イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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時系列としては「催眠術師」の続きです


天魔大戦編
レジスタンス


 『この腐ったサッカー界に革命(かぜ)を起こしましょう』って何だよ。いやまあ自分の発言なんだけどさ。

 僕は松風天馬にでもなったつもりか?

 

 

 それはさておき、地木流監督が打倒帝国に手を貸してくれることになった。

 尾刈斗の最強戦術の担い手である監督が仲間になってくれたならこれほど心強いことはない。

 

 そんな長い付き合いでもないけど、選手と監督として一緒にフィールドに立っていたから、監督がそんな悪い人間じゃないと信じていた。

 だから影山と監督が繋がっているって刃也から聞いたときは、脅されて仕方なく命令に従っているだけだと思った。

 

 脅されていたのは事実だけど、実際監督は思ったよりも多くの悪事を重ねていた。

 僕が監督のことを『罪のない人』であるとはは思えなくなるくらいに。

 

 それは正直ショックだった。

 

 でも、この現実を前向きに考えよう。監督が影山の重要な駒であったということは、それが裏返って僕のものになったとき影山に大きな損害を与えられるということだ。

 罪があるかないかなんて関係ない。僕は世の中の罪人を全員裁くほど正義感に満ち溢れてないから。

 

 

 僕の目的のために監督が使えるのならそれでいいじゃないか。

 

 

☆☆☆

 

 

 監督は僕に知りうる限りのたくさんの情報を与えてくれた。今まで僕が図書館を必死に漁っていたのが馬鹿らしくなるくらいに。

 

 例えば、尾刈斗中学の設立に影山が関わっていたという話とか。監督が尾刈斗の教師になれたのもそのおかげなのだろう。

 尾刈斗の校長は基本的に影山に頭が上がらない。でも影山が学校の経営に口を出すことは滅多になく、唯一あったのが奨学金制度の改定だったらしい。ある日突然影山から電話があり、「交通遺児への援助を積極的にするように」とだけ言ったのだとか。

 それはちょうど僕が入学する直前、そして父さんが事故で死んだ直後だった。

 

 

 僕が本当に知りたかった情報――あの交通事故の真相は監督も知らなかったらしいが、あれは影山の仕業だったと考えるのに十分な証拠は集まっていた。

 

 

 母さんが探し出してくれたと思っていたこの選択肢も全て影山の掌の上だったって思うととても腹立たしい。影山は自らの管轄下にある尾刈斗に僕を誘導していたってことだ。

 でも、僕はここで影山の意のままに踊るつもりはない。いくらでも抵抗してやる。

 

 

☆☆☆

 

 

 打倒帝国、それは生半可な気持ちでできるものじゃない。尾刈斗のみんなで気持ちを固めなければまた蹂躙されるだけだ。

 道化先輩達みたいに、どうせ勝てないって諦めていたなら勝てる試合も絶対に勝てなくなる。

 

 もしかしたら、先輩達は帝国と監督の繋がりを薄々察していたのかもしれない。

 帝国にさえ反逆しなければ、尾刈斗は帝国の庇護下で楽しくサッカーを続けられるから。

 

 実際、僕のせいで尾刈斗サッカー部は試合ができなくなった。サッカーをするという最低限の楽しみも奪われた。

 先輩達が僕らがサッカーをする権利を守っていたのだとしたら、みんなに迷惑をかけた僕には文句を言う資格はない。

 

 

「私たち尾刈斗サッカー部の今後の目標が決まりました」

 

 監督が部室に部員みんなを集めて話をしている。いわゆるミーティングだ。

 いつもなら他の学校との試合を控えているときなどにするのだが、最近は練習試合もできていないからFF地区予選以来ということになる。

 

「それは、帝国学園に勝つことです」

 

 

「そ、そんな無茶アル」

「イッツインポッシブル!」

 

 突然監督に掲げられた大きすぎる目標に、みんなは驚きの声をあげる。

 

「魔界の住人の俺にかかれば帝国なんて余裕だぜ」

「王者帝国を倒すなんて血が高鳴るぜ!」

 

 消極的な霊幻(れいげん)(なた)とは対照的に、魔界先輩や月村先輩がやる気を見せる。FFの帝国戦では諦めていたように見えたが、実際にフィールドに立ってああもコテンパンにされると色々と思うところがあるのだろう。

 

「お前らももっと根性見せろや! アオオオオオーン!」

 

 だとしても月村先輩がこんなにやる気(というより雄叫び)を出しているのは今日が満月の日だからだ。満月モードの先輩でチーム全体の士気をあげる、監督のことだからそこまで考えて今日を選んだのだろう。

 

「それより……呪い……」

 月村先輩のおかげで熱くなった空気の中、八墓(やつはか)がおずおずと意見を言う。

 

「呪い?」

 

「正確には……呪いの噂……試合が出来なきゃ……強くなれない」

 

 影山の嫌がらせ。本当はただ監督が試合を断っているだけなのだが、呪いの噂が原因だとみんなは信じている。

 

「それは問題ありませんよ。あれは全部私が試合を断っていただけですから」

 

 監督が大きな爆弾を投下した。

 

 

☆☆☆

 

 

「つまり、監督は帝国学園の影山と協力体制を取っており、今まで情報を帝国に流していたと。そして試合ができていないのは、影山の指示で監督が試合を断っていたから。こういうことですか?」

 

 衝撃的な監督の告白にみんなが狼狽えるなか、部内随一の優等生でもある円谷(つぶらや)が話を纏める。

 ちなみに2番手は僕である。前世では伊達に高校に通っていたわけではない。

 そんなに賢いのにどうして円谷は毎日UFO探しに勤しむのか理解に苦しむ。宇宙人なんているはずが……ないことはなかった。

 

「円谷君、そのとおりです」

 

 

 みんなが監督に不信の目を向けているのが分かる。例外的に八墓や鉈、木乃伊(きのい)*1黒上(くろがみ)、魔界先輩は表情を窺い知ることができないが、似たようなものだろう。思ったより例外が多い。

 

「監督が今までどうだったとしても、今は俺たちの仲間なのは変わらないうがー。一緒に戦うがー!」

 不穏な空気を察知したのか、不乱(ふらん)先輩が監督をフォローする。

 

 不乱先輩は単純な人で、悪くいうなら少し頭が悪い。前に通知表を見せてもらったが、円谷とは対照的にかなりヤバかった。不乱先輩の将来の夢は生命の創造らしいが、このままでは絶対にやりとげられないだろうという確信がある。

 

 

「確かに監督が帝国と繋がっていたのなら……こちらも向こうの情報を手に入れられますね……」

 

「ぐふ……木乃伊の言う通り……深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている……ぐふふふふっ」

 

 その台詞、もう引退した冥門(くらかど)先輩なんかが言ってたらもっと様になったのに。

 それにしても、八墓といい木乃伊といい(しかばね)といい、どうして尾刈斗のみんなはそんな間の置いた話し方をするのだろう。

 

 

「お前らの言う通りだぜ!監督はオレ達の仲間だぜ!」

 月村先輩が熱い言葉を熱く叫ぶ。道化(みちばけ)先輩は部長を引き継ぐときに満月モードの月村先輩のことを少し危惧していたが、このみんなをひっぱるリーダーシップはなくてはならないものだ。

 実際その一言で、みんなの不信が取っ払われたのが分かる。

 

 それもこれも監督の想定通りなんだろうけど。

 

 

☆☆☆

 

 

――ですから、ゴーストロックはそのまま使わずに、何か改良を加える必要があります。現在のゴーストロックの情報は私のせいで全て帝国に伝わっていますから。

 皆さんくれぐれもこの話を外に漏らさないように。我々サッカー部が打倒帝国を掲げていることは私以外の他の教師にも絶対に言わないでくださいね」

 

 

 監督の知りうる帝国の情報(今度は影山の活動についてとかじゃなくて、選手の情報のことだ)をもとに、対帝国の作戦について語り合った。例の監督の過去とかも合わせて、2時間くらいは話をしていたのかな。

 今まで最も長く、最も有意義なミーティングだった。

 

「とりあえず今日はこのあたりにしましょうか。長く話しすぎたのでもう終わりにしてもいいんですが……少しサッカーボールを触らないと帰れない人もいるようですね」

 

 月村先輩はサッカーがしたくて「ウウゥル」ともはや人間のものではない声を発しているし、それ以外のみんなも帝国という大きな目標ができて体がうずうずしている。

 もちろん、僕だってそうだ。

*1
原作時中2、MF。乾燥肌だとかで前身ミイラ男

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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