召喚の手違いは世界最強   作:ぬくぬく布団

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煽る人いるけど、度が過ぎればそれは自分自身に返ってくると思います
かなり速い展開で話が進みますよ~


煽ってもいいけど、やり返すのは当たり前

~ハジメside~

 

解放者の拠点で約一週間滞在した美羅達は、オスカーと別れて地上へ繋がる転移魔法陣で転移した。転移先は洞窟で、恐らく入り口を隠していたのだろう。そのまま道を進む、ようやく外へと出た

 

「・・・ここは大峡谷かな?」

 

「魔力が霧散しているので大峡谷で間違いないです」

 

「魔法職泣かせな場所ね。それじゃあ早速大迷宮まで行くわよ」

 

美羅はハジメとノイントの二人を抱え跳躍―――あっという間に空高く飛び、オスカーに脅・・・お話した場所まで空気を蹴って移動する。魔物との戦闘なんてめんどくさいのでこの方法を選んだだけだ。数十秒で目的地へと到着した美羅達なのだが・・・

 

"おいでませ!ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪"

 

この文字を見てやる気が下がった

 

「この先に迷宮があるの?・・・なんか行きたくなくなってきた」

 

「これは・・・何と言うのでしょうか・・・こう・・・胸がムカムカします」

 

ハジメは、ちょっとだけイラついているノイントと手を握り冷静さを取り戻させて早速攻略を開始する。道を進むと、行き止まりとなっていた。道は一本道で、見逃す事もない

 

「行き止まりか?」

 

「う~ん、どこかに分かれ道があったのかな?」

 

ハジメは迷宮の入り口からマッピングしながら進んでいたので違和感のありそうな場所を探す中、雌煌は考えなしに周りに仕掛けの有無を確認していく。まぁ、雌煌にダメージを与えられるのは美羅以外は居ないからの行動だ。とはいえ、罠に引っかからないという事はないので回転扉の罠に掛かった

 

「ブフッw」

 

美羅は古典的な罠かつ、しょうもない引っ掛かり方をした雌煌を見て笑った。どうやら間抜けな姿がツボに刺さったのか体を震わせて笑みを堪えるが隠しきれていなかった。再び回転扉が回ると、雌煌の額に青筋が浮かび上がっていた

 

「雌煌姉、大丈夫?」

 

「怪我はありませんか?」

 

「お前等も行ってみたら分かる。ここは破壊一択だ」

 

雌煌がハジメとノイントに回転扉の方を指さして、「行けば分かる」の一言だけを言う

 

「それじゃあ、皆で行こっか」

 

ハジメを先頭に皆が回転扉の前に立つと、罠が作動して四人を奥の部屋へと移動させる。それと同時に、矢がハジメに飛んでくるが、手甲で振り払って弾く。これ以上は矢が飛んでこない事を確認したハジメは、警戒しつつ先に進むと石板が建っていた。罠だと確信しつつ警戒して近づくと、石板が徐々に光り文字が形成される

 

"あんな罠に引っ掛かって恥ずかしくないの?プ~、クスクスw"

 

ブチッ!!

 

どうやらリアルタイムで見ているのだろう。しかし、ここでハジメとノイントは聞こえる筈のない音が聞こえて顔が青褪める。恐る恐る雌煌の方を見ると、「殺す殺す殺す殺す殺す」と呟きながら殺意を高めており、片手に膨大なエネルギーの塊を形成していた

 

「おらぁああああああ!弾けてぶっ壊れろ!!」

 

「それは冗談でも止めてぇえええ!?」

 

「私達では防げませぇえええん!」

 

案の定躊躇なく放たれたエネルギー弾が通路を進んだ光景を見たハジメとノイントは美羅の後ろに避難する。その直後響く轟音とエネルギーの本流が押し寄せるが、美羅が片手をかざして雷を放出するだけで襲い来るエネルギーだけをかき消した

 

「い、生きてるぅ~。流石美羅姉さん!雌煌姉よりも頼りになるぅ!」

 

「美羅お姉様ありがとうございます!」

 

「雌煌、エネルギー弾はいいけどブレスみたいな一直線にぶち壊す奴にしなさいよ」

 

「おっ、わりぃわりぃ。ついカッとなってな?」

 

ハジメとノイントが美羅の背からエネルギー弾が飛んだ先を覗くと、爆心地と思われるクレータを中心に全ての障害物を消滅させた光景だった。唯一残っているのは、大きなゴーレムが何かを護るように丸まっていたぐらいだ

 

「あれってゴーレム?・・・ボスなのかな?」

 

ハジメの声が聞こえたのか、ゴーレムは立ち上がりドスドスドスと足音を立てながら走って近づき一言

 

『なぁぁあああにしてくれてやがりますかこの馬鹿はああああああ!?』

 

まぁ、そう言いたくもなるだろう。この迷宮を作ったであろうゴーレムの努力の結晶は、雌煌の鬱憤晴らしの一撃で蒸発してしまった。"道が無い?なら破壊して進めば問題ない!"は製作者泣かせだ

 

『常識って知らないの!?ちょっとしたお茶目な弄りだけで化け物級の攻撃やるなんておかしいでしょ!?』

 

「あ"ぁ"ん?」

 

『・・・ごめんなさい』

 

雌煌の威圧を受けたゴーレムは、素直に綺麗な土下座で謝罪する。恐らく、次に何かしらの攻撃が直撃したら壊れるのではないだろうかと言ったところだ

 

「そ、それよりも、この迷宮のボスで間違いない?」

 

『私はスーパーミレディちゃん!解放者の一人にしてスーパーアイドルだよ♪』

 

これを聞いた皆は、ミレディに対して残念な子を見るような眼を向けた

 

『ちょっとちょっと~、無反応は寂しいぞ~。・・・って神の使徒!?という事はあのクソ神の手先!』

 

解放者達が生きていればこの反応は当然だろう。ミレディはノイントに向けて躊躇いなく全力のゴーレムパンチを放った。とはいえ、美羅の加護を得たノイントのステータスはチート級に上昇しているので、片手で難無くキャッチした

 

『効いてない!?』

 

ミレディはノイントから離れようと足を動かそうとしたのだが、地面にくっついて剥がれない

 

「あのさ、ノイントに攻撃しておいて逃がすわけないでしょ」

 

よく見れば錬成でゴーレムの足元が地面と溶接されており、全く動く事が出来ない状態となっていた。遠隔錬成―――視界に入る場所であれば錬成可能というヤバイ技能である。念の為に説明しておくが、魔法陣無しは美羅の加護があるからこそのチートである

ハジメは背中に担いだライトボウガンを構え、ミレディに狙いをつけて撃つ。しかし、弾丸は全て弾かれてしまった。ある程度硬い鉱石でも貫通するのだが、凹みも傷も付いていない事からゴーレムに使用されている鉱石が分かった

 

「アザンチウム鉱石のゴーレムか」

 

『そうだよ~♪どうする事も出来ない君達は、さっさと振り返って帰るだけだよ~』

 

手で追い払う動作をしたミレディだが、おちょくる相手を完全に間違えた。強者には抗ってもいいが、理不尽な強さで温厚な奴には媚びるのが最善手なのだ

 

「この脆い腕がトータスで言う所の最高硬度の鉱石ねぇ・・・薄く、コーティングした程度じゃない」

 

美羅がミレディの手を持ち、力を入れて抓むと潰れて凹んだ

 

『・・・ちょっと待って。アザンチウムを潰す事が出来る握力ってどんな化け物!?』

 

「雷神拳!」

 

美羅の右ストレートがミレディの本体に当たると、粉々に砕け散った。ハジメは、美羅が少しばかり怒っていたのだろうとは予想していたので敢えて本気では手を出していなかった事はファインプレーだろう

ゴーレムを倒した美羅達は、守っていたであろう扉をこじ開けて奥へと進む。浮石に立つも進まなかったが、これは空を飛ぶことで解決。ハジメはノイントに抱えてもらう格好となるが致し方なし。最後の扉も雷神拳で木っ端微塵にして、解放者の拠点と思わしき場所へたどり着く。その拠点の中には、某野菜王子の様に膝を付いて絶望しているちっちゃいゴーレムの姿があった

 

「もう駄目だぁ、おしまいだぁ・・・勝てるわけがない・・・」

 

精神がバッキバキにへし折れていた。恐らくどころか、この小さなゴーレムこそがミレディの本体なのだろう。ハジメは、因果応報だと思っているのでフォローも何もしないし、ノイントも馬鹿な子供を見るような眼で様子を見ている。すると、ミレディは美羅達が拠点までたどり着いたことに気付いたのか、ワタワタしながら物陰に隠れた

 

「ひぃっ!?ば、ばばばばば化け物め!み、ミレディちゃんは非戦闘員だから戦えないよ!!」

 

「なぁ美羅、こいつぶっ壊しても良いか?」

 

「止めてください!」

 

雌煌のからかいに、全力土下座で謝罪するちびゴーレム。ゴーレムを人間に見立てれば、子供を恐喝している悪いお姉さんに見える

 

「ハジメとノイントちゃんに神代魔法を寄越せ」

 

「あっ、はい。こちらです――――って流されるところだった!?神の使徒でしょ!?わ、私を殺す命令でも受けたの!?」

 

「今でこそ思うのですが、私はブラック?な上司から解放されています。今は美羅姉様の妹的な存在に落ち着いています」

 

「じゃ、じゃあ私を殺したりはしない?」

 

「ハジメに危害を加えないのであればですが」

 

「ミレディちゃんの奮発大サービスだよ♪ささっ、皆魔法陣の上に立って立って!」

 

ここもオルクス迷宮と同じ仕組みなのだろう。こうしてハジメとノイントは神代魔法を取得、後は次の大迷宮へ移動する事だけだ。美羅達は来た道を戻り、ミレディはお見送りをする

 

「次の大迷宮を目指すって言ってたけど、場所知ってる?ミレディちゃんは死にたくないから教えちゃうよ」

 

「樹海、大火山、海、雪原、神山の五つでしょ」

 

「あってるよ~。でも、大迷宮に挑戦するには色々と仕掛けがあるよ。樹海だけは神代魔法を幾つかと入り口を開く為の神代魔法が必要だよ。だから、樹海はオルクス迷宮の直前にしたら良いよ。なんたって、オルクス迷宮は全ての神代魔法を習得してようやくクリア出来る位のレベルだからね!」

 

「あっ、オルクス迷宮はクリアしたよ」

 

「・・・うっそぉ」

 

ミレディは、生成魔法以外の全ての神代魔法をフル活用してクリアする事が前提である筈の試練を既にクリアしている事に驚愕した

 

「そう言えばこの大迷宮が綺麗さっぱりなままだというのは悲しいから元に戻してあげるわ」

 

美羅が指パッチンしただけで更地となっていた大迷宮は、時間が巻き戻る様に元に戻った。美羅もこの大迷宮にイラッとしたのだが、再生する事も不可能となれば、「かわいそうだから仕方がないなぁ~」程度で直してあげる事にしたのだ

 

「あっりがと~♪」

 

ミレディはとても嬉しかったのか、美羅の足に引っ付いて上目遣いで感謝の気持ちを伝える。だが、ゴーレムなのでちょっと残念である。そこで、美羅はミレディの頭を掴み魂の情報を読み取ってゴーレムから魂を引っこ抜く。電池が切れた様に動かなくなったゴーレムと、美羅の手に掴まれた光の玉を見たハジメとノイントは「あぁ、なるほど」と察して、いきなり魂だけ引っこ抜かれたミレディは物凄く焦っていた

 

『え、私死んじゃう!?も、戻して!魂だけだと直ぐに死んじゃう!?』

 

「お~お~、焦ってやがる。まぁ落ち着いて見てなって」

 

ミレディは焦りつつ美羅の方に振り替えると、魂を掴んでいない手に人形が掴まれていた。人形の肉体を造り変えているのか、体の全てが歪な音を立てて縮んだり膨らんだりと繰り返したり髪の毛が生えたりとしていた。やがて変化が終えると、金髪の美少女へと変化していた

 

『・・・これって』

 

「美羅姉さん。オスカーさんと同じ様にミレディを人間として復活させるの?」

 

『えっ、オーくんが生き返ってる!?それって本当!?』

 

「はい。美羅お姉様が言うには、肉体が無かろうと魂と入れ物があれば大丈夫だと言っていました。尚、オスカーさんに関しては魂が輪廻で完全に消えかける前に復元したから大丈夫だったらしいです。骨も残っていたので蘇生は出来たとの事です」

 

「魂を入れるよ~」

 

美羅はミレディの準備を待たず人形に魂を入れて復活させた

 

「いや早いよ!?普通は肉体が無いと無理だよ!?」

 

「普通はね?でも、その入れ物はハジメのオタク魂から知識を得たオスカー印の人形よ」

 

「人形の枠組みを超えてを試したら出来ました」

 

ハジメはオスカーにオタク知識の色々を教え、本物に遜色ない人形を作ってみようと無茶な事を言ってみたのだ。互いに教え教わり、テンションマックスでヒャッハーして出来た最高傑作だ。とはいえ、オスカーは以前にメイドゴーレムを作っていた事もあってか躓きもなく成功した

 

「さ~てと、こんなかわいい外見にも関わらずウザったいミレディちゃんはここでお別れです。オスカーの所へと強制転移で放り込みます」

 

美羅は空間を歪めてオスカーの住む拠点へと繋げて、ミレディを放り投げる。ちゃんとオスカーが受け止めれる場所なので何も問題はない。普通なら感動の再開の場面を見るのだが、それも無視してあっという間に歪みを直して何もなかったかの様にスルーする

 

「樹海は必要な特定の神代魔法が必要だという事なので、樹海に近い雪原は後回しにするわよ。となれば、神山、大火山、海の順番で進める方が良いわね」

 

「おいおい、神山だったか?あそこって俺達がここに来た時の場所だろ?絶対に嫌だぞ」

 

「私だって嫌よ!」

 

あんな屑なクラスメイト達が居る場所なんて行きたくないと駄々をこねる雌煌と、仕方がないと諦めている美羅。そこで、ハジメはオスカーから教えられた神代魔法から一つの可能性を思い出した

 

「そう言えば、オスカーさんが言っていた空間魔法だったかな?あれを手に入れればステルス迷彩みたいなアーティファクトが作れるかも?」

 

空間魔法で認識をずらす―――簡易ステルスが可能となるわけだ

 

「よっしゃ!ハジメの案を採用だ!!その魔法は何処にあるんだ?」

 

「えっと・・・ナイズ・グリューエンって人が空間魔法を使っていたって言ってたから、多分大火山にある筈だよ」

 

「それだと・・・逆から攻略した方が良いのかしら?海まで一気に行って、海の幸を堪能して攻略。そして、火山の後に神山。そして、雪原に行って樹海がベストだと思うわ」

 

ハジメは、海からでなくとも火山を攻略してからでも良いと思ったが、美羅の言った海の幸を堪能してからという甘美な言葉を聞くとどうしても海から行きたくなった

 

「四輪で海まで一気に行く?」

 

「それが一番楽なルートになりそうね。運転はハジメに任せて私は後ろで寝るわ」

 

美羅が魔力駆動四輪を取り出し、後部座席後ろの荷台にベッドパッドを置いて寝た。数秒で寝るあたりハジメを信頼しているという事だろう。雌煌は車の上に座りダイナミックに峡谷を楽しむ事にした

 

「おっしゃー!進めハジメっ!!」

 

「美羅姉さんが起きない程度の速度で走るからね?」

 

「ハジメ、助けて。美羅お姉様に抱き着かれて・・・」

 

「僕もやられた事があるから耐えてとだけしか言えない」

 

美羅はノイントを抱き枕の様に抱え、ノイントはハジメに助けを求めるも無理だから諦めましょうと言われて少しだけ落ち込む。とはいえ、潰される心配はないのでおとなしく寝る事で何も問題はない。ハジメ達は峡谷を進み、次なる目標地点―――エリセンへと車を走らせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~美羅side~

 

四輪を走らせること二日、ようやくエリセンへ到着した美羅達は冒険者ギルドへ行き峡谷で倒した魔物の魔石や素材を換金して市場を覗いていた

 

「海の街は海鮮類が沢山売っているわね。貝類が多いのは美味しいわね」

 

「魚類は駄目だな。これなら俺達が直接行った方が新鮮だぜ?」

 

「船を作ってるからそれで沖に出て釣る?」

 

「大物を狙うなら一本釣りだろ!」

 

美羅達は更に町中を探索して釣り道具を覗くが、品質の良い物が見当たらない。そこで、美羅はバカンス用で揃えた沢山の道具の中から大型の釣り竿とリールを使うという事にした

ハジメが作ったモーターボートに乗って沖へ出ようとした時、海岸から悲鳴が聞こえた。四人が声が聞こえた方へ視線を向けると、エリセンに住んでいる海人族であろう女性が人間の男が放ったと思われる魔法に攻撃されていた

 

「流石にあれを無視するのはいい気分じゃないね」

 

「私が行ってきます」

 

「なら、僕が狙撃で逃げる奴等に麻痺弾を撃ち込むよ」

 

ノイントは飛び立ち悪事をやらかす男達に強襲。空からという予想外の強襲に男達は驚愕するが、ノイントが絶世の美女という外見に欲が出たのか、ノイントを捕まえようと囲む。だが、そこにハジメの麻痺弾の援護で囲んでいた男達全員を狙撃して行動不能にさせる。美羅と雌煌は、エリセンで購入した貝類を焼いて食べ、貝殻を投擲して男達の首ちょんぱしていたりする

モーターボートを走らせ海岸に着けて海人族の怪我の様子を伺おうとすると、騒ぎを聞きつけたであろう現地の住民達と兵士達が警戒して剣や槍を構えていた

 

「人助けも終わったから魚を釣りに行くわよ~」

 

「マグロっているのかな?」

 

「似た様な魚は居ると思うよ。釣るならもっと沖に行かないといけないし、この船は小さすぎるよ」

 

「マグロ?とは美味しいのでしょうか?」

 

「寿司で言うなら外せないネタだぜ!」

 

美羅達はその場を離れようとしたら、兵士達の中でも偉そうな男に静止の声が掛かる

 

「待て、お前達には色々と聞く事がある。兵舎まで付いて来てもらおう」

 

「めんどいから嫌、詳細を聞くならそこで痺れている男達に聞けばいいでしょ。それに、助けたのは気紛れよ」

 

「これだけの事をしでかしておいて言う言葉か?」

 

「小悪党程度なら捨て置くけど、畜生や外道にかける情けは持ち合わせてないわよ」

 

美羅達は、再び背を向けてその場から離れる

 

「待って、待って下さい!お願いです!娘を・・・ミュウを助けて下さい!!」

 

その声は、先ほど男達の魔法で攻撃された女性の海人族だ。ミュウとは、彼女の子供の事だろう。そして、この男達は恐らく人攫い・・・ギャングやマフィア的な立ち位置に居る者か、人身売買の者達だ

 

「美羅お姉様、ここから離れている馬車がありますがどうしますか?」

 

「放置でいいんじゃね?」

 

「雌煌の言う通り放置かなぁ~。あっちは武器構えて助けろアピールしてくるし・・・人に頼む態度として最悪の印象よね。という訳で逃げる一択」

 

人に物を頼む態度ではないという理由でその場を離れようとする。美羅達相手には貧弱な武装だが、第三者から見れば武器で脅しているとも解釈してしまうだろう

 

「何でもします。だからあの娘を助けて下さい!」

 

「レミアちゃん大丈夫だ。冒険者ギルドに依頼をすればどうにかなる!」

 

「我々兵士も冒険者達と連携して行方を追おう。直ぐに捕まるから安心していい」

 

「駄目なんです!きっと彼女達でないとミュウが助からない!」

 

美羅は静観しつつ小声で、「へぇ、女の勘は冴えてるわね」と呟いた。この言葉を聞いたハジメ達は、ミュウと言う子供を助けるには時間の問題であると確信した。とはいえ、はいそうですかと安易に助けに行ったりはしない。ハジメの行動は美羅と雌煌の行動や気分を尊重しているので今回は何も言わない

では、何故レミアと呼ばれた海人族の女性を助けたのかと言うと、ちょっとばかり暇で暇でどうにかしようかな~と思っていた雌煌に、殺しても大丈夫な屑を生贄にしただけだ。ハジメもかなり達観しているが、雌煌の無茶振りや美羅のスパルタ訓練を回避する為のスケープゴートである。それこそ、一人であの屑達を殺し尽くせとも命令される可能性もあったからだ

 

「もう行こうか。これ以上ここに留まっても良い事なさそうだよ」

 

「大型魚待っていやがれ!この俺が一本釣りして食ってやるぜ!!」

 

「物欲センサー物欲センサー」

 

「これをフラグと言うのですね」

 

「はぁ?釣るし、俺の豪快な釣りを見せつけてやらぁ!」

 

ささっと撤収しようとした美羅達の後ろが騒がしくなり、美羅の足に制止を振り切って地面を這いながらレミアがしがみついた。その目は何が何でも離さない力と、娘を助ける為の一縷の望みに縋る表情だった

 

「・・・はぁ、そこまでして私達に頼りたいの?」

 

「はい」

 

「あそこに居る人達は反対しているけど?」

 

「それでも貴女達でなければ駄目なんです。きっと・・・間に合わないのです」

 

わざとらしく呆れた表情でレミアに尋ね、美羅達でないと間に合わないという判断の良さ。拉致犯の逃走した方向は既に分からないのでどちらも同じだが、信頼出来る地元民達でなく初対面の美羅達に頼るのは普通では出来ない判断だろう

 

「対価の覚悟は如何程?」

 

「全財産を」

 

「「「「レミアさん(ちゃん)!?」」」」

 

「夫が早くに亡くなった私に残された家族はあの子だけなんです!」

 

「まぁまぁの覚悟ね。私は普段だとその程度では動かないけど、今回は特別よ」

 

契約は成立した。とはいえ、今から拉致犯の馬車まで飛んでいくのはありきたりで面白くもないので手っ取り早く目標の馬車を落下させるように空間を歪めてこの場所に繋げる。そして、目標の馬車が地面に落ちる前に重力を弄り落下の衝撃を最低限にして、馬達に一睨みして停止させた

 

「クソっ!今の揺れは何だ!?」

 

「一名様、首ちょんぱ」

 

美羅が拉致犯の首を指でなぞるだけで切り飛ばす。すると、荷台がゴトゴトと揺り動いて拉致犯の仲間であろう男性がナイフを片手に海人族の子供を人質に出てきた

 

「お前等近づくんじゃねえ!一歩でも近付いたらこいつをぶっ殺すぞ!!」

 

「そういうテンプレはどうでもいいから」

 

「ぎゃあああああああ!」

 

常人では目に見えない速さで男の両腕を捥いで子供をキャッチしてレミアに子供を渡して依頼は完了。とてもスピーディーに、無駄のない動きに痺れる憧れる!

 

「依頼も終わったから一本釣りするわよ~」

 

子供も無事に母親の元に帰り一件落着、報酬は直ぐに支払うのが当然だが敢えて後程にしておく。これで逃げたらただでは済まないし、そもそも足が殆ど動けないので家から殆ど動けないだろう。その後、美羅達はモーターボートで釣りに行った事はいうまでもない

 

「フィィィィィッシュ!」

 

「引っ張る引っ張る!でも、今の僕の敵じゃない!」

 

「無理に引けば紐が切れる、魚との駆け引きは奥が深いです」

 

「何で釣れねえんだよ!!」

 

見事にフラグを回収した雌煌に関してはお約束である。美羅は超特大サイズのマグロみたいな魚を釣り上げ(※転覆しそうだったので電気ショッカーで素早く回収)、ハジメとノイントは仲良く同じ魚で同じサイズのサーモンみたいな魚を釣り上げてた。雌煌は粘りに粘った結果、超巨大な鮫の魔物を釣り上げた。一応ぼうずではないので良かったのだが、どうやら食べれる魚を釣って食べたかったそうだ

雌煌以外がホクホク顔でエリセンへ帰り、レミアの家に行き報酬を受け取りに行く。家の周りには野次馬が沢山居たが無視して突入すると、レミアを担ごうとしている男達と、それに抵抗しているレミアの姿だった

 

「私は彼女達に対価を支払っていません。だから、この家で待っていないといけないの」

 

「レミアちゃんの為だ。全財産奪われちまったらどうする事も出来ないし、ミュウちゃんに食べ物を買う事だって出来ないんだぞ?」

 

「確かに生活が不可能になるかもしれません。ミュウに厳しい生活を強いる事には反対ですが、仕方がない事です。私は・・・約束を破る悪になりたくありません」

 

恐らくどころか、男達はどこかにレミアを連れ隠して美羅との約束を反故にするつもりだったのだろう。だが、約束は約束・・・レミアは守る事が大事だと抵抗している現場だったのだろう

 

「さて、この状況はどういう事かしら?約束を反故にしようとするで良いの?」

 

「貴方達は出て行ってください!これから彼女に依頼の報酬を渡さなければいけません」

 

レミアに一喝を入れられた男達は、わざとらしく美羅達の隣で舌打ちをしながら家から出て行った

 

「お見苦しい所をお見せして申し訳ございません」

 

「舌打ちをした男は後で尻ハリセンの刑ね」

 

「あはは・・・死なない程度でお願いします。彼等は何故か私に過保護ですから」

 

「護れる男に女は惚れる的な事を思っているんじゃない?」

 

「あれで惚れる女性は中々いませんよ」

 

先程の男達に苦笑しつつ、レミアは椅子の傍に置いていた全財産が入った麻袋を持って美羅に渡す

 

「成程、金銭価値のある物も売っているのね」

 

「家も売却と思ったのですが、間に合いませんでした。後日でもよろしければお金も渡せるかもしれません」

 

「まぁ、その程度なら別にいいわ」

 

美羅が報酬を受け取ると、部屋の奥から子供が覗いていた。見た目からして四~五歳程だろう。何があったのかも少なからず理解出来るお年頃だ。そんな子が美羅の前に近付いて

 

「おねえちゃん、おかあさんとミュウを助けてくれてありがとうなの!」

 

「素直に感謝の言葉が出るのは偉いわよ。いい子いい子♪」

 

美羅は心の中で眩しい!と思った。とはいえ、依頼は依頼、報酬は報酬、仕事なのでしっかりするのは当然である。美羅はミュウと呼ばれる子供の頭を優しく撫でて、レミアの家から出ようとしたが立ち止まった

 

「あぁ、雌煌が釣った食べれない魚なんだけど処分しておいて。家売りは処分代金としておくわ」

 

野次馬を散らして、異空間から巨大な鮫を放り出す。魔物を持ってても邪魔になるだけだし、冒険者ギルドに持っていったらランクが云々と言われる可能性もあるので却下。のんびりと楽しみつつ観光するというのが目的なので、当面は冒険者ギルドに素材を卸す必要もないのだ

 

「えっ・・・これを?」

 

「おっきい鮫なの!」

 

「それじゃあバイバ~イ」

 

美羅は跳躍してその場から離れ、レミアは呆然として見送る事しか出来なかった。目の前の魔物は海で出会ったら即逃げる事を推奨されている魔物で、サイズが桁違いに大きい事から金ランク冒険者でないと狩れない強さだ。美羅が離れた事で威圧で散らしていた野次馬達が戻り、その魔物を見て悲鳴を上げて腰を抜かしたりしていた

その後、騒ぎを聞きつけた者達による伝言で冒険者ギルドが動く事態となり、解体して素材の換金が行われた。その額は、レミアが美羅に渡した全財産の倍以上の値段になったりした。冒険者ギルドは、魔物を討伐した人物が誰かを必死になって尋ね、レミアは答えようとしていた男達に笑顔の一睨みで黙らせて冒険を楽しむ人という事だけを伝えた。目立てば自由に動く事が出来なくなる事を望んでいない事は言動だけで理解していたからだ。これがもし、詳細に伝えたりされていればその者達はどうなるかは大体察する事が出来るだろう

 

「ミュウ、あのお姉さん達の事は皆に秘密よ?」

 

「はいなの!」

 

美羅達はエリセンでの一騒動を解決した後、人目のつかない場所でのんびりとバカンスを楽しみつつ一夜を過ごし海底遺跡の攻略を開始する

 

 

 

 

 

 

 




またしてもぶっ壊れ技で解放者の一人が復活!とはいえ、他の解放者達の事は全然知らないので登場する予定はありません。このまま海底遺跡→大火山→神山→雪原→樹海の順番で周ります
感想でも返信していますが、クラスメイトアンチ+原作ヒロインはなにそれおいしいの?的に出る機会が殆どありません。レミアさんが出たのは、時系列的にもありえる展開なのです。原作では解放者の拠点に居る時間は約一ヵ月、その後フェアベルゲン→ブルック→ライセン大迷宮とかなり時間が掛かっています
クラスメイトアンチは全員です。救いはありません。そこの所ご注意下さい
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