イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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秘策、秘策、秘策

「よっし、切り替えて行こう!」

 

 試合時間はたったの30分しかない。そして下校時刻は僕らを待ってくれない。

 対月村先輩の作戦を練るのも大切だが、そんなことに費やしている時間はどうやらないらしい。

 僕らはこれから2点をとるんだから。

 

 

 黒上と人形のFW2人に一言だけ指示を伝え、試合を再開する。

 

 人形は黒上にボールを渡すと同時に敵陣へ全力ダッシュで攻めこむ。

 人形の奇妙な動きに警戒しながらも、月村先輩は黒上のボールを奪わんとやってきた。そりゃそうだ、こっちが何を企てていたとしてもボールさえ取ってしまえばなんの脅威でもない。

 

サイコショット

 近づいてきた月村先輩を一瞥すると、謎のPKなパワーでボールを浮かせてゴールまでぶっ飛ばす。これを果たしてシュートと言えるのかは定かではないが、必殺技であることは間違いない。

 月村先輩も魔界先輩も飛び越えてちゃんと人形の元へボールは届いた。

 

「わーお。ほんとに上手く来るなんて思ってなかったぜ。ファントムシュート!」

 オフサイドにならないギリギリの位置で、人形は飛んできたボールの勢いを殺さないまま必殺シュートを重ねる。

 そう、シュートチェインだ。これしか方法がないと思って2人に頼んでみたが実際僕もここまで上手くいくとは思わなかった。

 

「マジかよ! キラーブレード!」

 本当に驚いたとき鉈の口から出てくるのは日本語なのか、なんて思っている間に人形のシュートが鉈の水色の刃を破壊しゴールネットを揺らした。

 

「俺のナイスシュートで同点だぜ! 俺って天才か?」

「運が良かっただけだ」

 

 人形と黒上は正反対のリアクションを見せる。どっちもほんとにすごいけど一番すごいのは作戦を立てた僕!なんて言うのは自分のキャラには合わないな。頭の中で言っただけでなんだかくすぐったい気持ちになる。

 実際すごいのは僕じゃなくて2人だし。

 

 

「紫藤君、次もこうやって速攻で点を取るつもりですか?」

「それが出来たらそうするんですが……」

 

 多呂斗先輩も危惧するように、速攻というのは意表が突けるから強いのであって、そう何度も使えるものではない。

 

「それなら僕にいい作戦があります」

「ほ、ほんとですか?」

「それはズバリ……カウンターです。そもそも次はHellチームのキックオフで始まりますから、月村君の攻撃を凌ぐ必要がありますし」

 

 それはつまり、多呂斗先輩達守備陣に全てがかかっているというわけだ。

 

「かっこいいところがまだ見せてられてないんだ。俺達に任せろってんだー」

「……次は止める」

 不乱先輩も不死先輩もかなりやる気だ。先輩達の意地、見せてもらおう。

 

 

 

「さっきはビビって失点を許しちまったが、地獄の覇者の俺はもう負けねえぜ」

「すぐにオレが取り返してやるぜ!」

 魔界先輩と月村先輩の2年生コンビがキックオフから2人で切り込んでくる。

 そういえばいつの間にか魔界先輩の自己紹介がランクアップしてたが、Hellチームのキャプテンだから的な理由なのかな。

 

「僕なりにできることを、ってね。ファントムミスト

怨霊

 僕が出した黒い霧から抜けて現れたのは月村先輩だけだった。暗闇に紛れて霊幻の必殺技――地面からの蠢く手が魔界先輩の足を封じたのだ。

 前回フランケン守タインを破る要因となった必殺技、じごくぐるまを使わせないようにという霊幻の考えだろう。逆に、月村先輩1人なら先輩達が止めてみせるという信頼の表れかもしれない。

 

 抜けられちゃったから先輩に任せよう、なんて気楽に考えていたわけではない。僕も霧を抜け出した瞬間を狙って月村先輩にクイックドロウを仕掛けたのだが、謎の嗅覚で察知して見事に回避されてしまっただけ。

 どちらにしろ先輩に任せざるをえない状況であるのは変わらないけど。

 

 

「今度こそ止めますよ。ザ・タワー

 塔を創り出してもまたさっきのように飛び越えられるだけじゃないかと思っていたが、今度は違った。塔の上に立っていたのは多呂斗先輩だけではなかった。

 

「どうだー」

 塔のその上に、不乱先輩が堂々と立っていたのだった。

 

メガクェイク!」

 月村先輩が戸惑って立ちすくんでいる間に、必殺技を使いながら不乱先輩が飛び降りる!

 

 位置エネルギーの暴力がフィールドの大きなうねりとなって表れ、ボールは大きく真上に跳ね上がった。

 そのボールを拾おうと前線にいた武羅渡が跳ぶが、武羅渡より先にボールに届いた存在があった。オレンジ色の拳――不死先輩のロケットこぶしだ。

 

 そして弾かれたボールはちょうど僕の足元に届いた。全て計算されていたのだとしたら不死先輩が凄すぎるとしか言えない。そうでなく偶然なのだとしたらまあ運も実力のうちってことで。

 Hellチームのみんなは前に攻めだしていて、守りはとても薄い。絶好のカウンターチャンスだ。

 

 攻めるのはもちろん屍のいる左サイド。しかしそんな僕の思考は読まれていたのか三途が僕の前に立ちはだかる。

 こっちは僕1人で向こうは屍と三途の2人。普通に考えたら不利だ。でも一旦後ろに下げてしまうとせっかくのチャンスが潰れかねない。

 

 こんなときに僕が頼るのはもちろん十八番の……

イリュージョンボール! さて、どれが本物でしょう」

 

 グルグルと動く3つのボールを注視して、三途はなぜか首を傾げた。

「あれ……どれも違う」

 

「えっ?」

 確かにこの間イリュージョンボールを三途にレクチャーしたけど、たったそれだけで……

 

「まさか初見で見破られるなんてね。でも、もう遅いと思うよ」

 

サイコショット!」

ファントムシュート!」

 

 横を見ると、HeavenチームのFW2人の超至近距離シュートチェインが鉈へと襲いかかっていた。

 

 

☆☆☆

 

 

 作戦通りの鋭いカウンターから、人形と黒上の活躍で2度目のゴールが入った。密かに僕が開発していたトリックイリュージョンボールも使えて満足している。

 三途にすぐに見破られたけど。

 

 30分という短い試合時間、逆転するにはいかに速く点を決められるかにかかっていた。そして、実際に試合が終わるより前に2点目を入れることができた。ただ少し問題があるとしたら、速すぎたことだった。

 時間はまだ半分近く残っていた。

 

 

 試合はHellチームのキックオフで再開する。一度中盤の木乃伊に下げて、チャンスを狙うつもりらしい。

 さっきまで脳死突撃!速攻!カウンター!ってなってたのがおかしいだけで、これが正しい試合の展開のしかたなんだ。

 

 いい感じにパスを回しながら少しづつこちらの陣に攻めよってくる。思っていた以上に魔界先輩は指示を出すのが上手いらしく、みんな絶妙にいて欲しくないところに位置取りされていた。

 ボールはずっとHellチームのもとを動き、僕達は全くボールにさわれなかった。

 

 このままパス回しで時間を稼いでくれるなら甘えたいけど、まさかそんなはずがない。

 相手の好きなタイミングで試合を動かされるくらいなら、僕が今動かす!

 

ファントムミスト!!」

 

 Hellチームを中心にできる限りの広範囲に黒いもやを出す。

 物理的な実体はなにも伴わないが、視界を封じればパス回しを続けるのは難しくなる。となれば当然攻めてくるはず。もやが広がっているのは向こうのフィールドだけだから、心理的に暗闇の外である前線に出たくなるのだ。なんて監督みたいなことを言ってみる。

 

 突然の暗闇に驚いたHellチームのみんなは、まず最初に誰にパスを出すか。最も信頼できるストライカー、もちろん月村先輩だ。

 

 

「貰うよ!」「行かせないアル」

 さっきは回避されたけど、今度は1人じゃない。2人同時にスライディングをかける。

 

 さっきまで暗闇にいたはずなのに、なぜかこちらの行動を見切っている月村先輩は空中に回避する。2人でも止められないみたい。

 

「3人いますよ。クイックドロウ

 

 跳んだということは、着地の瞬間が存在する。後ろに控えていた多呂斗先輩のクイックドロウで、ついにボールを奪取することができた。

 スマブラでもサッカーでも着地狩りは基本。どれだけ運動神経が良くたって空中で軌道を変えることなどできないもんね。必殺技を使えばその限りではないけど。

 

 

「一旦後ろに引いて……って、え?」

 多呂斗先輩が何かにつまづいたかのようにすっ転ぶ。多呂斗先輩のこういう姿は初めて見たかもしれない。

 

「返してもらうね」

 

 そう言って三途は転んだ先輩からボールを奪い、自陣へボールを蹴り返した。

 

 

 怨霊だ。多呂斗先輩が何もなくこけるはずがない。霊幻だけでなく、三途も覚えてたんだった。

 僕の黒いもやのせいで逆に相手の必殺技の発動が見えなくなってしまっていた。ファントムミストの問題点を1つ発見だね。

 

 

 でもまたHellチームのもとにボールが戻ったってことはさっきまでと何も変わらない。太陽が裏山に沈みかけている。もうすぐ試合終了の時間、18時だ。フットボールフロンティアスタジアムにあったようなデカい照明なんてこの学校に設けられてるはずもなく、提灯やシャンデリアの形をした雑多なライトで明るさを補っている。

 ちなみに今日は満月だから月の出もちょうど18時。月村先輩のこれ以上のパワーアップはギリギリ避けられたみたいだ。

 

 もう後がなくなった相手は最後の突撃をしてくるだろう。月村先輩の本気の攻撃を耐え凌げるのだろうか。

 

 

「少し……模倣させてもらいます……毒霧の術

 

 木乃伊の必殺技、どくぎりのじゅつ。毒の霧が辺り一面に広がり、むせるような咳の音がいくつも聞こえた。

 いつもよりもかなり広範囲で、その分毒のパワーも下がっているんだろう。受けてる瞬間は苦しいけど、必殺技が終わると後遺症も何もなくすっかり元気という謎の超次元ポイズン。成分は不明。

 そして紫色のその霧は、弱いライトの光を完全に遮断してしまった。

 

 周囲の仲間が苦しむという割と大きいデメリットがあるものの、ファントムミストのように視界を断ってみせた。

 

 

 霧の中から突然飛び出してきたのは、月村先輩と魔界先輩そして武羅渡。

 

「ボールを持っているのは……誰も持ってない。あ……」

 

 模倣、模倣。僕達Heavenチームの作戦をパクること。それはつまり、

 

「シュートチェインですか」

 

 多呂斗先輩がほぼ同時に気づいたけど、気づかなくても大して変わりはなかったかもしれない。毒の霧を吹き飛ばしながら、彗星のように青い光を纏ったシュートが飛んできたからだ。

 円谷の得意技、彗星シュート。FWのアイツがなぜ前線に来なかったのか、理由を考えたらもっとすぐに分かったかもしれない。

 

 彗星シュートの軌道の先に待つのは当然月村先輩。魔界先輩と武羅渡は少し遠い位置にいる。僕は急いで先輩を封じようとマークに向かう。

 

「元さえ止めてしまえば問題ありません。ザ・タワー

 

 多呂斗先輩は再び塔を出してシュートを止めにかかる。気づいて直ぐに構築したものの時間が足りず不完全な代物だったが、彗星シュートはそう威力の高いシュートではない。月村先輩に渡る前にシュートが止まれば嬉しいんだけど。

 

 

 

ファントムシュート!」

 

 それはザ・タワーを突き破り、呆気に取られていた不死先輩からゴールを奪った。

 

 太陽はもう沈みきっていた。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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