イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
「監督、あなたは影山とどんな関係なんですか?」
「紫藤君は催眠術師HYDEを知ってますか?」
僕としては思いきったつもりだった質問は、訳の分からない催眠術師についての質問で返された。
「ハイド……聞いたこともありませんし、今その人は関係ありません。僕は監督と影山の関係を聞いています。はぐらかさないでください」
気を取り直して、影山との関係性を問いただす。
「察しのいい紫藤君なら分かるかもと思ったんですけどね。HYDEというのは私が催眠術師として活動していたときの名前です」
監督の下の名前は灰人だったはずだ。ジキルとハイドにかけたネーミングだろう。
それにしても、監督が催眠術師として活動していたとは。ただ心理学を専攻しただけってよりは催眠術を使えることに納得はする。
「影山との関係を話すと長くなります。立ちながらというわけにもいきませんし、そこに座ってください」
監督が影山との関係を話してくれるというので、職員室横の小さい机と椅子だけがあるスペースに座って話を聞くことにした。
☆☆☆
私の家庭はいろいろと複雑で……
いえ、この話は長くなりすぎるのでやめましょう。
私は中学を卒業してすぐにアメリカへ催眠術の修行へ行きました。少し伝手がありましてね。
4年間の修行を経て、19才のときにそのままアメリカで催眠術師デビューしました。
HYDEっていうのは私のお師匠様がつけてくれた名前です。ジキル博士とハイド氏にちなんで二重人格キャラで行けと言われまして。
催眠術を使うとき別人格になるってので売り出していました。それが自分自身への暗示になってしまったのか、今では別人格を演じていないと催眠術を上手く使えなくなってしまったんですけどね。
そのキャラが功を奏したのか知りませんが、界隈ではそこそこ名の知れた術師になることができました。
まあそんな折に日本のテレビ番組に出演させていただくことになりましてね。サッカー選手に催眠術をかけてPKをさせるといった内容のものでした。
私としてはまずまずの手応えを感じていました。
ところがその収録から数日後、私が催眠術をかけた選手が死んだというニュースを聞きました。彼の友人の証言によると、収録以降彼はぼんやりとしていることが多かったそうです。
そして山道を運転中に車の操作を誤り、崖に落ちて死にました。
私のせい。私だけでなく、その証言を聞いた誰もが思いました。あの催眠術のせいだ、と。
私はちゃんと催眠術を解いたはずでした。ですが、催眠術が解ける原理は基本的に本人が解けたと思うから解けるだけです。
正しく催眠術が解けたと確認するのを私は怠っていたのかもしれない。私は人を殺してしまった。そう信じ込んでいました。
収録は当然お蔵入りになり、私は二度と催眠術師としての仕事は出来なくなりました。人殺し催眠術師なんて呼ばれてた私に仕事の依頼なんて来るはずがありませんから。
そんな私を助けてくれたのが影山です。助けてくれた、なんて言い方は全くもって正しくないのかもしれませんが。
私が影山と初めて会ったのは例の番組の収録の打ち合わせです。私が催眠術をかけたのは皆帝国出身の選手で、企画段階から影山が関わっていたそうです。
「君が仕事を出来なくなったのは君を呼んだ私にも責任がある。だから君に仕事をやりたい」
そんなことを言われてホイホイと影山に従うことににりました。
私も人を見る目には自信があったはずなんですが、あのときは死んでしまった彼への償いをしなきゃなんて思っていて正常な判断が下せてなかったんでしょうね。
影山は私を地木流灰人として当時創立して間もなかったこの尾刈斗中の教員として働かせました。
あ、地木流って名前は本名じゃありませんよ。ただ私の催眠術師としての名前からとっただけのセンスのない偽名です。こんな変な苗字の人いるはずが……
いや、サッカー部の面々を見ているとそうは言いきれませんね。この辺りは不思議な苗字が多いようですし。
尾刈斗の教師となった私は影山に従い、サッカー部顧問として催眠術を応用した戦術を研究していました。
そしてその傍ら催眠術を悪用して、他の学校の校長に非常に不利な契約の判を押させたり、サッカー部の監督に試合を棄権させるように誘導したりしていました。
先日も、「尾刈斗の生徒に迷惑をかけられたから、しばらく痛い目を見せてやれ」と連絡をもらって、私は尾刈斗の練習試合を妨害しました。
☆☆☆
「つまり私は影山の手下。そう言えば分かりやすいでしょうか」
監督の昔話が終わった。ツッコミどころは多々ある。
中卒でアメリカに催眠術修行ってどんだけ複雑な家庭環境やねんとか、HYDE→地木流の順番やったんかいとか、脳内がついエセ関西弁になってしまった。
ただ一番注目すべきポイントはやはり……
「その交通事故ってほんとに監督のせいだったんですか?」
「真実はきっと君の考えるとおりですよ」
僕に限らず、影山のことを知っている人はみんな同じことを思うだろう。全て影山のせい。きっと全ては影山によって仕組まれたものだったのだろう。
「私は影山のもとで働いているうちに影山のやり口が分かり、疑念を抱きました。
そして例の証言をしていた選手を問い詰めると、影山に命令されて偽の証言をしたとあっさり吐いてくれました」
問い詰めるって監督は言ってるけど、催眠術とかも使ってそうな気がする。まあどうでもいい。
「それならどうして監督はまだ影山に従っているんですか?」
贖罪として影山に仕えていたのなら、真実が分かってなお影山の手下である理由が分からない。
「亡くなってしまった彼に償うためには影山の手下を辞め、警察に告発すべきでした。ですがそのときには既に警察は信用ならないということを知っていました。
それに、私は職を失いたくありませんでした」
尾刈斗の教員をやっていられてるのも影山の口利きがあってこそ。それにそもそも監督は中卒で催眠留学をしちゃってるから……
「監督は高校にも行っていないんですよね」
「ええ、ですから当然教員免許なんて持っていません。紫藤君から見たら許されないことなのかもしれませんが、犯罪者でもいいから私はここで教員として監督として働き続けたかったんです」
★★★
紫藤君は私を呆れたような目で睨みつける。
職を失いたくないなどという自らの保身が理由だなんて、大人として情けないとは思う。
催眠術の世界からは追放され、学歴も皆無。新たな職に就くのは難しいかもしれないが、そんなのは言い訳でしかないだろう。
「でももう現状維持なんて言ってられません。バレてしまいましたから。君の願いどおり、私はここを辞めます」
いつかこうなる日が訪れることは分かっていた。それどころか、私は罪から開放されるこの瞬間を待っていた。
紫藤君も影山の手下である私を監督として慕うなんてできないだろう。
私が辞めるだけで全てが解決する。全て丸く収まるに違いない。
「え……? 困りますよ、そんな」
なぜか紫藤君は困惑の声をあげる。そしてその予想外の困惑に、今度は私が困惑する。
「どうしてですか? あなたは私を憎んでいるのでしょう。私に学校を辞めて欲しくてこの話をしてきたのではないんですか?」
「僕はただ事実を確認したかっただけです。それと、できれば試合ができるようにお願いしたくて。監督を憎んでなんかいませんよ。
「だって、僕も監督も被害者でしょ?」
「被害者……ですか。たとえ私のせいで潰れた学校があったとしても?」
少なくとも私は、私が被害者だなんて思えていない。
「そんなの関係ありません。監督が仕事を辞めて逃げ出したとしてもまた別の手段で影山は学校を潰すだけです。監督もおっしゃっていたとおり、警察に告発しても効果はたかが知れています。だから、監督は何も悪くありません」
なるほど、君はそう主張するわけか。
「影山の野望を止める唯一にして最高の手段は影山を、帝国を倒すことです。そのためには監督の力が必要不可欠です」
さすがサッカープレイヤーらしい考え方だ。そして私も、監督でありサッカーの指導者だ。
「紫藤君は私を買いかぶりすぎですよ。ですが、そう言ってくれるなら手は貸します」
その言葉に合わせるように私は手を前に出す。
「この腐ったサッカー界に
そう言って紫藤君は私の手をしっかりと握った。
原作キャラに「これ偽名だよ」って言わせる二次創作……
実はこの設定は二次創作を書き始める前から考えていて、もし尾刈斗も帝国の仲間なのだとしたらどうなっているのだろうかという考えに基づいています。
地木流監督はインパクトが強いのに、出自などの設定は何も語られていませんから。
主人公を尾刈斗に行かせた理由の半分は地木流監督にありますね。
〈原作考察〉
帝国学園の学校破壊は、校舎の施設拡張のための買収であり、法的な許可を取った上でのものであるとイナズマイレブンエブリデイにて明かされている。しかしやはりツッコミ所の多い契約であるため、ここでは地木流監督が暗躍していたのだということにした。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる