 

「まぁ、ざっと見た感じ問題ないからこっちを先にしようぜ」

 

雌煌がゴミを見る目で元クラスメイト達を見る。いや、異形となっていた元クラスメイト達と言った方が良いだろう。この国の女性達と一緒に犯されていた数人は外しているが、それでも関心は殆ど無いに等しい

 

「さて、神様の贈り物やらは全部ちぎったがまだやるか?―――と言いたいが、どっちにしろ死以外に残されちゃいないがな」

 

「ねぇねぇどんな気持ち?勇者勇者言っておきながら大悪党の如く色んな女性を攫って犯した強姦魔さん。ネットの皆も『死ね』や『殺せ』と言っているわよ?」

 

「・・・ん?おい、美羅。ネットて言わなかったか?」

 

「そりゃあ、電話出来るようになったならネットも繋げれる様にするのは当然でしょ?これは私のトゥイーターに登録している人だけしか見る事が出来ないけど、現在中継しているわよ。いやぁ~、掲示板の力って凄いわ~」

 

これを聞いたハジメは、これは社会的に終わったと思った。この世界から悪として認識され、元の世界に帰れたとしてもとんでもない事になるのは容易に想像がつく

 

「あ、垢BANされちゃった。まぁいいや、どうせ今までの事は切り抜きとかもあるだろうからどうにでもなるわね。さて、これを殺すのはいいんだけど、それは私達よりももっと相応しい人達が居るでしょう?」

 

「それならアザンチウムロープで拘束しておくよ」

 

ハジメは気絶している元クラスメイト達を拘束し始めた。一方、ノイントは周囲の触手を浄化して砕き女性達を救出している。雌煌は番犬で美羅は証拠写真を沢山撮っていたりする

こうして王国は解放され、魔人族達が入国して実質的な人族の敗北と言う形で長きに渡る戦争が終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遂に決着!
生放送していたからどうやっても最悪の方向にしかならないよ!
ようやくだ、ようやく大きな声で叫べる!!

ざまぁ!!






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