イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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前回に引き続き短めの回。2人目の転生者のお話です。


転生日記と少女の奮闘

△月×日

今日からこの日記帳に日記をつけようと思う。

この日記帳は誰にも見せてはならない。墓場まで持っていく秘密ってやつ。

私には前世の記憶がある。そして前世の最後の記憶から考えるに、ここはイナズマイレブンの世界だ。

 

△月■日

お母さんに聞いたところ、この辺りで一番難しい中学校は帝国学園と言うらしい。やっぱりイナズマイレブンの世界だった。

無印原作は確か2002年だから、計算すると私は推しと同級生になれるみたい。

ワクワクが止まらない。

 

〇月☆日

せっかくだしサッカーを始めてみよう。

明日お母さんに近所のサッカークラブに入れてくれるように頼むことにする。

原作キャラがいたりしないかな。

 

〇月×日

原作キャラはいなかったけど、面白そうな人達が沢山いた。前世基準で奇抜な苗字の人もたくさんいて(私を含む)、イナズマイレブンだなあって思った。

 

〇月●日

円堂守に会いに鉄塔へ行こうかと自転車を漕ぎかけたけどやっぱりやめた。

変なバタフライエフェクトが起きてしまったら困る。原作を間近で見ることができたら私はそれだけで十分、自ら参加しようとは思わない。

 

 

×月□日

初めて必殺技を覚えた。すごく強いディフェンス技。

意外と簡単に覚えられたから、神様が転生ボーナスを与えてくれてるのかもしれない。他の転生者がいないと分からないけど。

 

 

☆月〇日

転生者って本当にこの世界に私だけなのだろうか。勝手に私しかいないと思い込んでいたけど、神様がそんなこと言ったわけじゃない。

もしかして紫藤幻斗って転生者?

 

△月★日

クロだった。そういう言い方が正しいのかは分からないけど。間違いなく転生者だと思う。

果たして私の味方かどうか。影山やエイリアなどにつく理由が考えられないから、ひとまず味方だと考えていいのかな?

私と違って原作に介入する気満々っぽいけど、私に文句を言う筋合いなんてないし。

 

 

〇月□日

彼はやる気みたい。影山とやり合うつもりでいる。

お父さんの事故のことを考えると憎んでしまう気持ちも分かるけど。それでまた周囲に危険を及ぼしたらどうするつもり?

でも、影山の存在を知っていながら何もしなかった私はただ黙って見届けるほかないのかな。

 

 

■月●日

どうしよう。すごく悩んでいる。私がなすべきことは何か。

 

■月☆日

私はこれまで、推しの姿を近くで見て、原作のあの名シーンを生で目に焼きつけることが出来たらそれで十分だと思っていた。

でも、私もそろそろ動かないといけないのかもしれない。

同郷の彼を救うために。

 

 

 

★★★

 

 

 

 夜。下校時刻の6時はとっくに過ぎている。遅くまで仕事をしていた先生達も帰り、職員室からも明かりが消えた。

 

 真っ暗なサッカー部室で、懐中電灯を取り出す男が1人。

 

 ロッカーと壁の隙間に手を入れ、中から隠しカメラを取り出す。

 部室内のようすがバッチリ撮れていたことを確認し、メモリを交換する。

 

 その次に机の下に仕掛けた盗聴器を外そうと手を伸ばし――

 

「何をされているんですか?」

 

 

 もう誰もいないはずの学校で突然声をかけられて驚いた男は、咄嗟に懐中電灯を消す。

 

 

「今更消したって無駄ですよ。どうもこんばんは、私は奏ヶ原心音です」

 

 軽く自己紹介をしながら、心音は持ってきた自分の懐中電灯で男の顔を照らす。

 

「あなたに会いたくて校門前で待っていたのにいつまでたっても現れないので、私から会いに来ました。魔女姿お似合いでしたよ、多呂斗さん」

 

 

 その男――多呂斗占は何も言わない。

 

「喋ったらあの電話のことがバレるとでも思っているんですか?」

 

 時木流の名を騙って、紫藤の小学生時代について尋ねてきた電話。その電話の主は多呂斗だった。

 黙秘は無意味だと悟った多呂斗は口を開く。

「なんだ、気づいていたんですか」

 

「私は耳が良いので。それよりも、半年前の尾刈斗祭の日、グラウンドに来たにもかかわらず何もせずに帰ったあなたの行動が不可解すぎましたから」

 

「ああ、それですか。僕は預言者キャラで通ってますから、部活のみんなは大抵意味深に解釈してくれるんですが。あなたには無意味でしたか」

 

「幻斗からは心が読める人だと紹介されましたが、やっぱりただのキャラだったんですね。監視カメラの映像から人の行動を読み当てて預言者気取りですか?」

 

 多呂斗は少し不満げに反論する。

「確かに、監視カメラや盗聴器で情報を収集していたことは認めます。ですが、心が読めるというのは事実ですよ。あなたの心も読んでみましょうか?」

 

 そんなことができるならやってみろという顔の心音をじっと見つめて、多呂斗は語り始める。

「あなたには誰にも言えない秘密がある。この世界についての大きな秘密。そして、その秘密の共有者たりうる人物を知っているものの、その人物に頼らず1人で問題を解決しようとしている。違いますか?」

「全然違うわ」

 

 心音の即答に、おかしいですね……と首を傾げる多呂斗。

 

 

「楽しいおしゃべりも終わったところですし、そろそろ僕は帰っていいですか? 下校時刻も過ぎてしまっているので」

 そう言いながらも、多呂斗は帰る姿勢を見せない。心音が返してくれないことなど分かっているのだろう。

 

「まさか。あなたからは聞きたいことがたくさんあるから」

 

「聞きたいこととは?」

 おおよそ分かっていながら多呂斗はとぼけて尋ねる。

 

 

「まずはあなたと影山のご関係から」

 

「少年サッカー協会の副会長さんと僕がどのような関係があるというのですか? 赤の他人ですよ」

 

 関係を否定したその発言は、逆説的に多呂斗が黒であることを示していた。少年サッカー協会副会長の名前なんて、普通の中学生は知っているはずがない。

 漢字は違うが、陰山という男が過去に尾刈斗サッカー部に在籍していたということも心音は調べていた。本当に多呂斗と影山が赤の他人であるならば、かげやまと聞いて先に思いつくのはそちらのはずだ。

 

 追及したいことは山ほどあったが、どれほど問い詰めても多呂斗が真実を吐くことはないだろうということも心音は感じていた。

 

 

 監視カメラと盗聴器という明らかに怪しいアイテムの設置を目撃できたので、それについて幻斗に報告して、あとは幻斗と監督さんに対処を任せるべき。心音はそう結論づけた。

 

 

「僕の口が固そうなので、とりあえずカメラと盗聴器を監督にでも報告しようと考えているところですか?」

 

「はい、そのつもりです」

 

 多呂斗に考えを見事に言い当てられたが、心音はそれほど驚きもしなかった。推理のみで辿り着ける程度であったし、仮に心を読まれていたとしても自身の絶対有利な状況は覆らない。

 

 

「その報告は一旦やめてもらえませんか?」

 

「それはお願いですか?」

 今更多呂斗に頼まれても、報告をやめるつもりなど心音には全くなかった。

 

「いいえ、交渉です」

 そう言って多呂斗は少し言葉を区切った。

 

「僕は、――――――を知っています」

 

 時に、情報というものはたった一つでも状況を逆転させうる。心音はそれを実感した。




次回、やっとこさ原作が始まります。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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