召喚の手違いは世界最強   作:ぬくぬく布団

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駆け足で走り抜けるぞい!


錬成師弟頑張る!

~ハジメside~

 

ハジメとノイントは、今は廃れた町―――ホルアドの跡地に訪れていた。本来の目的はオスカー達なのだが、ハジメがちょっと気になっただけなのだ。町は魔物が蔓延っており、住民は誰一人居ない様子だ

 

「う~ん、ホルアドが魔人族に滅ぼされたというより迷宮から魔物が溢れてこうなったとしか思えないな」

 

「迷宮の魔物は無限に対し、ホルアドの人員は限られているので仕方がないでしょう。噂では人的被害は少なかったと聞いています」

 

「そうなの?」

 

ハジメはボウガンで魔物を倒しながら迷宮の入り口へと進む。ノイントは上空からハジメの攻撃が通らない場所に居る魔物を魔力の槍を投擲して串刺しにして倒す。そして、一時間も経たずホルアドに蔓延る魔物は全て倒され町が解放された

ノイントが上空から感知系の技能を使いながら探り魔物の気配がない事を確認し終え、ハジメが作った信号弾を上空に向けて撃つ。赤色の煙を噴き出す弾丸が空高く飛ぶ事で、近くの町からでも見える合図を送った。これでホルアドの復旧する為の人員が向かう

 

「信号弾を撃ち終わりました。恐らく数日すれば大勢の人員がこちらへたどり着く筈です」

 

「ありがとう。僕達も迷宮に入って素材を集めながら降りて行こう」

 

ハジメの目的は、解放者の拠点で生活しているオスカーとミレディについてだ。しかし、助言を得たとしても作る事が難しい事に変わりなく、かなり少なくなっているオルクス迷宮産の鉱石をついでで手に入れたいのだ。鉱石単体による概念魔法の付与はとても難航しており、神結晶以外の鉱石に概念魔法を付与すれば自壊してしまうのだ。だが、ハジメは鉱石と鉱石を混ぜる融合錬成の意味を軽視していた為に気付くのが遅れた。鉱石の比率を変えたり層にしたり包んだりとやり方は様々で、新たな鉱石を作る事で解決策が見出せる可能性がとても高いので研究で沢山必要という事だ

オルクス迷宮の表層は魔物がとても多かったが、ボウガンの通常弾や散弾で蹴散らす事が出来たので駆逐した後宝物庫ではなくアイテムポーチに限界ギリギリまで詰め込んだ。小さな鉱石をそのまま入れてしまうと数が多くなってしまうので、同じ鉱石を錬成で大きなインゴットに整えて入れてあるのでかなりの量を詰め込む事が出来た

 

「いやぁ~、表層だからって甘く見てたね。素材の宝庫だよ!」

 

「美羅御姉様から頂いたこのピッケルの性能は凄まじいです。まるで土を掘っているかの様にサクサクと刃が入ります」

 

「美羅姉さん達が居た世界の鉱石の密度は、トータスの倍以上だからそれも相まってなんだろうね」

 

美羅がノイントに渡したピッケルはグレートピッケルと呼ばれる炭鉱夫愛用の逸品である。ハジメがある鉱石がある場所を決め、交代しながら採掘しているのだ。表層でやる事を終えた二人は、そのまま100層まで降りて以前と変わったところを発見した

 

「・・・石板がないね」

 

「・・・そうですね」

 

以前訪れた時にはギミックが発動しなかったので美羅の雷球でぶち破った床は元通りとなっていたのだが、肝心の石板は修復されていなかった。ハジメは、手に入れた攻略の証を手に出して石板があった場所までノイントと一緒に歩いて行くと足元に魔法陣が浮かび上がった

 

「よかった。転移魔法のギミックは生きていた」

 

「裏は魔物が溢れているという事はないのでしょうか?」

 

「僕達が初めて訪れた時と変わらないか少ない筈だよ。表と裏は完全に区分されて調整されている感じだと思う」

 

ハジメが推測した事は正しい。もし、裏の魔物が溢れて表に出ようものなら地獄絵図が広がってしまう。表と裏を隔てる天井が再生して塞がるとはいえ、もしもという可能性もあるので念には念を入れての安全策なのだ

二人は裏の一層へと転移し、そこは以前と変わらない空気だ。油断すれば何時でも襲い掛かるぞと言わんばかりの重さだが、今のハジメなら一人だろうと余裕で切り抜ける力を有しているが油断や慢心はしない

前回は出来なかった全探索で鉱石を探すが、発見した全てが手に入れた事がある鉱石だ。しかし、最深部手前の階層の端っこの奥から魔力反応を感知したノイントがハジメと一緒に目標地点を目指して掘り進め、神結晶を掘り当てた。初めての神結晶よりも小さいのだが、それでもおおよそ百キロを収集する事が出来たのは予想外で歓喜した。そして、遂に最深部に降りた二人だがボスが現れずそのまま拠点へと入る事にした

 

「お邪魔します」

 

二人が拠点へと入ると、以前と変わりない風景。しかし、変わっている点が一つ―――騎士型のゴーレムが庭の掃除をしたり、メイド服を着たゴーレムが指揮を執っていたりとある意味カオスな光景だった。呆然としていると、メイド服を着たゴーレムが近づく

 

「迷宮攻略おめでとうございます。私の銘はセシル、主達は家に居ますのでご案内します」

 

「オスカーさんとミレディって今どんな感じですか?」

 

「?―――貴方方は主達がおっしゃられていた南雲ハジメ様とノイント様ですね。残りのお二方はどちらに?」

 

「美羅御姉様と雌煌御姉様はフェアベルゲンでのんびりしています」

 

「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」

 

メイドゴーレム事セシルの後を追い、オスカーとミレディが住んでいる住居の前に到着。先にセシルが入り、少しして再びセシルが出迎える

 

「少しばかり趣味に没頭されていましたので切り上げさせました。主が降りてくるまではこちらの席にお座りしてお待ちください」

 

ハジメとノイントが用意された席に座り待っていると、二回からバタバタと足音を立てながら降りて来たのはミレディだった

 

「やっほ~!二人共久しぶりだね♪理不尽な二人は居ないよね?よっし!」

 

どうやら、美羅と雌煌の存在がミレディに軽度なトラウマを植え付けていたらしい。雌煌はともかく美羅がどうしてその枠組みに入っているのかは不明なので軽く聞くと

 

「いや・・・オーくんの魂を再生した挙句に身体を再生させて生き返らせるし、私の魂を強引に引っこ抜いてこの身体に定着させたから・・・ね」

 

ハジメとノイントは、当時の事を思い出しながら当事者となって想像する。魔法のスペシャリストであろうと、あっという間に魂を取り出す所業―――あぁ、確かに理不尽な存在だなと理解した

ミレディは、美羅によってこの場所に投げ飛ばされた時以降の話を楽しそうに聞いているのはいいのだが、いたずら心満載の生活を思うとオスカーの心労は凄まじそうだなと思いつつツッコミは入れなかった。楽しく話していると、二階からオスカーが降りて来た

 

「いらっしゃいと言った方が良いのかな?何かお困り事でもあったかい?」

 

「およ?二人は何かに困ってるの~?はっ!もしかして夜の相手に不満があったとか」

 

ガッツン!

 

ミレディがこれ以上良からぬ事を言う前にオスカーが拳骨を落とした。長年の付き合い故に察しての行動だろう

 

「ミレディの馬鹿は置いておき、一応何があったのかを知りたい。教えてもらえるかな?」

 

「それでは、ミレディを飛ばしてからの事をお話しします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメの口から語られる冒険?出会い?不幸―――。そして、解放者達が望んでいたエヒトが外来の神によってペットにされたと。これを聞いたミレディは、お腹を押さえて大爆笑しつつ「エヒトざまぁ!」と言っていた。オスカーの方も最初は嬉しそうに笑い、その外来の神がこのトータスを手に付ける可能性がある事に気付いて頭を抱えそうになったが、美羅のバカンス地であるトータスには手を出さないという約束なので恐らく大丈夫だろうと聞いてホッと一安心していた

 

「ペットwエヒトのクソ野郎がペットwwwww!m9(^Д^)プギャー!」

 

「しかし、外来の神・・・クトゥルフですか。そして、目に留まったエヒトと勇者(笑)のあれこれを思うとこのトータスに手を出さないと明言してくれたのはありがたいと言っていいのやら」

 

「もうっ!オーくんは深く考えすぎだよ!あの二人が手を付けたこのトータスを計画性なく襲う事はないって言ってたじゃん!」

 

「楽観視し過ぎるのもよくない!」

 

オスカーとミレディの言い合いが始まり、それをボーっと見るハジメとノイント。しばらくして、少しだけ落ち着きを取り戻したオスカーが二人に謝罪して事の本題を聞く事とした

 

「さて、話を戻そう。聞く所によると故郷へ行く為のアーティファクトが必要だという事だね」

 

「そうです。神結晶を使って故郷の座標を示すアーティファクトを作ろうとしたけど全部失敗していて・・・軽くスランプ状態です」

 

「およ?樹海をクリアしたんだよね?私達が作った羅針盤が渡される筈だけど」

 

これを聞いたハジメは、がっくりと項垂れた。よりにもよって一番のショートカットであるそれが美羅によって破壊されているのだ。これが人間のやる事かよぉおおお!とツッコミたいが、美羅は人間じゃなかったと思い出して溜息を吐く

 

「私達が樹海を攻略したのはいいのですが、全ての神代魔法を得た事によって気絶したのです。次に目を覚ました時には、美羅御姉様が作った別荘の中でした。私達が探索する事なく美羅御姉様により・・・はい、拠点は木っ端微塵に破壊されたとの事です」

 

「・・・壊した?」

 

「大量のGによって不機嫌にされた腹いせだと聞きました」

 

オスカーとミレディは、これを容易に想像する事が出来た。そして、ミレディはあの時に魂諸共に破壊されずに済んでよかったと冷や汗を流しながらぎこちない様子だ

 

「そ、その話は置いておいて!今は羅針盤が無くなった事に対するアプローチだよね?」

 

「羅針盤は個人製作ではなく解放者達の願いによって生まれた概念魔法です。しかし、神結晶を素材としているなら大丈夫な筈・・・。付与する概念魔法はちゃんと完成されていますか?」

 

「手応えはばっちりです。でも、付与したら神結晶が粉々になって試験すら出来ないんです」

 

神結晶が粉々に砕ける―――オスカーとミレディは原因が理解出来た。概念魔法の強さに鉱石が耐えられないという簡単な答えだ。だが、それ程までに強い意志によって生まれた概念魔法ならば世界を超える事が出来る事にも納得がいく。だからこそ、ハジメ個人どうこうではない問題に頭を悩ませる

 

「恐らくだが、ハジメ君が創った概念魔法のレベルが私達が思っているよりも遥か高みの存在となっている。概念魔法の性能に素材が耐えられないという事だ。しかし、性能を下げた概念魔法を創るという事は出来ない。極限の意思によって生まれるのが概念魔法、意志が弱ければ作る事すら出来ない。となれば付与する素材を新しく作るしかない」

 

ハジメは、「・・・やっぱりか」とおおよその予想が出来ていた。しかし、やってやれない事はないのは確かだ。一人では時間が掛かるが、オスカーという神代を生きていた最高の錬成師が居るので彼のやる気をどうやって引き出すかが肝だ。だが、こちらには最高の餌を持っているのだ―――美羅から渡された沢山の鉱石が

 

「オスカーさん、新素材を一緒に作って下さい」

 

「・・・私は今は忙しいのですが」

 

「対価は異世界の鉱石でどうですか?一緒に研究して概念魔法に耐えうる素材が出来たらの報酬ですが」

 

これを聞いたオスカーは、目をキラキラさせた。やはり根っからの職人は、未知の素材に興味津々だ

ハジメがアイテムポーチから鉱石を取り出し、机の上に置いていく。オスカーは、色とりどりの鉱石を鑑定しているのかさらにソワソワし始めた。早く手に取って触りたい、錬成してみたい、作ってみたい等々沢山の感情を必死に抑えている様子だ

 

「素晴らしい!これが報酬なら一緒に研究しましょう!あぁ、アザンチウムよりも硬い鉱石でありつつ色合いが素晴らしい。これなら直ぐにでも素材を作れる!」

 

オスカーはうっとりしているが、ハジメはここで先手を打つ

 

「因みにですが、これらの鉱石で試しても全滅でした」

 

「・・・えっ、本当?」

 

「ぶっちゃけて言うとこれ以上どうするかが思いつきません。一応融合錬成を試したけど、何故かそれも全滅です。融合試験で全部が元の鉱石よりも脆くなりました」

 

オスカーは、これを聞いて考察しながら紙に簡潔に情報を書き留める。それからハジメに融合して出来た鉱石を取り出してもらいそれを鑑定し、頭を痛めつつも鑑定結果を記す。手に持ったり錬成で形を変えたりとしたが、形を変えると粉々に砕けたり比率が変わったりと、今まで体験した事のない事象が起きた。だが、頭が痛いながらも未知の結果に心躍っている様子だ

 

「ふむ、面白い。今まで見た事もない結果ばかりだ。反発しているのか完全に混ざらないのか分からないが、複雑に絡んでいると言った方が良いのだろうか・・・・・。いやはや面白い!」

 

「美羅姉さんが、「鉱石を混ぜ合わせたら概念魔法に耐える素材が出来る」と言っていたのでまず間違いないかと思います」

 

「?君のお姉さんは作らないのかい?」

 

「試練と成長の為と言って最低限の助言だけしか貰えませんでした」

 

「・・・なるほど。恐らく、ハジメ君が故郷に帰った時の自衛手段と判断力と考察力を成長させる為か」

 

ハジメとしてはそんな事はないと思ったが、よくよく考えれば以前よりも考察力の早さや柔軟な思考となり、合成する素材が概念魔法に耐えうる物となれば防衛能力の強化にも直結する。自分が知らぬ間に訓練されている事にようやく気付く事が出来たのだった

 

「そ、そんなことより・・・オスカーさんはどうですか?混ぜ合わせる事って出来ますか?」

 

「研究しないと分からないとしか言えないが、ハジメ君のお姉さんが宣言しているのであれば出来るのでしょう。しかし、そこに至るまでの研鑽に時間が掛かる・・・」

 

神代を生きた凄腕錬成師のオスカーでも新素材を作るのはかなり厳しい様子。ハジメは、数ヵ月後に帰る事できないんじゃない?と不安に思いつつ、頭を振って不安を振り払う。このトータスに来てからは未知が溢れていたが、生活していくにつれて慣れて行ったのでこれもその延長戦だ

 

「取り敢えず、一緒に研究しましょう」

 

「ふふふ、これは腕が鳴りますねぇ!」

 

ハジメはオスカーと一緒に工房へ移動し実験を開始。ミレディは失敗するであろう二人をからかいに、ノイントは軽食を作りと別れて行動する事となった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――半月後

ハジメとオスカー二人がかりの実験は難航してはいたが少しずつは前に進む事が出来ていた―――もう過去形である。今は思い付く全てを試しても失敗ばかりとなり、二人共机の上でノックアウト状態だ。そんなだらしない二人を見たミレディは、ケラケラと笑っておちょくっているがハジメとオスカーは怒る気力も出ない程燃え尽きていた

 

もう駄目だぁ。アイディアが何一つ思い浮かばないよ。精錬も試したし、不純物も取り払ったし、敢えて残してみたりもしたけど、全部駄目だなんて・・・。鉱石によって魔法の良し悪しもあるから一向に前に進まない

 

ハジメとオスカーは、鉱石によって付与した魔法の出力が違う事を発見した。だが、それがとても難題かつ、価値の低い鉱石と価値のない鉱石の二つとなった。万能性のある鉱石も存在するが、決め手がいまいちで混ぜ合わせるとメリットが消えてしまったりと散々な結果だった

より繊細かつ大胆なアプローチとして全ての鉱石を均一に融合させたところ、只のゴミと化す謎の現象が起きた。これに関しては?が大量生産されて訳が分からなかったが、絶対に使えない事が分かっただけでも良しとした。ひたすらに形を変えたり融合させたりしたのだが、これだ!という手応えのない鉱石が生まれるばかりだ

 

美羅姉さん嘘ついてないよね?ここに暫く居たいからって事は・・・ありそうだけど絶対にないな。母さん達に数ヵ月後には帰れるって言ってたから出来るんだろうなぁ。けど、正直言って無理ゲーじゃないかな?

 

ハジメが溜息を吐きつつ諦めかけていると、工房の扉が開きノイントが全員分の食事を運んで来た。実験からずっと二人の食事を作って運んで来てくれるとても出来ているノイントには頭が上がらない。栄養バランスが素晴らしく美味しい食事の主食は、殆どが米だったが今回はパンだった

 

「何か手掛かりは掴めましたか?」

 

「・・・何も掴めなかったよ」

 

「なら、しばらくは実験を止めてみませんか?落ち着いた時こそ良い案も浮かぶかもしれません」

 

「そう・・・だね。しばらくのびのびしてみよう」

 

ハジメは、しばらくノイントの提案通りのびのびしてアイディアを浮かばせる事にした。一方、オスカーの方もミレディに怒られてしばらく実験禁止にされたのは言うまでもない

その日から実験を一時止めた二人は、のんびりと本を読んだりイチャイチャしたりと普通の日常を謳歌していた。そして、数日後の出来事―――、アイディアは本当に些細な事から得たのだ。それは、ノイントが主食のパンを作っている時の事だった

ノイントの作る料理は日に日に進化しており、パンの中にドライフルーツを詰めたりして焼くのは勿論の事だが今回は完全に新作だった。所謂菓子パン―――、ミレディが重力魔法で果実をすり潰してペースト状になったそれを一緒にコネコネした後に、食感のアクセントとして押し固めた果肉に砂糖を塗してパズルの様に並べて風景を作ったのだ。ノイントやミレディが楽しそうに他愛のない事を喋りながら作っている時に、些細な言葉がハジメとオスカーの脳に電流を走らせた

 

「それにしてもこうやって果肉ブロックで絵を作るなんて面白いねぇ~♪これって彼氏君の故郷のアイデア?」

 

「はい。美羅御姉様に作り方のアドバイスを元にトータスの風景を作ろうと思いました」

 

「いいねいいね!でもでも、この色の違う生地はどうするの?こっちはこっちで別のを作る?」

 

「いいえ、これらの生地を一つにまとめて"一つのパンで風景の色を変えます"。そして、切った場所によって景色の色を変え、"上と横の景色もまた変わる"物を作ります。熟練の技が必要とされますが、何事も挑戦です!」

 

「「オスカー(ハジメ)さん(君)!!」」

 

ハジメとオスカーはノイントの言葉を聞いて閃いた。今までは単純に混ぜ合わせただけだったが、層にする事で形作る事をしていなかった。これならば、魔法を付与した鉱石の欠点を利点に変えうる事が出来ると直感で理解して早速工房へ行こうとしたが、ミレディが二人に重力魔法で体を地面に縫い付けた

 

「はいはい、アイディアが思いついてよかったですねぇ~♪でも、そのアイディアはノイントちゃんから得たんだから何処かにメモして座らないと怒っちゃうぞ♪」

 

「「はい、すみません」」

 

ミレディに怒られて二人は大人しくなった。ミレディはそのまま重力魔法を行使したまま、ノイントと一緒にパン生地の発酵とスープを作る。休むと言っていたのに工房へ行こうとした二人の御仕置は食事の準備が済むまでずっとだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後―――

 

「出来たぁーーーー!」

 

「何でも付与できーる鉱石の完成だ!」

 

徹夜を数日したハジメとオスカーのテンションはおかしくなっていた。しかし、目的の鉱石は完成して帰還する為の概念魔法の付与も成功した。形はシンプルな扉で、魔力消費を抑える魔法陣を描かれている

新素材は取っ手部分だけに使用されているが、これは使用者の行きたい場所へ繋げる鍵となっている。しかも、ハジメが創った帰還の概念魔法は並みの概念魔法を超えているので出口を自在に変更したり周辺景色が分かってさえいれば繋ぐ事も容易い超高性能な一品だ

 

「おめでとうございます」

 

「おぉ~、見た目は普通の鉱石なのに不思議だねぇ~。知らない人が見たら豪華な扉位にしか見えないよ」

 

ハジメ一人だけではここまで辿り着く事は出来なかった。だが、オスカーという職人と一緒に様々な知識を出し合う事で完成したのだ。ハジメは扉を、オスカーは新素材の鉱石のインゴットと元となった鉱石を沢山渡して此度の要件は終わった

 

「オスカーさん、ミレディ、ありがとうございました!」

 

「いやいや、こちらこそありがとうと言わせていただきたい。早速この新素材を使ってメイドゴーレムの強化をしたいと考えているよ」

 

「いやぁ~、ここまでテンションアゲアゲのオーくんは久しぶりに見れたからこちらこそありがとうだぞ♪」

 

「こちらはお二人の好みの味と神代に作られていた食事の再現が出来ましたのでとても助かりました」

 

「くっ!女子力がっ!圧倒的に負けている!!」

 

ミレディはノイントとの女子力の差に項垂れるが、それでもミレディは普通の人よりも料理を作るのは上手なのでそこまでではない

 

「それではまた暇が出来た時に尋ねさせてもらいます」

 

「健康に気を付けてお過ごしください」

 

ハジメとノイントは転移門を使ってフェアベルゲンへと転移、オスカーとミレディはそんな二人の背を見送り転移門が消えた後も見続けた

 

「神の使徒があそこまで変わるとは思っていなかったな」

 

「だねぇ~、感情豊かになって人間味溢れているから良い事だよ。しかも、地上はクソ神から解放されて私達の長年の夢だった人族、亜人族、魔人族の手を繋げさせたのがあの二人だもんね」

 

「かなり自分本位な行動と言っていたけど、あの二人はあまりそんな事気にしていない事が周囲に伝わったのだろう。いがみ合い、すれ違い、憎しみ、色々あった悪いものが彼等に破壊されたのは良かった」

 

解放者達の長年の夢―――エヒトを討ち、種族の差別をなくす。後者は無理難題で二の次だったが、ハジメの行動によって全てが叶ったのは既に死んだ解放者達もきっと喜んでいるだろう

 

「にししっ!今度一回地上に出て買い物しようね♪」

 

「分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移門でフェアベルゲンへと戻ったハジメとノイントは、早速美羅にアーティファクトの完成の報告をして別荘の一室に設置。和風の部屋に鉱石で作られた扉は、些かどころかかなりミスマッチだ。しかし、そんな事は関係ない。遂にハジメの願いが叶うのだからそこはあまり気にしない

 

「この扉がハジメの力作か。本当に地球に繋がってんのか?」

 

「雌煌姉、不安を煽らないでよ」

 

「ハジメ、大丈夫です。何かあったとしても帰る事は出来ます」

 

「ノイントちゃんの言う通りよ。本当に危なかったら干渉してあげるからどっしりと構えなさい」

 

「本当に雌煌姉よりも美羅姉さんの方が安心するのは何でだろう・・・」

 

「雌煌の第一印象は乱暴だから気にしない気にしない」

 

「おい、聞こえてんぞ!」

 

雌煌が美羅を殴ろうとしたが、拳骨のカウンターが直撃して悶絶している姿をハジメは傍目で見つつ扉の取っ手を握る。場所は自室を思い浮かべながら魔力を注ぐと、取っ手が虹色に輝いて扉に線を引きながら光る。そして、扉が取っ手と同じ色になった

 

「出来たかな?」

 

「それじゃあ一度帰るわよ」

 

「久しぶりの秋葉に凱旋するぜーーー!!」

 

美羅と雌煌が先に入り、ノイントがハジメの隣に立って手を引く

 

「さぁ、行きましょう」

 

「あはは、父さんと母さんにどうやってノイントの事を説明しようかな」

 

美羅と雌煌の後を追いハジメとノイントも扉を潜る。そこはハジメが思い浮かべていた自室―――美羅達は既に部屋から出ていた。そして、少し遅れて下からバタバタと階段を駆け上がる音と部屋に入って来た二人

 

「「ハジメ!」」

 

ハジメの身体を抱き締める南雲夫妻。規格外、チートという言葉を体現化した二人が傍に居るとはいえ、自分達の子供が異世界へと誘拐されたのならば心配するのは当然だ

 

「父さん、母さん、ただいま」

 

ハジメはようやく地球、自宅へと帰って来た事に安堵した。長い様で濃厚な短い旅―――全てが初体験かつ、命の炎を絶やさず走り抜けた。自宅に着く事で今まで張りつめていた緊張の糸が切れ、床に尻餅をつく様に座った

そして、ハジメの口からトータスに転移してからの旅の詳細を語られる。美羅が説明したのは大雑把に説明しただけなので、どの様に過ごしていたのかは全く分からなかった。旅の内容を全て聞き終えた南雲夫妻は、つい口漏らした

 

「「何その英雄譚」」

 

「英雄じゃないよ!?」

 

ハジメ自身は、周囲はお構いなしの自由に旅をした結果であって人様に褒められる様な事はしていないと過小評価していたのだ

 

「過小評価し過ぎだぞハジメ!お前は解放者と呼ばれていた者達の願いを結果的に叶えたんだ。そこに自分本位の行動があったとしても、周りはそうは思っていない」

 

「そうよ。種族差別が廃止されて殆どの人達から慕われているのならそれだけで立派なの」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうなのよ。・・・・・ところで、隣に居る娘は彼女?」

 

「ノイントと申します。将来はハジメの妻になります」

 

「「異世界美女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」」

 

南雲夫妻は狂喜乱舞―――。本音を言うと、ハジメに彼女が出来る可能性はかなり低いと思っていたのだが、その低確率をクリア+美女。百点満点で言う所の五百点だ

 

「ノイントと付き合っているんだけど、その・・・ノイントの姉妹も同居って大丈夫かな?」

 

「「バッチコイ!」」

 

南雲夫妻は、更に狂喜乱舞した。ハジメの話を聞く所、ノイントとその姉妹はエヒトに造られた戦乙女―――もう行く当てもないどころか討伐対象になりかねないという事なので引き取る一択だ

そこからは話がサクサク進み、家の地下にトータス産の香辛料を栽培して売り捌くというオンリーワンの商売といった計画も進んだ。一応ざっくりとした説明は終わり、これからの事について詳しく煮詰める事に

 

「一応、王国には無事だった元クラスメイトが数人居るから各家に帰す。そして、僕はノイント達が日本に住める様に手続きの為に・・・・・・・はぁ・・・・・・政府やらお偉い人達に交渉しないといけないんだろうなぁ」

 

落ち込んでいるハジメだが、そこに美羅が合流してノイント達のこれからについて説明となったが物凄く単純な手段だった

 

「ノイントちゃん達の証明書の発行程度ごり押しで作らせるだけよ」

 

「・・・因みにどうやって?」

 

「龍を連れてお宅訪問?」

 

「それはやっちゃいけないやつだよ!?」

 

「えぇ~、触れ合い広場を定期的に開けば良いと思わない?」

 

政府視点から見ると機嫌を損ねた瞬間に襲い掛かる凶暴な龍としか認識されない筈なので触れ合い広場なる施設は作れないし不可能だろう

 

「まぁ、大丈夫でしょ。既に龍は暴れたって聞いたから脅しとして問題ないわ。ふふふ、核を撃たれても無傷な頑丈な子達ばかりだから面白い事になるわよ」

 

「あ・・・悪魔だ」

 

お願いが駄目なら脅しでとなると、政府は折れるしかない。現代兵器なんて効かねぇ!な龍にどう対抗すればいいか――――全て無意味なので屈する他ない。結果、政府との交渉で香辛料の売り先を優先する事を却下されたら物理でという事に落ち着いた

 

政府の皆さん、僕ではどうする事も出来ないので香辛料で手を打ってください

 

ハジメに出来るのは美羅達よりも先に接触して交渉するか、政府に全てを放り投げるの二択だ。取り敢えず、帰還したので政府に連絡は必須との事で、南雲夫妻が連絡を入れる。政府の人間はすぐにハジメとのコンタクトを取ろうとしたのだが、連絡先の相手よりも上の立場の者が大まかな情報だけを聞いて少しの間は家族との時間を大切にしなさいという事で話し合いは一週間後となった。ハジメが帰還したという情報は世界中に公開され、しばらくは接触禁止を定め、もし破る者が居れば逮捕は確定でマスコミにも動く事を禁止した

そして、あっという間に一週間が過ぎて政府との話し合いだ。その話し合いには南雲夫妻は出さず、ハジメと美羅と雌煌とノイントの四人が行き、その話し合いの内容は全世界に放送される事となった。事前にどういった事を話すのか決めていたお陰で流れはスムーズだった。政府・・・世界中が求めるトータスへの行き来と資源についての交渉だったが、ハジメはこれを拒否。トータスに住まう人達は、現在仕方なしで外道に堕ちなかった元クラスメイト達を預けている。しかし、彼等の感情は否定的というよりも怒りも含まれているという事を伝え、ハジメ達以外の者が来たら殺すかもしれないと付け加える

 

「資源だけでもどうにか出来ないだろうか?」

 

「資源の確保は復興作業として使っているので無理です」

 

ハジメははっきりと告げる。復興作業は事実であり、それならば資源が大切であり分ける事すら出来ない程大変な作業である事も理解出来るだろう。それからの交渉は、ノイントとその姉妹の三人の永住権を保証する代わりにトータスで採れる野菜の種を提供するという事で話が纏まった。その後、トータスに預けていた元クラスメイト達を各家庭に帰し、ノイント達の住民票もすんなりと得る事が出来たのは幸運だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




残り一話でこのお話も終了予定です
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