イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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帝国が来た!

「ついにこの日が来ました。私達がこの1年間打倒を掲げて練習してきた相手、帝国です。この日のためにいろいろ準備してきました」

 

 みんなが強く頷く。今日までの時間を振り返ると、帝国を恐れる理由などどこにもない。柳田なんかはまだ自信がなく戸惑っているようだけど。

 

 

「負けると、尾刈斗サッカー部は廃部です。今までの全てが無駄になります」

 

 監督の言うとおり、僕達はなにがなんでも負けるわけにはいかない。

 

「最低でも引き分け。そのための策は十分練ったはずです」

 

 

「ああ、やってやろうぜ。みんな円陣だ!」

 

 月村先輩の狼の一声で、尾刈斗サッカー部のメンバー全員が円になって集まる。普段は円陣なんて組まないけど、今日は僕も気合いを入れるために組みたい気分だ。

 

「廃部になんてさせねえ!尾刈斗ー」

 

「ファイト!」「ファイア!」

「オー!」「うがー!」

「オー……?」

 

 しっかり決めてなかったせいでちょっとグダグダ。だけどこれでいい。

 

 

 不穏な何かの到来を暗示するかのような急な曇天も、僕達は気にならない。

 

 ガタゴトと戦車のような帝国バスが進んでくる音が聞こえてくる。

 尾刈斗への道は舗道が十分でないため、通常の車幅の乗用車なら問題なく通ることができるが、バスのように大きい車の場合は少しガタガタしてしまうのだ。特に今日はいつにも増して土がでこぼこしている。まるで誰かが()()()()()()()()()かのように。

 

 

 そう、僕達は今日のためにいろいろな準備をしてきた。なにがなんでも負けるわけにはいかないのだ。

 

 

☆☆☆

 

 

 吹奏楽部が練習する不気味な短調の音楽の横を通り過ぎて、帝国イレブンを乗せたバスがグラウンドにやってくる。

 

 ドライアイスか何か分からない謎の煙を噴出しながら、バスの扉が開く。サッカーボールをドリブルする謎の少年達と一緒に黒いカーペットが広がっていく。

 刃也によると、この謎の少年達は帝国の二軍以下の選手らしい。去年はずっとそのドリブル役ばかりだったと零していた。ちなみにその刃也は今日は来ていない。僕達が共犯関係にあることは知られていなくても、過去のチームメイトである僕達を一緒にさせるべきじゃないと考えたのだろう。

 

 

「ここが尾刈斗中か……なんだか気味が悪いな」

「試合をすると呪われるという噂で有名だからな」

「ひえー、恐ろしい」

 

 少しでも帝国の士気を下げられないかと不気味な演出を準備してきたのはこっちだけど、帝国のやつらに言われたら僕としてもツッコミたくなる。

(試合に負けると校舎を破壊される噂ほうがよっぽど恐ろしいだろ!)

 

「ていうか鬼道サン、なんでこんなとこまで俺達が来ないとダメだったんすか? 道もガタガタでバスは揺れるし、気分最悪なんすけど」

「成神、口の利き方には気をつけろ」

「ふっ、構わん。総帥は尾刈斗を徹底的に潰すおつもりだ」

 

 帝国は本気ってことか……なんて思っている間に帝国バスの屋上が開き、高そうな椅子とともに影山が現れた。

 影山零治。僕の父さんを殺した全ての元凶。正直今すぐファントムシュートを蹴りこみたいくらい憎いけどぐっと堪える。

 

 

「お前が尾刈斗のキャプテンか」

 

「ああ」

 鬼道に指をさされた月村先輩が少し警戒しながら答える。

 

「ウォーミングアップがしたい。少しグラウンドを貸してくれないか」

 

「好きに使ってくれ」

 

 

「なんか感じ悪いな。年上相手にお前呼びとか」

 

「だけど魔界、去年も戦ったから覚えてるだろう。あいつのサッカーの実力はオレより遥かに上だ。サッカー選手として負けている以上、何を言っても負け犬の遠吠えだと言われるぞ」

「お前の場合、ただの狼の遠吠えじゃねえか」

 

 月村先輩と魔界先輩がいつもの漫才をしている間、帝国イレブンは各々ウォーミングアップを始めている。

 

 気色悪いくらいに体から離れないリフティングだったり、消えたかと思うほどの高速移動だったり、それらを見せつけて戦意を削ごうってのが帝国のやり方なんだろう。

 

 寺門の蹴ったボールが辺見のオーバーヘッドで鬼道に繋がり、ダイレクトでシュートする。多分下手な必殺技より威力があるぞこれ。

 シュートの先にいたのは我ら尾刈斗のキーパー、鉈。しかし突然のシュートに、歪む空間はもちろんキラーブレードを発動させる時間もない。

 

「ウォーミングアップは許しましたが……帝国では人にボールをぶつけることもウォーミングアップと言うんですか?」

 

 そのシュートを止めたのは多呂斗先輩。しっかりシュートを空中でトラップして、嫌味を込めた言葉と一緒に返す。

 

「少し足元が狂っただけだ」

 

 そう言って不敵に笑う鬼道。鬼道には鬼道なりの事情があることを僕は知っているけど、それでも今は嫌な奴に見える。

 

 

☆☆☆

 

 

尾刈斗中学

 

ーーーー月村ーーーー

ーー魔界ーー木乃伊ー

ー八墓ーーーー霊幻ー

ーー三途ーー紫藤ーー

ー不乱ー多呂斗ー屍ー

ーーーーー鉈ーーーー

 

 

帝国学園

 

ーー寺門ーー佐久間ー

ー咲山ーーーー洞面ー

ーーーー鬼道ーーーー

ー成神ー辺見ー五条ー

ーー大野ーー万丈ーー

ーーーー源田ーーーー

 

 

 僕達の目的は負けないことだから、FWは月村先輩1人に任せてかなりディフェンスに厚めの配置にしている。幽谷は優秀なFWなんだけど、今日はベンチで待機していてもらおう。

 

 対する帝国はガチガチのガチメンツ。僕達を本気で潰す気らしいから仕方ないね。

 

 キックオフは尾刈斗から。月村先輩から魔界先輩にパスが渡り、八墓三途を通って多呂斗先輩にボールが渡る。

 一旦GKの鉈まで下がったボールは屍に渡り、再び多呂斗先輩のもとに。

 

 キングオブゴールキーパーと呼ばれる源田から点を奪って帝国に勝つというのはかなり難しい。でも、負けないというだけならそう不可能ではない。

 

 卑怯だと言われても仕方がない。負けないためのもっとも勝算の高い作戦はこれだったのだから。

 

 僕達が今やっているのは、パス回し。

 

 これを最初に言い出したのは確か多呂斗先輩だったか。でも、みんな少なからずその案は頭の中にあったと思う。他にいい作戦はないかと考えを出し合った長いミーティングの末、監督は作戦の決定はキャプテンである月村先輩に委ねるとした。つまり、最終的にこの作戦を選んだのは月村先輩だ。

 月村先輩は本来こんな作戦は好きじゃない。円堂と同じサッカーバカで、正々堂々とぶつかり合うのが好きなタイプだ。でも、負けたら尾刈斗のみんなとサッカーができなくなるという事態を前に、月村先輩はこの作戦を選んだ。

 それを責める人は誰もいなかった。自分達にもっと実力があれば、正々堂々戦うこともできたと理解していたからだ。

 

 

「引き篭もりやがってうぜぇ! キラースライド!」

 

「……呪い

 

 僕達に攻める気がないことはすぐに帝国にも伝わったようで、必殺技を使ってボールを奪い取ろうと突撃してくる。なんとか必殺技で対応しているが、このペースでやられると続かない。

 

 

「よいしょっと、イリュージョンボール

 

 僕がイリュージョンボールを使えることはデータとして向こうに伝わってるはずだと思うけど、鬼道の十八番を僕が実際に使っている姿を見るとやはり驚くらしい。その隙に、フリーになっていた霊幻にパス。ちょっとだけ持ちこたえたかも。

 

 霊幻からさらに前線にパスが繋がり、ボールは唯一のFW、月村先輩のもとへ。

 

「カウンターか……!」

 

 鬼道の素早い指示によって、辺見ら中盤の選手は後ろに下がりカウンターに構える。

 

「オレ達はプライドまで捨てた。だから負けるわけにはいかねえんだよ。行くぞ魔界!」

「おうよ!」

 

「「地獄車!!」」

 

 月村先輩と魔界先輩がボールを挟んで車輪を作り回転する。その2人の進行方向の先で待ち構えていたのは、

 

ザ・タワー

 

 多呂斗先輩だ。

 

 

 多呂斗先輩が裏切って2人を止めたというわけではない。というか、地獄車は尾刈斗ゴール方向に転がって来たからどちらかというと裏切ったように見えるのは月村先輩達の方だろう。

 回転する2人は多呂斗先輩のタワーにぶつかり、その勢いのまま塔の側面を回転しながら登る。

 

 その結果塔の上に多呂斗先輩と月村先輩と魔界先輩が降り立った。

 

 

「ザ・タワー籠城作戦ってね」

 

 

 発案者は僕。最低最悪の作戦が始まった。




とても主人公側が行うとは思えないほど卑怯極まりなく、イナズマイレブンの精神とは真逆の作戦ですが、尾刈斗イレブンの決断を見守っていただけたら幸いです。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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