イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
僕と三途のコンビでなんとかボールを奪い返すことができた。
また道化先輩や筒井先輩達のいる右サイドに任せてもいいんだけど、どうやら相手チームの守備もそっち側に固められているような気がする。
ここは左サイド、雷門攻撃陣に任せてみようじゃないか。
「風丸、パス!」
「あの技、使わせてもらうぜ! 疾風ダッシュ」
目で追うことすらできないすばやさで人形を抜き去ってみせる。疾風ダッシュをしっかり自分のものにしたみたいだ。
そのまま風丸はマックスへとパス。
「じゃあボクは、イリュージョンボール」
3つに分裂したボールがぐるぐるマックスの周りを漂う。
いつの間にそんな技を覚えたんだか。どうせまた僕の真似してたらなんかできたとでも言うんだろう。
「急いては事を……止めるべきはボールじゃない……怨霊」
「え、なにこれ?」
木乃伊の必殺技でマックスの足が固定されてしまう。やっぱりこの技ものすごく便利だ。ファントムミストと1人コンボできたら絶対強いと思うし、次に習得したい技の第一候補だね。
ボールはまだふわふわと回っているが、足が動けないんじゃ突破のしようがない。木乃伊は今まで僕のイリュージョンボールを見てきたから、自分なりに対策を考えていたんだろう。
「マックス、俺が奪うからそれ止めてくれ!」
「おっけ」
マックスから数メートル離れた位置にいる半田が声をかけ、マックスの必殺技が解除される。
1つに戻ったボールがマックスの足元に落ちた瞬間、
「クイックドロウ!」
必殺技で一気に距離を詰め、半田がマックスからボールを奪った。
「もう一度……おんりょ」
「ジグザグスパーク!」
さらに、怨霊で追撃しようとした木乃伊を必殺技で突破する。大活躍だぞ半田。
「行けっ、染岡!」
「おう! 豪炎寺よりもかっけえ俺の必殺シュートを見せてやるぜ。ドラゴンクラッシュ」
半田からパスを貰ってすぐに必殺シュートを放つ。
やっぱり染岡も習得していたらしい。なんだか新必殺技のお披露目会くらいにバンバン使うね。
「タフネスブロック」
「フランケン守タイン」
少しゴールから離れすぎていたのか、シュートブロックを2枚入れられてしまう。屍の体はなんとか弾き飛ばしたものの、不乱先輩の緑の怪物は貫くことはできず、ゴールに届くことすらせず止められてしまった。
「くそっ!」
「取らせないアル。呪い」
マックスがパスの渡った霊幻へとスライディングを仕掛けるも、霊幻の必殺技の呪いに囚われて身動きが取れなくなってしまう。
ブロック技の怨霊と対を成すドリブル技で、とりあえず覚えたい必殺技がない人にはこの2つがまず教えられるおかげで結構みんな使える技だ。
霊幻から八墓にパスが渡り……
「俺も……呪い」
ほら、みんな使えるでしょ?
こんなふうに、チームみんなが同じドリブル技やブロック技を覚えてるってことは少なくない。シュート技なんかと違って、パワーよりも手数が重視されることが多いから、1つの技のノウハウをチーム内で共有するってことになりやすいのだ。
雷門の場合、クイックドロウがそれになるかもしれないね。
とかそんなことを解説してるうちに、ボールは魔界先輩のもとに。月村先輩と細かくパスを交換しながら上がってくる。
さっきと同じ流れだけど、必殺技を使われていない分より厄介だ。
さっきと同じようにファントムミスト&怨霊コンボでボールを奪おうにも、それに合わせて地獄車を使われると突破されてしまう。
でも考えてるだけじゃどんどん詰め寄られてしまう。なんでもいいから何かしないと。
「それじゃ、クイックドロウ」
毎度お世話になっておりますクイックドロウで奪おうとしたけど、ボールに届く直前に武羅渡にパスされてしまった。
使い勝手はいいけど、タイミングを知られていると割と簡単に対処されちゃうんだよね。何回でも気楽に使えるから便利なのは確かなんだけど。
武羅渡はすぐさま人形へパスをし、受け取った人形もまたすぐに前にパスを送る。そのパスの先にいるのはもちろん、修也だ。
影野がずっとマークしていたはずだけど、簡単に外されてしまっていた。
「次は止める!」
「ファイアトルネード」
「ゴッドハンド」
円堂の気合いも空しく、円堂は再び押し込まれて失点を許してしまう。
1点ビハインド。まだまだ勝てる点差だけど、尾刈斗の強さを知ってるからそう簡単に巻き返せるとは思えない。
「ごめん……」
マークを外されてしまったことに責任を感じているのか、影野は頭を下げる。
「影野が謝ることじゃないさ。キーパーってフィールド全体がよく見えるからさ、お前が豪炎寺のマークを頑張ってたのもしっかり見えてたぜ」
「逆に円堂はよく平然としてられるな。あのゴッドハンドが破られたんだぞ?」
風丸達にとって、ゴッドハンドは最強だった。染岡のドラゴンクラッシュでも破ることはできず、ゴッドハンドが負けているところは見たことがなかったという。
雷門は練習試合なんてしたことないから、他の選手のシュート技を止めたことなんてほとんどない井の中の蛙なのはみんなだって理解していた。それでも最強だと錯覚させられるほどのオーラという安心感ってものが確かにあった。
「そりゃ悔しいぜ。じいちゃんが遺してくれた技だしさ」
「それならなんでそんなに笑ってるんだ?」
「なんでって、そりゃ楽しいからに決まってるだろ? 豪炎寺のシュートからはサッカーが大好きだって気持ちを感じるんだ。だから俺もそれに全力で応えないとって」
「そっか、そういえばお前はサッカーバカだったな」
鉄塔の上で保護者のように見守ってたときと変わらず、風丸は呆れたような顔で円堂を見ている。
「でもさ、風丸もすごく楽しそうにしてたよね。ボールを持ったときとかさ。サッカーバカなのは円堂だけじゃないよ」
「俺達みんなサッカーバカってか。確かにそうかもしれないな」
風丸もおかしそうに笑う。やっぱりサッカーにはみんなを楽しくさせるパワーがあるんだって思う。
「サッカーはやっぱり楽しい。でもやるからには勝ちたい。
紫藤の言う通り尾刈斗は強いし豪炎寺はヤバいしで、ちょっとキツいかもって思わなくもないけど、これが俺達にとって初試合だから。俺達攻撃陣が頑張って攻めて勝って終わらせようぜ」
「半田にしてはなんかかっこいいこと言うじゃん」
「俺にしてはってなんだよ」
「ボクだって、負けるつもりはさらさらないよ」
「点を取られても、その分雷門の点取り屋の俺が取り返してやるぜ。だから影野も気にすんな!」
半田だけじゃなくマックスも染岡もやる気充分。
そりゃみんな雷門だもん。負けてても最後まで勝つのを諦めたりしない。
「そういうことなんで、先輩達も手伝ってくださいね」
僕達の会話を遠巻きに眺めていた道化先輩達にも頼む。
「いやあ、若いっていいねえ」
「2つしか変わらないのにもう隠居した人生の先輩感出すな」
前世含めたら僕が1番年上だけども。もちろん口にはしない。
「雷門の子達のためにも頑張ろうか」
「全力を尽くすまでサ」
「あ、僕も頑張るよ」
数合わせのために1人だけAチームに来ることになった三途はほんとごめん。
僕達はこの試合を最大に楽しんで、そして勝ってやる。
染岡から堀田先輩へのキックオフで試合は始まる。
逆転するための時間は十分に……あ、10分しかないや。
まず1点を返す。今はそれだけを考えよう。
「シュートブロックされるとキツいんで、なんとかディフェンスを封じることができないですかね」
「1つ思いついた案があるネ。でもそのためにはまず前線にボールを運ばないト」
さっき試合が止まったときにほとんど作戦会議が出来なかったので、試合中ながらフィールドで話し合う。
今は道化先輩がレッドバルーンでなんとかボールを保持してくれているところ。
筒井先輩や風丸半田マックスなど、このチームには優秀なドリブル技を持つ選手が多くいるから、今のところなんとかボールを奪われずに耐えられている。
でも向こうも僕達の手札を理解しきってしまっているから、攻めきることができない。
まだ秘密の必殺技を隠し持ってる人がいたりしたらいいんだけど。
「今ボク凄く面白いことを思いついたんだけど、言っていい?」
「勝つために必要なことなら言ってみて、マックス」
「確かそこの幽霊頭巾の子もアレ、使えるんだよね?」
マックスはなにか素晴らしい悪戯が思いついたかのように、声を潜めて僕に言う。
「――てマックスが言ってたんだけど、いけると思う?」
「理論上は行けるんじゃないかな」
こんなの試合中にすることじゃないけど、三途と話し合って作戦を固める。
「僕達に策がある。パス!」
疾風ダッシュでちょうど人形を抜いていたところの風丸に、ジェスチャーと一緒にパスを求める。
ボールを受け取った僕とマックスと三途が3人並ぶ。
「行くよ!」
「「「イリュージョンパーティー」」」
僕と三途とマックスの共通点。それは、イリュージョンボールが使えること。3つに分裂したボールはそこからさらに3つに分裂し、合計9つのボールが空中を自由にぐるぐる動き回る。
こんなにもボールが沢山あると、全部を目で追うのは不可能になる。派手に暴れ回る8つのボールが視線を誘導し、本命の1つは筒井先輩にしっかりと渡った。
即興の割にはかなりいい技になったんじゃないかな。
「しっかり受け取ったぜ、堀田!」
「今度こソ、ポルターガイスト」
しかしゴールから距離が離れすぎている。それにやっぱり軌道上に不乱と屍が待ち構えている。
「タフネスブロック」
「フランケン守タイン」
するとシュートは2人を避けるように左に逸れた。そういえば、堀田先輩のポルターガイストは軌道を操れるのが強みなんだった。
でも左に逸れ過ぎて、ゴールには届かないんじゃない?
「ドンピシャだぜ! ドラゴンクラッシュ!!」
「キラーブレード」
染岡のシュートチェインが見事に決まり、不死先輩の青色の刃を打ち砕いた。
「いつの間にそんな連携決めてたんですか?」
「何も話はしていない、ただ目を見ただケ」
染岡と堀田先輩、同じFWどうし通じ合うものがあったのかもしれない。
「俺は雷門の点取り屋だ。ボールが来たらシュートをする。それだけだぜ」
いやあ、みんなかっこいいなあ。
Bチームのキックオフで試合は再開。残り時間は後1分も無いくらいかな。ここで逆転できたら最高だけど、さすがに厳しいかも。でももうすぐ終わるって気を抜いていると簡単に1点は取られてしまう。
ボールを貰ってすぐに修也が駆け出す。
1点目を取られたときと同じように、スライディングやクイックドロウを難なく躱していく。
修也にとってこの試合は記念すべき初試合ってわけでもないし、久しぶりの後輩との手合わせってわけでもない。ただ知らない人達の試合に巻き込まれただけだ。
でも修也は本気だ。もちろん大好きな夕香ちゃんが見てるからってのもあるんだろうけど、修也にとってサッカーはそれだけ大切で真剣に向き合う相手なのだろう。
修也の思いに応えないとって言った円堂の気持ちは、なんとなくだけど僕にも分かる。
今の修也は誰にも止められないんじゃないか、そう思ってしまうほどの気迫を感じる。でも、止められなくたって、時間稼ぎしかできなくたって、僕のプレーで示したい。僕のサッカーに対する思いとかそういうの全部ひっくるめて、修也に、みんなに。
「ファントムミスト!」
「怨霊」
僕の霧も迷いもなく突き抜け、ほとんど見えないはずの三途の怨霊は跳んで回避する。
「追撃の着地狩り! クイック…」
「ヒートタックル!」
これまた最初と同じように、炎を纏った突進で僕のクイックドロウは失敗に終わる。
僕らしい微妙な活躍だ。でも、これでいい。少しでも修也を消耗させられたら。
円堂なら、やってくれる。最後は祈るだけになっちゃうのは悔しいけど。
「ファイアトルネード」
「みんなが取ってくれた1点を、無駄にはしない! ゴッドハンド…改!!」
土壇場で進化した円堂の必殺技が修也の炎の必殺シュートを包み込み、しっかりと受け止めた。
タイミングを見計らったかのように監督が試合終了の笛を鳴らす。
2-2。引き分けだ。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる