イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
小さなアパートの一室。年の離れた2人の男が夜食に炒飯を食べている。キッチンに自炊の跡はなく、ただレンジで温めるだけの冷凍炒飯のようだ。
「ほんとにこの炒飯美味いですよね。去年の今頃はこれがなかったなんて信じられます?」
「お前もこれくらい美味しい炒飯を自分で作れるようになれ。冷凍食品とカップ麺ばかりの生活は正直好かん」
「僕はこれで満足なので。不満があるなら自分で料理をすればどうですか」
「前も言ったが私は料理などできん」
「奇遇ですね、僕もできません」
どうやら2人とも生活力は非常に低いらしい。
「それに私は忙しいのだ。お前と違ってな」
「僕だっていろいろと動いてますよ。いろいろと」
「ハロウィンパーティーに参加するのがお前の仕事か?」
「顔を隠して学校に入れる滅多にない機会です。行くしかありませんよ」
そう言いながら若い男は床に無造作に置かれたお面を顔につける。百均に売っていそうなプラスチックのお化けのお面だが、そのシンプルな造形がやや不気味さを醸し出している。
「どうですこれ? 怖いでしょう」
「全く怖くない。さっさと食べろ」
「はーい」
冷たくあしらわれた若い男は仮面を後ろに投げ捨て、美味しい冷凍炒飯を再び食べ始める。
「それで、何か分かったか?」
年老いた男は食べ終わった皿をシンクに置きながら、若い男に尋ねる。
「何かって?」
「遊びじゃないと否定したのはお前だろう。尾刈斗の文化祭を見に行って分かったことが何かと聞いているんだ」
「それはもういろいろと。突然尾刈斗と雷門が試合を始めたんで観戦してたんですけど、凄かったですよ。尾刈斗も雷門も豪炎寺も皆強くなっているし、円堂なんてもうゴッドハンドを改に進化させてました」
「そんな面白いイベントがあったのならもっと早く報告しろ。
いやそれにしてもゴッドハンド改か……FFが始まるころにはマジン・ザ・ハンドを習得していそうな勢いだ、恐ろしい」
「ほんと恐いですよね。豪炎寺も1年間特訓を続けたらどんな化け物になるのか想像もつきません」
爆熱ストームでポセイドンからゴールを量産する豪炎寺の姿を想像し、若い男は少し身を震わせる。
「最も恐ろしいのは尾刈斗だと私は思うがな。あいつの力は未知数だ」
「確かに転生者がどう動くかなんてさっぱり分かりませんね。僕達の敵でないのは確かですが」
「あいつを転生者だと判断したときの状況をもう一度教えてくれ」
「つい最近も話したと思うんですけど。もしかしてもうボケが来ましたか?」
年老いた男に冷たく睨まれていることを察したのか、若い男は渋々説明を始める。
「本当なら原作にいない人が尾刈斗にいた時点で気づくべきだったのかもしれませんが。僕が彼に初めて気づいたのは、街中で例のサッカー少年支援団体の寄附金を集めてたときです」
「全てのサッカー少年の医療費を支援、だったか。あれほど莫大な金がどこから来てるのやら」
「まあそれはいろいろと。それで、話を戻しますね。僕が募金箱を持って駅前で呼びかけをしていたんです。
そのとき彼が僕に話しかけてきました。『僕も、サッカーが消えるのは嫌ですから。頑張ってください』と言って、少しばかりのお金を箱に入れてくれたんです」
「サッカーが消えるという言い方は確かに妙だが、それだけで転生者だと判断するのは早計じゃないか?」
「それだけじゃありせんよ。彼の瞳が僕に語りかけてきました。僕も同じ転生者ですって」
「瞳は話すことなどできん。それはお前の主観だ」
年老いた男は呆れたように若い男を見つめる。
「で、彼が尾刈斗サッカー部の一員だったのは覚えていたから、尾刈斗の名簿を辿って住所とか小学校とかを特定して、周囲の人に聞きこみ調査をしました。幼少期から頭が良くて、時折未来を知っているような言動を見せたそうです。これは間違いないでしょ」
「一つ疑問がある。お前はなぜそんな面倒なことをした? 本人に直接訊けば良かっただろう」
「だって違ったとき困るじゃないですか。あの人頭おかしい人だって指さされますよ。尾刈斗なら前世とか転生とか言ってても大丈夫なのかもしれないけど僕は尾刈斗出身じゃないし」
「多少回りくどく言ってみるとか他に方法はあったろうに。それじゃあ転生者だと確信を持ったあと、本人に確かめたわけだな」
「いいえ、結局一度も本人に確認はしていません。あの頃は忙しかったので。
それに、彼も僕が転生者だと気づいていたのに敢えて口にしなかった。つまり僕とは極力関わりたくなかったんじゃないかと思いまして。
それでも気になるのでしたら、どうします? 今からでも会いに行きますか?」
「邪魔をしてこないのであれば放っておけ。今会っても混乱させるだけだろう」
「それもそうですね」
2人の会話は終わり、若い男は2人分の皿を洗い始める。全く家事をしてくれないことに文句を言いそうになるが、この部屋を追い出されたら住むあてがなくなることを考え思いとどまる。
洗い物を終えたあと、風呂も入らずに若い男は布団に寝転がる。この部屋には風呂もシャワーもないため仕方ないことなのかもしれないが。
「今日はもうすることないんで寝まーす」
年老いた男からの返事は特にない。おやすみの一言くらいあってもいいのに、という言葉は再び心にしまい込み、壁にかけられたカレンダーに視線をやる。
「今日はハロウィン。死者の霊が現世にやってくるんだっけか」
もう二度と会えない誰かに思いを馳せながら、若い男は眠りにつく。
★★★
「おはよう」
「おはよう、幻斗。昨日はよく寝れた?また怖い夢見てない?」
「心配しなくても大丈夫だよ母さん。ぐっすり寝られたよ」
悪夢を見たことあるなんて、母さんに言ったことなかったはずだけど。母さんには全部お見通しだったみたい。
でも今日はほんとによく眠れたので、正直にそう答える。
「そう、それなら良かった。幻斗が昨日夢の中でお父さんを呼んでいるのが聞こえたから、また嫌な夢を見ちゃったのかと母さん勘違いしちゃった」
母さんの話を聞きながら、夢の内容を断片的にでも思い出そうとする。
「凄くいい夢だったよ。どんな夢だったかはほとんど覚えてないけど、凄く懐かしい夢だった。懐かしい人に会えたような、そんな感覚」
「お父さんが会いに来てくれたのかしらね」
かなり好き嫌いが別れそうな展開になってしまったように思いますが、私自身こういうのが苦手なタイプなので、なんとかいい感じに書いていくつもりです。
これと連続投稿で登場人物紹介を書いていますが、それの後書きにて今後の展開についての約束事(〜のような展開にはなりません、など)を書いています。展開に不安がある方は少し見てみてください。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
-
正直誰も分からない
-
主要な数人は顔が分かる
-
アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
-
ベンチメンバーまで全部完璧に分かる