イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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 説明会です。ひとまず伏線(らしきもの)を回収できたかなと思います。


交通事故

 

「なあ、幻斗は将来サッカー選手になりたいのか?」

 

 父さんが僕に質問した。

 

「うん。僕は雷門に行って、円堂と一緒にフットボールフロンティアを優勝するんだ!」

 

 僕は元気に答えた。

 

 前世も合わせたらもう大人なわけだけど、父さんや母さんの前なら子供でいてもいいのかな、なんて思っていた。

 

「それから大人になったら――」

「幻斗!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 父を轢き殺したあの紫色の……いや違う色だったかもしれないが、あの車は茫然と立ち尽くす僕をよそにどこかへ去っていった。

 

 

 それからのことはほとんど覚えていない。

 

 多分僕が公衆電話とかから119に電話をかけたから、救急車がやってきた。それで僕も一緒に救急車に乗って病院に行ったんだと思う。

 僕は父さんのおかげで怪我ひとつしてなかったんだけど、父さんはダメだったらしい。

 

 僕はずっと「僕のせいだ」って呟いていて、母さんが必死に慰めてくれていたらしい。僕自身はほとんど覚えていないから全部「らしい」ってなっている。

 

 その後警察の人と話をして、身内だけで父さんの葬式もした。葬式をしたという事実だけは辛うじて覚えているけど、そこで何をしたかなんてろくに覚えていない。警察の人と話した内容もやっぱり分からない。

 

 車のナンバーだとかちゃんと目に焼き付けてたら良かったんだけどな。警察の人に話せたのはきっと色についてだけ。その色についても「彼は錯乱していたため信憑性は薄い」なんて調書に書かれているかもしれない。

 もしかしたらほんとに紫色じゃなかったかもしれないし。そんなことないとは思うけど、倒れた父の髪の色を車の色と間違えてしまった可能性もある。僕の父さんの髪色は僕と同じで薄い紫だったから。

 

 

 やっぱり僕の証言に間違いがあったのか、轢き逃げの犯人はいつまで経っても見つからなかった。

 

 母さんはその件で一度、警察を訪ねたことがある。普段は自己主張なんてしないタイプだけど、いつまでたっても警察からなんの連絡もないことに痺れを切らしたのだ。

 

 担当してくれた警察の人は母さんの質問に対してはぐらかし続け、ほとんど何も教えてくれなかった。

 ただひとつ問い詰めて聞き出せたことは、もう轢き逃げ事件の捜査はされていないということだけだった。

 

 

 そして母さんが警察に乗り込んだ翌日、影山から帝国へ入学するよう再び打診を受けた。君の才能を不慮の事故で捨ててしまうのは惜しい、なんて体のいい言葉を並べて。

 

 このころになると、僕は裏で何が起きているのか理解していた。

 もしかしたら、最初から分かっていたのかもしれない。認めたくなかっただけで。

 

 

 このイナズマイレブンの世界で交通事故といえば、原因はひとつしかない。

 

 

 そう、全て影山のせい。

 

 

 影山は最高傑作である鬼道のイリュージョンボールを攻略しうる僕を手元に置いておきたかった。それなのに僕が一度目の打診を断ったから、僕の存在ごと葬りそろうとした。

 作戦は失敗し僕が死ぬことはなかったが、代わりに父さんが死んだ。経済的に苦しくなったことを見透かした影山は再び僕を帝国に誘った。

 そんなところだろう。

 

 

☆☆☆

 

 

 僕は当然誘いを断った。帝国へ行ったらそれこそ影山の計画通りだったからだ。

 心配させたくもなかったし、母さんには理由を全く言わなかった。でも母さんは最終的に僕の決めたことだとして認めてくれた。

 

 

 本当は雷門に行きたかったが、我が家は決して裕福とは言えず、母さんのパートの掛け持ちだけじゃとても雷門の学費とシューズ代を払えそうになかった。

 理事長もいる雷門はもちろん私立だ。

 

 普通なら公立中学に進学すればいいと思うのだが、この世界の進学事情は前世と少し異なる。

 この世界には私立中学校がたくさん存在していて、中学受験というものがかなり一般的な選択肢として存在する。といっても小学生のころから塾通いなんて人は前世どおりそんなにいなくて、大抵の学校は小学校で授業を受けてさえいれば問題なく入試は通る。言ってしまえば学費だけ払えば誰でも入れるということだ。

 

 もちろん公立中学に行く人もたくさんいる。だが、中学でサッカーをしたい人は私立に行けというのが常識となっている。

 というのも、公立中学でちゃんとしたサッカー部があることが珍しいからだ。

 

 地球の命運をサッカーで決めるくらいだから、この世界ではサッカーがマイナースポーツだったりするわけでもない。

 だが、FFに出場する学校はどれも私立だ。噂によると中学サッカー協会が関わる大会に公立中学が参加するには複雑な手続きや負担が多いのだとかで、たとえサッカー部があっても公立中学はFFに出場しない。その結果FFを目指すような子供はだれも公立に行かなくなり、サッカープレイヤーが私立中学に固まることになる。

 

 十中八九あいつの仕業だろう。公立に通う子供から、サッカーの大会に出場する機会すら奪うなんて……

 これが日本のサッカー界の弱体化に繋がっていると気づいていないのだろうか。

 いや、弱体化こそがあいつの目的だったかもしれないな。つまらない復讐だ。

 

 

 僕が通う中学校、すなわち神成中学校はそもそもサッカー部がない。円堂みたいにサッカー部を創部する選択肢もあるが、公立である神中(しんちゅう)にはサッカーに意欲的な生徒がそれほどいるとは思えない。

 神成FCの人達の中にはサッカーはもう終わりにして神成中学に進学するつもりの人もある程度いるから、頼み込めば部員数だけはなんとかなるかもしれない。だけど、やはりFFに出場するとなるとさっき言った公立問題が浮上する。

 

 

 サッカー部でサッカーが続けられたとしても、FFに出場できないんじゃ物語に関わることができない。ただテレビで決勝の様子を眺めるだけなんだったらそれは前世と何も変わらない。

 

 

 母さんと色々と話し合った結果、雷門以外の通える私立を探すということで保留になった。

 

 

☆☆☆

 

 

 ある日、刃也が帝国学園に行くと言い出した。

 

 

 もともと刃也は両親から帝国へ行くように言われていて、それを僕がゴリ押しで一緒に雷門に行くことになっていた。

 僕が雷門に行くのをやめたから、刃也が帝国へ行くことになるのは当然の帰結だった。

 

 

 刃也を帝国へ行かせるわけにはいかないような気がして必死に反対した。

 

 なんの理由もなく考えを変えてくれることはないと分かっていたから、僕は図書館へ向かった。影山の悪事の状況証拠を集めるために。

 

 影山が起こしたと思われる悪事は山ほど見つかった。ちょうどその年のFFでも、帝国の初戦の相手のキーパーが交通事故で死んでいた。

 僕がジュニアエンパイア相手にイリュージョンボールを披露して喜んでいたのと同じころに。

 

 彼は、僕が救うことのできた命だった。悔やんでも悔やみきれなかった。

 

 

 帝国に関係する事件や事故を集めて刃也に見せ、これらは全て帝国の影山の仕業だと力説した。

 それを聞いてもなお、刃也は帝国に行くと言った。

 

「この事件や事故が全部偶然だって言うの?」

「いいや、偶然なんて言わないよ。幻斗がそこまで言うってことは全部本当のことなんだって俺は信じる」

 

「それなら、どうして?」

「帝国のことを知るには帝国の内部にいた方が有利だからさ。幻斗のお父さんの事故についても知ることができるかもしれないし」

 

 刃也は賢いから、父さんの事故の真相について勘づいていた。その上で、自らスパイとなると言い出した。

 それは危険なことだったかもしれないけど、僕は刃也の提案に乗った。

 

 

☆☆☆

 

 

 母さんには経済的に無理のない範囲で僕がサッカーを続けられる学校を探してもらった。

 母さんが見つけてくれた尾刈斗中学は、催眠術だとか不穏な要素もあるけど、悪くない選択肢だった。交通遺児に対する保証も充実していて、僕の勉強の頑張り次第では無料になるという。

 

 

 そして、刃也とは影山の悪事の証拠を集め回ることになった。

 僕達がどれだけ頑張ったところで警察と繋がっている影山の力を前には無力かもしれない。でも、何にもならないなんてことはない。

 捕まえることこそできずとも、影山が悪いやつだということを知らしめることができたらいい。

 

 

 行動を始めたのが遅かったから、僕達にできたことは少なかった。

 中学が始まれば、刃也は行動が制限される。それまでにできる限りのことをしたつもりだったが、調べることができたのは3件だけだった。

 

 ただ、そのどれもが影山の仕業で間違いないと確信を深めることができた。

 

 

☆☆☆

 

 

 実は父さんが影山に殺された後、僕はサッカーを辞めようと思っていた。父さんが死んだのは全部僕のせいだから、サッカーボールに触らないことで償いになる、なんて豪炎寺みたいなことを考えて。

 

 でも夕食の席でその考えを母さんに言うと、

「父さんがそんなこと望んでいるはずがないでしょ。父さんは最後まで息子が幸せに生きることを願っていたの。幻斗自身がしたいことをしなさい」

 なんて言われた。

 

 「僕のせいだ」って自分を責める子供にかける言葉としては、ありきたりなものだったかもしれない。

 

 

「僕のしたいことなんてもうないよ。もう僕は何もしたくない」

 そう僕が答えようとしたとき、母さんの言葉が全く違う意味で聞こえた。

 

 

(僕はもう何もしなくてもいいかもしれない。でも、幻斗は?)

 

 母さんが言った『幻斗』は、もちろん僕のことだ。そうに決まっている。だけど、僕の思考は変な方向に加速していった。

 

(僕はこの世界に紫藤柊斗(父さん)紫藤涼子(母さん)の子供として転生した。前世で死んでしまった僕に奇跡が起きて、こうして2回目を与えられたんだ。

 じゃあ奇跡が起きなかったとき、紫藤家はどうなっていたんだろう。紫藤幻斗と父さんと母さんは、今頃仲良く3人で食卓を囲んでいるのかな。

 紫藤幻斗(僕じゃない僕)は何を考えている?何を願っている?)

 

 

『どうして僕のパパを殺したの?』

 

 

 僕の耳に呪詛が響くようになったのは、この日からだった。

 

 

☆☆☆

 

 

 いつか、影山の悪事を白日の下にする。そして全ての影山の被害者を解放してやる。

 

 

 

 それで、君のパパを殺してしまった償いになるだろうか。




〈原作考察〉
私立中学について
正直イナイレの世界は癖が強すぎて公立だと思えるところがなかった(真面目っぽい御影専農も専業農業附属であることを考えると私立感)ため、ぜーんぶ私立という強引な説で押し切った。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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