続くかどうかは不明
~ハジメside~
トータスから帰還して半年―――、ハジメは学校を飛び級で卒業した。いきなりの展開であれかと思う人も多いだろう。しかし、帰還した学生は半数以下なので新しいクラスを作って等々をするには手間とお金が掛かるという事だったのだ。学校側からすれば手痛い出費となるだろうが、そこはハジメが配慮して実績を出して飛び級を要求したという事だ
渡りに船な学校側は、これを快諾して特例で卒業を許可したのだ。ハジメの学力は世界有数の大学のトップレベルでも通用出来る程あったのだが、進学せずに計画を立てていた香辛料と野菜の売買で生計を立てる事にしたのだ。尚、トータス産の香辛料は超レア=黄金並みの価値がある。取引の際は必ず身を砕き、大きさ別に分けて売る事にしている
新種の香辛料という事もあってか、料理人は是が非でも欲しいというレベルであるので儲かる儲かる。一部転売で儲けようとした馬鹿が居たが、ハジメから直接取り扱う方が料理人としての信頼にも繋がるので買われる事もなく、逆切れして凸しようとした転売ヤー達は世界中から監視の目が強くなって転売で儲けた所得の殆どを税金で持っていかれるという大惨事に発展した為に殆どが手を引いた。それでも凸しようとする馬鹿はしょっ引かれて豚箱に放り込まれて悲しい人生を過ごしている
「フハハハハハ!トータス産の香辛料で得た収入の税は一割って最っ高だな!これで家を建ててフィギュアを飾ったりできるぜ!」
「雌煌は散財し過ぎよ。もう少し計画性のあるお金の使い方をしなさいよ」
「経済が回るから良いじゃねぇか」
雌煌の言う事も一理あるが、いざという時の為のお金は確保しておくのは当然だろう。だが、この香辛料関係はハジメが育成サポートのアーティファクトを作って、雌煌が操作する事で成長しているので生産者は違っていたりする。日がな一日中面倒を見る事はハジメには出来ないので、ゲーム感覚でお手軽に育成出来る様にすれば雌煌でも育てる事が出来るのだ。但し、それは育てるという事だけなので、実を砕いたり容器に入れたりするのはハジメ達の手作業となる
「ノイントちゃん達もいい感じに地球に慣れて来ているから少し安心ね」
ノイント達戦乙女三人姉妹はと言うと、エーアストの義手と義足による日常生活の安定化まで介護していた。身体能力が高いので、ハジメはすぐに馴染むと思っていたのだが、クトゥルフの蹂躙被害で体の芯までダメージが残っていたので完全回復するまでに時間が掛かったのだった。しかし、回復したら慣れないながらも手足を動かし、一ヶ月以内で常人と同じ様に動かせるまでとなったのは流石と言うべきだろう
「だなぁ~。しっかしまぁ、アハトがコスプレイヤーとして一躍有名になるとは思わなかったぜ」
「それを言うならエーアストちゃんはVチュ~ヴァ~デビューしちゃうし」
「ほんそれ」
これはつい最近なのだが、アハトが菫に連れられてコミケに行った時だ。菫の提案でコスプレ会場に行き、流される形で参加。トータスで着ていた鎧を着て参加したものだから大変の一言。紳士なカメラマンも居たが、ローアングル撮影禁止を破ってでも撮影しようとする輩が居たのだが、制圧して冷徹な目で見下ろしながら罵倒した。本当にそれが切っ掛けだった。その様子はトゥイーターに投稿され瞬く間に知られた。菫にその情報を聞いたアハトは、その場で赤面して退散して少しの間部屋に引き籠ったのだ。そして、やけくそで「だったら徹底的にやったろうじゃねぇか!」といった流れでコスプレ写真をトゥイーターに載せたら大量のイイネと下ネタ満載のコメント等が送られた。「あれ?なんか反応良くない?」と思い、プレゼントボックスに着て欲しい衣装があれば、常識の範囲内で着るという素っ頓狂な事をしてフォローユーザー達が超反応。大量に送られて来る衣装を着たりして写真を載せる事に抵抗を失くしていき、見事コスプレイヤーとして染まった
エーアストに関しては本当にいきなりだった。愁が開発している一般ゲームのテスターとして参加する予定だったのだが、Vチュ~ヴァ~なる企画がちらほら出ていた事も相まって試しにしてみようという流れとなった。この時点でツッコミ所満載だが、今勢いのある会社の新企画となれば食いつく人はそこそこいるだろう。最初はゲームをした事がないエーアストは、進めるのに苦戦をしていたが徐々に慣れて行き始めた所でお開きとなった。コメントでは「いかないで」「もうちょっと」「延長しろぉおおおん?」等のコメントがちらほら見え、酷いものだと罵詈雑言もあった。だが、ここで事件発生。放送終了としてマイクをミュートにしてカメラをオフ―――何も問題はない様に思えたが、カメラが現実の姿を映した。所謂、中バレだ
「炎上するかと思ったけど・・・まさか継続を求める声が圧倒的に多かったのは意外ね」
「本人を映した事でV企画は廃止予定と発表したのに抗議する電話が山盛りという意味HU☆ME☆I☆な現象が起きたからな」
「ノイントちゃん達は異世界人というネームバリューもあるからねぇ~」
本来なら居なくなるのが普通だが、誰もが見惚れる容姿と地球側の知識不足。これらが化学反応を起こし、ゲームめちゃクソ下手=本当に一度も触っていない+ありのままの素の反応が返ってくる―――『護らねば』という謎の意思が働き、リスナーによるエーアストちゃん見守り隊が結成された。過激にエーアストを罵倒して炎上商法を利用する輩には、鉄槌として動画を一切再生せずチャンネル登録していたら解除するだけ。結果、新規さんは増えるかもしれないが、見守り隊の有志によってエーアスト沼にどっぷりと浸からせて解除させるという綺麗な鬼畜作戦となった。そして、見事作戦は大成功を収めた
それからは企業公認のVチュ~ヴァ~として未発売の最新ゲームの先行体験をしたり、視聴者参加型のゲーム大会を開いたり、週にニ~三回程の配信なのにも拘わらずチャンネル登録者数がうなぎ登り。二回目の配信は雑談と言うより質問コーナー的なお話となり、トータスで語られなかった事をある程度絞って答えたり現在のリアルでの出来事を話したりしただけでチャンネル登録者数が五千万人を突破する快挙を達成した
「たった一回の放送で投げ銭一億は異常だったわね」
「俺もVチュ~ヴァ~になったら稼げるか?」
「放送禁止用語をぽろぽろ零す雌煌には無理」
「辛辣ぅ」
南雲宅でのんびりしていると、玄関の扉が開き入ってくる二人の足音―――ハジメとノイントだ。今月の香辛料の受け渡しから帰って来たのだ
「ただいま~」
「ただいま帰りました」
「おうっ、ご苦労さんだ!」
「何か問題はなかった?」
「問題と言うよりちょっとしたトラブルがあったけど、ちゃんと解決したから問題ないよ」
「問題って~と?」
「ナンパされました」
「よし、そいつ等の下をぶっ潰すわ」
「美羅姉さん大丈夫だよ。ちゃんと社会的に潰したから」
「なら問題なし」
ハジメとノイントは、香辛料の輸送の帰りに都心のデパ地下でお土産を買ったりしようとしていた。その時、ハジメはトイレに行ってノイントの傍に居ない時にナンパに遭った。最初は普通に断り、それでもしつこく付き纏ってきたので無視していると逆ギレして強引に連れ去ろうと腕を掴んだが、地力が違い過ぎる為に動く事もなかった。そんなこんなしている内にハジメが帰って来て、ナンパしていた男達にさっさと散るように言った。しかし、男達はターゲットをノイントからハジメに変えた
何処にでも居る平凡な顔立ちと容姿を罵倒して自分達がいかに優れているかを自慢していたが、ノイントにとって男達の言う事全てが哀れだった。何も知らない第三者から見れば皮のイケメンで言うなら男達だが、心が優しくない男は所詮その程度と言うよりも害悪な存在だ。周囲はその様子を撮影していたりと介入するつもりがなく、自分達でどうにかするしかない。だが、力でどうこうするのは馬鹿と同じなので、ハジメは少し毒を混ぜた言葉で論破した。そして、男は逆上してポケットからナイフを取り出してハジメに刺そうとしたが、ハジメはナイフを手に持つ男の拳を掴み砕く。過剰防衛と捉えられてもおかしくないが、相手側に非がある為に多少なら許される。男の仲間もナイフを出してハジメに攻撃するが、わざとギリギリで躱して鳩尾を殴って行動不能にさせた。それから少しして騒ぎを聞きつけた警察官が来て双方に情報を聞き出す。男達は嘘を並べ立てたが、その言は嘘であると周囲の情報から分かっていたので反省の余地なしという事と、異世界帰りのハジメと異世界人のノイントに手を出したという事で男達は豚箱行きとなった。因みに、周囲で撮影していた映像がトゥイーターで大爆発、特定班も動き男達の情報もあっという間にバレて過去に何をしていたかも調べられて屑な行為ばっかりをしていたという事が判明した。これで社会復帰も不可能な程にボロボロとなった
「それで?今回はどの位で売れた?」
「えっと、香辛料でおおよそ五億だね。日本だけが買うと思ったけど、外国の人も居てびっくりしたよ」
「最初は早い者から販売を予定したのですが、あまりにも人数が多すぎたのでオークション形式にしました」
「予め香辛料を砕いていて正解だったよ。香りという生情報を出して均一の値段からスタートしたんだ。そしたらあっという間に値段が跳ね上がって売れたんだ」
「以前料理番組で見たフランス料理を作る料理長なる人が来ていました」
「あぁ~、あの人か。初っ端で五千万を出したからよく覚えているよ。・・・あのオークションの後に無理のない範囲で専属契約出来ないかと説得もされたんだよね」
フランス料理で世界一有名な料理人が頼み込む程となると、トータスの香辛料が今の限界を超える事が出来ると確信しての行動だろう。だが、ハジメとしては一個人だけでなく世界中料理人達に使って欲しいと思っているので、増産しても個人契約は未だ考えていないという返答をした
「フランス料理ねぇ~。気になるけど、テーブルマナーがしんどいから行ってまで食べたいとは思わないわ。雌煌なんてテーブルマナーのテの字も知らないし」
「俺が悪いってのか!?」
「雌煌が悪くない時ってあった?」
これにはハジメとノイントの二人も沈黙。トータスから帰って来ても要らぬ失敗を繰り返す様を間近で見て来たからこそ庇えない。美羅から渡された月十万のお小遣い(水道光熱費+食費+家賃諸々抜いて)が一週間で溶けたのだ。このお金の使い道の全てがオタクグッズを買う為―――、美羅がキレてパイルドライバーからのキン肉バスターで数日間気絶させた事件もあった
「い、今は俺だって仕事しているだろぉ?」
「あれが仕事?ハジメが作ったアーティファクトで簡略化されたあの程度の事を仕事とは言えないわよ」
「美羅だって仕事してないだろ!人の事言えねえだろ!!」
「あ、美羅姉さんは仕事をして一生分のお金を稼いでいるよ?」
「なん・・・だと・・・!?」
「問題は最初の軍資金だったけど、それはゲーム資料のアイディア料で賄ったから無問題よ」
美羅は、狩人ゲームのデザイン+システム+世界観設定の企画書を作成してゲーム制作を丸投げした。だが、上記の三つが揃っていたらレールの上を走るだけだ。後は企画書作成のお金ではなく、ゲームが売れた時の成功歩合によって報酬を彼方側に決めて頂くという道筋を作っていた。もし、これで美羅にはした金を渡してしまったらつながりが完全に断たれ、美羅が考え付く物が他の会社に渡る可能性もある。そして、それを独占したいからこそ報酬を高値にするという流れまで美羅の計画通りだった
美羅が計画する第二弾―――。異世界から帰ってきたら、その世界特有の装飾デザインを元にしてアパレル会社を設立。社長や社員はフリーで活動していた服飾師と連絡を取り、Yes or Noの二択でこの会社に入るかを決めさせた。そして、稼いだ資金を元に会社を設立。余った資金で目利きした素材を入手→製作→モデルとカメラマンに依頼してファッション誌の会社宛てに異世界デザインの服を作成と宛名を付けてメールを送ったりと色々動いていた。今は異世界ブームが巻き起こっており、異世界系の小説界隈が賑わっている所を眼に付けての新事業。設立者は美羅の名前を使っているが、主に活動するのはスカウトした者達だけだ。時々会社を見たりデザイン案を送ったりとしているので、売り上げの一割が美羅の懐に入ってくる様にしている
「美羅姉さんって本当に表に出るの嫌がるよね」
「私はのんびりしたいのよ。向こうには百年は続く様にデザインを大量に送り込んだから時期を見つつ放出していけば良いだけよ。それに、コスプレ用の服も製作+レンタルという仕組みにしてあるから問題ないわ。もし、これで手を抜く社員が居れば首を切る様に言ってあるから皆真剣にする筈よ。まぁ、手抜きする人材は入れていないから大丈夫というのが本音よ」
「・・・いつの間に起業したんだよ」
「案件はトータスに行く前に殆ど完成していたのよ」
美羅のスカウトはトータスに行く前に全員済ませていた。さて、起業するぞ~というタイミングでトータスに転移したので起業タイミングが遅れ、菫に頼んでスカウトする職人達にダイレクトメールで起業が延長するという旨を伝え、既に退職した者達には生活費を仕送る形で脱退を防いだのだ
「もっと金使いてぇ~よ~!」
「お黙りっ!!」
「ふぉおおおお!?」
美羅の張り手が雌煌の頬へ良い具合に当たり、回転椅子に座っていた事からグルグル回った
「この家でニートしているのは雌煌だけよ?オタグッズを買う以外の外出はしないのは引き籠り同然よ」
「お、俺はニートじゃ「しかしもへちまもないわ!」あべしっ!?」
再び張り手でクルクルと回る。しかし、美羅の言う通り、雌煌はニートと変わりない。仕事はハジメによって簡略化された香辛料の栽培だけ―――。販売先の交渉や加工等も一切していないからこそ美羅が怒っているのだ
「雌煌姉が仕事か・・・槍が降りそう」
「・・・こればかりはどうしようもありません」
ハジメとノイントは、雌煌が仕事をする可能性は微塵もないと思っている。いや、例え仕事をしたら明日は地球滅亡?とまで疑う程駄目駄目な感じだ
「ただいま~。あれ?ハジメとノイント、リビングに入ればいいのに立ち止まってどうしたの?」
「あ、アハト姉様。その・・・雌煌御姉様についてちょっと・・・」
「雌煌姉さんがどうしたの?遂に働かなきゃ駄目って思い始めたの?」
「ゲハァッ!」
アハトの何気ない言葉のバリスタが雌煌にダイレクトアタァァァック!薄々どころかちゃんと気付いている時点でまだマシと言うべきなのだろうか・・・。季節に合った服を着こなしているアハトは、両手に大量の荷物を抱えている
「アハト義姉さん、今度はどんな服を貰ったの?」
「前と同じで、撮影に使ったサンプルの服を貰っただけよ。と言っても、私の服は少ないわ。残りはエーアスト姉さんの服とかよ。近々ゲームイベントに出る予定って言ってたわ」
「なら、もう少し細かい動作が出来る義手を作ってみようかな」
エーアストは今や世界一有名なVチュ~ヴァ~として活躍しており、他国言語もスラスラと発音出来る事から世界各国からのリスナーが集まるのは当然だ。歌、ゲーム、体操、勉強、イラスト、多彩な技術を元とした最強Vとして君臨している。最初は初体験故のたどたどしさを見せつつ、回を重ねる毎に上達する光景がリスナーを惹きつける
「最初はどうなるかと思いましたが、今の姿を見ると嬉しいですね」
「そ~そ~、最初は私達の介護がなかったら生活すら儘ならなかったから懐かしいよね」
「ゴラァ、アハト!今度こそお前をゲームでぎったんぎったんにしてやる。四十秒で支度しな!」
「はいはい、手を洗うから準備だけしててください」
この南雲宅に住む八人の中で一番ゲームが下手なのは雌煌だ。だが、普通にゲームは出来るし上手くとも、すぐに上達した三姉妹には追い越され、南雲家にはおちょくられ、美羅には二本指だけで完封されたりとこの中で一番弱いのだ。因みに、ゲームセンターで開催される格闘ゲームでは好成績を収める事が出来ているが頂点には立てていない。そして、対戦はどうなるかというと・・・
「ウワァァァァァァァアアアアアア!俺のアイス〇ライマーがぁああああ!?」
「いや・・・・・一人を倒したら物凄く使えないですよね?玄人向けのキャラを使うのはどうしてですか?」
「ハンマーかっこいいだろぉおおおお!?」
「本命は使わないのですか?」
「やってやらぁ・・・。俺のク〇ウドでぶっ飛ばしてやる!」
雌煌はキャラを変えて再び挑むが―――
「何でだぁあああああ!クソガ〇ン死ねえええええ!!」
「弱っ!」
アハトが操る魔王さんの前には雌煌のク〇ウドは勝つ事が出来なかった。美羅とハジメとノイントが観戦していると、二回からエーアストが降りてきた
「雌煌姉様はアハトの単調な動きを見切っていませんね」
「それは言わないお約束よ」
「ダニィ!?だったら俺にも勝てるチャンスがあるって事だな!」
「話は変わって、美羅姉様。今放送中なのですが、リスナー達が美羅姉様を召喚して欲しいと言っていますが出れますか?」
「ん~?いいわよ。前回の世界ランカー狩りは楽しかったし、あれから強くなった彼等と戦うのも面白そうね」
「では、お願いします」
美羅はエーアストと一緒に二階の放送部屋へと上がって行った。普通なら炎上するのだが、エーアストは触ったばかりの大〇闘で初心者丸出しの動きをしており、初心者相手に煽りまくるプレイヤーとマッチングしてしまった。少しばかり泣きそうになりながら対戦していると、美羅が放送部屋に入って来たのだ。マイクも入っているので声もガッツリ入って慌ててミュートにしようとしたのだが、それよりも一早く涙目になりながら煽りまくる相手プレイヤーとの対戦画面を見た美羅がちょっとだけ怒りエーアストに代ってプレイ。弱攻撃一つでも当たれば少し吹っ飛ぶ程のダメージで、ストックが一個
リスナー達は、エーアストと交代した事に不満を抱いたが美羅の超プレイの前に沈黙した。相手の攻撃全てをジャストガードで防ぎ、ダメージを受ける事なく空中デスコンボを叩き込んで、相手のストックを一個にした後にじわじわと甚振った後、相手の攻撃が当たるよりも早い数フレームの攻撃で倒すという惨い倒し方をした。その後、リスナーからの挑戦が沢山あり、中にはリスナーの中に居た世界ランカーが挑戦するもダメージを受ける事なく倒し切った。それからは美羅が代わりにプレイする事はなくなったが、エーアストが大〇闘をプレイする度に「お姉さんは?」と召喚希望のコメントが大量に流れる様になった。最初は駄目だと言っていたが、遂に折れたという事だ。今回は協力プレイという事で、美羅とエーアストの二人がタッグを組んでプレイするという流れとなった
「・・・・・世界の何処かで美羅姉さんのデスコンボによる被害者の奇声を上げた様な声が聞こえたな」
今は休日の夕方前なので、中途半端な時間だ。おやつを食べるには遅く、何か作業をするには遅すぎるとなれば―――ノイントと一緒にご飯を作る一択だ。ハジメはノイント一人だけで料理を作るのは忙しいだろうと思い、せめて自分が出来る範囲の下拵えや食器の準備等を率先してやり始めたのだ。今日は和食なので、ノイントの隣で野菜の皮むきを手伝っていたりする
夕食の準備も終わりに近づくと愁が帰宅し、作業部屋から菫を回収して放送が終わったエーアスト達とリビングへと集まった。そして、いつも通りの夕食を食べていると、美羅から重要報告があるとサラッと告げた。雌煌は、「ほ~ん」程度だが、それ以外は咽た。美羅からの重要報告となれば、危険な事かもしれないと判断している
「私、ちょっとお出かけしてくるから雌煌の監視よろしく~。はい、それだけ」
「それって重要なの?」
「私の監視がなくなった雌煌はトラブルメーカーよ。ちゃんと見張っておきなさい―――――そういう事よ」
「美羅御姉様はどちらに行かれるのですか?」
「ちょっと前から行ってみたかったアメリカ横断旅行よ!」
確かに重要報告だ。世界中がハジメ達を注視している中で、美羅だけが単独で動くとなると監視の目が必ずあるだろう。だが、美羅を不機嫌にさせたら竜が襲ってくる可能性も否めない=動く天災なわけだ。それは雌煌も同様なので注意が必要・・・・・どちらにしても超大変だ
「アメリカ横断するの!?風景の参考が欲しいから色んな場所で写真撮影お願い♪」
「移動手段はどうするの?」
「ハジメが作ったバイクで移動するわ。魔力でしか動かないから盗難される可能性も限りなく低いし、マーキングしておけば追跡も可能なのよ。という訳で、今日から行くわ!」
手早くご飯を食べ終えた美羅は、ハジメのバイクが保管されている宝物庫を拝借して家を出て行った。嵐の様な行動力だが、雌煌みたいに家でぐーたら生活より遥かにマシだ
「今までののんびりが嘘だと思える程動いたね」
「ですが、何故今になってなのでしょう?」
「お~ん?そりゃあお前・・・ハジメの娘が居るんだから記念に何かを撮りに行ったんじゃね?」
『えっ?』
皆が雌煌のいきなりのカミングアウトに固まり、愁と菫とエーアストとアハトの四人はハジメとノイントを交互に見てようやく理解した
「え?僕の娘?」
「んだよ知らなかったのか~?ノイントが妊娠したのに嬉しくねぇの?」
「えっ、わ、わわわわ私とハジメのこ、ここここ子供ですか!?」
「なにぃっ!?ま、孫だとぉ!?」
「お赤飯よ!今からお赤飯を炊かなきゃ!!」
「ノイント、おめでとうございます」
「おめでと~♪」
皆が祝福してくれる事は嬉しいが、一番はハジメの子を身籠った事についてだ。雌煌に聞く所、妊娠してすぐなので体調に変化がないので、今の内から身の回りの準備に入る事にした。尚、この準備についてはハジメが道具系を作り、菫が妊娠期間に必要な物を買う予定を立てていた
すると、菫のスマホにピロンッ♪と通知音が鳴り、何のお知らせか確認すると美羅から「アメリカに着いたどー!」というメッセージが入ったのだ。流石に早くない?と思っていると、龍の背に乗ってアメリカまで飛んだとの事
「バルファルクか」
「バ、バルファルク?」
「通称ロケット龍だ。その速度は余裕で音速を超えるから短時間で長距離移動はお手のもんだよ」
美羅がメッセージの次に送ってきたのは写真―――海岸を背景に写っており、美羅の足元にはボコボコにされたガラの悪い男達の山・・・・・。恐らくしつこいナンパでもして返り討ちにでもされたのだろう。着いた早々にこれとは、ある意味運がない
その後、美羅は男達を警察に突き出して慰謝料替わりとして男達の財布から現金を三割徴収したとの事・・・。普通は犯罪行為だが、ハジメが作ったバイクを蹴ったという事だったので容赦はせず、警察の方も「もっと取っても良いよ?」と男達に容赦なかった
「お赤飯出来たわよ~♪」
「孫娘!俺は遂にお爺ちゃんか~!」
「私はお婆ちゃんね~♪」
「私は叔母さんですね」
「それを言うなら私もじゃん」
その後、炊けた赤飯を食べて生まれ来る命に期待しながら平和な日常を過ごして行った
――――六年後
南雲宅の庭を元気に走り回る幼女・・・ハジメとノイントの娘の南雲里奈だ。あのカミングアウトからおおよそ一年、順調にお腹が膨らむノイント。美羅から送られて来る写真やメッセージは、予定していたものと違った。最初はアメリカだけだと言っていたが、旅が順調すぎたので世界で有名な国を旅する計画へと変更となり、大量のお土産を持って帰って来たのは言うまでもない。特に一番ヤバイ事件は、美羅が魔のバミューダトライアングル海域で金銀財宝を大量に手に入れたというニュースが全世界に流れた事だ。ハジメ達が昼食を食べていると、緊急ニュース速報に美羅が海底からお宝を手にして戻って来ている映像を見た全員が咽た。何をどうしたらそうなるの!?とツッコミを入れたかったが、美羅が言うにはいっちょお宝探しでも体験してみようかな~♪という流れで船を買って海竜と一緒に直感の赴くままに探索した結果だという事だ。まぁ、美羅なら潜水艇無しでも潜れるし、船を持ち上げる事も出来るし、アイテムポーチに財宝を入れたり出来るしと様々だ。道中に襲い掛かった鮫は、返り討ちにして焼いて食べて腹の足しにしたりもしたとの事だ。金銀財宝は全部寄贈したというのも凄まじい行動力だろう。因みに本人曰く、「あっても邪魔になるだけ」と言っていた
話は戻り、走り回る幼女と遊ぶのは二足歩行のネコ達。美羅が思い付きで暇そうにしているアイルーを拉致して来て、遊び相手兼癒しを南雲家にもたらした。撫でてもよし、抱いてもよし、吸ってもよしの三拍子と、里奈がハジメ達の目を盗んで家から出ない様にする為の監視役も兼ねている
「ミカン~♪コ~メ~♪」
「ニャ~ン」
「コ~メ~じゃないにゃ!コウメイだにゃ!!」
「コ~メ~はコ~メ~だよ?まてまて~♪」
「「ニャ~~~ン!」」
絶賛追い掛けっこ中だ。里奈はかなり活発な幼女で、ハジメとノイントの子供なので身体能力がとても高いせいもあってか走るのが速い。たとえ転んでもかすり傷程度で、泣く程痛いという事はない
「あう、あ~う~。ねちゃ、ねちゃ~!」
「あぁ、お姉ちゃんと一緒に居たいのね。少し待ってね?」
そして、ノイントに抱っこされているのは息子の南雲和人、現在二歳である。こちらはノイントが常に見ているので大丈夫だが、ノイントの傍にはメラルーのミントとソースの二匹が居る
「暑いにゃ・・・蒸し暑いにゃ・・・・・」
「みんにゃのジュースを持って来たにゃ!」
「おい、ソース!俺にも後でジュース持って来てくれ!」
「・・・雌煌様だけがメラルー使いが荒いにゃ」
「仕方がないにゃ。それよりも里奈と和人に影響を及ぼさにゃいように僕等でサポートするにゃ」
「クーラーって便利だにゃ」
ハジメ製のクーラーは、超高性能だ。暑い部屋も数分あれば涼しく、快適に過ごせるまでとなる。南雲宅に市販品の物は殆ど存在しておらず、魔力と電力のどちらでも稼働する優れ物に進化している。魔力は、トータスへ旅行しに行った時に狩った魔物の魔石を利用しているのでとてもエコだ
「ニンジンケーキ出来たわよ~」
「ケーキ!」
「たえるぅ!」
現在美羅はというと、以前と同じ様に自由にしている。時々作るデザートは、二人の大好物だ。例え野菜が混ざっていようとも、甘みがありつつ野菜の美味しさも両立している奇跡の様な一品はプロの料理人も脱帽ものだ
ソースの準備したジュースを手に持ちテーブルに置かれたケーキを食べる為に、手洗いうがいをしっかりとしている点も美羅の教育の賜物だ。南雲家は勿論だが、ノイント達三姉妹も里奈や和人にかなり甘い為、美羅がしっかりとそこら辺を徹底させている
「おいし~♪美羅おねえちゃんありがと~♪」
「うみゃ~♪」
お気付きの方も居るだろう・・・美羅は叔母さんと呼ばれていない。脅したり教育に混ぜたりはしていない。ただ、子供達が純粋に美羅をお姉さんだと思っているのだ。ハジメ達が姉さんと呼んでいるからというのも理由の一つだと思うが、それでも子供は純粋なので必ずしもそうなるという事はない
「美羅姉さんが連れて来たアイルーとメラルー達が居ると安心だね」
「色々と助かります」
「マタタビにゃ!マタタビを所望するにゃ!!」
「偶に旦那さん達と遊びたいにゃ~」
「うん、近々皆で出掛けようと思ってたんだ。少しだけ早めて地下室に作ったプールを楽しもう!」
「プール!」
「水着を準備しましょう」
ハジメ達は水着に着替えて地下室へと降りて行く。美羅は一緒には行かず庭に作った屋根付きハンモックに乗って読書する事にした
「ん~!特に何もせずに読書出来る平和って良いわね~。強硬派は全部潰したし、脅迫しておいたから何も問題ないわね。さてさて、トータスは復興も終わって全種族の共存と平等な法が発表されたけど、少ない諍いはあっても問題ない程度ね」
読書しながら地球とトータス全てを覗く美羅に隙は無い。どちらも平和が長続きする可能性が高く、本来の目的であるバカンスの下地が順調に整ってきている
「あと何年ここに居ようかな~?ま、本当に馬鹿な事をしない限りは見捨てはしないけどね。でも、また旅行してもいいかもね~♪」
美羅の言う旅行とは外国の観光も含まれているが、今回はまた別世界への旅行かもしれない。それは本人の気の赴くままなので誰も止める事は出来ない
―――――さてさて、次は何処に行くのやら
※次の予定は決めていません