イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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思惑

「突然ですが、“死”ってなんだと思います?」

 

「辞書を引くか、法医学についてでも学んだらどうだ?私は哲学は好きではない」

 

 小さなアパートで、死について問う若い男。年老いた男は真面目に取り合う気がないようで、そのことに気づいた若い男は1人で語り始めることにした。

 

「僕が思うに、死ぬということは断絶することだと思うんです。確かに一般には脳死だとか心停止だとかが死の定義だとされることが多いんですが、それは本質じゃない。だって現に、僕は一度脳も心臓もトラックに潰されたはずなのに、こうして生きています」

 何の反応も示さない年老いた男を前に、若い男はさらに続ける。

「生きるというのは記憶と意識の連続のことで、それが途切れたときが“死”なんじゃないですか?」

 

「つまり君は何が言いたい?」

 

「あなたが彼女を殺したんじゃないかってことです」

 憎しみとも憐れみともとれる目で、年老いた男を見る。

 

「生憎だが、私は多呂斗を潰せなどと命令をした()()()()()。私は無関係だ」

 

「なるほど。これは一本取られましたね」

 

「それと今、お前は“彼女”と言ったな。多呂斗は女性だったのか?」

 

「ええ、はい。女性()()()

 そう言いながら若い男は、1冊のノートブックを取り出して掲げる。

「彼女の部屋から見つけました。日記帳です」

 

「全く。どうやって手に入れたのやら」

 

「ワープドライブですよ。便利ですよね」

 ワープを発生させる手の動きをジェスチャーして説明する若い男。つまるところ、不法侵入である。

 

「そうか、それで何が書いてあるんだ?」

 

「それはそれは色々と。前世は女性だったようで、日記の中の一人称は“私”でした。前世から尾刈斗中のことが好きだったようで――今、とんだ物好きもいるもんだなって考えましたね。気持ちは分かります。

 昔から尾刈斗でサッカーするのが夢だったようです。小学生の頃にディフェンス技のザ・タワーを覚えてからそれなりに活躍していたそうですが、原作に介入する気はないタイプで、尾刈斗でのんびりしようと考えていたようです。大好きな尾刈斗を眺めているのが幸せだそうで。そのために監視カメラを仕掛けるのはやりすぎだと思いますが」

 

「観察するために監視カメラを仕掛けるなんて、それはまた趣味が悪い」

 

「あなたが言えることじゃありませんよ」

 

 

「それでも、素敵な人だと僕は思いますよ。大切な人のために命を賭けるのは普通の人にはできません。というか彼女、日記の最後のページを見た限り死ぬかもしれない覚悟があったようですし」

 

「それは本当か?」

 

「ええ。監視カメラや原作知識があったとはいえ、彼女の予知能力は本物です。『この日記を書くのはきっとこれが最後になる』って、分かっていたのに彼女は試合に出たんです」

 日記の最後の部分を読み上げながら、多呂斗占がどんな気持ちで試合に挑んだのか若い男は考える。

 

「そもそもだがあの試合、彼女はそれほど頑張る必要があったのか?彼女以外の選手は実力をやや隠しているように見えた」

 

「それについても日記に書いていますね。『切り札はFFまで隠さなきゃいけない。次の試合で目立つのは私だけでいい』だそうです。勝つための策も無いわけじゃなかったのに、次に繋げるためにそれを隠したんです。自分が犠牲になることが分かっていたとしても」

 

「やはりそうか。それにしても、勝利のために自分の命すらも犠牲にできるとはな」

 

「あなたとは気が合いそうですね」

 

「なんのことやら」

 

 

「そもそも、あの試合自体が尾刈斗監督の作戦のうちだったようですね。多呂斗が倒れることに関しては、さすがに監督は想定していなかったようですが」

 

「あの監督はなかなか頭が切れる男だ」

 

「それにしても、()()()()()()()()()()()()()()()とは、なかなかえげつないことをしますよね」

 

 例の試合で多呂斗が倒れたあと、尾刈斗の監督が帝国のメンバー全員に、これから2週間の間試合で実力を発揮できなくなるという催眠術をかけた。

 プロトコルオメガのマインドコントロールと同じ理論ですね、と呟きながら、あの催眠術の意味を推測する。無敵のはずの帝国が、ザ・タワー籠城作戦などという意味不明な作戦を前に引き分けに終わったというのは、帝国メンバーにとっては大きな屈辱で、自信を喪失させられただろう。そして精神が不安定になったスキに催眠術をかけるという算段だったのではないか。

 

「あ、そういえばフランも似たような感じでしたね」

 

「何の話か分からないが、催眠術をかけること自体が目的だと考えているようではまだまだだ」

 

「え、違うんですか? 催眠術をかけることでFFの勝ちを磐石にしようってことだと思っていたんですが」

 

「まさか。彼らはそんな手段で納得しない。奇を衒っているように見えて、中身は円堂と同じようなサッカーバカだ」

 

「あなたがサッカーバカを語るなんて珍しいですが。でも催眠術をかけたということは正々堂々と試合をすることなんてできないでしょう?」

 

「少年サッカー協会副会長の権力を舐めるなということだ」

 

 

――若い男はその数時間後に、年老いた男の言葉の意味を知ることになる。

 

 少年サッカー協会は、FFの開催を例年より3週間遅らせることを宣言した。

 

 そしてそれもまた尾刈斗の思惑どおりであることを若い男が知るのは、もう少しあとのこと。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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