イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
サッカー部員16人が部室に揃っている。道化先輩達が引退してから、こうして全員が一堂に会するのは初めてかもしれない。
16人を2で割って8人ずつ。時間がないのでハーフタイムなしの30分だ。
普通なら紅白戦として赤と白に分かれるところだが、魔界先輩の提案でHellチームとHeavenチームという名前になった。
命名センスが確実に中二病を患っている。
「じゃあ魔界の住人の俺がHellチームのキャプテンだ。異論はないか?」
「ナッシング!」
月村先輩が満月モードになってしまった以上、この部でみんなを纏めるのは魔界先輩の仕事だ。多呂斗先輩はサッカーに関してあんまり積極的じゃないし、不死先輩はコミュニケーションに難あり。不乱先輩は周知の通り馬鹿なので、消去法で魔界先輩になる。
謎の白い布を被って魔界の住人を自称している点さえ除けば、比較的まともに頼れる先輩だ。
「Heavenチームのキャプテンは……多呂斗、任せた!」
みんなの視線が多呂斗先輩に集まる。多呂斗先輩もあんまり自分から前に立ちたがるタイプでらないが、頼れる先輩の1人だ。
「僕よりも適切な人がいますよ。紫藤君です」
「えっ?」
僕が素っ頓狂な声をあげると同時に、みんなの視線は僕に移った。
「理由は……占いです。紫藤君に任せるとよし、とタロットが教えてくれました」
タロットさんがそういうのなら仕方ない……のか?
こうして魔界先輩率いるHellチームと僕率いるHeavenチームでの天魔大戦(またの名を紅白戦)が始まる。
☆☆☆
「最初はグー、出さなきゃパーよ、じゃんけんぽん」
僕はチョキで、魔界先輩はパーだ。
「よしっ、不死先輩ゲット!」
「じゃあHellチームのキーパーは鉈だな」
今のじゃんけんはキーパーを決めるためのもの。
今尾刈斗には不死先輩と鉈と2人のキーパーがいる。1年後の原作では鉈が正キーパーとなっているが、現状ではまだまだ不死先輩の方が実力は上だと思う。
「出さなきゃパーよ」と掛け声をかけることで、無意識に相手はパーを出してしまうという戦法で見事勝利をもぎ取った。前世から多用している戦法で、その勝率はなんと3分の2だ。
「どんどん決めていこうぜ。せーので1番仲間に入れたいやつを指さしな」
キーパーを決めたら今度はフィールドプレーヤーを1人ずつ決めていく。思ったより僕の責任は重大だ。
「せーのっ」
2人が指さしたのは当然……
「やっぱ月村かあ」
「そりゃそうですよね」
月村先輩しかいない。もとから部長に選ばれるほどの実力があるが、満月の日の先輩は本当にずば抜けて強い。
2人の指名が被ったからには当然じゃんけんだ。このじゃんけんで勝敗が決まると言っても過言ではない。
出さなきゃパー作戦は1度しか通じない。今度は実力で勝たなければいけない。
(先輩の思考を読め……さっきはパーを出して負けたから、心理的にパーを出しにくいんじゃないか? いやそう思わせてあえてパーを出すなんてことも先輩ならしかねない……)
(ここは裏の裏の裏をかいて……)
「最初はグー、じゃんけんぽん!」
僕はパーで、先輩はチョキだった。敗北である。
「よしっ、魔界の住人の俺に月村がいればHellチームの勝利は固い」
「アオオオオオーン!」
「じゃあ僕は多呂斗先輩で」
続く2回目、僕と魔界先輩が選んだのは不乱先輩。唯一残っている2年生ということで選んだが、またまた被ってしまった。
だが、今度は絶対に負けない自信がある。
「魔界先輩はじゃんけんが強くて勝てそうにないので、Hellチームの鉈とじゃんけんするのってありですか?」
「同じチームなら誰がじゃんけんしてもいいだろう。最強の俺の前に恐れおののいたか!」
誰がじゃんけんしてもいい、魔界先輩は確かにそう言った。
「あ、じゃあHeavenチームもじゃんけん交代します。多呂斗先輩お願いします!」
うちのチームには、じゃんけん最強多呂斗先輩がいるのだ。
「オーマイガー! そういう作戦かよ!」
多呂斗先輩がじゃんけんで負けているところは見たことがない。やっぱり先輩は心が読めるんじゃないだろうか。
多呂斗先輩と鉈とのじゃんけんは危なげなく先輩が勝利し、僕らは不乱先輩をゲットした。
じゃんけんに負けたHellチームは、
武羅渡は今の尾刈斗で月村先輩に次ぐFWだ。あれ……もしかしてちょっとヤバい?
不死先輩に多呂斗先輩、不乱先輩と防御は厚くなっているが、シュートを打つ人がいないと試合には勝てない。
次のターン、僕はFWの黒上を指名。魔界先輩が指名したのは円谷、こちらもFWだ。HeavenチームにFWがいない以上、DFをとるよりFWを独占した方が得策だと判断したのだろう。
そして次のターン、僕と魔界先輩は最後に残ったFWの
人形は下の名前が
俺は
ていうか人形が親と話してるところを僕前に見たことあるし。
「てことはじゃんけんかよ。多呂斗に勝てるわけないし三途に変更」
多呂斗先輩にじゃんけんさせるまでもなかったようだ。
その後Heavenチームは八墓・霊幻を、Hellチームは木乃伊・屍を獲得しチーム分けは終了した。
「チーム分けに時間がかかっていたので、早くしないと下校時刻になりますよ。見て分かるでしょうがもう空も暗いですし」
監督に急かされて、両チームともフィールドに散らばる。
Hellチーム
----月村-----
-武羅渡----円谷-
-ー-魔界------
-----木乃伊---
-三途------屍-
-----鉈-----
Heavenチーム
--黒上---人形--
-----八墓----
---紫藤------
--霊幻---多呂斗-
----不乱-----
----不死-----
先行はじゃんけんで決めたので、当然僕たちからになる。
キックオフと同時に攻め込むことはせず、一旦八墓に下げて様子を見る。下手に前に出て月村先輩にボールが渡ってしまえば戦況は一気に不利になるからだ。
極力月村先輩がボールに触ることができないような試合運びにするつもりだ。
「よしっ、上がれ!」
機を見て八墓と人形の2人で右サイドを攻める。前線に立つ月村先輩や武羅渡はブロック技を覚えない。
「呪い……」
八墓から出た黒い幽霊のような何かが武羅渡の体にまとわりつく。尾刈斗で散々使われてきた技の1つというだけあって、月村先輩は身をひねって回避してみせた。
「それだけで……十分」
必殺技で動きを封じた一瞬の隙をついて、八墓は左サイドにいる僕へとロングパスを出した。
初めから左サイドが本命だった。
屍と三途、どちらが攻めるうえで驚異となるか。先輩達に尋ねたところ答えは揃って「三途」だった。
それも仕方ないだろう。体格こそ優れていても、屍はまだブロック技を覚えていないのだから。道化先輩に誘われてサッカーを始めたたうちの1人で、その中でも何一つ必殺技を覚えていないのは屍だけである。
チーム分けでも最後まで指名されずに残った屍は、間違いなくチームのウィークポイントなのだ。
木乃伊を屍に近い位置に配置することで補強しようと考えているのだろうが、木乃伊もブロック技は使えない。この超次元サッカーにおいて必殺技の有無は非常に大きなハンデとなる。僕のドリブル技で強引に突破することもできるはず。
「八墓ナイスパス!」
このまま黒上と一緒に上がっていき、黒上のサイコショットで1点。そう考えていたとき、突然のスライディングでボールを奪われた。
「もらったぜ! アオオオオオーン!」
雄叫びを上げながら駆け上がるのは間違いなく月村先輩だった。
満月モードの先輩はやけに簡単に釣られてくれるなと思っていたけど、どうやらその考えは間違っていた。
読み合いや誘導なんてしなくても勝てるだけのスピードとパワーがある。それだけなんだ。
ただボールがある場所に全力で走り、全力でボールを奪う。愚直なそのプレーも月村先輩がすれば対策不能な脅威となる。
「行かせません! ザ・タワー」
行く手を塞ぐ塔が地面が生まれ、さらには雷がボールを持つ選手を狙う。2段階の防御がこの技の強みなのだが、月村先輩はそのどちらもを文字通り越えて見せた。
雷を操るのは塔の上に立つ多呂斗先輩だ。そして雷は自身より下にしか放つことができない。異常なまでの跳躍で塔を飛び越えた月村先輩に対して、多呂斗先輩ができることは何もなかった。
「止めるうがー! フランケン守タイン!」
不乱先輩の背後から巨大な緑色の怪物が現れる。
フランケンシュタインは人造人間で別に巨人じゃないぞとか、ていうかそもそも作り出した博士の名前だぞとかのツッコミ(あるいはウンチクの披露)はさておき、見事月村先輩の足を止めることに成功した。
先程のように飛び越えることも不可能ではないが、フランケンの手が動いて地に叩き落とされることを嫌ったのだろう。
「この間練習してたアレやろうぜ! 今のお前の調子なら絶対上手くいくって!」
中盤からダッシュで上がってきた魔界先輩がそう呼びかけた。
魔界先輩と月村先輩の2人はボールを囲むように丸くなる。
「「地獄車!」」
そのみタイヤのように猛スピードで加速し、緑の巨人を突き破った。
満月モードのときは協調性が下がるくらいのデメリットがあってもいいものだけど、合体技に関してもいつも以上のパフォーマンスができてしまうのが恐ろしいところだ。
「決めてやるぜ! ファントムシュート!」
「ロケットこぶし」
しっかり目を閉じてシュートを打っていたため、ゆがむ空間も使えない。
分裂したボールの中から本物を見極め、そのボールに必殺技をぶつけることは出来たが、パワーの差でゴリ押しされてしまった。
「アオオオオオーン!!」
審判を務めるつもりなんてない監督の代わりに、月村先輩の雄叫びがHellチームに1点が入ったことを示した。
「今日は満月ですから、こうなってしまうことは占うまでもなく明らかでした。君が気を落とすことではありません」
多呂斗先輩に慰められても、そう簡単に割り切れるものではない。
もともと月村先輩にボールが渡らないようにとプレーしていたのに、月村先輩にスライディングを許したのは間違いなく僕なのだ。
でも後悔や反省なんてものはただ気分を落ち込ませるために存在しているわけではない。次に繋げるために存在しているのだ。次は月村先輩の思うようにはいかせない。
相手が強いからってくらいで僕は諦めるつもりはない。
「たとえ敵が強くても諦めない……君らしいですね」
多呂斗先輩のそのつぶやきを聞いて、僕も案外円堂に似てきたかもしれないなんて思い始めた。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる